帝京大学で教育を読む会

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 若い友人の研究者、山本宏樹さんから

「1月、帝京大学で『教育を読む会』があるそうです。論議するのは1月号です。どなたか行ってくださる人はいませんか」

 と尋ねられた。

「ああ、それならぼくが行きます!」

 と、ぼくは喜んで答えた。


 帝京大学で『読む会』の運営の中心になっているのは、4年生のSさんだ。そのSさんから昨年末だったか、期日が伝えられてきた。それが今日だった。


 3日ほど体調がすぐれず、けだるさと熱っぽさを抱えていたが、今日は何としても行こうと決意していた。


 南武線に乗り分倍河原駅で京王線に乗り換え高幡不動駅で下車。

 快速が走っていた。30分ほどで着く。


 バス停を探すとバスの運行図を掲載した掲示板に1番乗り場へと書いてある。そこから帝京大学行きに乗った。

 バスは、やわらかなカーブをえがきながら10分ほど、丘陵地に開かれた団地や住宅地を抜けていった。

 

 帝京大学に着く。

「ああ、ここが帝京大学か…」

 ぼくは、すぐメディアライブラリーセンターを見つけて、中に入って行った。

 正面の図書館には外部者として入れないので、地下のメディアラウンジへ降りて行って、空いているテーブルに座って連絡を待った。

 ぼくの周りで、若者たちが自由に語り合ったりノートや本を開いている。

 大学は、どこにいってもいいなあ、魅力があるなあとつくづく思う。


 学習会の始まる10分前の3時20分、Sさんから電話があった。


 初めて出会うSさんだが、楽しくおしゃべりをする。

 4月からは近畿圏で教師になるとのこと。


 Sさんと図書館に入り、ぼくは外部からの来館者として名前を記入した。

 それから、書棚の並んだ奥にある1室へ。


 学生たちが次々と集まってきた。その数、十数名。

 びっくりした。こんなに集まってくるんだ。


 それから浦野東洋一先生が来室。ご挨拶をする。佐藤高樹先生も。

 この日は、他にもお二人の先生がいらした。

 総数15~17名。

「凄いね。これをいつからやってきたの?」

 ぼくが尋ねると1年前からとのこと。

「雑誌に日時を掲載しようか」

「毎月、不定期なんです。ですから〇曜日って決められないですから…」


 会は学生の司会で始まった。

 レポーターもきちんと決めている。取り上げられたのは4本の論文。

 みんな、自分らしい読みで問題点も出しながら、丁寧に参加者に語りかける。

 参加者は、初参加を含め、ほとんどが学部の違う学生たちなのだ。真剣に向かい合ったその努力と緊張感が伝わってくる。頑張ったね…と思わず声をかけたくなる。


 全体の報告の後、出された課題や感想を述べ合った。

 H君から出された「教師の力量」問題への論議も、あれこれとみんなが語り合って、楽しかった。

 

 もう一つ、凄いなと思ったのは、4年生のSさんが、今回の論議にでてくる『スタンダード』の問題を、みんなにわかりやすく伝えるために、自分で検索し、ある小学校のスタンダードの文書を手に入れ、きちんと参加者分、用意してくれてあったのだ。

 この問題をおおいに論議が弾んだ。


 ぼくは、ときどき話しあいに参加させてもらい、最後に、出された質問などにも答えながら、一つの授業実践例(1年生の算数)を取りあげ、この日の学びとつなげてお話をさせたもらった。


 論議を終えたのは、午後の6時。

 充実した会で、ぼくの風邪はどこかに吹き飛んでいた。

 高幡不動に出て、飲み会に誘われたけど、ここで参加するとまた無理が出るなと思って駅でみんなと別れた。


 「先生、4月から教師になりますが、ぜひまた何かあったとき相談に乗ってください」とSさん。

 「勿論。待っていますよ。ぼくも、ぼくの友人たちも、若い教師たちを応援しているの。何かあったときだけでなくていいんだよ。うれしい時にもね。遠慮なく」と答える。


 そうだ、こんなことがあった。

 バスの中で佐藤高樹先生が、ぼくの本を取り出してSさんに紹介したところ、Sさんがその本を手に取り、自分のものにするみたいにして「先生サインください」と言った。

 ぼくは慌てて、

「それは佐藤先生の本でしょ。Sさん、連絡先を教えてくれればぼくから本は送るから」

 バスの中で、大笑いした。

 

 3年生のSさんは、ノートの間に図書館の印のついたぼくの本『希望を生みだす教室』を挿んでいた。

「うれしいね。もしかして、君はこの本を読んでくれているの?」

 と言うと、彼女は答えた。

「先生、あの子…そう準君。私、準君のところを読んで泣いてしまいました」

「そうだね。ぼくも、準君のこと今も忘れないんだ。そこをしっかり読んでくれてうれしいね」

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