国の館 5

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このお話は、管理人が初めて「国立国会図書館関館」へ訪れた時の心のつぶやきを
ひどく大げさに文章にしたものです。


前回までのルポ
管理人こと「私」は、最近完成したとの噂を聞きつけて、国会図書館の関西館へやって来た。陸に浮かぶ巨大な豪華客船のごとき風景に胸を躍らせずにはいられない私であったが、無事入館となるまでには、いくつもの障害を乗り越えねばならなかった。
興奮と緊張感の連続に疲労を隠しきれなかったものの、国家権力の中核へとせまるまで、あと一歩のところまでようやく来たのである。





魔女の潜むカウンターを隔てた真の目的である国会図書館の心臓部へたどりつくための唯一の手段は、今歩いている約30メートルの真っ白な床を基調とした渡り廊下だ。
そして両側はガラス張りとなっており、私の、私達庶民にも伝わる磨きを極めたこの<黄色>両手にガラスの風景を入館前に想像できたであろうか。
この空間で呼吸をしている自分が幸せだ。そして幸せは呼吸の範囲には及ばず、目の前に徐々に広がる景色、そしてなぜそう思えるか不思議なのだが、空間が巨大であるがゆえに図書館が3月の盆地にありがちな冷え切った館内を必死で暖めようと試みるも、なかなか温まらない私の体に怒りを感じない。
むしろ心の温まりは限度を超え、沸騰状態にある。後追いのように備えられた廊下内にある複数の黒革のソファーと1つのテーブルにより成り立っているであろう簡易ロビーを右に見ながら、ついに、
ついにその時がやってきた。

渡り廊下という限られたスペースが、感情を大げさにさせているのであろう。
その広大なスペースに思わず立ち止まってしまった私。
言葉が出ない。体がいうことをきかない。

まさか、こんな大事な瞬間に、生まれてこの方信じる気もしなかった「かなしばり」という絵空事を経験するハメになろうとは.....

屈辱的な行為に出会ってしまったと精神的にまいってしまいそうだった私を、後から来館した者達がまるで空気のように、中には二酸化炭素のような連中も混じっていたであろうか、数人が追い抜いてやすやすと私にとっての最大の対象物へと進入していった。

その傍若無人な他者の行為がかえって「かなしばり」から解放してくれた。
体の力がいい具合に抜けた私は改めて国家権力の心臓部分の第一歩を踏み出す。
それは、私の過去の体験がそうであったのだが、左足から入るという自己ルールに従う形であった。初めの第一歩は、実は昨日自宅の階段を上る時に少々痛めてしまい、シップ臭かったのだが、その足でとうとう国家権力に土足で踏み入ることになったのである。
それは、富士山の頂上へ達して朝日を見ることのできた5年前の感動以来の出来事だった。出来事であるはずであった。


続く.......
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国の館 その4

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この記事は、国立国会図書館へ初めて訪れた時の記憶を非常に大げさに
文章化したものを更新しております。



一歩、また一歩。足取りは次第に重くなる。首や背中はいつのまにか
冷たい汗でびっしょりだ。にもかかわらず、耳はかろうじて冷静なよう
だった。

キーン コーン カーン コーン

どうやら時刻は午前10時。時計を見るゆとりなど微塵もないが、
子供時代からの習慣なのか、チャイムがなにかの開始であることは
容易に想像できた。だが、その想像はすぐにせまりくる恐怖にとって
替わられる、いや、こちらから近づいているのだ。恐怖に立ち向かって
いるのは私なのだ。

残り1m、左側に3人の視線ががはっきりと確実にこちらに向いた。
3人は私の視界から見て、縦に並んでいるものの、体の向きは完全に
私とは垂直だ。
私の脳が指令する。首はなるべく魔女達から遠ざかるように、同時に顔は全くあさっての方向に向けるように。その時だ。最も近くにいた1人の魔女から発せられた言葉を耳にしたのは。

「●☆★@#◇○§◆。」

なんだ? この世にあるまじき言葉なのか。
続いて2番目の魔女がそれに続く。

「お☆★@ご#◇§す。」

国家権力に放送禁止用語とはなんたることだ。
今までの恐怖で下手に出ていた私の気持ちが一気に切り替わる。
強い気持ちで挑まなければやられるぞ。
自分に言い聞かせ、冷静さを取り戻した私に最後の魔女から発せられた言葉
はあらゆる意味で想像を超越した。

「おはようございます。」

なんだ、そういうことだったのか。魔女は私に来館のあいさつを述べたのだった。
平静な心理状態であれば、解釈に戸惑うことなどなかった。
魔女は決して悪い奴らばかりではない。暴力団やマフィアはほぼ極悪だが、
魔法使いサリーだって、魔女っ子メグちゃんだって魔女ながら人間に害を
及ぼしたことはないのだ。妖怪人間ベム達はきわめて怪しい3人組だったが、
心は人間への転換を望む良き生き物だっただろうよ。
子供時代にお世話になったアニメを思い出していた。
私は心身ともに3人目の言葉ですべてが満たされたのであった。

「自動改札口」と酷使するその機械の前にやってきた。魔女達は私の背後に
いる。おそらく、こちらの様子を伺っているのだろう。だが、彼女達に悪意
がないことがわかり、敵対心がすっかり萎えたことも幸いし、機械を見た
瞬間に、通り抜ける方法に悩むことは何ひとつなかった。
発行されたカードの裏面を機械の一部分に置く。すると、機械が瞬時に反応し、
閉じられたゲートが開放された。これで入館までの過程はようやくクリアした。

国会図書館とは市民図書館とは違い、手続き、手荷物預けと段取りに非常に
手間がかかるのだ。年齢が高齢だとこれら一連の行為は人の手を借りずには
いられないだろう。その手ほどきをしてくれるのが、おそらくさきほどの
魔女達の役割でもあるのだろう。
魔女と利用者との組み合わせ。妙に頬がくすぐったくなってきた。

そして、すべてを苦心の末潜り抜けた私の目の前に現れたのが、なにをかくそう
最大の目的である、国会図書館の心臓部。
核心に迫れることに浮き沈みの激しい私の感情がいい意味でくすぐられつつある。






続く....
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国の館 その3

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この記事は、国立国会図書館へ初めて訪れた時の記憶を非常に大げさに
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美女達は私をじっと見ている。どこまでも凝視している。
そうか、私の存在を意識しているのか。まだまだ私も捨てたものじゃない。

気をよくしたのもつかの間、背中越しに別の響きがする。

キュッ、キュッ。

図書館入り口に響き渡る音を聞いた刹那、今までの美女達の熱い眼差し
がいっせいにそれに移り変わった。

「1人ぐらい、こっちを見てくれたっていいじゃないか。」

とは口にもできない一言だが、心の中は私の体の一部分を断りももなくわしづかみに
された時の衝撃と似ている。


キュッ、キュッ。

また新たな響きが遠くから聞こえる。同時に彼女達の目線はそれに反応する。

そうか、美女達は私を含めたこの国家権力に侵入する連中を監視しているだ。

今頃になってこんな単純な理由に気づいた自分自身の浅知恵に喝を入れながら、
足は彼女達とは反対側にある入館登録手続きのコーナーへと進んでいく。

入館手続きといっても、人間の気配は皆無である。
つまり、手続きはすべてアナログ色を一掃した冷ややかな機械ってわけだ。
電車の切符売り場を彷彿させる「登録手続き機」は合計で4台。右の2台は
登録利用者用で、これらは常連さんのためらしい。一番左側の「登録手続き機」
の前へ来た私に手続き画面が訴えかける。すべてがタッチパネル式で、
必要事項を入力させたがっているようだ。

住所、氏名、生年月日、職業と、国家権力に自らの個人情報を曝け出すことへの
不信感、そして美女達の目的が監視であることを知った私の心につっかえた
わだかまりが頂点に達しかけた時、目の前の機械の右下から突然1枚の
カードが出てきた。赤と白を基調としたそのカードは銀行のキャッシュカード
と同サイズながらも、側面を利き腕でない左手の親指と中指で持って、少し
力を入れると曲がる程度の柔らかさだ。その力を緩めると、元の状態に戻る
弾力性に何故か慰められるように、感情の頂点は徐々におさまってしまった。

東京本館もそうだろうが、関西館でも手荷物には慎重だ。手持ちのカバンは登録手続きコーナーのさらに右奥に位置する100個以上あるコインロッカーの1つへ預け、備え付けの透明なビニール袋にノートや持込み書物、筆記用具
などを入れなければならない。つまり、館内資料の盗難を防止するってわけだ。
個人情報を提供してかつ、手荷物までさらけだすとは、なんとも耐え難い屈辱である。

これで入館の準備は整った。再び美女達が私の視界に入ってくる。
もう美女などとは思わない。魔女だ。魔女達にはすでにこちらの動向に無関心のご様子である。
そして、冷静に見るとその数は3人。視線は別の足音に向いている。
入館する前の最後の難関は、この魔女という得体の知れない生き物の側を
いかにして通過するかにかかっている。魔女の前には電車でいう自動改札口
が3機ある。20m、10m、5m。銀色のオブジェに潜む敵に徐々に忍び寄る。
心臓の鼓動が急激に高まってきた。いざ、決戦の時がやってきた。

続く....




以下の読者さん。コメントを下さりありがとうございました。当該記事にて返信をしていますので、ご覧ください。
12/06記事 イージスさん
12/07記事 ミハルさん
12/08記事 naoさん
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国の館  その2

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以下の読者さん。コメントを下さりありがとうございました。当該記事にて返信をしていますので、ご覧ください。
11/30記事 naoさん
12/1記事 masa7yumiさん






こちらをクリック。

上記リンクはどなた様かのレポートを拝借したものです。無断使用なので
許可をもらわねばなりません。しかしリンク! 
ただいま、国立国会図書館へ初めて訪れた時の記憶を非常に大げさに
文章化したものを更新しております。







時計の針は午前9時50分。
国会図書館関西館の開館は午前10時からだ。
入り口に入る前に一呼吸。
なぜか空気がうまい。
「僻地」と愚弄してはいるが、裏を返せば都会暮らし故のやっかみ
かもしれない。

空気がうまいなどと言っている場合ではない。とにかく、国の図書館というものを
初体験
するのだ。左右に自動ドアがあり、その奥には強固に鍛え上げられたのであろうか、
制服・制帽に身を包まれた1人のたくましい警備員の姿が1名見える。どちらのドアから
入場しても結局はその後1本の道につながるわけだが、制帽を深くかぶり、表情が
よくわからないその警備員は左側のドアに視線を向けているように感じる。

反射的だが、右側の自動ドアを選択する。私は何も悪いことはしてはいないのだが。

しかし、ここで一種の迷いが生じた。なだらかな1本の下り道以外に、もうひとつ
一直線に続く道があるではないか。

結局は警備員に尋ねた方が無難なようだ。さっきまでの左右の選択
いったいなんの意味があったのか、自問の後、彼に恐れながら質問しようと口を
開くと同時に、警備員の方から
「おはようございます。」

こいつはたまげた。無骨な警備員からの朝のご挨拶だ。ふいをつかれた私は、
久しぶりに人と言葉を交わすかのごとく、しどろもどろになりながらも、
オウム返しで
「お、おは、おはようございます。」

アドリブを聞かせろよ!アホ。
恥ずかしさ半分、情けなさ半分である。人は外見で判断してはいけない。
やっぱり親の言うことはちゃんと聞くべきだ。反省....


「初めて訪れたんですけど。」
「ではこちらの階段を下りていって下さい。係の者がおりますから。」

苦し紛れの会話をなんとか切り抜けて、警備員の指示通り、なだらかな階段を
徐々に下っていく。しかし、けっこう長い距離だ。30m以上はありそうな
直線を一歩一歩進んでいく。ワックスが塗られているのか、歩くたびに

キュッ、キュッ、

という音が館内に響き渡る。この音響は変な言い方だが見事なものだ。
知的空間の中にいる快感を覚える。この気持ちに酔いながら20mほど
歩いただろうか。なにやら視線を感じる。歩くときは比較的うつむき加減
の姿勢が多いと友人に指摘される私は、目線がいつも下になりがちだ。
しかも、その視線は1つではない。複数の視線を感じる。
ふと目線を上へやって、対象物に視線を向ける。

なんと、

美女だ。美女の視線だ。
複数の美女の視線が私の存在を肯定しているのだ。
ここは実は国の館ならぬ、美女の館か?

くだらぬ冗談を考えながらも、これらの視線に悪い気などするはずがない。




続く....

国の館 その1

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こちらをクリック。



上記をクリックしていただきたい。
西日本にも遂に完成した

国立国会図書館
関西館
である。

どなた様かがレポートした
2年前に完成した写真付き記事が検索機能から見つかったので、
勝手ながら、リンクすることにした。お許しいただきたい。

国会図書館といえば、都心にしか存在しなかったため、
関西人にとっては、はるか遠い存在に感じていた。
よって、図書館好きにとっては関西館の誕生はまさに

御上からの授かりもの

なのである。

ということで、半年程前から月イチのペースで愛用させてもらっているのだが、
ここでは、初めての国家権力に足を踏み入れた時の状況を
かなりおおげさに語ることにした。




あれは今年の3月のこと。事前にHPで関西館の情報を入手した私は、
95%の好奇心と5%の格別遠方にまで来るには及ばない
必要資料の複写目的のため、朝8時30分に家を出る。

我が家から車で約1時間はかかったか。目的地にたどり着くまでには
「ひと山」を超え、
いったん奈良県へ入った後、しばらくは退屈な国道163号線を奈良方面に
向けて約10キロ走行。
すると、「けいはんな学研都市」となんともインテリな響きを感じさせる
文字の看板が見えてくる。そこを左に曲がり、また約3キロをひたすら走る。
いつのまにか、奈良県から京都府に入ったようだ。
その間、周囲は住宅もなく、だからといって花鳥風月を楽しむような
美しい風景に出くわすわけもない。

と思って油断した途端、突然右手に豪華絢爛。我が人生では決して見た経験のない
銀色の巨大なオブジェ。

実はこの「けいはんな学研都市」。都市としての歴史自体も図書館同様非常に
浅い。よって、オブジェに面した道路を挟んだ向かい側には、企業の先行投資
だろうか、コンビニやレストラン、ホームセンターが並びはするが、採算が
とれているとは誰の目から見ても思えない。それよりも、オブジェに隣接する
建物として不釣合いである。都市開発が進む数年先まではひたすら
忍耐が必要となろう。

さて、そのオブジェ。300台以上の無料駐車場を備え、地価の安さを窺わせる。
駐車場には「空車」の2文字が緑色に光っているが、この文字が「満車」の赤色に
なる日は果たしていつのことやら。そのぐらい、現在進行形で「僻地」に建てられた
オブジェなのだ。

車から降りると、予想外の横風に年寄りでもないのに足元がふらつく。
思った以上に高台のようだ。いや、盆地と言う方が適切かもしれない。
その証拠に太陽がやけに近く見え、そしてまぶしい。

人は外見で物事を判断してはいけないと親から教わったが、この日に関しては
親のしつけを破ってもバチは当たるまいと心に問いかける。そのぐらい、
この建物には圧倒される。

入り口にたどり着くまでの数分間、これほどまでに「歩く」ことにドキドキ
したことが今まであっただろうか。左上に強風にたなびく日の丸国旗を
眺めながら、めざすは、関西館。国家権力にいざ、立ち向かう。


続く....