takam16の本の棚
です。バーチャルですが......



・伊坂幸太郎    「死神の精度」      (文藝春秋)  2回ぶり4度目の候補 

・荻原浩        「あの日にドライブ」   (光文社)   初候補 

・恩田陸        「蒲公英草紙」      (集英社)   2回連続2度目の候補 

・恒川光太郎    「夜 市」        (角川書店)  初候補 

・東野圭吾      「容疑者Xの献身」    (文藝春秋)  3回ぶり6度目の候補 

・姫野カオルコ  「ハルカ・エイティ」   (文藝春秋)  4回ぶり3度目の候補



● 早かった候補作の発表

例年、候補作の発表時期は最終選考会の約1週間前である。ところが今回は1月17日の
最終選考会より約2週間早い1月4日。正月気分が抜けきらぬままの候補作発表で
鼻息を荒くしたが、一方で選考会まで間が開き過ぎると盛り上がるタイミングを失って
しまう。takam16としてはすっかり頭がクールダウンしてしまった。

この狙いは出版界の事情もあろう。候補作にノミネートされることで、当該作品がどんな
顔ぶれかを我々読み手側が確認することができる。実際、書店でのこれらの問い合わせも
多く寄せられると聞いた。
時間を与えることで自分のように調子が狂う場合もあるが、結果的にはなにが受賞するか
という読み手側での会話のネタとして一役を担ったといえるだろう。

問題は、この時間の空白が果たして業界の売上にしっかりと反映されるかどうかである。
書店の問題は流通だ。本来であれば書店側は候補作情報を事前に入手してひそかに在庫を揃え、
発表日の1月4日に候補作品を陳列したいのだ。ところが候補作の名目上の発表は1月4日
(1月5日新聞紙上で掲載)にもかかわらず、
実際には12月の中旬までに候補者は決定している。
業界では売上促進のためにもそれらの情報が知れ渡っている必要があってもいいのだが、
そうすると情報漏えいのリスクも考慮せねばならない。
よって秘密裏に事は進められるのが現状だ。

候補作情報を事前に知るためにはなんらかの仕事上の人間関係を構築せねばならないだろう。
しかし、1月5日に書店をいくつか巡ったが、一部の大手書店を除くほとんどは6作品の在庫は
まったくないか、あるとしても微々たるものだった。
出版社と書店との連携はあいかわらずさっぱりであり、それに重ねて書籍の売上が毎年下降して
いるのだからまったくお話にならない。さらには年間1000店もの閉店・廃業.....

結局多くの書店側は候補作発表後に出版社に注文するという方法になるものの、
流通に非常に時間がかかる業界なために注文品が入荷した頃にはすでに直木賞発表という有様だ。
そんなムダは嫌だというわけで、書店は直木賞候補作の話題の蚊帳の外に置かれてしまう。
ならば直木賞など無視して別の本を売ればいいのだが、なかなかその手段を講ずることができない
というジレンマが見え隠れする。そのような書店がそこら中に存在する。
これも金太郎飴書店の悪例の1つだ。
売れるものを売るよりも、売りたいものを売れ。前者の書店はだいたいがつまらない。



● 読み手は買わずに借りにいく

たとえ2週間の期間を設けたとしても、読み手が「買い」に走るかといえばそうではない。
いまは読み手が「借り」に走る時代で、それは小説にやたらと集中する。
例えば東野圭吾氏の「容疑者Xの献身」について
発表前の昨年12月27日と発表後の1月12日での予約数の変化を調べたところ

横浜市立図書館   928冊  → 1027冊
さいたま市図書館  543冊  →  618冊

これほどの予約があるにもかかわらずさらに予約が入っている。
1027番目の予約者はいったい何年後に読むことができるのかに興味は及ぶが、
直木賞以前に小説は買うまでもないという読み手の姿勢がはっきりわかる。
姫野カオルコ氏の「ハルカ・エイティ」の場合は

横浜市立図書館   119冊  → 127冊
さいたま市図書館   46冊  →  58冊

東野氏の作品と比べて認知度は低いが、これもけっこうな予約数だ。
数字を見て予約をあきらめた方が多いと見るが、
ちまたでささやかれている文学や物語の衰退を庶民の眼でみたわかりやすい
数字のひとつが図書館の予約件数チェックである。
受賞作が実際に決まった時の予約数の変化に注目だ。


● 自分の予想と照らし合わせれば.....

文藝春秋の3作品のうち、
伊坂幸太郎「死神の精度」、姫野カオルコ「ハルカ・エイティ」は予想通りであった。
文藝春秋は3作品が入ると豪語していたが、その3つめは東野圭吾「容疑者Xの献身」。
事前の予想では選考委員の時代小説への憂えに応える形で、城野隆「一枚摺屋」を
3番手に加え、容疑者Xは補欠の1番手とした。彼が過去の作品において選考委員に
作品の欠点を指摘され、嫌われたからだ。強く押せなかったのはその点であった。

他出版社からでは
集英社より恩田陸「蒲公英草紙」は予想どおりだったが、荻原浩が光文社から選出される
というのはまったくの予想外であった。光文社からの候補作品など近年お目にかかって
いないからだ。
てっきり集英社より「さよならバースディ」で選ばれると決め付けていた。
さらになによりもまったく眼中になかったのが、恒川光太郎 「夜市」だ。
takam16、不覚にもノーマークだった。角川書店は近年連続して直木賞候補作を
出しており、いろいろ予想したのだが、一押しの作品が見当たらなかった。
特に日本ホラー小説大賞作の恒川光太郎 「夜市」、これは彼のデビュー作。
デビュー作が選ばれる例に前回の三崎亜記「となり町戦争」があったが、それを考慮に
入れても本書は消した。他のブログでは彼の選出予想の記事も見られたが、
高をくくっていた。完全にしくじってしまったとしかいいようがない。
初選出作品を予想・推理するにはまだまだ修行が足りないらしい。
また、新潮社からの受賞作品がてっきりあると考えていた。
文春のライバルとは言われながらも、ノミネートにはよく挙がる出版社だからだ。
残念である。



● 読みもしないのにとは言うけれど

「読みもしないのに直木賞....」などと強気に出ているが、実のところ、目を通している。
ちゃっかり読んでいることは告白しておこう。
あらかじめ選出作予想にあわせて、本を買い、あるいは借りていた。
先にも述べたが選ばれた6作品中読んでいないのは恒川光太郎 「夜市」だけだ。
なぜなら先に言ったようにノーマークだったからだ。


● では推理に入る

確かに他の5作品は読んだ。うち2作品は記事のUPをした。
しかし、この直木賞の推理に内容や構成や笑いや涙などの感情移入は不要である。
あくまでも確率や傾向と対策が優先され、中身の話は二の次としよう。


直木賞は文藝春秋社がバックにつく賞レースだ。
そして、自社の売上に直結させることが彼らにとってのノルマである。
6作品中3作品が文藝春秋社からの選出だ。
特にここ数年、文藝春秋社選出枠の多さは目立ち、現在4回連続3作品が選ばれている。
そして実際に受賞するのも文藝春秋社が現在3回連続受賞している。

過去10年で文芸春秋社が受賞した確率 50%
過去 5年で文芸春秋社が受賞した確率 80%

近年、自社の贔屓がヒドすぎる。かつてはもっと他社にも開放的だった。
文藝春秋社の売上貢献とはいえ、あまりにも顕著すぎる数字は逆にいろんな疑いを持って
しまう。例えば企業の業績の問題とか.....


恒川光太郎  「夜市」 (角川書店)

すこぶる評判のよい作品だと聞く。ただし、デビュー作でいきなりの直木賞候補だ。
123回の金城一紀「GO」も確かにデビュー同然だ。ただし、著者は別の名前で
商業出版していた経験を持つ。
また、角川書店で初選出かついきなりの直木賞ということになると、
97回の山田詠美「ソウル・ミュージック・ラバーズ・オンリー」まで遡らねばならず、
著書は決してデビュー作ではない。
唯一気になるのは、「夜市」に賞を与えた日本ホラー小説大賞
の選考委員に直木賞選考委員の林真理子がいることだ。
ちなみに彼女はこの作品を絶賛している。
他の選考委員に吹き込む可能性もなきにしもあらずだが、林真理子に他の聞き分けのない
選考委員を説得する存在感はまだ示すことはできないだろう。
ただし、本書のレベルは相当高いと読んだ人の多くが言っていることは確かだ。
しかし今回は見送り。次回作に期待したい。


荻原浩    「あの日にドライブ」   (光文社)

著者は直前の山本周五郎賞を「明日への記憶」で受賞した。山本賞と直木賞はライバル
関係にある賞であり、両賞の候補者の多くはカブっている。
今回、山本賞というチャンピョンベルトを巻いて、別作品で直木賞候補となった著者だが、
この場合、あるパターンが存在する。

山本賞を受賞した作家が直木賞候補にはじめて選ばれた場合、1度目は見送るパターンだ。

直木賞側としては歴史・伝統の面において山本賞を格下扱いにしたい。
本来は同レベルの賞であるにもかかわらずだ。よって、一度は直木賞は著者に試練
を与えるだろう。
今回は見送りだ。


伊坂幸太郎    「死神の精度」    (文藝春秋)

文藝春秋の1番手、近年の流れから今回の直木賞に最も近い作家の1人である著者。
4度目にして初の文藝春秋社からのノミネートだ。獲るべくして選ばれたという予想屋もいる。
しかし、ここは少し慎重になろう。
文藝春秋社の理想は、あくまでも初選出が文藝春秋社であるならば、喜んで自社から
直木賞作家を出そうという姿勢である。
つまり、初選出の出版社がその後の直木賞受賞出版社を左右するのだ。
伊坂幸太郎の初選出出版社といえば、新潮社の「重力ピエロ」だ。
最近20年間で新潮社初選出作家の文藝春秋作品受賞例は111回の海老沢泰久氏のみである。
しかも彼の場合、直前の山本賞で当該作品が受賞を逃したことに対する怒りの受賞だ。


* 新潮社主催の山本賞にノミネートされた海老沢泰久の「帰郷」は文藝春秋社の作品だった。
 それはおかしいと文藝春秋主催の直木賞は自社作品の「帰郷」を直木賞にした.....
 と予想している


また、直木賞はなぜか作家の作家歴のようなものにこだわる傾向がある。
他の2人、東野圭吾、姫野カオルコと比べると彼の歴史はまだ浅い。
以上より、今回は見送り。



東野圭吾      「容疑者Xの献身」    (文藝春秋)

ならばこちらの文藝春秋作品はどうだろう。
正直小説分野においては久々に現在店頭でこれでもかとばかり山積みされ、
そして売れている。別の賞や雑誌の投票などでも1位に輝いている。
さらに著者の初選出は文藝春秋社だ。ここが伊坂幸太郎と比べて有利な点だ。
そして作家の実績を案外考慮に入れる直木賞の傾向を考えれば、
ここは無難に彼が受賞!! 
といきたいところだが、少し思案したい。

過去20年間に限定すると、22%、
過去10年間では     0%
過去5年間でも      0%

この数字は文藝春秋社から2度候補作になったにもかかわらず受賞できなかった
作家の直木賞受賞率だ。

古くは商業出版前の雑誌連載の段階で直木賞候補となることが多々あった。
それも含めての文藝春秋作品ということで何度も落ち続けてようやく受賞するという
例はしばしばあったが、時代はもう変わった。
雑誌連載作品が候補作になることは限りなくゼロに近い。
よって、近年に絞って数字をチェックすると、東野氏はここで受賞すると
いままで調査したデータにズレが生まれてしまう。
しかも以前よりこの件についてはさんざんブログでほざいてきた。
なのに東野氏は実績があって受賞にふさわしい....
などいえるわけがないじゃないか。
と少し感情が入ってしまったtakam16であるが、
ここはデータにより、今回は見送る。



姫野カオルコ  「ハルカ・エイティ」   (文藝春秋)

文藝春秋社からの選出で最も条件が揃っているのは本作品の著者である。

117回 文藝春秋 「受難」        落選
130回 角川書店 「ツ・イ・ラ・ク」   落選
134回 文藝春秋 「ハルカ・エイティ」  ?

だれでもいつかは2度目の文藝春秋作品候補作にノミネートされるチャンスが
訪れる。前出の東野圭吾も以下のとおりだ。

120回 文藝春秋 「秘密」  落選
122回 集英社  「白夜行」 落選
125回 文藝春秋 「片想い」 落選

125回の2度目の文春選出はチャンスだった。しかし、この時、同じパターンの
作家がもうひとりいた。

藤田宜永
114回 文藝春秋 「巴里からの遺言」 落選
117回 講談社  「樹下の想い」   落選
125回 文藝春秋 「愛の領分」    受賞


馳星周が122回に同じパターンで受賞を逃した時、受賞したのは

なかにし礼
119回 文藝春秋 「兄弟」      落選
122回 文藝春秋 「長崎ぶらぶら節」 受賞

黒川博行が121回に同じパターンで受賞を逃した時、受賞したのは
 佐藤賢一  「王妃の離婚」 集英社
 桐野夏生  「柔らかな頬」 講談社


これは推理だ。黒川氏のように姫野氏が受賞を逃す場合もあるかもしれない。
しかし、逃した場合には他の出版社からの受賞を考慮する必要がある。
しかしながら今回、他の出版社から選ばれる要素を見出すに適当なデータが見当たらない。




恩田陸        「蒲公英草紙」      (集英社)

連続入選に好感が持てそうだが、連続入選が受賞に直結する例はいずれかに
文藝春秋社作品が含まれている場合であり、また恩田氏の候補歴は

133回 角川書店 「ユージニア」
134回 集英社  「蒲公英草紙」

であるが、初選出が角川書店の場合、のちの受賞率はゼロである。
データはいつかは更新され、例外が生まれるものだが、
姫野カオルコの揃いすぎるデータの前では彼女の描く不思議な世界も無力といわざる
をえない。
ただし、実は今回の直木賞は2作受賞の予感がする。
あまりにも文藝春秋に賞を与えすぎており、少し歯止めをかける必要があろう。
よって、他出版社からという選択では
最も受賞に近いのをあえて探すならば消去法により、本作品ではないだろうか。
確かに角川書店からの初入選作家に直木賞は冷たい。しかし一方で
連続入選において、いずれも他出版社の場合でも30%は受賞の確率があるのだ。


このようなデータを調べてなければ、直木賞作家は東野圭吾で決まりと自分は
言っているだろう。また、感情に流されて彼に獲らせたいと思うだろう。
しかし、彼の作品はただいま売れ行き絶好調だ。今更直木賞をあげたところで
文藝春秋の本作品の売上の伸びしろはたかが知れている。
それにひきかえ、姫野カオルコの作品は決して売れ行きが順調というわけではない。
また、値段を見れば1995円もする。文藝春秋3作品の中でも他出版社を混ぜても
値段は一番高い。
また、姫野カオルコの次回作がどうやら文藝春秋社から出るとの話もある。
ならば、次作のオビには

「直木賞受賞後第1作!!」

と思考停止もはなはだしい文句を付けることができるのだ。
これを見逃す文藝春秋社でもなかろう。




● 結論

よって、134回直木賞受賞作品は

姫野カオルコ 「ハルカ・エイティ」 文藝春秋 → データによる裏づけ

と推理する。無冠の女王は直木賞を本書の主人公となった亡き伯母に捧げるであろう。


また、2作品が選出されるのであれば、

姫野カオルコ 「ハルカ・エイティ」 文藝春秋  → データによる裏づけ
恩田陸    「蒲公英草紙」    集英社   → 他出版社受賞への個人的切望で中でも
                           受賞に近いデータ

姫野 カオルコ
ハルカ・エイティ
恩田 陸
蒲公英草紙―常野物語
● 最後に 直木賞は大衆文学作品に与えられる賞である。よって話が飛躍しすぎたり、一部の固定層 にしか支持されない作品はあまり好ましくないと判断する傾向がある。 さらには ・上下巻モノ ・主人公が1人称 ・理由の説明がつかない殺人 は選考委員の嫌う傾向がある。 直木賞選考委員は生涯現役だ。 以前にも述べたが、選考委員は期間限定の入れ替え制にした方が好ましい。 いつまでも同じ選考委員では作品・作家の好き嫌いが出てしまい、 受賞にふさわしい作家がいつまでたっても選ばれないという理不尽を被る。 それが残念である。 最後まで長い文章にお付き合いくださった読者の皆様に感謝します。 現在多忙のため、記事は予約更新しております。 よって返事はあとになってしまいますことをご了承下さい。 また、予想が外れることがあったとしても、それはtakam16のぼやき 程度に解釈してください。 ありがとうございました。
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前回の記事はこちら


文 藝 春 秋
作品名 作家名 出版社
死神の精度 伊坂幸太郎 文藝春秋
一枚摺屋 城野隆 文藝春秋
ハルカ・エイティ 姫野カオルコ 文藝春秋
凸凹デイズ 山本幸久 文藝春秋
漆黒泉 森福都 文藝春秋
容疑者Xの献身 東野圭吾 文藝春秋
今回、文藝春秋社の候補枠は3枠あると予想している。 伊坂幸太郎  「死神の精度」 姫野カオルコ 「ハルカ・エイティ」 城野隆    「一枚摺屋」 が自分の推理するところでその理由と候補になった場合の受賞の可能性についても 前回述べた。 ただし、3番目の城野隆氏とその作品については直木賞のステップレース的であると 述べた松本清張賞受賞との結論に選考委員の希望も考慮して挙げたが、他の作家にもつい 色気が出てしまう。 また、伊坂幸太郎氏の講談社刊「魔王」のノミネートの余地も残すため、補欠として 3作品選ぶこととする。 ・山本幸久 「凸凹(でこぼこ)デイズ」
気になるのが著者の文学賞経歴にある集英社が主催する「小説すばる新人賞」である。 山本氏は平成15年度に「笑う招き猫 」でこの賞を受賞したのだが、 この新人賞の受賞歴を持った作家の直木賞候補者、あるいは直木賞作家はけっこう多い。 最近では133回に三崎亜記氏が小説すばる新人賞受賞作の「となり町戦争」でノミネート されている。 過去には熊谷達也氏も「ウエンカムイの爪」で新人賞を獲得後、「邂逅の森」で直木賞作家 となった。 古くは佐藤賢一、篠田節子もこの新人賞の獲得者だ。 山本幸久氏の「凸凹デイズ」は商業出版としては3作目、そして初の文藝春秋社からの出版だ。 ちなみに過去2作はいずれも集英社からの出版である。 今回受賞するかと言われれば正直難しいが、新人・新鋭作家の発掘が急務の現在の出版界、 そして最近直木賞候補の初選出が目立つ中、経験が浅いながらも山本氏の存在は無視できない ものがある。 ・ 森福都  「漆黒泉」
こちらもあまり知られていないかもしれないが、主に中国を舞台にしたミステリー、推理モノを 得意とする作家である。この作家も過去に松本清張賞の受賞作家であるが、それよりも今回 興味を持つのは、先の山本幸久氏も伊坂幸太郎氏もそうなのだが、 彼らはみんな、日本推理作家協会の会員に入っている作家である。 この推理小説・探偵小説の書き手が多く所属する日本推理作家協会。 実はこの会員メンバーが直木賞にノミネートされることが非常に多い。 ちなみに、協会は独自に日本推理作家協会賞、そして江戸川乱歩賞を主催しており、 いずれもバックには講談社がついている。 実際、これら2つの賞経験者が直木賞候補者となることもあり、以前触れた、講談社より初選出 された直木賞候補者がのちに直木賞作家になる可能性がどの出版社よりも高い理由にはこの 日本推理作家協会とそのバックの講談社が一枚かんでいると自分は考えている。 前回の133回直木賞候補者で日本推理作家協会会員を挙げると 恩田陸、朱川湊人、古川日出男 前々回の132回直木賞候補者は 伊坂幸太郎、福井晴敏、本多孝好 131回は 熊谷達也、奥田英朗、伊坂幸太郎、北村薫、東野圭吾、 130回は 京極夏彦、朱川湊人、馳星周、 ちなみに初選出作家は青字である。 ・東野圭吾  「容疑者Xの献身」
話題沸騰、人気急上昇の本作品である。だから正直気になったというのがホンネ である。年末発売の週刊文春でも圧倒的な差でNO1に輝いた本書を まさか2次選考委員が放っておくはずがないだろう。 ただし、データは東野氏が直木賞作家になるための楽観的データに欠けている。 文藝春秋社によりで2度候補になりながら、 受賞できなかった作家が直木賞を獲得する確率は 過去20年間に限定すると、22%、 過去10年間では     0% 過去5年間でも      0% 今回選出されれば3度目の文藝春秋社からの候補となる。ならば落選するのがいままでの パターンだ。彼が直木賞を受賞すれば彼は非常に作品数が多いため、フェアの1つは 簡単に作れるだろう。 しかし直木賞を獲らずとも、彼は十分出版業界に貢献している。 いまさら受賞せずともさらに上を目指せばよい。 よって今回は候補の可能性は十分あるが、受賞の可能性まで尋ねられるとNOというしかない。 それは彼の作品、実績の問題ではなく、単にデータの問題だ。 ◆講談社 今回、講談社からの候補作をいろいろ検証したが、 伊坂幸太郎氏が「死神の精度」が候補にならない場合の「魔王」での選出以外、 あまり魅力的な作家が見当たらなかった。 江戸川乱歩賞受賞作家の神山裕右氏や薬丸岳氏、不知火京介氏も考えたが、 いまいち突っ込んだデータがない。 詩人で小説家でもある平田俊子氏の「二人乗り」 日明恩氏の「埋み火―Fire’s Out」 も考えたが、結論が出なかった。 講談社からは2回連続候補作なしと予想はどうかとは思うのだが..... ◆集英社 ・荻原浩 「さよならバースディ」
なんといっても荻原浩氏の「さよならバースディ」を候補作ナンバー1に押す。 山本周五郎受賞者は8割以上の確率でのちに直木賞候補作にノミネートされる。 そして、直木賞側はさほど文学賞のレベルと差はないように感じる山本賞側に 格の違いを見せ付けるために1度目は候補に選んでおいて最終選考会で落とすのだ。 また、荻原氏は日本推理作家協会会員ではないが、小説すばる新人賞の獲得者だ。 そしてこの賞は集英社の主催。集英社代表というわけだ。 ・恩田陸 「蒲公英草紙―常野物語」
さらに集英社からはもう1作。前回の133回直木賞候補者から続けてノミネート されそうなのは彼女である。朝日新聞社の「ネクロポリス」も出版されているが、 最終選考会において過去、上下巻の長篇候補作は散々コケにされ、落選させられた。 また朝日新聞社は直木賞と縁が比較的薄いため、ここは集英社刊の本作品だろう。 ちなみに彼女も日本推理作家協会会員である。 おまけに、吉川英治文学新人賞受賞経験者というおまけも付いている。 過去のこの新人賞の獲得者で直木賞候補に選ばれた作家は 伊坂幸太郎、福井晴敏、恩田陸、諸田玲子、宇江佐真理、山本文緒、馳星周、 真保裕一、浅田次郎、宮部みゆき、大沢在昌、景山民夫、船戸与一、高橋克彦..... 過去の受賞経験から作家を見たときに最も直木賞に直結する賞と言える。 ・古川日出男 「ロックンロール七部作」
補欠として、恩田陸同様、前回のノミネート作家の連続入選を挙げておく。 彼は文藝春秋社から「ベルカ、吠えないのか?」でノミネートされた、つまりは文藝春秋社 から初選出された作家は同社の恩恵を受けやすいのである。 それでも次点にした理由は、単に上位2作品のノミネートの確率が高いと推理するまでだ。 ◆新潮社 さて、問題の新潮社である。山本賞を抱えている新潮社とは事実上のライバルだ。よって、 新潮社からの選出は山本賞からの選出も合わせて考えることがポイントとなる。 ここで押さえるべき点は ①山本賞にノミネートされたことがあるか。 ②山本賞に過去1度だけノミネートされた場合、その作品の版元は新潮社か。 当初の予想では梨木香歩氏の「沼地のある森の中で」が直木賞候補作に入ると信じていた。 しかし、それはとんだ勘違いのようだ。 彼女は山本賞にかつて新潮社刊の「家守綺譚」でノミネート(受賞ならず)された経験を持つ。 こういうパターンの場合、直木賞側としては新潮社以外の出版社からの作品を直木賞候補作 に出す。 「沼地のある森の中で」は新潮社だ。もしもこの作品が他出版社から出ていたら どれだけ良かったことかとつい腕組みをしてしまった。実に残念である。 「沼地のある森の中で」は、おそらく次期山本周五郎賞の候補作になるだろう。 そこで他の作品に目を向ける。山本賞のノミネート歴のない新潮社刊行の作品を考えると 2作品が浮上した。 ・畠中恵 「おまけのこ」市川拓司 「世界中が雨だったら」 その中ではシリーズものであるが、新潮社を代表して畠中氏の「おまけのこ」に奮闘して もらいたい。氏は山本賞にノミネートされても不思議のない作家だ。 よって文藝春秋社としては先手を打って山本賞にノミネートされる前に直木賞候補歴を 彼女の経歴に入れ込むことで畠中氏を育てた新潮社にプレッシャーを与えておくのだ。 さらには彼女は「怪(あやかし)」をテーマにした江戸時代小説を描く作家だ。 文藝春秋社の時代小説直木賞候補作推理の 城野隆「一枚摺屋」の2次落選の保険的意味合い としてこの時代小説を候補作として推理する。
◆角川書店 絲山秋子氏はいつの日か、直木賞になる要素は十分ある。彼女はかつて芥川賞3回連続候補作 に選ばれた経歴を持つ。角田光代氏も同じ経験を持ち、のちに直木賞作家となった。 今回は「ニート」という作品を発売しているが、もう少し時期を待ったほうがよさそうだ。 また、歌野晶午氏の「女王様と私」も考慮に入れた。 ただし、彼の作品は別世界のものだ。文章自体、または文章の節・章・構成等を利用して 読者を罠にはめる方法をとる。作品のタイプが直木賞にあわない気がする。 ◆幻冬舎、徳間書店 幻冬舎はとにかくエンターテインメントを大切にする。売れなければ本じゃないという考えの もと、奇抜な作品でしかも読者をとりこにする作品を世に送り出してくれる。 エンタメという概念において、それは直木賞の大衆文学に近いものである一方で、 文学という概念にしがみつこうとしない点において直木賞最終選考委員にケチがつく。 文藝春秋社に近いようで実際はまったく逆を進む出版社であると思っている。 それが幻冬舎が直木賞作品を出さず、直木賞候補作が少ない理由だと考える。 しかしながら、今期間には2人の作家を押す。そしてそのうち1人がノミネートされるだろう。 黒川博行 「暗礁」      幻冬舎 ・馳星周  「楽園の眠り」   徳間書店 ・安東能明 「ポセイドンの涙」 幻冬舎 3名とも日本推理作家協会会員であり、黒川氏、馳氏に関しては不名誉だがいつまでたっても 直木賞候補の常連だ。おそらく今回が最後のノミネート作になるだろう。
takam16の直木賞候補作品予想
作品名 作家名 出版社 選出回数
死神の精度 伊坂幸太郎 文藝春秋 2回ぶり4度目
ハルカ・エイティ 姫野カオルコ 文藝春秋 4回ぶり3度目
一枚摺屋 城野隆 文藝春秋 初選出
さよならバースディ 荻原浩 集英社 初選出
蒲公英草紙―常野物語 恩田陸 集英社 2回連続2度目
おまけのこ 畠中恵 新潮社 初選出
暗礁 黒川博行 幻冬舎 8回ぶり5度目
次点1 容疑者Xの献身 東野圭吾 文藝春秋 3回ぶり6度目
次点2 凸凹デイズ 山本幸久 文藝春秋 初選出
次点3 ロックンロール七部作 古川日出男 集英社 2回連続2度目
次点4 楽園の眠り 馳星周 徳間書店 4回ぶり5度目
次点5 漆黒泉 森福都 文藝春秋 初選出
◎...ほぼ確定予想   ▲...可能性あり。 注意1...伊坂幸太郎は講談社刊「魔王」のノミネートの余地を残す 注意2...城野隆が選ばれない場合、または伊坂幸太郎が「魔王」で選出された場合は      次点から繰り上げられるものとする 注意3...文藝春秋社の枠は3が最高とする この度は、「読んでもいないのに次期直木賞受賞作を推理する」にお付き合い下さいまして ありがとうございました。 今予想は、あくまでも直木賞を作品レベルとしてよりは出版社や確率、過去の受賞経験から予想する 形であるため、邪道と思われるかもしれませんが、 この賞が、機械が評価するのではなく人間の主観により評価するということ、 そして伝統もあり知名度も高い賞が人間の主観が理由でいかに公平性を欠くものであるかと いうことを過去のデータを参考にしながら示したものです。 しかしながら直木賞を決して嫌悪しているわけではなく、直木賞があるからこそ一連の記事を 書くことができたことに感謝し、また、直木賞に興味があるからこそこれらの記事を書いた捉えて いただければと存じます。 気軽な気持ちで、娯楽と思って読んでいただければ幸いです。 また、これをきっかけに直木賞という文学賞のみならず、本というものに少しでも興味を 持っていただけるのであれば、大変光栄です。 2005年の記事は今日で終了です。 また来年お会いしましょう。 ありがとうございました。 * 実際の直木賞候補作は1月初旬に発表され、最終選考会はその1週間後の予定です。
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です。バーチャルですが......

第134回直木賞受賞候補作の発表は年明けの週末、
そして直木賞の最終選考会は1週間後の木曜日に行われ、
受賞者とその作品が発表される。
候補者のもとには12月の中旬までにはすでに封書か何かで
知らせが届いているはずだ。
候補作品の一般向けの発表が来年というだけのことだ。


当ブログでは10月より数回にわけて
「読んでもいないのに次期直木賞受賞作を推理する」
などと大それたタイトルで皆様にお付き合いいただいた。

「読んでもいないのに何がわかるのか?」
という意見が多々あるのは承知の上である。ならば逆に質問しよう。

「読んだら何かわかるのか?」

創作物というデリケートなシロモノを評価するのは機械ではない。
人間なのだ。しかもその人間はただの人間ではない。
「物書き」というこれまたデリケートな創作物を生み出す人間が評価
するのである。
よって、どれだけ感動を呼ぶ作品であろうと、どれだけ本屋で売れ筋と
言われようと、彼らの持つ主観がすべて優先される。
そして彼らの持つ主観は凡人の理解を超越したものだ。
過去にどれだけ優秀だと言われた作家が受賞を逃しているか、
世間にたっぷり認知された作品がどれだけ受賞できなかったか、
数えるだけ時間の無駄というわけだ。

凡人の理解を超越した主観を持つ彼ら、つまりは直木賞選考委員は
現在以下のメンバーで構成されている。

阿刀田高氏  70歳 1995年より選考委員
五木寛之氏  73歳 1978年より選考委員
井上ひさし氏 71歳 1982年より選考委員
北方謙三氏  58歳 2000年より選考委員
津本陽氏   76歳 1995年より選考委員 
林真理子氏  51歳 2000年より選考委員
平岩弓枝氏  73歳 1987年より選考委員 
宮城谷昌光氏 60歳 2000年より選考委員
渡辺淳一氏  72歳 1984年より選考委員  

直木賞にしばしば言われる問題点の1つは選考委員達の高齢化である。
実際、直木賞候補に名を連ねる作家はたまに20代や50代以上の年齢の方が
候補になることもあるが、多くは30代~40代に非常に多い。
それに比べて9名の選考委員のうち6名が70代である。
この点において、年齢にはもっとバラつきがあった方がよい。
歳がその人の評価のすべてとは毛頭思わないし、文学の世界が年齢とともに
蓄積される人生経験がゆえに深みのある世界を構築できることはまぎれもない
事実であろう。
しかし、昨今の情報化社会における急激な社会の変化のおかげで
世代間ギャップというものが日常生活にしばしば見られることを考えるならば、
文学作品においてはよりいっそう世代の違いゆえに生まれるギャップは甚だしい。
選考委員側が候補者側に積極的に心を開くのであればよいが、選考委員もそれぞれ
選考基準を持っているはずで、さらにその基準に変化はさほどない一方で彼らは
確実に歳をとっていくのだ。

「最近の若手作家は.....」

などという言葉が出る度にそれを感じてしまうのである。

そして選考委員の上記のの高齢化の手助けをしているのが、2つめの問題点である
「選考委員生涯現役制」だ。
4~5年に一度は選考委員の入れ替えは必要だ。
なのに、この制度では選考委員が辞退を申し出ない限り、死ぬまで選考をすると
いうわけだ。
短いものでは3名が2000年より選考委員をしているが、もう5年もやっている。
渡辺淳一氏は21年、井上ひさし氏は23年、そして五木寛之氏にいたっては
なんと27年間も選考委員の座にいるのだ。
はたしていつまでやるつもりなのか。
各選考委員には選考基準があり、当然ストーリーや文章の構成、候補者の個性に
好き嫌いが生まれるのは自然である。歴史や伝統は確かに大切だ。しかし
このあまりにも保守的な姿勢は新たなものを生み出す力の邪魔になりはしないだろうか。
いいかげん、ルールを変えたほうがよい。
これだから当ブログのように傾向や対策、データにこだわった推理が可能なのだ。
批判と同時にこの場でお礼も申し上げたい。

読んでもいないのに次期直木賞受賞作を推理したくなる理由はこの保守的ゆえに
生じる受賞パターンというものがあるからだ。
ただしそれを言うならば、最終選考委員よりは2次選考の文藝春秋社員に物申した方が
よいのかもしれない。

直木賞の選考過程を確認しておこう。

①関係者350人によるアンケート調査
↓
②文藝春秋社の社員数十名が下読み&議論し、評価し、候補作決定
↓
③海千山千の選考委員による2時間の議論・話し合いで受賞作決定


毎回5~7作品選ばれるのが一般的だが、ここ最近の傾向は7作品が選出される。
よって今回も7作品が候補作として選出されることを前提に話を進めていく。
現状では候補作予想である理由から
②の2次選考委員の腹の中を予想しながら考えていきたい。

まずは7作品をどう出版社別に振り分けるかだ。
上記の直木賞選考過程の①と②はクセ者だ。

アンケートや投票のみなら正しい数字が出るも、議論や評価までに物事が及ぶと
特に②の文藝春秋社員の存在が腑に落ちない。
出版社が主催する賞ならば、自分の出版社の作品にできるだけ有利になるように
仕向けることなど簡単だ。
過去の直木賞候補作においても、前回は7候補中3候補、前々回も7候補中3候補
が文藝春秋社の作品だ。
よって今回も3候補を文藝春秋社、あとの4つを他出版社と推理する。
まずは文藝春秋社の候補作予想を行う。

文 藝 春 秋
作品名 作家名 出版社
死神の精度 伊坂幸太郎 文藝春秋
一枚摺屋 城野隆 文藝春秋
ハルカ・エイティ 姫野カオルコ 文藝春秋
凸凹デイズ 山本幸久 文藝春秋
漆黒泉 森福都 文藝春秋
容疑者Xの献身 東野圭吾 文藝春秋
その文藝春秋社刊の作品、最有力候補作は 伊坂幸太郎氏 「死神の精度」だ。
伊坂 幸太郎
死神の精度
候補実績は129回の初選出から数え、過去5回中3回選出されている。 新潮社の「重力ピエロ」 → 講談社の「チルドレン」 → 角川書店の「グラスホッパー」 そして今回、満を持しての文藝春秋社からの出版だ。 実は同じく、講談社からは「魔王」という作品も出版されている。
伊坂 幸太郎
魔王
どちらが選出されるかに議論の余地は残すが、講談社の「魔王」は同出版社の「チルドレン」と同じく 雑誌「エソラ」に掲載されたものの書籍化だ。この場合、同じ系統から選出するよりは 別の系統から選出する場合がなぜか多い。ましてや今回は身内の文藝春秋社だ。 「魔王」で選出されれば、文藝春秋枠が1つ空き、他の新鋭作家にもチャンスが訪れる意味では いいのだが、文藝春秋社としては伊坂幸太郎ブランドを我が物にしたいのだ。 なぜなら、伊坂氏はライバルの新潮社がこの世にデビューさせた作家だ。 ここで伊坂幸太郎を受賞させねば、来年の新潮社側の山本周五郎賞で「魔王」が大賞を 獲りかねない。ここは新潮社側との駆け引きだ。 文藝春秋社員である2次選考委員にとっては伊坂氏デビューの恩人新潮社に恥をかかせる チャンスだ。 伊坂氏が直木賞を獲ってしまえば、山本賞側は伊坂氏に賞を獲らせることができなくなる。 過去3度の落選は他の出版社だ。気にはならない。 しかし「死神の精度」は文藝春秋社刊の作品なのだ。 ここは是非とも伊坂氏を我が社が誇る直木賞にさせたいと願うのは自然だろう。 あとは最終選考委員達のデリケートな琴線にふれさせることができるかの問題である。 しかしながら上の予想とはまったく逆の話になるが、所詮伊坂幸太郎は自分達が育て上げた作家 ではないという派がいても当然である。数十名の2次選考委員にそれぞれ意見というものもある だろう。 これについては過去の傾向に基づく話で以前にも触れたが、 「文藝春秋社は直木賞候補として初選出された出版社が自分の出版社でなければ冷たい。」 というデータがある。 伊坂幸太郎氏の直木賞初選出作品は新潮社だ。 「初選出が新潮社の場合、直木賞作家になれない確率 82、3% (該当は17つ)」 他の出版社も挙げると 初選出が角川書店の場合  同じく 85.7 % (該当は7つ) 初選出が幻冬舎の場合   同じく 100 %  (該当は3つのみ) 初選出が集英社の場合   同じく 58.3%  (該当は12) 初選出が講談社の場合   同じく 33.3% (該当は18) 初選出が文藝春秋の場合  同じく 43.8% (該当は32) 。 また、初選出が新潮社で受賞作品が文藝春秋社の場合は20年間で 海老沢泰久氏1人しかいない。 つまりこういうことだ。 文藝春秋社には彼らの編集方針があり、新潮社などには彼らの編集方針がある。 だから書き方や構成が違う場合もある。 そのうえで最終選考委員は何十年経っても同じ選考委員なのだ。 彼らはよく1人の作家を点として捉えるのではなく、線として捉えようとする。 前作との比較をした結果、最終選考委員が受賞を見送ることは選評等を拝読すると 非常に多い。 一方でいろいろな出版社で候補作になると、作品というものは作家と出版編集者 が二人三脚で創り上げるわけだから、作品の姿勢がコロコロと変わりやすい。 そこで作家の評価が前回の作品より上がったり下がったりするのだ。 ましてや、作品の多くは文芸雑誌の連載を経たものが実に多い。 本としての出版は今でも、実際は2~3年前より執筆したものがようやく終了した ことで、次に本というパッケージにし、商業出版として売り出すための、 そして執筆時と出版時の数年間の空白を埋めるべく本の最後によく見るコメントで ある加筆や修正という作業を行うのだ。 従って、出版時期がそのまま作家の執筆した順番に比例するわけではない。 現に「死神の精度」は平成16年度の日本推理作家協会短篇賞を受賞しており、 この賞の対象期間は前年の1年間、つまりは平成15年に執筆した作品なのだ。 けっこう古い作品である。 そして、同じ出版社かつ同じ編集者で選出された方が作家の伸びや成長ははっきりする。 さらにはそれが身内の文藝春秋社ならなおさらだ。 そこで、文藝春秋社は可能性の高い別の作家に気を配ることを考える。 その1番手が 姫野カオルコ氏の「ハルカ・エイティ」である。
姫野 カオルコ
ハルカ・エイティ
2年半、新たな商業出版のなかった姫野氏の復帰第一作というとおおげさかも しれないが、彼女の直木賞候補歴を記すと 117回 文藝春秋 「受難」 130回 角川書店 「ツ、イ、ラ、ク」   今回 文藝春秋 「ハルカ・エイティ」??? 文藝春秋社は自分の出版社から候補作を出したのであれば、一定条件のもと、 再選出の面倒を見てくれる。 そして、55%以上の割合で文藝春秋社が初選出の場合は文藝春秋社で受賞できるのだ。 その一定の条件とは、 「候補作として文藝春秋社から選ぶのは2度まで。」 最近20年間では角田光代氏、朱川湊人氏、奥田秀朗氏、藤田宜長氏、なかにし礼氏、 笹倉明氏、高橋義夫氏が文藝春秋社2度目の選出で見事受賞を果している。 姫野氏はまさしくこのパターンだ。久々の出版が文藝春秋社というのも説得力がある。 ただし、この2度目のチャンスをものにできなかった場合、文藝春秋社は最近20年間 では面倒を見てくれない。 文藝春秋社によりで2度候補になりながら、 受賞できなかった作家が直木賞を獲得する確率は 過去20年間に限定すると、22%、 過去10年間では     0% 過去5年間でも      0% 横山秀夫氏、東野圭吾氏、宇江佐真理氏、馳星周氏、黒川博行氏、 小嵐級八郎氏、東郷隆氏、今井泉氏、山口洋子氏 はこの罠にはまった作家達である。 姫野カオルコ氏が候補作になると予想する今回、彼女にとっては 事実上最後のチャンスである。 さて、文藝春秋社第3の候補作を考えるならそれは 城野隆氏の 「一枚摺屋」 になるであろう。
城野 隆
一枚摺屋
最終選考委員の平岩弓枝氏が前回の選評において時代小説の衰退に憂えているのだ。 こういう「お神」の声を2次選考委員は無視するわけにはいかない。 しかしながら、聞き覚えのない彼がなぜという疑問が生じる。無理もないだろう。 その答えに次のように応える事ができるだろう。 132回直木賞候補  山本兼一  「火天の城」 132回直木賞候補  岩井三四二 「十楽の夢」 120回直木賞候補  横山秀夫  「陰の季節」 この3人の作家に共通するのは、松本清張賞受賞作家である点だ。 松本清張賞の対象は「ジャンルを問わぬ良質の長篇エンターテインメント」である。 受賞歴で直木賞候補者・候補作を推理するのはしばしばあるパターンであるが、 この松本賞、実は文藝春秋社による文学賞なのである。その証拠に 山本氏と横山氏の2人は松本賞受賞作品がそのまま直木賞候補作となっている。 これに時代小説衰退を憂える選考委員の選評を読むと 城野隆氏はそのままダイレクトに直木賞候補に名乗りをあげるのに十分だ。 つまり、松本清張賞は直木賞候補作になるためのステップレースであるといえる。 つづく....
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takam16の本の棚
です。バーチャルですが......

とうとう、我が大阪にも雪合戦ができる下地が整った。
朝起きたらそこは雪国だった。
今日が終業式の子供は2重の喜びだろうが、
こちらとしては早く家を出ねばならず、しかも雪道に不慣れである。
スキーやスケートといった滑りモノを怖がりのせいで不得意としている
takam16にとって、試練の1日が今始まろうとしている....(←アホ)
(AM 5:20)
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直木賞といえば、文藝春秋社を母体にした文学賞である。
その名が世間によく知られる理由は133回という歴史と伝統に支えられた
からと言っていいだろう。
一方、文藝春秋社とは週刊誌や文庫、新書等でライバル関係にある出版社
の1つに新潮社がある。
その新潮社も文藝春秋の文学賞の最右翼である直木賞に対抗したかどうかは
定かではないものの、かなりこの伝統ある賞を意識し、ライバル視していると
思われる文学賞を持っている。それが
山本周五郎賞である。

しかしながら、認知度の点では直木賞の足元にも及ばないようだ。
なぜなら、山本賞はまだ18年の歴史しか持たないからだ。
かたや60年以上の歴史を誇る直木賞。
本に明るくない友人などに山本賞の存在について尋ねるのだが、
どうも切れ味良い答えは返ってこない。
一方の直木賞なら「あ~、ハイハイ。」である。

山本周五郎賞と直木三十五賞、大きな違いは、直木賞が1年に2度あるのに対し、
山本賞は、年に1度の賞である。そのうえで、

・小説が対象
・小説以外が選ばれることもある
・対象期間は前年4月~本年3月
・発表は5月

直木賞は大衆文学が対象なため、山本賞の方が期間も範囲も広い。

ここでちょっと山本賞受賞作家の顔ぶれを見てみよう。

18回 荻原浩   「明日の記憶」                            光文社
    垣根涼介  「君たちに明日はない」                    新潮社
17回 熊谷達也  「邂逅の森」                              文藝春秋
16回 京極夏彦  「覘き小平次」                            中央公論新社
15回 吉田修一  「パレード」                              幻冬舎
    江國香織   「泳ぐのに、安全でも適切でもありません 」 集英社
14回 中山可穂   「白い薔薇の淵まで」                      集英社
    乙川優三郎  「五年の梅」                              新潮社
13回 岩井志麻子 「ぼっけえ、きょうてえ」                  角川書店
12回 重松清     「エイジ」                                 朝日新聞社
11回 梁石日     「血と骨」                                幻冬舎
10回 真保裕一    「奪取」                                  講談社
    篠田節子    「ゴサインタン」                          双葉社
 9回 天童荒太    「家族狩り」                              新潮社
 8回 帚木蓬生    「閉鎖病棟」                             新潮社
 7回 久世光彦    「一九三四年冬 乱歩」                    集英社 
 6回 宮部みゆき  「火車」                                  双葉社
 5回 船戸与一    「砂のクロニクル」                        毎日新聞社
 4回 稲見一良    「ダック・コール」                        早川書房
 3回 佐々木譲    「エトロフ発緊急電」                       新潮社
 2回 吉本ばなな  「TUGUMI」                          中央公論社
 1回 山田太一    「異人たちとの夏」                         新潮社         


長くなるのでここには示さないが、候補作品は4~6作品。身内に優しいのは
文藝春秋社の直木賞と同様で、18年間新潮社の作品が候補を外すことはない。
ただ、受賞傾向が直木賞の場合、はっきりと身内に偏りがちである点において、
山本賞は他出版社の受賞も多い。光文社や双葉社で受賞できるなど、直木賞には
考えられないことである。よって、おいしいデータが揃わない。


赤字は、山本賞、直木賞の両方を受賞した作家である。
22人中、8人、つまり36.3%が山本賞と直木賞の2つを獲っている。
数字を見る限り、40%弱の確率で両賞を受賞できるのだ。

しかしながら、ここで大切なことがある。
どちらの賞を先に獲ったかという問題だ。
賞レースというものは他のさまざまな新人賞や文学賞の受賞を経て、結果的に
山本賞、直木賞候補作にまでこぎつける場合がほとんどである。

各賞の受賞という経験を引っさげて山本賞、直木賞候補となり、最終的に受賞する
ということは、ライバル関係といわれる両賞にとっては先に相手が賞を与え、あとで
自分が賞を与えた方が、知らない者が見たときに自分の賞の価値が上であることを
誇示することができるのだ。

そこで調べてみると、上の赤字の8名の山本賞&直木賞受賞作家は

みんな、山本賞 → 直木賞 の順序を経ているのだ。みんなである。100%だ。


そして、以下のようなパターンがしばしばある。
例えば江國香織氏の場合、

 10回山本賞 候補止まり 「落下する夕方」             角川書店          
 13回山本賞 候補止まり 「神様のボート」             新潮社          
 15回山本賞 見事受賞  「泳ぐのに、安全でも適切でもありません」 集英社 
127回直木賞 候補止まり 「泳ぐのに、安全でも適切でもありません」 集英社
130回直木賞 見事受賞  「号泣する準備はできていた」       新潮社

このデータでは候補作も含めて山本賞のあと、直木賞という順番だが、
実際は山本賞候補、直木賞候補と交互に選ばれながらという形が多い。
また先に直木賞候補になり、あとで山本賞候補ということももちろんある。
しかしここで重要なことは、あくまでも山本賞を受賞して初めて直木賞の受賞
の道が開けるわけで、直木賞を受賞した作家がのちに山本賞候補や受賞者となることは、
山本賞が始まって以来、一度もないということである。

そしてより細かく見ていくと、
15回に山本賞を受賞した「泳ぐのに、安全でも適切でもありません」
が、直木賞においても候補作になりながら、受賞できなかったという点に注目したい。
江國 香織
泳ぐのに、安全でも適切でもありません
山本賞で受賞した作品が、直木賞で候補作止まりに終わる例としては4例あるが、まずは3例 江國香織  「泳ぐのに、安全でも適切でもありません」 集英社 梁石日   「血と骨」                幻冬舎 久世光彦  「一九三四年冬 乱歩」          集英社 これらの場合、最終選考委員の常套文句は決まって 「この著者の作品は他で賞を獲っているから今回は....」 である。ならば最初から候補作に入れるのは筋違いだろうと思うのだが。 ところがこの文句に照らし合わせるとどうしても気に入らないのが、 熊谷達也氏が「邂逅の森」で山本賞を受賞したにもかかわらず、 直木賞を受賞したことである。これが先の3例プラス1例の合計4例だ。 その理由は明白だ。なぜなら、「邂逅の森」は文藝春秋社による作品なのだ。 ライバルが山本賞を与えてくれたのだ。ウチが与えることでW受賞という初の快挙を 成し遂げることができるのだ。受賞させるのは当然だと考えるべきだ。
熊谷 達也
邂逅の森
こういうパターンをここでは「ごっつぁん受賞」と言おう。苦労せずとも獲れた直木賞。 新潮社さん、ウチの作品を選んでくれてありがとう!! ということだ。 ただし、「邂逅の森」も含め、熊谷氏の作品はどれも力がみなぎり、もしもここで直木賞を 獲れずとも、別の機会に直木賞は獲れたとフォローしておく。 ライバル関係ゆえに、一方が歩み寄れば他方も準ずる。そんな例が他にも見られる。 東郷隆氏は11回山本賞において文藝春秋社の作品で候補作となった。受賞までとはいかなかった ものの、そのお返しなのか、直後の119回直木賞では、今度は新潮社の作品を候補作にさせた。 こちらも受賞にはいたらなかった。これはいわゆる取引か? 8回山本賞では高橋直樹氏が文藝春秋社の作品で候補作に選ばれた。それではということで、 直後の114回直木賞では文藝春秋社の雑誌連載より初選出された。両方とも受賞はできな かったが、 「認めてくれてありがとう。」という心が見え隠れする。 その一方で、「ふざけるな受賞」というのがある。例えば、 7回山本賞で海老沢泰久氏は文藝春秋社刊の「帰郷」において、候補作に選ばれながら受賞を逃した。 すると、直後の111回直木賞では同じく「帰郷」で直木賞を受賞した。 もしも山本賞で「帰郷」が受賞していれば、「ごっつぁん受賞」により、すんなり事は運んだのだ。 山本賞に対し、格が違うのだと言わんばかりの受賞に感じた。
海老沢 泰久
帰郷
また、直木賞候補に選ばれながら受賞を逃した作品に山本賞が賞を与える場合がある。 京極夏彦  「覘き小平次」  中央公論新社 篠田節子  「ゴサインタン」 双葉社 宮部みゆき 「火車」     双葉社 この場合、宮部みゆき氏以外の2人は直後、あるいはその次の直木賞において別の作品で受賞した。 もしも山本賞を受賞していなければ、どのような結果になったのだろう..... 直木賞側としては、山本賞はどうしても自分より格下に置きたがる傾向がある。 上記の山本賞受賞者22名のうち14名はのちに直木賞作家にはなれなかったが、 14名中、 中山可穂、 岩井志麻子、梁石日、真保裕一、天童荒太、久世光彦の6名は のちに直木賞候補となったものの、選考委員のお気に召されず、 残りの8名はお呼びがかからずである。 ただし、吉田修一氏に関しては、文藝春秋社の2枚看板の1つ、純文学新人作家が対象の芥川賞を 受賞しており、芥川賞受賞作家は直木賞受賞作家にはならないため、彼は省かれる。 また、のちに直木賞を受賞した8名のうち、 江國香織 乙川優三郎 重松清 宮部みゆきの4名は山本賞直後の直木賞受賞を見送られている。 そして改めて直木賞受賞という流れになっている。 山本賞の受賞を認めたくないという裏心に見て取れる。 直木賞側にとっては、山本賞は目の上のたんこぶの存在のようだ。 よって、そうは簡単に直木賞は受賞させてくれない。 しかし、山本賞側が歩み寄ってきた場合、直木賞側はそれを素直に受け入れる。 また、山本賞側も自分達は直木賞の受賞ステップの1つであると位置づけていると 考えざるを得ない。直木賞を受賞した場合、山本賞はその直木賞作家をのちに候補にも 入れないのだから。 以上より、 134回直木賞候補作家について考えるならば、 18回山本賞受賞作家の荻原浩氏が今回の直木賞候補作に選ばれる可能性がある。 「あの日にドライブ」は直木賞とは縁の遠い光文社からの出版だ。 よって、集英社刊の「さよならバースディ」が予想されるが、 直木賞側としては、山本賞を事実上格下と見ている。そして、荻原浩氏はこれまでに 直木賞候補に選ばれた経験はない。そのため、山本賞を獲ったから直木賞をというの では、直木賞側のプライドが許さない。候補作の余地は残すが、受賞となると問題だ。 見送りが無難であろう。 同じく18回山本賞作家の垣根涼介氏は今回は対象期間に作品の発表 がなかった。
荻原 浩
あの日にドライブ
 
荻原 浩
さよならバースディ
ちなみに過去の山本賞候補止まりの作家で今回直木賞候補になりそうなのは 伊坂幸太郎 梨木香歩 の2人。 勝手な候補作予想はほぼ絞られた。 <謝辞> 12月に入り休みがなく、会社での泊り込みもしばしばで、 また年末年始も働く予定ですので、更新が急激に滞っております。 皆様のところへの訪問もままならず、どうもすみません。
 

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です。バーチャルですが......

直木賞話の前に、takam16はフットボール関連の話は正直強い。
よって先日のワールドカップ組み合わせ抽選について
少し述べ、それから本題に入る。

12月10日早朝、ワールドカップ組み合わせ抽選が行われた。
日本代表はシード国がブラジルであるF組に入った。


ブラジル、クロアチア、オーストラリア、日本


イングランド代表監督のズベン・ゴラン・エリクソンは抽選日前日のBBCラジオの
インタビューにおいて、最も避けたい相手として、オランダ、そしてオーストラリア
を挙げた。結果、エリクソン氏の避けるべき2カ国は一方はグループ中最も厳しいと
言われているアルゼンチンがシード国のC組、そしてブラジルがシード国であり、同時に
日本代表のいるF組に入った。

オーストラリアを率いるフース・ヒディング代表監督は現在世界最高峰の指導者の1人である。
そしてオーストラリア代表のメンバーのほとんどはイングランドのプレミアリーグに所属
する選手、よって強化試合はヨーロッパを中心に行っているし、今後もその方針だ。
つまりはヨーロッパのチームと同等に扱う必要がある。

クロアチアは98年のワールドカップで3位という好成績をあげたものの、90年代初期の
戦争のため、その時に子供だった選手に満足な若手育成ができなかった影響から、
しばらく低迷期が続いたが、ようやくその苦境を脱し、8年前のスター選手に頼るスタイル
から、チームとして戦うスタイルに変容した。その意味では前回のイメージを一度リセット
した方がよい。
また、オーストラリアにはクロアチア移民が多く、オーストラリアの選手の中にも
クロアチア移民選手が多くいる。両国はその意味では良好な関係である。
チーム成績の特徴として言えることは、強い者に対等に戦える力がある反面、
弱い者にも対等に戦ってしまうところがある。


そのため、初戦にブラジルがクロアチアに勝つという前提、そして日本が
オーストラリアに勝つという前提の上での報道にはもっと懐疑的であってよい。
さもなくば、日本は98年の二の舞だ。


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直木賞の選考過程

①関係者350人によるアンケート調査
↓
②文藝春秋社の社員数十名が下読み&議論し、評価し、候補作決定
↓
③海千山千の選考委員による2時間の議論・話し合いで受賞作決定



「連続入選」。
高校野球やワールドカップ等でいうなら「3年連続」「2大会連続」
ということであり、トーナメントやリーグ戦といった厳しい戦いを続けて勝ち抜いてきた
のだ。実力があることに相違はない。

ここでいう「連続入選」とは、直木賞の連続入選である。
直木賞は年2回行われる文学賞である。

前期直木賞は1月発表、対象期間は前年6月~11月発行の出版物。
後期直木賞は7月発表、対象期間は前年12月~本年5月発行の出版物。

以前は文芸誌等から選出されることも多々あり、その場合は対象期間が少し変わるのだが、
近年は出版物からの選出ばかりである。
連続入選を果たすということは、年間に最低2作品を期間に照らし合わせて発表し、
かつ主催者の文藝春秋社(正式には財団法人日本文学振興会)の選考会でお気に目さなければ
ならない。
年間非常に多くの文学作品が発表されるわけで、その中で連続して候補作に選ばれることは
やはり無視できないことである。

しかしながら、いくら連続入選したからといって、直木賞を受賞しないことには、
そのうち候補作にノミネートされたことすら忘れられる。
人の記憶力などしれたものだ。
よって今回は連続入選することが、直木賞受賞に結びつくのかを研究する。



過去の連続入選者とその作家が直木賞を受賞したかどうかを以下に列挙した。

伊坂幸太郎 → ×
石田衣良  → ○
奥田英朗  → △
松井今朝子 → ×
乙川優三郎 → ○
田口ランディ→ × 
重松清   → ○
真保裕一  → ×
篠田節子  → △
黒川博行  → ×
宮部みゆき → △ (連続が2度ある)
池宮彰一郎 → ×
坂東眞砂子 → △
中村彰彦  → ○
内海隆一郎 → ×
高橋義夫  → ○
宮城谷昌光 → ○
清水義範  → ×
古川薫   → △
笹倉明   → ○
堀和久   → ×
藤堂志津子 → ○ 
西木正明  → ○
三浦浩   → ×
逢坂剛   → ○
山崎光夫  → ×

(94回~133回までの20年間に限定) 
注)宮部みゆきは2度の「連続入選」を経験しているがここでは1と数える
注)篠田節子、堀和久、山崎光夫は実際は3連続であるが、ここでは最初の連続
 だけを示している。3連続についてはあとで示す



連続入選の該当数26個。
○はその連続入選により受賞したことを意味し、
△は連続入選したがその時は受賞できず、のちに受賞したということ、
×は連続入選したがその時は受賞できず、のちの受賞もないということ
である。

○は10個あり、その確率は 40%
△は 5個あり、その確率は 19%
×は11個あり、その確率は 44%

最終的に直木賞を受賞と定義しても、確率は 57、7%
あまり際立った数字は見当たらない。

そこで連続入選に該当する作品の出版社からデータを出してみた。
ここでは連続入選の結果受賞する場合と、連続入選では受賞を外すものちに選ばれた
場合をあわせる。つまりは最終的に直木賞を受賞する確率である。

連続入選のパターンが

文藝春秋 → 文藝春秋 の場合、受賞率は  100% (該当3個中)
他出版社 → 文藝春秋 の場合、受賞率は 77、8% (該当9個中)
文藝春秋 → 他出版社 の場合、受賞率は 71、4% (該当7個中)
他出版社 → 他出版社 の場合、受賞率は 30、8% (該当13個中)
他出版社が同じ出版社の場合、  受賞率は   25% (該当4個中)

相変わらず、文藝春秋には明らかに有利に働く結果が出ている。
文藝春秋社での入選が連続入選のいずれかに入れば、7割以上の確率で
直木賞作家になることができる。

次に、この連続入選という機会が、入選の何回目に訪れているかを調べた。
例えば、石田衣良氏の場合は

初入選     126回  集英社  「娼年」
2回ぶり2度目 128回  文藝春秋 「骨音」
2回連続3度目 129回  新潮社  「4TEEN」 直木賞受賞

という具合にである。

初入選を①、2度目の入選を② というように以下に列挙する。

伊坂幸太郎 →× ②③  
石田衣良  →○ ②③ 
奥田英朗  →△ ②③
松井今朝子 →× ①②
乙川優三郎 →○ ③④
田口ランディ→× ①② 
重松清   →○ ②③
真保裕一  →× ①②
篠田節子  →△ ②③
黒川博行  →× ①②
宮部みゆき →△ ①② と ④⑤  
池宮彰一郎 →× ①②
坂東眞砂子 →△ ①②
中村彰彦  →○ ②③
内海隆一郎 →× ①②
高橋義夫  →○ ④⑤
宮城谷昌光 →○ ①②
清水義範  →× ①②
古川薫   →△ ⑧⑨
笹倉明   →○ ①②
堀和久   →× ①②
藤堂志津子 →○ ①②  
西木正明  →○ ③④
三浦浩   →× ③④
逢坂剛   →○ ①②
山崎光夫  →× ①②


①② では 40%
②③ では 83%
③④ では 50%

の確率で受賞できることがわかる。
①②の数字がイマイチなのは、時期尚早ということか。
②③、または③④と回を重ねたほうが受賞はしやすいというわけか。



ちなみに3連続、4連続で入選を果たした作家とその結果も紹介しておく。

篠田節子   ②文藝春秋   → ③双葉社  → ④集英社で受賞
堀和久    ①講談社    → ②文藝春秋 → ③講談社も落選
山崎光夫   ①講談社    → ②講談社  → ③文藝春秋も落選
林真理子   ①角川書店   → ②角川書店 → ③新潮社    → ④文藝春秋で受賞
高橋治    ①文藝春秋   → ②新潮社  → ③講談社で受賞
村松友視   ①角川書店   → ②角川書店 → ③角川書店で受賞
胡桃沢耕史  ②サンケイ新聞 → ③徳間書店 → ④文藝春秋で受賞
連城三紀彦  ②講談社    → ③新潮社  → ④新潮社 → ⑤新潮社で受賞
中山千夏   ①文藝春秋   → ②文藝春秋 → ③文藝春秋も落選

上の3人は「連続入選」でも登場しており、そのデータはこの「3連続入選」
のデータの一部であることを補足しておく。また2人以外については
過去20年間より前の話であり、3連続や4連続は今となってはほぼ出ない
ため、このデータは現在ではあまり参考にはならない。

では、以上の「連続入選」をふまえて、その可能性のある作家を列挙する。

まずは前回ノミネートされた作家の中からは

絲山秋子   角川書店  「ニート」        2回連続2度目
恩田陸    集英社   「蒲公英草紙―常野物語」 2回連続2度目
       朝日新聞社 「ネクロポリス」     
三崎亜記   集英社   「バスジャック」     2回連続2度目
古川日出男  集英社   「ロックンロール七部作」 2回連続2度目

また、過去の連続入選経験者からは

伊坂幸太郎  文藝春秋  「死神の精度」      2回ぶり4度目
       講談社   「魔王」     
黒川博行   幻冬舎   「暗礁」         8回ぶり5度目


この中で、受賞に近そうな作家を考えてみる。
まずは古川日出男氏である。
彼の初入選作は「ベルガ、吠えないのか?」。文藝春秋社である。
連続入選に文藝春秋が入れば、受賞率は7割を超える。

しかしながら、少し思い出してもらいたい。文芸春秋社で初入選をした場合は、
他の出版社で受賞する可能性は非常に少なく、しかも集英社ではゼロなのだ。
よって、古川氏は入選の可能性は十分あるものの、受賞となると少し手が出せない。
古川 日出男
ロックンロール七部作
次に、三崎亜記氏「バスジャック」は集英社。前回も集英社より「となり町戦争」であった。 実は初入選が集英社である場合、のちの直木賞受賞率は41.6%である。 そのため、「バスジャック」が出版第2作目という彼女の経験値の低さがネック である。ただし、その壁を乗り越えて候補作に選ばれるのであればマークは必要だ。
三崎 亜記
バスジャック
恩田陸氏は現在、上昇気流に乗りそうな作家の1人だ。 もし候補に選ばれた場合の対象作は「ネクロポリス」(朝日新聞社)と 「蒲公英草紙―常野物語」(集英社)なのだが、朝日新聞社での入選は今回は期待薄だと 思っている。直木賞候補作には出版社の壁も乗り越える必要があり、当社での選出の 壁は高いといわざるを得ない。よって「蒲公英草紙―常野物語」(集英社)に可能性 があるのだが、これだと集英社より古川氏、三崎氏、恩田氏と3人も選ばれることになり、 このような例は過去にない。よって、受賞以前に候補作になれるかどうかがまずは問題である。 絲山秋子氏。 「逃亡くそたわけ」(中央公論新社)の前回、そして「ニート」(角川書店)の今回。 連続入選のチャンスはもちろんある。彼女は実績を持っている。川端康成文学賞や、 芸術選奨文部科学大臣新人賞、文学界新人賞といった底力を持った賞を獲っている。 また、中央公論新社からの初選出では京極夏彦氏がいる。そして彼は角川書店より 直木賞作家となった。ただし連続入選ではなかったし、 連続入選に文藝春秋社が含まれていないのはマイナス材料である。 それは三崎亜紀氏も同じであるが、現状ではグレーゾーンだろう。候補作となった 時に他との比較となろう。
絲山 秋子
ニート
連続入選経験者は2人。 まずは黒川博行氏。 しかし残念ながら、文藝春秋社より2度候補作に選ばれながら落ちるという屈辱を 味わっており、この場合はのちの受賞は非常に困難だ。消しであろう。 そして、伊坂幸太郎氏。 彼が直木賞候補の視点から見ると今回のNO1である。 2度目、3度目の連続入選経験者は、83%の確率で直木賞作家になる。 あとは今回受賞するか、次回以降に受賞するかの問題だ。 ただこの連続入選には残念ながら文藝春秋社はからんでいない。また、 彼の初入選は新潮社だった。この新潮社からの初入選者に文藝春秋社は他社以上に厳しい。 20年間で3人いるが、うち2人は初入選でいきなりの受賞。あと1人も角川書店 での受賞だ。 この厳しさの原因に直木賞のライバルかと思われる新潮社主催の山本周五郎賞の 存在があることを前回述べている。 次回、この山本周五郎賞をからめた直木賞にまつわる話をさせていただくことにしよう。 結局は、以上に挙げた6人のダメダメデータばかり出してしまった。 深く追求しすぎると、へそ曲がりな物言いになってしまうことを少し実感した。 また、中間報告でお知らせした直木賞候補作品に若干の変更がある。 それも次回語りたい。
 

takam16の本の棚
です。バーチャルですが......


 直木賞の選考過程を改めて確認しておこう。

①関係者350人によるアンケート調査
↓
②文藝春秋社の社員数十名が下読み&議論し、評価し、候補作決定
↓
③海千山千の選考委員による2時間の議論・話し合いで受賞作決定



takam16の直木賞候補作予想

作品名 作家名 出版社 選出回数
魔王 伊坂幸太郎 講談社 2回ぶり4度目
死神の精度 伊坂幸太郎 文藝春秋 2回ぶり4度目
蒲公英草紙―常野物語 恩田陸 集英社 2回連続2度目
ネクロポリス 恩田陸 朝日新聞社 2回連続2度目
ハルカ・エイティ 姫野カオルコ 文藝春秋 4回ぶり3度目
はなうた日和 山本幸久 集英社 初選出
凸凹デイズ 山本幸久 文藝春秋 初選出
× こんちき あくじゃれ瓢六 諸田玲子 文藝春秋 8回ぶり2度目
おまけのこ 畠中恵 新潮社 初選出
沼地のある森を抜けて 梨木香歩 新潮社 初選出
× でいごの花の下に 池永陽 集英社 初選出
一枚摺屋 城野隆 文藝春秋 初選出
遠くて浅い海 ヒキタクニオ 文藝春秋 初選出
暗礁 黒川博行 幻冬舎 8回ぶり5度目
× 容疑者Xの献身 東野圭吾 文藝春秋 3回ぶり6度目
楽園の眠り 馳星周 徳間書店 4回ぶり5度目
女王様と私 歌野晶午 角川書店 初選出
× ニート 絲山秋子 角川書店 2回連続2度目
さよならバースディ 荻原浩 集英社 初選出
ポセイドンの涙 安東能明 幻冬舎 初選出
印の目安 ◎  ... 候補作濃厚 ▲  ... 可能性あり △  ... 一考の余地あり ×  ... 相対的に可能性低い 無印 ... 気になる程度 注  ... 同一作者のもう一方の作品に選出の可能性があり 「さらに、文藝春秋がいかに他社に冷たいかを表す資料を   次回用意したい。このデータはまさに驚愕である。」 で前回の記事を終えた。ご都合主義もいいところで、連載モノには お決まりの「先延ばし作戦」だ。1とか2とかいうものは決まって 記事のネタを意図的に増やす狙いがちゃっかりと含まれている。 それは書くネタが困った場合かもしれない。あるいは長すぎるから次回 につづくのかもしれない。読む者を繋ぎ止める手口かもしれない。 TV番組などでこのようなパターンに遭遇した時は、おおいに思案してもらいたい。 え?当ブログはどれだって? それは○○○○○である。 (乾いた笑い) さて、肝心要の他社に冷たいかを表す資料だ。 文藝春秋社以外で受賞した作家の初選出の出版社はどこか!?である。 130回 京極夏彦  角川書店    ← 中央公論新社 130回 江國香織  新潮社     ← 集英社 129回 石田衣良  新潮社     ← 集英社 126回 唯川恵   マガジンハウス ← ☆ 124回 重松清   新潮社     ← 講談社 123回 船戸与一  集英社     ← ☆ 123回 金城一紀  講談社     ← ☆ 121回 佐藤賢一  集英社     ← ☆ 121回 桐野夏生  講談社     ← 講談社 120回 宮部みゆき 朝日新聞社   ← 出版芸術社 117回 篠田節子  集英社     ← 毎日新聞社 117回 浅田次郎  集英社     ← 講談社 116回 坂東眞砂子 新潮社     ← マガジンハウス 115回 乃南アサ  新潮社     ← ☆ 114回 小池真理子 早川書房    ← ☆ 114回 藤原伊織  講談社     ← ☆ 110回 佐藤雅美  講談社     ← ☆ 110回 大沢在昌  読売新聞社   ← ☆ 109回 高村薫   早川書房    ← ☆ 108回 出久根達郎 講談社     ← 講談社 105回 宮城谷昌光 海越出版社   ← 海越出版社 105回 芦原すなお 河出書房新社  ← ☆ 103回 泡坂妻夫  新潮社     ← 幻影城 102回 原尞    早川書房    ← ☆ 101回 ねじめ正一 新潮社     ← ☆ 100回 杉本章子  新人物往来社  ← 新人物往来社  99回 景山民夫  角川書店    ← 新潮社  98回 阿部牧郎  講談社     ← 文藝春秋  97回 山田詠美  角川書店    ← ☆  96回 常盤新平  講談社     ← ☆  95回 皆川博子  新潮社     ← 講談社  94回 森田誠吾  新潮社     ← 新潮社 (過去20年分)   右が初選出された作品の出版社、左が受賞時の出版社。 文藝春秋社以外から初選出した作品に該当する作家が 文藝春秋社から直木賞作家になることは過去20年間ではたったの 1度しかないのである。 つまり、初めて直木賞候補作になった作家が文藝春秋社以外で選ばれた 場合は、文藝春秋社は原則、知らんぷりということだ。 これは裏を返せば、予想・推理する側にとっては非常に絞り込みやすい データであり、個人的には大変ありがたい限りである。 このデータを基に例えば、伊坂幸太郎氏の受賞についてデータにあてはめると、 伊坂幸太郎の選出歴 129回 新潮社 「重力ピエロ」 131回 講談社 「チルドレン」 132回 角川書店「グラスホッパー」 134回 ???  「死神の精度」or 「魔王」 「死神の精度」は文藝春秋、一方の「魔王」は講談社。 初選出は新潮社。 もし「死神の精度」で選出されると、文藝春秋ゆえの不利を被る。 「魔王」で選出された方が可能性は高くなるかもしれないが、そうなると 次に考えねばならないのは、新潮社から初選出された作家がいずれ直木賞作家 になる確率がどの程度あるのかに興味がわく。 なぜ、新潮社の初選出に興味深々であるかというのは、伊坂氏の問題という よりは、新潮社という出版社の問題である。 実はこの新潮社、文藝春秋社主催の直木賞への対抗というと語弊がありそうだが、 同じ位置づけの受賞を催している。 「山本周五郎賞」。 この賞と直木賞との関連データは後日示すが、新潮社は少なからず文藝春秋 と文学の点において両雄並び立たずの関係である。業界ネタを言わしてもらえれば、 書店向けの書籍ネット販売においては実のところ両社は共有している。 しかし、週刊文春と週刊新潮、文春文庫と新潮文庫といろいろ比較されやすい 関係だ。この山本周五郎氏(故人)に関しても、実はかつて直木賞受賞作家になった ものの、それを辞退した経緯がある。 決して仲が悪い同士ではないのだが、だからといって、おてて繋いでランランラン というわけにもいかないのだ。 では、直木賞初選出が新潮社であった場合、将来直木賞作家になれる確率を示す。 過去20年間、新潮社初選出該当数は全部で17。 うち初選出で直木賞になったのは、 乃南アサ氏、ねじめ正一氏 の2人。 また景山民夫氏は初選出ののちに角川書店で直木賞を受賞。 するとあとの14はその後選ばれもしないか、選ばれても候補作の域を出ない ということになる。 初選出が新潮社の場合、直木賞作家になれない確率 82、3% (該当は17つ) 他の出版社も確認しておく。すべて過去20年間である。 初選出が角川書店の場合  同じく 85.7 % (該当は7つ) 初選出が幻冬舎の場合   同じく 100 %  (該当は3つのみ) 初選出が集英社の場合   同じく 58.3%  (該当は12) 初選出が講談社の場合   同じく 33.3% (該当は18) ちなみに 初選出が文藝春秋の場合  同じく 43.8% (該当は32)  伊坂幸太郎氏が直木賞作家になるにはベルリンの壁なみの厚い壁があるのだ。 こうなってくると、他の作家に色気が出てしまう。 姫野カオルコ氏に◎というのはちょっと思い切った印なのだが、 彼女の選出歴を見ると 117回 文藝春秋 「受難」 130回 角川書店 「ツ、イ、ラ、ク」 134回 ??? 文藝春秋社主催の直木賞が候補作として文藝春秋から出す場合、 それは2度までというデータがある。つまり、姫野氏の今作品は 2年半ぶりの作品。しかもそれは文藝春秋から出版された。 あまり本作品が話題になっていないのは宣伝効果の問題もあるかもしれないが、 データから考えると、タイミングは今回にある。ただし、「ハルカ・エイティ」 で選出され、受賞できなかった場合、文藝春秋はもう面倒を見ないだろう。 その意味では危険な◎である。個人的には今回は候補作を見送ってほしいとの 願いも実はある。 諸田玲子氏も選出されれば文藝春秋より2度目となる。 つまり受賞できるかできないかの瀬戸際である。 一方、東野圭吾氏、馳星周氏、黒川博行氏はみな、文藝春秋より2度選ばれながら、 受賞を逃している作家達だ。予想には入れておいたし、実績もあり選ばれる余地は あるが受賞にこぎつけるかどうかといえば、正直疑わしい。 そして新潮社から初選出を予想している畠中恵氏と梨木香歩氏。 今が旬のお二人だが、選出される条件がよくない。新潮社からの選出がよくない。 新潮社は、あくまでも何度も他の出版社から選出された結果として受賞がかなう 可能性が高いということを念頭に入れておかねばならないだろう。 話は伊坂幸太郎氏の選出歴に戻る。 よく見ると、131回と132回に連続入選している。 次回、この連続入選がどれほどのパワーを占めるのか、そして 連続入選は受賞に直結するのかを検証する。 なぜなら、11月末の締め切り直前に有望な若手作家の駆け込み出版 があったからだ。  三崎亜記氏、古川日出男氏である。 前回も2人は入選している。どうやら調査が必要だ。
 

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 [はじめに]

自宅でのキーボード、マウスの入力に障害があるため、
職場からの共有PCより、隙をうかがって記事を発信しております。
記事はブログを始めた時から一貫してウィンドウズのメモ帳を通じて入力し、
フロッピーディスク等に保存したものをアメブロ記事作成欄にコピー&ペースト
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コメントへの返信や他ブログ様への訪問は現在不可能なため、そして
文章のチェックがうまくできないために誤字・脱字・構成上の欠陥もたくさん
あるかもしれません。
その点、ご了承いただきたく存じます。

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直木賞の選考過程を改めて確認しておこう。

①関係者350人によるアンケート調査
↓
②文藝春秋社の社員数十名が下読み&議論し、評価し、候補作決定
↓
③海千山千の選考委員による2時間の議論・話し合いで受賞作決定



takam16の直木賞候補作予想

作品名 作家名 出版社 選出回数
魔王 伊坂幸太郎 講談社 2回ぶり4度目
死神の精度 伊坂幸太郎 文藝春秋 2回ぶり4度目
蒲公英草紙―常野物語 恩田陸 集英社 2回連続2度目
ネクロポリス 恩田陸 朝日新聞社 2回連続2度目
ハルカ・エイティ 姫野カオルコ 文藝春秋 4回ぶり3度目
はなうた日和 山本幸久 集英社 初選出
凸凹デイズ 山本幸久 文藝春秋 初選出
× こんちき あくじゃれ瓢六 諸田玲子 文藝春秋 8回ぶり2度目
おまけのこ 畠中恵 新潮社 初選出
沼地のある森を抜けて 梨木香歩 新潮社 初選出
× でいごの花の下に 池永陽 集英社 初選出
一枚摺屋 城野隆 文藝春秋 初選出
遠くて浅い海 ヒキタクニオ 文藝春秋 初選出
暗礁 黒川博行 幻冬舎 8回ぶり5度目
× 容疑者Xの献身 東野圭吾 文藝春秋 3回ぶり6度目
楽園の眠り 馳星周 徳間書店 4回ぶり5度目
女王様と私 歌野晶午 角川書店 初選出
× ニート 絲山秋子 角川書店 2回連続2度目
さよならバースディ 荻原浩 集英社 初選出
ポセイドンの涙 安東能明 幻冬舎 初選出
印の目安 ◎  ... 候補作濃厚 ▲  ... 可能性あり △  ... 一考の余地あり ×  ... 相対的に可能性低い 無印 ... 気になる程度 注  ... 同一作者のもう一方の作品に選出の可能性があり 前回の記事 において、次期直木賞の候補に 挙がりそうな20作品をこちらで勝手に選出した。 もちろん期限は11月30日までであり、末に新たな作品が出版されることは十分予想される。 予想の変更・加筆・修正も行わねばならない事態も起きうるだろう。 あくまでも参考程度の軽い気持ちで読んでいただければ幸いである。 これより以降は表を元に話を進めていく次第である。 見る限り、初選出なる作品が2分の1も占めている。すると、大いに勘に頼った 予想だなと言う意見があってしかるべきだ。 よって、候補作になりえる条件のようなものはあるのかというのが 今日のお題である。 134回直木賞の定義を確認する。 ・2005年6月~11月の期間中に新聞・雑誌・書籍にて発表された作品 ・ジャンルは大衆文学やエンターテインメント 2番目をもう少し噛み砕くなら、「読者に向けて書かれた作品」と言えるだろう。 一方で別路線の芥川賞の候補対象は純文学である。 純文学を噛み砕くなら、「作者が書きたいように書いた作品」と 位置づけるのがよいだろう。 つまり、どのように書いたら読者を楽しませることができるか、読者の心をとりこに するか、その視点で書かれていることが直木賞候補作には重要なのである。 次に、直木賞は最終選考委員達いわく、「新人作家のための賞」である。 しかし、新人とはいえ、デビュー作というわけにもいくまい。 そこで数作品かは商業出版されていることが原則である。 注)芥川賞は商業出版経験がなくとも候補作に選ばれる。   これが本当の新人作家のための賞!? または選ばれた作品が初の商業出版作であってもその作品が別の文学賞を 受賞していたり、候補作となっていることがポイントである。 例えば、表の6、7段目の山本幸久氏の作品を追ってみると、 2003年12月 「笑う招き猫」   集英社   ☆小説すばる新人賞 2005年7月  「はなうた日和」  集英社   2005年10月 「 凸凹デイズ 」  文藝春秋 2005年11月 「 幸福ロケット 」 ポプラ社 と出版されている。ポイントは「小説すばる新人賞」。 直木賞候補作となる方法のひとつに文学新人賞受賞の肩書きを持つ作家が非常に多い。 その最右翼が「小説すばる新人賞(主催は集英社)」である。 過去には 三崎亜記 熊谷達也 荻原浩 佐藤賢一 村山由佳 篠田節子 池永陽 と言った作家が受賞している。挙げた作家は池永陽、荻原浩以外は皆、 のちに直木賞候補となっており、実際に直木賞作家となった。 表に荻原浩や池永陽の名が入っている理由の1つはこれである。 「吉川英治文学新人賞受賞」受賞作家も、のちに直木賞候補に選ばれやすい。 恩田陸 伊坂幸太郎 福井晴敏 諸田玲子 宇江佐真理 山本文緒 真保裕一 浅田次郎 馳星周 宮部みゆき など見知った名前の連続だ。彼らものちに直木賞候補となっている。 文学賞にもレベルやランクが存在する。多くがそれらのステップを乗り越え、 次のステップへとやってくる。 上の表の初選出でかつ印のついている作家・作品はその一定のステップを 経ている。 そういうステップレースのような文学賞や新人賞はこの他にも存在する。 話を山本幸久氏に戻すと、受賞したという前提で、彼の以下の著作の 中から次期直木賞候補の対象になるのは、下の3つ。 2003年12月 「笑う招き猫」   集英社   ☆小説すばる新人賞 2005年7月  「はなうた日和」  集英社   2005年10月 「 凸凹デイズ 」  文藝春秋 2005年11月 「 幸福ロケット 」 ポプラ社 まずポプラ社の「 幸福ロケット 」は消える。 ポプラ社からの選出経験例がないからである。 このように出版社という理由でお呼びのかからない作品は実は非常に多い。 よって、「はなうた日和」「凸凹デイズ 」の2作品のいずれかが 候補作にふさわしく、あとはどちらが候補になるかは一次、二次選考委員の問題である。 自身の予想が◎や▲ではなく、△なのは、選ばれるには山本氏はやや経験不足 の感が否めないからだ。 以前にもお話したが、直木賞は主催が(財)日本文学振興会というところだが、これは 文藝春秋社が大きく関わっている。よって、文藝春秋の出版物が他社に優先される 傾向が確実に存在する。過去20年間で1度も候補作から外れたことはなく、 40回中(直木賞は1年に2度ある)半分以上は実際に文藝春秋作品が受賞している。 まあ身内に取らしたいという気持ちは人間の選ぶことだ。自然の成り行きであろう。 直木賞とはそういうものだと念頭に入れておけばよい。 そこで次に紹介するデータは、 「文藝春秋の出版作で直木賞を受賞した作家が初めて候補作に選ばれた時の出版社 はどこ?」 である。 しかしその前に、文藝春秋から初めて選ばれたとしても、その後お呼びがかからない 作家が多々いることは念頭に置いていただきたい。 その上で以下に示すと 133回 朱川湊人     文藝春秋 132回 角田光代     文藝春秋 131回 奥田英郎     講談社 131回 熊谷達也     ☆ 129回 村山由佳     ☆ 127回 乙川優三郎    講談社 126回 山本一力     ☆ 125回 藤田宜永     文藝春秋 124回 山本文緒     ☆ 122回 なかにし礼    文藝春秋 119回 車谷長吉     ☆ 113回 赤瀬川隼     文藝春秋 111回 中村彰彦     新人物往来社 111回 海老沢泰久    新潮社 109回 北原亞以子    ☆ 107回 伊集院静     ☆ 106回 高橋義夫     講談社 106回 高橋克彦     ☆ 104回 古川薫      雑誌「午後」 102回 星川清司     ☆ 101回 笹倉明      文藝春秋 100回 藤堂志津子    講談社  99回 西木正明     角川書店  97回 白石一郎     文藝春秋  94回 林真理子     角川書店 (データは過去20年間) 25例の文藝春秋社からの受賞作家(左)と、彼らが初選出された時の出版社(右) である。☆は、初選出でいきなりの受賞である。 ☆       9回 文藝春秋    7回 講談社     4回 角川書店    2回 新潮社     1回 新人物往来社  1回 雑誌「午後」  1回 また、☆の初選出でいきなり受賞した例を過去20年間、出版社別に表すと 文藝春秋    9回 講談社     4回 早川書房    3回 新潮社     2回 集英社     2回 角川書店    1回 マガジンハウス 1回 まずは他の出版社についてだが、 講談社が4回と多いのは、 こちら の記事 を参考にしてもらいたい。 注目は早川書房である。 20年間では過去3人。 114回 小池真理子 「花」 109回 高村薫   「マークスの山」 102回 原尞    「私が殺した少女」 早川書房での選出はこの3つしかないが、3つとも初選出でいきなりの直木賞受賞である。 しかし、最近10年近く選ばれていないのは気になる。 そして、やはり身内の文藝春秋。いきなりでの直木賞は9回でトップ。 初選出が文藝春秋で、受賞も文藝春秋の数も7回とトップ。 さらに、文藝春秋がいかに他社に冷たいかを表す資料を 次回用意したい。このデータはまさに驚愕である。
 

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 直木賞受賞予想なるものを、こちらの勝手でやっており、
主催者側としてはまことに迷惑な話なのであろうが、
まあ彼らがシロウトのうだうだ話の相手などするわけでもないだろうし、
どの出版社でもあれこれ本のことを星1つだの星2つだのと評価された
ところで、それもすべては織り込み済み。よって我がブログもたとえ
選考委員のメンバー達がご覧になったところで鼻で軽くあしらわれている
ことは容易に想像ができる。ブログとは無責任なものなのだ。
ただし、過去に出した統計や確率についてはとことん調べたつもりだ。
その辺りについてはわかってもらいたい。


さて、次回の134回直木賞の候補作対象は

2005年6月 ~ 2005年11月

までに発売・発表された作品ということになっている。
ジャンルは大衆文学、あるいはエンターテインメントというやつだ。
そしてこの賞の位置づけはあくまでも新人作家に与えられる賞
であり、これに関しては選考委員の選評などに耳にタコができる
ほど書き連ねている。
そしてこの賞を手に入れた方には生涯「作家」として食っていくこと
のできるチャンスが与えられるといって過言はないだろう。
夢の印税生活が現実になる第一歩である。しかしここからがまた大変だ。
連載を重ね、出版点数を増やし、さらに世間に自身の認知度を広める
ために一歩一歩努力を重ねなければ、出版の世界は非情なゆえに
売れなければすぐにでも抹殺されてしまいかねない。


候補作対象期間が過ぎれば、以下の過程を経て1月の中旬には
直木賞、そして芥川賞の受賞作が発表される予定である。


①関係者350人によるアンケート調査
↓
②文藝春秋社の社員数十名が下読み&議論し、評価し、候補作決定
↓
③海千山千の選考委員による2時間の議論・話し合いで受賞作決定

(「文学賞メッタ斬り」より参照)


③については、直木賞の選考委員はあらかじめ決められており、現段階で
9名が最終選考の役目を担う。その9名は

一人称を主語とする小説の選出はしばらくお断りだという宮城谷昌光 
「シモ」の描写には人一倍厳しい 渡辺淳一
時代小説の衰退に心から嘆き悲しんでいる 平岩弓枝
時代モノにはとことんうるさい津本陽  
男を助け女をくじく、林真理子 
直木賞の選評記事がいつも長すぎる井上ひさし
その他
阿刀田高 
五木寛之 
北方謙三 
(敬称略)

である。②において、候補作品がだいたい5~7作品選出されたのち、
彼らのもとへそれらの作品が届けられ、選考会当日までに各々の作品
の中で受賞にふさわしいものを選択し、
選考会当日に、受賞させたい作品に○をつける。
この○は1つとは限らない。ふさわしいと思えば2つでも3つでも
よいだろうし、どれもふさわしくないと思えば○を付けなくてもよい。

そして9名のうち、過半数以上、つまり○が5名以上付けば無事、受賞する
に値する作品というのが一般的な方法のようだ。もちろん多少の議論は
交わされるであろうし、大反対する選考委員もいるだろう。
○の数が過半数に満たない場合は、○の少ない作品を除外したうえで
再び投票、そして白熱した議論が展開されるらしい。

時期によって受賞作が2つあったり、あるいは該当作品なしとなるのは
○の数の多少に関係する。


あと14日で次期直木賞の候補対象は締め切られる(11月30日まで)。
よって、気は早いのだが、候補作として①そして②を通過する可能性の
ある作家と作品を以下に示す。
ただし、これはあくまでもtakam16が過去に選出された作品の傾向
より列挙するものであり、真の候補作の決定とはまったく別物であること
をご理解いただきたい。


作品名 作家名 出版社 選出回数
魔王 伊坂幸太郎 講談社 2回ぶり4度目
死神の精度 伊坂幸太郎 文藝春秋 2回ぶり4度目
蒲公英草紙―常野物語 恩田陸 集英社 2回連続2度目
ネクロポリス 恩田陸 朝日新聞社 2回連続2度目
ハルカ・エイティ 姫野カオルコ 文藝春秋 4回ぶり3度目
はなうた日和 山本幸久 集英社 初選出
凸凹デイズ 山本幸久 文藝春秋 初選出
× こんちき あくじゃれ瓢六 諸田玲子 文藝春秋 8回ぶり2度目
おまけのこ 畠中恵 新潮社 初選出
沼地のある森を抜けて 梨木香歩 新潮社 初選出
× でいごの花の下に 池永陽 集英社 初選出
一枚摺屋 城野隆 文藝春秋 初選出
遠くて浅い海 ヒキタクニオ 文藝春秋 初選出
暗礁 黒川博行 幻冬舎 8回ぶり5度目
× 容疑者Xの献身 東野圭吾 文藝春秋 3回ぶり6度目
楽園の眠り 馳星周 徳間書店 4回ぶり5度目
女王様と私 歌野晶午 角川書店 初選出
× ニート 絲山秋子 角川書店 2回連続2度目
さよならバースディ 荻原浩 集英社 初選出
ポセイドンの涙 安東能明 幻冬舎 初選出
印の目安 ○  ... 候補作濃厚 ▲  ... 可能性あり △  ... 一考の余地あり ×  ... 可能性低い 無印 ... 気になる程度 注  ... 同一作者のもう一方の作品に選出の可能性があり 実は、当初は伊坂幸太郎氏は賞の主催社である文藝春秋社の「死神の精度」で選出されると 豪語していたのであるが、当作品は昨年、日本推理作家協会賞を受賞しており、その作品が 別の形で商業出版されていることがわかった。そのため対象から除外される可能性があり、 「魔王」に○をつけた。 また、最近脚光を浴びつつある荻原浩氏であるが、10月に光文社から「あの日にドライブ」 という作品を出している。ところがこの光文社、直木賞にはまったく縁がないため、20作品の中に 入れることはできなかった。 近年、時代小説の衰退を危惧している選考委員がいる。そのため、時代小説を積極的に選ぶ 傾向が出ることになろう。そのためには 諸田玲子氏 畠中恵氏 城野隆氏 は貴重な逸材だ。 このように、最終選考委員の選評や発言というものは次回以降の選考過程を左右する ことが多々ある。そして、彼ら選考委員のご機嫌を悪くさせた、つまりは辛口 だらけの選評にさらされた作家を①や②の過程で選出させるというのは、けっこう勇気の いることかもしれない。そしてそれにあてはまる作家が2人ほど見つかった。 東野圭吾氏と宇江佐真理氏である。 前者は、著者の執筆における欠点を洗いざらい選評に書かれ、 後者は江戸期の時代考証の欠陥を指摘された。 東野圭吾氏については「容疑者Xの献身」を20作品の1つに一応挙げてはいるが、 候補作としての期待はしづらい。そして宇江佐氏は20作品にはあえて挙げなかった。 小説の発行点数がすさまじいため、20に絞ること自体に無理があるかもしれないが、 選出傾向というものがあるため、なんとか以上に収まった。 今後も変更や修正がありうるかもしれないが、上記に挙げた作品と作家には 少し気を配っておいて損はない。 書店や図書館などでお目にかかる機会があればさわりだけでもぜひ味わって いただきたい。 当ブログの管理人は、元は書店の業界に身を置いた経験のあるものである。 しかしながらこちらのブログの読者様はけっして書籍に精通された方ばかりではない。 また中学生・高校生読者様も比較的多く、他ジャンルの読者様も訪れてくださる。 一方、書籍に精通された方であるなら独自の読書観というものを確立されているはずだ。 そういう方々には今記事がけっして満足のいくものでないのかもしれない。 書籍の売れゆきは年々ひどくなるばかりである。 特に小説・物語のジャンルの落ち込みは顕著である。 よって、普段読書に慣れ親しんでいない方々がいかに本に接するかを第一に考えている。 そして最も説得力があり、最も親しみやすい、訴求効果の高いものはなにかといえば、 その近道のひとつが「直木賞作品」「直木賞作家」であると自分は思っている。 作品の内容や作家に触れることで、さらなる興味、趣味に発展していく ことを大いに望んでいる。 このブログはそのための通過点であると思っていただければ、 管理人にとっては非常に幸せなことである。 このブログを適度に利用して、より専門的なブログを探すきっかけをつかむ ことを願うばかりである。 (....今後も直木賞推理はつづきます....)
 

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 さて、最近街をブラブラうろついていると、デジカメでいろいろな風景を撮って
いる方の姿をしばしば見つける。
すると思案するのである。


さては..... ブログに更新する気か、おぬし。

だってそうだろう? 人の顔写真や観光風景を撮るのはまだしも、
向けるカメラの角度が奇妙だ。
あまりにも上空に向けすぎていれば

「澄みわたった空、きれいだな~。」

とでも書くのかと予想する。

また、あまりにも地面に向きすぎていれば

「雨風にもめげず、必死で生きている雑草。私も頑張らなくっちゃ!」

という文章を想像する。

朝日や夕日を眺めていると、

「ああ、どれほど多くの人がその光景にカメラを向けているのだ?」

と自然に思い浮かぶ。けっこう現実的な考えの人間かと少し自分で自分の
性格を評価してしまう。良くも悪くもだ。


例えば、図書館で本を読みながらいろいろとメモっている人がいるとしよう。


おぬし、書評でも書くのか? 

肩を叩いて尋ねたくなるときがある。
しかし、それには躊躇する。自分も時々やっているかもしれないからだ。

行き交う人々みんながブログをやっているような気がする。
相手も同じことを考えているのだろうか....

ふふふふ。


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 次期直木賞の候補作、並びに受賞作の選考は1月に行われる。
今日は10月30日。のんびり構えていればいいさと思いきや、
そうも言っていられない。

というのも、次期直木賞候補作の対象作品というのは
2005年6月から11月までに発表・刊行された中から選ばれる。
夏休みの宿題や試験勉強を直前になってスパートをかける輩もしばしば
見られ、自分もその一味であったことが今となっては懐かしいのであるが、
そういうにっちもさっちも行かなくなる前にしっかりと勉強というものは
しておくものだ。

それに習い、直木賞予想の傾向と対策も早めにしっかりと練りたいと思う。


とりあえず、過去の記事で述べたことをおさらいしよう。 



過去20年に文藝春秋社が候補作に選ばれる確率  100%



文藝春秋社が直木賞を受賞する確率は
過去20年間で 57.5%
過去10年間で 50%
過去5年間で   80%


文藝春秋社から2度候補作として選出されながら、受賞できなかった作家が
同じ、あるいは別の出版社からまたまた選出された場合、受賞できる確率
過去20年間で 22%
過去10年間で  0%
過去5年間で    0%


と、文藝春秋の身内の賞である直木賞の受賞データに焦点を当ててきたが、
今回は別の出版社についても調べてみようといろいろ試みた結果、面白いデータ
が表れた。紹介しよう。


それはズバリ、

「恐るべし!! 講談社のパワー」

である。

実際には決して講談社の作品が多く直木賞を受賞しているわけではない。

過去20年間の受賞回数は7回で8作品。(96回直木賞は講談社が2作品受賞)
過去10年間では3回。
最近5年間においては ゼロ である。

では、いったいどこにそんなパワーが存在するのか。

それは、作家が直木賞の候補作としてはじめて選ばれた作品はどこの出版社であるか
に注目する必要がある。そしてその注目が講談社というわけだ。

以下に列挙する。なお、データは過去20年間(94回~133回)に限定している。

  94回  志水辰夫   「背いて故郷」
  94回  山崎光夫   「サイレント・サウスポー」
  96回  常盤新平   「遠いアメリカ」
  97回  高橋義夫   「闇の葬列」
  98回  堀和久     「大久保長安」
  99回  藤堂志津子 「マドンナのごとく」
101回  多島斗志之 「密約幻書」
104回  出久根達郎 「無明の蝶」
110回  佐藤雅美   「恵比寿屋喜兵衛手控え」
112回  池宮彰一郎 「高杉晋作」
114回  藤原伊織   「テロリストのパラソル」
115回  浅田次郎   「蒼穹の昴」
118回  桐野夏生   「OUT」
119回  乙川優三郎 「喜知次」
119回  重松清     「定年ゴジラ」
122回  福井晴敏   「亡国のイージス」
123回  金城一紀   「GO」
125回  奥田英朗   「邪魔」

これらの作品はすべて講談社の作品かつ、直木賞初選出の作品である。
色分けの意味は

黒字 → 後に直木賞作家になれず
青字 → 後に直木賞作家になる
赤字 → この作品(つまり初選出)で直木賞作家になる

である。

過去20年間では、確率 61.1% (該当作品18作中)
過去10年間では  確率 87.5% (該当作品8作中)
過去5年間では    確率 100%    (該当作品は1つしかない)


文藝春秋と比較してみよう。講談社の場合と同じ条件で

過去20年間では 確率 42.4%  (該当作品33作中)
過去10年間では 確率 27.2%  (該当作品21作中)
過去5年間では   確率 60%      (該当作品10作中)


侮れない数字である。


ただし、ある作家AがいたとしてそのAが3度受賞候補になった場合、
2度目、あるいは3度目に講談社の作品として選出された時は
大して魅力的な数字はない。
あくまでも初選出が講談社の場合がポイントである。
その条件であるならば、その後他の出版社、例えば
文藝春秋、新潮社、集英社での受賞でもよいし、同じく講談社からの
受賞も十分ありえる。

今回の紹介データは未来の直木賞作家を探すのに適した数字であると
して理解していただければ助かる。

そして、このパターンにうまく引っかかる作家が1人いる。

福井晴敏氏。

122回に講談社より「亡国のイージス」で初選出。
132回にも同じ講談社でより「6ステイン」で選出。

現在は刊行の話はまだ聞いていないが、もし選出される作品があれば
間違いなく有力候補となると信じている。


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ここ数日はカゼで鼻水をすすりながらの毎日であるが、どうやら腹の具合も
ちょいと悪いようだ。

たまらず正露丸に手を出したところ、

「takam16さん、正露丸臭い~。」

と言われた。
正露丸を飲んだことと、みかんを食べたこと、この2つは
すぐに人にバレるものだ。
両方やったらどんな臭いを発射するのか....。
腹を下してみかんはないだろうと皆は思うだろうが、今度やってみることにする。

 

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 読みもしない、頼まれもしない、なのに次期直木賞受賞作を勝手に推理する
などとレベルを疑われかねない記事内容なのだが、
受賞作というものは、おおかたが受賞候補作が発表されてからでも一部の外野が
騒がしくなる程度のもので、本を買う側としては一方的にプロの主観で決められた
受賞作品を読み手が平積みされた本のオビに刻まれた毎度恒例の文句

直木賞受賞作

の平積みを本屋で見ることで、はじめて買おうかなという錯覚に陥り、
購入したあげく読む時間もない。するとつまみ食いのごとくちょびちょび読み進めながら
も、受賞作品を読んだことへの達成感が先行してしまい、つい感極まって

「さすがは直木賞受賞作」

などとおっしゃる。お前は生きたオビかとツッコミたくなる自分を抑えながらも

「そうそう、さすがは...」

などと八方美人ぶりをかもし出す自分がいるのもなんだか情けない。

書店勤務時代には自分はその一角を担っていた。「直木賞」の文句だけで売上がグンと伸びる
わけだから、苦境の書店もなんとかその場をしのぐことができる。ただし、あくまでも
直木賞作品が自分の店頭に並べばの話である。
中小書店などで働いていると、まあこういうチャンピョンベルトを引っさげた書籍を
入手するなどというのは、箸を足の指を使ってご飯を食べるくらい困難なことだ。
せいぜい、受賞発表から1ヶ月以上後しなければそのチャンピョン達はやってこない。
だったら、いっそのこと

「私たちは受賞作品は置かない主義です。」

と腹をくくるのも悪くないが、多くの書店の現状は

「広く、浅く」

である。あれも置きたい、これも置きたいという思想がつまらない書店をアメーバ化する。
そこには、店の、店主の不安感がはっきりと見てとれる。売れるものをあえて置かない
なんて、そんなことぁ~拙者にはできませぬ、売上が下がっちゃあウチらはやっていけないだす、
というわけだ。その不安感、非常にわかる。

そんな管理人もそんな中途半端な書店で仕入れの仕事をしていたものだから、
直木賞作品はカネのなる木のひとつだと思った。
でも直木賞が決まってから注文したのでは時すでに遅し。
てなわけで受賞作予想や候補作予想というもので傾向と対策はよく練った。
勝手に「赤本」状態だ。

しかし書店の仕事から離れると、純粋に楽しむ意味での受賞作予想なんてものに興味がわいてきた。
仕事では「苦」を伴うのだが、その責任から逃れると、予想がとっても「楽」になる。
人生そういうものだ。



さて、直木賞は文藝春秋社の土俵の上に作られた賞である。
前回、
文藝春秋社が候補作に選ばれる確率  100%。

と記した。過去20年のデータである。
その100%の候補作の中で、じゃあ実際に受賞した確率はどうかと調べたところ、

過去20年で文芸春秋社が受賞した確率 57.5%

である。ならもっと近視眼的になろう。
過去10年で文芸春秋社が受賞した確率 50%
過去10年で文芸春秋社が受賞した確率 80%

の数字だ。ちなみにこれらの統計は、例えばその年に受賞候補作が当該出版社から
2作選ばれてもそれは1で計算しており、受賞作が当該出版社から2作出ても1で
計算していることを付け加えておく。

とにかく、最近の5年間の80%は驚異的な数字だ。
対象は124回から133回であり、その中で128回は該当作品なしである。
ということは、5年間で他の出版社が受賞したのは、130回の

江国香織 「号泣する準備はできていた」(新潮社)
京極夏彦 「後巷説百物語」(角川書店)

のみである(注:この時は2作が受賞)。
ならば確率は90%近くまで上昇する。

ふとその130回の受賞候補作が気になった。以下に列挙すると


・江國香織    『号泣する準備はできていた』  新潮社
・京極夏彦    『後巷説百物語』        角川書店
・朱川湊人    『都市伝説セピア』      文藝春秋
・馳 星周    『生誕祭』          文藝春秋
・姫野カオルコ  『ツ、イ、ラ、ク』      角川書店


その中で気になったのは「身内」である文藝春秋社の2作品。
最新の直木賞受賞作家朱川湊人氏は初めてのノミネートであった。
一方の馳星周氏は8回ぶり4度目のノミネート。

「身内」が2作品も出ているのに、賞を獲ったのは他出版社なのかと
ぼーっと資料を眺めていたのだが、ちょっと待てよと思案した。

「身内」の文藝春秋社の発行にもかかわらず賞を獲れなかった朱川湊人氏と
馳星周氏。前者は先ごろ「花まんま」で見事受賞者の仲間入りを果たした。
出版社はもちろん文藝春秋、2度候補作の2度とも文藝春秋、2度目での受賞である。
一方の馳星周氏の過去の候補作と出版社を見てみよう。

116回 「不夜城」 角川書店
120回 「夜光虫」 角川書店
122回 「M」   文藝春秋
130回 「生誕祭」 文藝春秋


「身内」の恩恵を受けながら、2度もそのチャンスを逃した。こういう場合、
果たして「3度目の正直」があるのだろうかと考えた。
つまりは、

文藝春秋で過去2回候補作になりながら受賞できなかった作家が同じ文藝春秋で
三度(みたび)以上候補作に選ばれ、
そして、それが受賞することができるのか。


2度もチャンスを与えられたのだ。それなのに最終選考で落とされた「身内」の
作品を同じ「身内」がどう扱うのかに興味が沸いた。

94回から133回の20年間で気になるデータを探し、以下に記載した。

馳星周  
116回 『不夜城』 角川書店
120回 『夜光虫』 角川書店
122回 『M』   文藝春秋
133回 『生誕祭』 文藝春秋  以上

宇江佐真理
117回 『幻の声』     文藝春秋
119回 『桜花を見た』   雑誌別冊文藝春秋
121回 『紫紺のつばめ』  文藝春秋
123回 『雷桜』      角川書店
127回 『斬られ権佐』   集英社
129回 『神田堀八つ下がり』徳間書店 以上

黒川博行
116回 『カウント・プラン』 文藝春秋
117回 『疫病神』      新潮社
121回 『文福茶釜』     文藝春秋
126回 『国境』       講談社  以上

横山秀夫
120回 『陰の季節』  文藝春秋
124回 『動機』    文藝春秋
128回 『半落ち』   講談社  以上

東郷隆
104回 『水阿弥陀仏』他  東京書籍
106回 「猫間」      雑誌別冊文藝春秋
108回 『打てや叩けや』  新潮社
111回 『終りみだれぬ』  文藝春秋
113回 『そは何者』    雑誌別冊文藝春秋
119回 『洛中の露』    新潮社      以上

小嵐九八郎
106回 『鉄塔の泣く街』 実業之日本社
108回 『清十郎』    文藝春秋
110回 『おらホの選挙』 講談社
112回 「風が呼んでる」 雑誌オール讀物(文藝春秋発行) 以上

阿久 悠
82回 『瀬戸内少年野球団』 文藝春秋
99回 『喝采』       文藝春秋
101回『墨ぬり少年オペラ』 文藝春秋 以上




また、泡坂妻夫氏については、文藝春秋で3度落とされ、103回に新潮社で
受賞している。

20年間の中で1つだけ文藝春秋として何度も候補に挙がった結果、「身内」で受賞
できたのは

赤瀬川隼の『白球残映』(113回)、そして
白石一郎の『海狼伝』(97回)の2つである。

以上より過去20年間で2度文藝春秋社より刊行・発表された作品が直木賞候補作に
選ばれながら落選した場合、その後同じ文藝春秋社でノミネートされ、受賞する確率は

22%。

実は30年も40年も前であれば、渡辺淳一氏や藤沢周平氏などは文藝春秋で何度も
ノミネートされながら、落ちまくったが、最終的には文藝春秋で受賞しており、
他にもいくつか見られ、昔ほどこの確率は高いのであるが、
最近に近づけばこの確率はゼロになってしまう。


過去20年間に限定すると、22%、
過去10年間では     0%
過去5年間でも      0%


かつては雑誌連載作品のノミネートが多かったが、徐々にその傾向はなくなり、
雑誌連載後、単行本になったものが候補に挙がるようになったのも確率が下がった
理由の1つであろうか。


以上より、記載した作家は次に「身内」である文藝春秋より発売・発表された作品が
候補作に選ばれようが、彼らが直木賞作家になることは非常に困難なことである。



今回は消去法でござんした。