正月書店注意報発令中!!

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takam16の本の棚
です。バーチャルですが......

2006年が始まりました。
子供の頃と比較すると、歳を重ねるにつれ、時間の進み方が
異様に早く感じるようになりました。
今年こそは毎日をじっくり噛みしめながら過ごしていこうと
考えております。
今年もどうぞよろしくお願いいたします。



お正月は皆様、帰省かご旅行以外ではご自宅でゆっくりくつろいでいる
かと思いきや、案外お買い物に街へフラフラと出かけたくなるもの。
かつては1月1日にお休みだった各スーパー、ショピングモールも
無理やりシフトされたアルバイト、パート達の不満を背負って営業を
しております。

本屋でもそれは例外ではありません。
働いていた本屋ではもちろん正月もしっかり開店。
アルバイト、パート管理業務をしていたtakam16としては、
12月になると彼らをいかに正月にシフトに入れさせるかについていろいろ
思案するわけです。

パターンはいつも一緒。
主婦パート達は、主婦の権限を最大限に利用して、長期休暇を主張し、
そのために標的にされる学生アルバイト達は、主婦達のわがままと
不公平な扱いを受けたことへいいかげんご立腹。
主婦達が、実家へ帰るだの旅行に出かけるだのという口実を時間帯の関係上、
彼女達と共に仕事をすることのないことを利用して、学生バイトはシフト担当者
であるtakam16に

「主婦Aさんが実家に帰るというのは真っ赤な嘘です!」

と古い言い回しながらも先制口撃を仕掛ければ、主婦Aはお返しとばかり

「学生なんて冬休みで暇なんだからどんどんシフトに入れちゃいなさいよ!」

とこちらも自らが正月に仕事なんかさせられちゃ~たまらないと言う。
この醜い泥仕合、真正面からやってくれりゃ~楽なのに、
全部takam16経由というのがなんともやるせない気分。

そして今度は酒のせいですっかり水太りの店長どのが

「僕、正月休みますからヨロシクッ!!」

ゲホッ、ゴホッ。
世の中で最も汚染された空気を胸いっぱいに吸い込んだら体全体に毒素がまわって
しまった気分と同じぐらいブルーな瞬間。
店長という肩書きをここで使わずにどこで使うと言わんばかりの絶妙のタイミング。
そんなやりとりが12月に入ると盛んに飛び交う。3者の駆け引き、まことに
あっぱれぇ~♪

日々の駆け引きに翻弄され、同時に師走の忙しさに追われる中、
学生達が冬休みに入る12月下旬になると一時的にではあるが、彼らは
主婦達とも顔を会わす機会がある。

12月に入ったとたん、休みの奪い合いを間接的に披露した両者。
さぞかしお互いへの警戒心も強かろうと思いきや、レジ奥で
なんと店長も交えて談笑に花が咲いてやがる......

薄っぺらくも笑顔だけはちゃっかりマニュアル化されたその談笑風景に
「は、ハハハハハッ.....」

笑いもいいかげん乾ききってしまう。

で、シフト担当のtakam16も心の中ではいかに正月を悪意なく休もうかと
色気を出したかったのだが、なんだかこの談笑風景がシフト担当者を地獄に陥れる
ための臨時的な結束にしか見えなくなってしまうのだ。自らも邪な心を持つゆえの
単純な思考回路.........
シフト作成の過程で
主婦に嫌悪され、学生にののしられ、店長に無視されるという逃げ場なしの12月。

そうして四苦八苦した挙句、無念にも選ばれし数名の無気力な店員達が
普段にも増して無気力な風貌、態度で店頭を殺伐とさせている。

2006年の正月を仕事で過ごす日々だったtakam16。
意外に多い立ち読み客にまみれて、先に映る互いの視線を合わせようとしない
店員達の一挙手一投足を観察しながら、かつて書店でシフト担当であった自分と
この本屋のシフト担当者を重ね合わせていると、どうしようもなく
ニヤニヤと表情が緩み、さっそく周囲に不信感を抱かせるのでありました。


つくり話で固められた主婦達のお正月....
すでに修復不可能な学生達との関係....
正月は酒にまみれたヘビー級店長のあの体型.....   2002年正月回顧


自分にとって立ち読みとは、こうもむなしくせつないものでして.....

 

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奥様、ご乱心!!

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takam16の本の棚
です。バーチャルですが......


 

本屋さんという仕事は、

「わ~、本好きなんですぅ、働いてみたいな。」

などと美女にラブラブ目線で訴えられた時にゃ~

「はい。あなた採用!」

と言って即断するかしないかは皆様の想像にお任せするのだが、
たとえ採用ということで、アルバイトとして記念すべき本屋さんデビューを
飾ったところで3ヶ月が関の山である。
恋愛などもこの最初の3ヶ月がポイントだと耳にしたことがあるが、
本屋さんも、最初の3ヶ月が通過点であろう。

特に、
「わ~、本好きなんですぅ、働いてみたいな。」

などという短絡的な考え方で本屋でバイトを始めたとしたならば、残念無念、
それはあなたの選択ミスである。

まあ2週間も仕事をこなしているうちにどうやら次の2点のこと
に気づきはじめる。

まずはなんといってもカネである。時給の安さはピカイチだ。
最低賃金ギリギリのところは珍しくもなんともない。

そしてこの安さにモレなく付いてまわるのが、筋肉だ。
二の腕はみるみるうちに男らしくなり、隠されたふくらはぎのサイズも
数%増加するであろう。たくましさこの上ない。
それほど本を出し、並べる作業というものはお嬢様方の美貌とは
正反対の位置にある。
カネをもらって体が鍛えられるのは悪くないが、世の中には比較ということが
まかり通っている。
暇つぶしに本棚のラックに陳列しているリクルートあたりの無料バイト情報
でその割りのあわなさをひどく痛感したあげく、

「やめま~す。」

だ。笑いもなんだか苦くなる。


さてこの

「本を出し、並べる作業」

のうち、本を出すことにつなげるならば、
未経験者には少し驚かされることがある。

それは
どんな本がどれだけ入荷したかが当日になってはじめてわかる点

である。中にはわかる本屋もあるだろうが、そんなものは一部のデカいところに
限られる。
わからないという未知の世界。
その新鮮味、そしてワクワク感は決して隠し切れるものではない。

目の前にはダンボール箱だ。もちろん透きとおっているわけがなく、
箱を開ける楽しみといったらない。
しかし、開けた瞬間に運命は天国と地獄の2つに別れてしまう。

まず天国は、箱を開ける人がどのような仕事を任されているかで違ってくる。
各自、担当というものがある。

あなたは文庫担当、
あなたはパソコン書籍担当

といった感じだ。よって、文庫担当者が開けた箱の中身が文庫であれば
それは天国だ。
自分の仕入れた本が入荷したのだ。しかもそれが自分が売りたいために
「文庫担当者のお薦め」
などの御触れで仕入れた本が来た日には、天国のそのまた天国である。


さて、地獄である。

だいたい文庫担当者が開けた箱に担当外の書籍が入っていたりするなら、
まあつまらない。文庫専門がビジネス書などもってのほかである。
しかし、この程度であればかわいい地獄だ。

ファンには大変申し訳ないのだが、
タチの悪い地獄の最先端は間違いなく「コミック」であろう。
箱を開ける。ワンピースのキャラクターの表紙が出てきたとしよう。
あるいはNANAが出てきたとしよう。
その時点で、地獄行き、しかも各駅停車である。
つまり作業の度に地獄を感じるということだ。

それがコミック担当者であれば地獄ともいえまい。
含み笑いながらこの瞬間を味わうのだろう。
しかし、コミック担当者の多くは学生であり、彼らのシフトは夕方か休日だ。
よって、朝の品出しは主婦層に任せられる。

奥様達でもコミックは好きかもしれないだろうが、さすがにコミックの品出しを
するくらいなら、赤ちゃん夜鳴きで困った方がいいという意見もある。
何をするのか、述べてみよう。



まずは入荷した品を伝票とチェックする検品作業。これが気が遠くなる。

「トマトジュース10箱」
「正露丸 50個」

と書いているならその個数を数えればよい。
それにひきかえ、本は圧倒的に1作品1冊の入荷だ。

「パタリロ 50巻」
「ケロロ軍曹 9巻」

このような形で何十、何百とコミック名が書かれた伝票が何枚も出てくる。
この作業を簡略化する一番の方法は検品作業をやったふりをする以外には
ない。

もしも検品作業をちゃんとやったとしよう。
次に待ち構えているのは、コミックを袋に入れる作業だ。
よく新刊書店のコミックが読めないようになっているアレだ。
あのビニール袋はシュリンクというのだが、あの1冊1冊に施す単純作業
あたりから、奥様連中のグチ合戦がスタートする。

朝1人でそのような作業はまずしない。中規模書店で2~3人必要だ。
社員がいないとこのグチ合戦はすこぶる進行し、奥様方の舌もよりなめらかだ。
こういうきっかけから派閥というものが出来上がる。


本をいじり、シュリンクをいじった時点で10人中7人は手がやけにカサカサ
になる。クリームは必需品だ。用意しておけとあとで社員は奥様に怒られ、
そして社員はうなだれる。

ようやく以上の作業が完了すると、今度はシュリンクに収まった本を
熱風にさらしてシュリンクと本を粘着させる作業が必要だ。
実際は熱を発する大型の機械がバックヤードに用意されているのだが、
とにかく暑い。そして奥様方も熱くなり、汗の発射と同時に口から愚痴が
発射される。ますます饒舌だ。


いいかげん、この時点で彼女達はキレているのだが、

「わ~、本好きなんですぅ、働いてみたいな。」

と言うギャルとは違い、彼女達は食べていかなくちゃあいけない。
生活のために働くのだ。
理想と現実とはそういうものだ。キレながら、仕事をこなす。
しかしやっかいなことだ。

体力的に冗談ではない奥様方にとって、さらに精神を蝕む作業が最後に訪れる。
コミックの陳列法は奥様にとっては未知の領域だ。
出版社別の陳列が書店のコミック棚の並べ方の一般だが、
レーベルというものが各出版社にはある。

「ちゃお」「りぼん」「マーガレット」「花とゆめ」
「ジャンプ」「サンデー」「マガジン」「チャンピョン」

の各雑誌で連載されたものがそのレーベル別コミックとして販売されるため、
同じ出版社の中でさらにごちゃごちゃ分かれていることに奥様方は
まったく合点がいかないようだ。

それに、3巻とか7巻とか数字で並べるのは簡単そうに見えて、案外
目の調子が悪くなるものである。混乱をきたすようである。
目薬もどうやら用意しておいた方がいい。
このストレスにはさすがの奥様方も

「いや~ん。」

と言う。しかしその言葉を使うには20年遅かったと言わざるを得ない。


これらは売れた本を補充注文したものが2,3日後にダンボール箱にやってきた
ものの一例である。

さらにやっかいなことは、
コミックにも発売日というものがある。いわゆる新刊だ。
出版社によってコミックの扱いは違うのだが、雑誌扱いの場合と書籍扱いの場合の
2種類がある。
名の売れた出版社の出すコミックはほぼ雑誌扱いとなる。

雑誌扱いで発売日に入荷したコミックというものは、ダンボール箱に密封など
されていない。
スケスケの厚めのビニールにその姿があらわになっており、
実際に雑誌といわれる類のものも同じ状態である。
コミックに重点を置く書店というものの多くは、
著名な作品に関しては1作品に何百冊と入荷される。
おまけにコミックの発売日はレーベルごとにまとめて一気に発売され、
時々別の出版社同士の発売日が同じになるなどという目に遭わされる。

もう奥様方の怒りは頂点だ。
お昼にみのさんに「おもいっきり生電話」をしようが怒り・悩みはいっさい
解決しない。
というか、昼を過ぎてもコミック品出し作業は終わらない。
よって、自然と仕事は延長だ。奥様、ますますご立腹、
よってたかってご立腹である。


歴史の「大奥」の世界というものは、末恐ろしいもののようだが、
本屋の「大奥」の世界というものも、結束力があってこの上なく
末恐ろしいものである。
そしてこの「大奥」の世界に君臨する奥様方はとっくに3ヶ月の壁は
突破している。容易にである。




注意!
この記事は自分の過去の経験に基づいた内容ですので、すべての書店に
あてはまるわけではありません。各書店やり方はさまざまです。



 

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売ったり買ったり

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takam16の本の棚
です。バーチャルですが......

本棚を2ヶ月ぶりに整理&廃棄に汗をかく先週末だったのだが、
案外売り頃の本も出てくるものだなあと思った。
その数32冊はちと少ないか。というのも
「案外」というのは、自分は本のページによく書き込みや折り曲げをするクセ
があるため、所蔵本の多くが他人の手に渡ることがない、というよりはできないの
である。

逆に言うなら自分にとって綺麗な状態の本というものは、
なんの心にも残らず、気になる表現も見当たらずという意味にもあたる。
また、本を将来売ることを目的に腫れ物に触るようにページをめくる
という前提の読書では集中力が欠如してしまい、内容は二の次になる傾向がある。

よく友人には、
「綺麗に扱えばその後の副業にもなるのにもったいない。」

と注意されるのだが、書き込みグセは子供の頃からの習慣であるため、
どうしようもない。友人には

「へいへい。」

と軽くいなしているのだが、これからも同じことをたらたらと言ってくる
のだろう。ああ嫌だ。

さきほど言った「副業」というのは、つまりは

・新古書店への売却
・オークションへの出品

のことなのだが、自分にとっては本に関してはどうもご縁が薄いようである。

ところがである。
いざ本を買うという行為について本棚を整理しながら思ったのは、
購入本の半分以上をオークションでの落札に頼っていることに気が付いた。

自分の場合、例えば100冊の書籍を読んだとする。雑誌は含まない。
まず半分は図書館である。つまり50冊は無料(注:ここでは税金は含まない)で
本を読んでいるというわけだ。

問題は残り50冊の入手元である。
この50冊のうち20冊が新刊書店で購入する。
そのうち半分はネット書店、あとはリアル店舗である。
ネット書店で購入の多くを占めるのが、新書である。
1冊では送料を取られる。だから1500円以上を購入するために
無理にもう1冊足している感は否めない。

あとの30冊のうち、10冊がいわゆる新古書店というやつだ。
100円文庫がその中心を占めている。


そして、残りの20冊はすべてオークションによる落札であること
に気づき、その種類のほとんどは単行本の小説だ。

ダン・ブラウンの「ダ・ヴィンチ・コード」や
東野圭吾の「容疑者Xの献身」、
奥田英朗の「サウスバウンド」、
津本陽の「覇王の夢」

といった本屋では平積みの対象になりやすい人気本が中心だ。
というのも、オークションではマイナーな本というのが数が少なく、
また落札者側の選択の幅が狭いというのがある。
その点人気本なら2桁の出品登録があるため、品定めがしやすい。
またコミックなどの場合、例えば
「キン肉マン全巻」「パタリロ発売全巻」
など、大人買いをするための用意がしっかりとできあがって
いるところも面白い。

ただ、変なセットメニューのような出品物もある。
例えば、司馬遼太郎作品の著名なもの数巻を出品してあることに魅力を
感じ、入札と気持ちが向きかけたのだが、「○○付」とある。
なんだと画面に目を近づけたところ

「バンダナ付」

だ。今年の1月に司馬遼太郎記念館を訪れたのだが、その時に
司馬遼太郎記念グッズなどのようなものが売店にあったのを思い
出した。絵葉書やらボールペンやら記念グッズとともにあったヤツ
のような気がする。そのために他の司馬作品出品物より若干高く見積もって
いるのだ。すると、かつて近所のダイエーでのパンチ焼き騒動を思い出す。
つまりはお好み焼きのことなのだが、それまでは350円(うる覚え)だった
パンチ焼きが、別の日に買いにきたところ、目玉焼きが勝手に付いてしかも
50円アップの400円になったのだ。
これに主婦連中が噛み付くことは避けられない。
あまりにもの不評と利益をあげる単純な商売に主婦連中は
「ノー」
を前面に押し出し、卵付きはもう買わないと拒否をした。
たまりかねた店側はさすがにせこかったと反省し、卵をつけるのを
やめた。しかもお好み焼きには卵が最初から入っているだろうに、
さらに卵でコレステロールの問題だと言ったか言わないかはわからないが、
ちょっぴりせこいのはこの司馬作品&バンダナでも感じた。

しかし、このオークションによる書籍出品。自分は本屋の出身であるにも
かかわらず、その安さと落札というエンタメに魅力がある。
そして出品物のほとんどは新品で買ったものを一度読んでの出品のため、
価格も定価の3分の2~4分の3に設定している。
落札品のすべてすこぶる見栄えがよいのだ。

以上の買い方から分析すると、takam16はいかにもアメリカ覇権主義的な
蔵書ではと想像される方もいて当然だ。この買い方では自分で見つけて買うと
いう本の楽しみが失われ、ベストセラー偏重型の弱肉強食の弱者を手に入れる
環境がない。
ではそのマイナー本はどこで見つけるかだが
先述したように、50冊中20冊は新刊書店でそのうち10冊はネット書店だ。
ということは、あとの10冊に「本探しの楽しみ」により見つけた
書がある。皮肉を言えば、たった10冊にしか「本探しの楽しみ」で
見つけた書がないということになる。


10月の第4日曜ごろに、毎年恒例の毎日新聞読書調査なるものがあるはずだ。
1ヶ月の読書冊数や1日の読書時間などをアンケート調査により紙面に発表する
内容なのだが、読書という行為に関しては、小中学校における朝の読書なるもの
の普及が著しく、読書人口は増加の方向に進むと予想される。
しかし、その入手経路は非常に多角的である。
新刊、古本、図書館、オークション、貸本屋、マンガ喫茶に加え、
携帯端末による電子書籍がグンと伸びている。
既存の出版業界はジリ貧だ。


新刊書店は巨大で品数の多い書店に人が集まるのは当然である。
一方、中小書店は店舗面積が狭く、品数に限りがある。
ある人がはじめて訪れた店にどうしようもない品しかなければ
その人は二度とその店に訪れることはないだろう。

ネット書店では発見というよりは、あらかじめアテのある本を検索
して購入する場合が多い。
オークションは遊び心ながらもこちらも事前に頭にある本を探し、落札
することがしばしばだ。
新古書店の前提はあくまでもリサイクルである。そして、在庫の仕入先が
限定されるため、店側が積極的に望む本を陳列しているとは限らない。

やはり衝撃的な出会いというものは、既存のリアル店舗が最もそれを演出
できるのではないかと改めて思った。
そのせいか、整理中に棚にある本のうち、既存の新刊書店で店内を探し歩いた
結果、購入した本は妙に汚らしくうつる。

たかが新刊書店。されど新刊書店。
そして頻繁に訪れることの意味。
人に与えられて購入した本と、自分で探し出して購入した本とでは
自分の本に対する扱いの違いをこの整理でつくづく思った週末でありました。


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takam16の本の棚
です。バーチャルですが......


  大人買い 



管理人は2年ほど前は書店で朝から晩までしこたま働いておりました。
日曜・祝日、お盆に正月ははっきりいって出勤。
小売・サービス業なら普通だろうと割り切りはするものの、
TVで海外脱出のニュースを見るとやはりうらやましく感じました。
当然休みが平日になるのですが、人の少ない平日の観光地に遊びに行く
のも意外に違和感のある風景で楽しいものだなぁと。

現在もそうなのですが、地方へ遊びに行ったりするとつい地元の小さな
書店を見つけては棚をなめるようにチェックしたものです。
ご当地ならではのフェアなどないものか、そのフェアを方言でアピール
してやしないかなどなど。

自分の地域は関西でしたので

「めっちゃ~」
「やっぱ好きやねん。」

をフェアごとに使いまくり、それを見かねた上層部から

「こらっ!!」

としかとされれば

「へい。」

と答えるしかない有様。

お偉い方はわからんのですよ、と心の中でぼやきながら、
しぶしぶフェアタイトルの変更をさせたものです。(←させた?、おい!)



話はころっと変わりますが、
スーパーのようにキャベツやれトマトやれ卵やれ牛乳やれ紙おむつやれ
たらふくカゴの中をいっぱいにして子供時代の注射の痕が付いた太い腕を
見せつけながらレジに並ぶおばさま方を見ると、

「太い腕だがうらやましい限りだ。」

と書店員は思うわけです。書店のレジに入っていると、来る客来る客
1冊、2冊しか持ってきてくれない....

それじゃあ売上があがらんのです、もっともっとと視線をギラつかせるのですが、
みんな、週刊文春1冊、文庫1冊、フライデー1冊.....

売上を左右するものは客数か客単価。どちらもかんばしくない昨今、駅前の大型
書店に出くわす風景、そう、あの輩がウチにはないなぁと店員間でささやいて
おりました。

大人買い。

定められた紙袋では手に負えず、手提袋を出さざるを得ないあの嬉しい衝撃。
それを味わいたいねぇ、でも無理だ、ウチじゃあと、店長もあきらめ顔。
手提袋、ちゃんと発注したのだけれど、いつになったら使うのかねぇと
時間の経過とともに埃まみれになる手提袋を布で拭く始末。

大人買い。ウチの店では夢物語だねぇと苦笑しながら過ごしていたある日、
やってきました、ついにこの日が。

白髪交じりのボサボサ頭。黒ぶちメガネに湿った唇。しかしビシッとスーツで
決め込む、どこをアピールしたいのかがさっぱり予測できないこの中年男性が、
ついに念願の大人買いを決行。

時間は夜の11時。10時にアルバイトが2名退社。自分と残ったアルバイト2人
の合計2名。店長は毎度お馴染みの殿様帰宅(午後5時半に退社。おい!)。

アルバイトに尾行を命じ、自分はレジで「戦況」を見守る。
アルバイトから情報が逐一入る。

「コミック文庫で大人買いです。や、やりました、ドカベンです。」
「ミステリーコーナーに潜伏。宮部みゆき作品の前で腕組みをしています。」

ド、ドカベンの大人買いといえば、全31巻。1冊590円(当時は税抜表示)
が31冊ということは、19000円を超えるお買い上げじゃないか!

三度伝令が入る。
「宮部作品10冊はありますよ。」

まさに薔薇色です。夜中に働いてよかったとすっかり開放感に浸りました。

そしてついにご本人がレジの前へ。我が店には不親切にもカゴを用意していないので
アルバイトが大人買いをしっかりフォロー。自分と目配せをする。いい仕事ぶりだよ。

ところが、大人買いというものは、書店側にとっては大量購入をしてくれた方に
対するある種の造語。購入者の知能レベルまでが大人かどうかは眼中にありません。

お客
「これ、どっちが安くなるかやってみて。」

う、ううっ、そう来たか.....

当時は本体価格で表示されていた書籍類。バーコードに1冊ずつ通して本体価格の合計額
を算出した後に、レジの「税ボタン」を押して最終的な支払額が表示されるのがこの店の
システム。
「どっちが安くなるか」というのは、1冊ごとに「税ボタン」を押して支払額を算出し、
それを残りの本にも同じようにして、最後にそれらを合計してくれという意味。

理由は簡単。場合によっては支払う金額が大きく変わるのです。
例えばドカベン全31巻を税抜き価格それぞれ590円だとします。

先に税抜き価格を合計して、最後に「税ボタン」を押すと
590円 × 31冊 × 1.05 =19205円

一方、1冊ずつ「税ボタン」を押して31冊分を合計した額は
590円 × 1冊 × 1.05 × 31冊 = 18910円

実に後者の方が295円も安く購入できるのです。

真の大人買いとはこれだったのか...と戸惑う我々。しかし、レジは両方を
試すために大混乱。なんとか結果が出て

「18910円です。」(実際には宮部作品の数十冊もあります。ここでは省略)
と言うと、お客がさらなる大人ぶりを発揮。

「それら全部カバー掛けて。」

あー、口から泡が、泡が出てきそうだ.....31冊 + 宮部作品数十冊......

今なら、例えば「ブラジャケ」など、広告付きの鮮やかなデザインで定評の
ブックカバーを別に設置して、..ご自由にお取り下さい.. などもありなのでしょうが、
当時はそうじゃなかった....
というわけで2人でせっせとのら仕事、いや、カバー掛け。40冊を超えるカバー設置は
思いのほか視野を狭くさせるのです。つまり、カバーに全力投球のため、
まわりが見えなくなります。

ちょうど、このレジでの応対中、こんな夜遅くに上層部が店舗チェックに来店。
招かれざる男の登場に普段は店内に緊張が走るのですが、こちらはそれどころでは
ありません。

「おい、ちょっとこっちへ。」

その声にようやく気づいた自分は、揉み手をしながら上層部のもとへ。

「へい、なんでございましょう。」

上層部
「棚がスカスカやないかっ!!どんな在庫管理しとるんや!!」

姉さん、事件です。

その場所は本来ドカベン全31巻のあった棚。当然大人買いのお客が買った
のですから棚はスカスカ。
どの店舗業界もそうなのかは存じ上げませんが、
空いた棚は厳禁です。すぐに別の本で空いた棚を見えなくするか、ストック
があるなら補充しておく手段を講じねばなりません。

「薄毛、いや、薄棚は隠せ!!」
とのことです。

後日、店長は会議で上層部に薄棚の件でガミガミ言われたそうです。


大人買い......  あまり大人すぎるのもいかがなものかと。

 
 

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takam16の本の棚
です。バーチャルですが......


 
 本屋の大小を問わず、お客との間でさまざまなやりとりが行われ、
それが相手に幸せを与える結果になったり、時には相手のものすごい
剣幕に怖気づくこともあり、いくつになってもいい社会勉強をさせて
いただくのであるが、場数を踏んでいくうちに質問への応対も
成長していくものである。
初期の段階でやっかいなことは、雑誌の発売日や書籍の場所の質問。
お客にとってはとんとんと答えが返ってくるのが普通だと思うのだが、
店員はこの質問をさらりとかわすには最低3ヶ月は必要だろう。
そして、ある一定期間が過ぎれば、毎日シフトに入っているなら中小書店
なら店舗面積が小さいため、即答が可能である。商品在庫のあるなしに
かかわらず、お客は必要のないストレスを溜めることはまあない。


入社して数ヶ月経ち、仕事に慣れると人間関係も慣れ始める。精神にゆとり
が出ると、アルバイトとの会話にも勢いが出る。

さて、いくらなんでもあの本については質問されないよなというような会話
のやりとりが過去にtakam16とアルバイトとの間で交わされたことがある。

当時は(今もそうかもしれないが)、集英社の週刊ジャンプ系コミックのパワー
が凄かった。
ワンピースにヒカルの碁、 NARUTOは発売日には何百冊と入荷した。

「ワンピース○巻ありますか、とかヒカルの碁○巻ありますかとかの質問は
 よくあるよなぁ。」

とアルバイトが言う。ちなみにtakam16は別に「ため」でしゃべられることを不快に
思わないし、別にそのようなことは気にしない。それはすべてにおいてである。
例えばブログで誰がトシだろうが興味はない。なんでもごじゃれだ。

ところが、二人の会話でこれはないだろうという話になった。

「ボボボーボ・ボーボボありますか? とは言わへんよなぁ。」
「さすがにそれはないやろ。」

 ボボボーボ・ボーボボ。ジャンプ系の集英社コミックのひとつだ。
言いにくいやら、どこで傍線を使っていいのやらで非常に迷うのだ。
takam16だって、最初はボーボボボボ・ボーボとかボボボボ・ボーボとか
言っていたものだ。
お客としても、言うにはなんだか恥ずかしいタイトルだ。
両者とも慣れればたいしたことはないのだが、この本だけは質問されず
今までにいた。

ところがである。

いかにも、俺はマンガ喫茶で1日中過ごすのが趣味なんだといわんばかりの風貌
をした男が、禁断の質問についに足を踏み入れたのだ。


「ボボボーボ・ボーボボの6巻はありますか。」


           客
   ____________________________
 (カウンター)            
             店長  バイト

          takam16  


コミックというものはわからないものはさっぱりわからないもので、
あろうことか店長にその知識が不足していた。takam16がパッチワーク
関連の書籍に「?」となるのと同じ感覚なのだろう。
さらに、店長は店外の業務が中心だったので商品知識はほぼ我々に任せきり
だ。

「ボボボーボ・ボーボボはありますか。」

の質問に店長は
「ボ、ボボボボ?」

「はい。ボボボーボ・ボーボボです。」
お客の発音は正確だ。takam16とアルバイトは口をあんぐりとしながらも
状況を見守る。助け舟を出さないところが意地の悪いところだ。この辺りは
ちゃんと示しあわせているのだ。質問はないだろうと予想しておきながら、
もしもその質問が店長に及んだ時はだんまりを決め込む算段なのだ。
親指を立てて合図を送る。アルバイトもそれに応える。


さて、お客はといえばますますしつこくなっていく。

「この前はボボボーボ・ボーボボあったのになんで今日は
 ボボボーボ・ボーボボがないんですか? ボボボーボ・ボーボボ楽しみ
 に買いに来たのに。」

おい!ボボボーボ・ボーボボの使いすぎやろ。こそあど言葉を使え!

と心でつっこみを入れながら店長の横でその状況を見守るアルバイトを見ると、
なんだか笑っている。どうやらツボに入ったようだ。

「ボーボって言われてもねぇ。」 

店長はとんちんかんな顔をしている。

「いや、ボボボーボ・ボーボボです。」

客は意地になっている。まず自分の言っていることを理解してもらえない
いらだち。さらにはタイトルをはっきり言えない店長に対する憤り。

ここでもtakam16とアルバイトはフォローをしない。
がちんこ勝負に我々の入り込む余地はない。

「そ、それはいったいなんですか?」

さすがの店長もここはプライドをかなぐり捨ててお客に質問するしかない。

こいつはひと悶着ありそうだ。イライラを隠し切れないお客の次の反応が
気になる、とお客の目を見ると、視線があさっての方向をむいている。
だが、あさってと言ってもお客の視線はやや店長の首より下の方向だ。

ニヤリ。予定通りだ。

実はお客はボボボーボ・ボーボボを望んでいる一方で、
その店長がボボボーボ・ボーボボなのである。

お客はそのボボボーボ・ボーボボを見つめている。
そして、イライラが募るお客がそのボボボーボ・ボーボボを見て

「ぷぅ~っ。」

と吹き出したのだ。さすがに我々も「ぷぅ~っ。」と店長の前で
するわけにもいかないので

「在庫チェックいってきま~す。」

と、方便してカウンターを離れると、死角になる場所で

「ぷぅ~っ。」と吹き出した。我慢できなかったのである。


お客はどうしてもボボボーボ・ボーボボが欲しい。
でも店長はそれを理解しないどころか、自分自身がボボボーボ・ボーボボ
を持っているのだ。
それを知ったお客は今、ツボにはまっている。
そして我々がその光景を前にツボにはまっている。
店長はというとお客のとんちんかんな質問にどツボにはまっている。



ボボボーボ・ボーボボ。

これは店長の肘より下の腕に生い茂ったたくましい
「毛」なのであった。






あれから36ヶ月。
ボボボーボ・ボーボボは18巻まで発売している。
一方、あの店長のボボボーボ・ボーボボはどこまで生い茂っているのだろう。
ちゃんと水分を、そして栄養分を与えているのか。
今一番の懸念材料である。

ボボボーボ・ボーボボ。


蝉の鳴き声の勢力が変わり始めた。
そろそろつくつくぼうしのお出ましである。
ちょっぴり寂しくなった8月21日。
皆様、いかがお過ごしでしょう。


 
澤井 啓夫
ボボボーボ・ボーボボ 18 (18)
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 書店で勤める者にとって、やりたい業務の第一位はなんといっても
本を仕入れることである。

売れた本を追加、補充注文するのは、単純作業で人気はないが、
中には能動的な意味で自分の売りたい本を仕入れたり、
受動的な意味で今、売れている本を仕入れたりするのは、
すこぶる仕事に気合が入る。
そして、注文した本が予定通り自分の望む時期に望む冊数入荷した
時に、これからまだ「売る」仕事が残っているにもかかわらず、
ほぼ満足感を味わった気分になる。
裏を読むならそれほど思い通りに本が入荷されないということだ。

以前の記事で、10冊注文したのに冊数を出版社に減らされて
実際の入荷数は2、3冊ということは日常茶飯事だということを
述べたことがあるが、書店側としてはその点は既に折込済みだ。
実際、ある人気本が10冊欲しいと思えば、半分以下に減らされる
ことを想定して、20冊と注文しておく。予想通り10冊程度が
後日入荷されるというのは書店員なら誰もが経験することである。

しかしながら、どれだけ情報感度に長けた辣腕な仕入れ部員を
店舗に配置しても、どうしても予想のつかない結果が生じることがある。

それは、入荷日である。


本の注文方法は将来的にはより進化するのだろうが、現状では

・機械を使った注文
・ネット注文
・電話注文
・FAX注文      だ。


この中で、ネット注文、電話注文は出庫日や問屋への入荷日はわかるため、
書店への入荷日も計算できる。
ところがFAX注文や機械を使った注文というものは、書店側の一方的な
注文かつ、相手の承諾が確認できないため、入荷時期がわからない。

じゃあわかる方法で注文すれば?とちゃちゃが入りそうだが、電話は遠隔地
からでは時間とお金がかかる。ネット注文は案外注文過程で手間を要する。

書店を訪れるお客側にわかりやすく理解してもらうため、機械を使った注文例
を挙げると、
よく書店員が固定電話の子機のようなものを持ち、店内の在庫チェックと
兼ねて怪しげなまなざしと将来は腰でもいわしそうな体の曲げ方でゴソゴソと
よろしくやっているあの光景。一度は見たことがあるでしょう。
あれは機械を使っての注文真っ最中の状態である。コンビニやホームセンター
でもよく見かける光景でもあろう。

さまざまな機械があるので画一的ではないのだが、その子機の形をした機械には
もちろん数字のボタンがついている。
書店員は、書籍の裏表紙の10桁で4から始まる数字、ISBNコードを入力し、
次に冊数を入力し、それを繰り返す。これはお客に見える位置での仕入れ方法であり、
実際は、売れた本を補充する場合はレジで抜き取られる売上カードに記載される
ISBNコードをしかるべき読み取り機をコードでつなぎ、きちんと整理された
売上カードの束を

読み取り機 → 子機 → データ送信装置

といった順序を経る。この機械は元来懇意にしている問屋のものだから、送信された
データは問屋へ送られる。

*なお、機械のレベルにより、最先端の注文法を取り入れる書店もあるが、
 まだ少数派である

問屋はそれらの膨大なデータを手作業で出版社ごとに並べられた問屋の本棚より
抜き取り、書店別に梱包するが、この部分は機械を頼ることになる。

問屋に送信された注文本があれば、以上の工程で2~3日後には書店へ届くのだが、
例えば1日に機械で200冊注文データを送信したとすると、当然200冊全部が
問屋にあるはずわけがないので、在庫なしの場合、以下の2パターンを考える。 

① 問屋は在庫切れの品を出版社に注文する
② 問屋はしばらく注文を保留にし、別の書店からの返品を待つ


問屋も自分の流通センターに無差別に在庫あるのは経営上非常に危険である。
また、在庫が流通センターに眠っている状態は極めてよろしくない。
さらには人気本は書店から注文が殺到し、また出版社に不足分を注文した
ところで、出版社も在庫不足で注文に応じられない。

書店側としては、注文に応じられない本はすぐにでも在庫切れの返事を
もらいたいのは誰もが考えることである。問屋も注文に応じられない本の
「品切れ」を知らせてくれるにはくれるのだが、この知らせは数ヶ月も先なの
である。

例えば、角田光代さんの人気作品を10冊機械で問屋に注文したとする。
人気作は当然注文が殺到し、問屋はこれに応じられない。出版社も在庫不足で
注文に応えられない。
すると、その注文は当該人気作品がどこぞの書店が問屋に返品するか、出版社
に別の問屋から返品されたことで在庫ありの状態になるまで、とりあえず、
「先送り」される。業界では「保留中」などと言う。

当該人気本が返品されるということは果たしてどういうことかというと、
それは、売り時のピークが過ぎた時である。その時、各書店はいっせいに問屋に
返品する。そしてこの余剰在庫を「保留中」にしてある書店に向けて発送する。
結果として、注文してから2ヶ月近くしてから当該本10冊が入荷したり
するのである。
合点のいかない書店側は、そういう「遅れてやってきたカネのなる木」など
もはやムダな在庫である。即効返品の手続きとなる。しかし、あまりにも
早い返品は問屋側の気分を害する。よってしばらくは店頭にいやいやながら
陳列するハメになる。

時々、書店で一昔前(2、3ヶ月前)にはやった本が何故か平積みされる場に出くわす
ことがある。
これらは、「注文の時間差」の犠牲になった一書店のみじめな風景である。

それはないだろ! 本の仕入れ。


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本屋で悶着

テーマ:
(管理人takam16のバーチャルなお部屋 です。)
 

 本屋とお客というものは、他業種に漏れずトラブルの多いもの。
最近、とある小さな書店ではカメラ付携帯に

「ダメですぅ!!」

と怒る書店員の姿を拝見。
この悶着の結末をしかと目に焼きつけようと、バトルを期待して
いたのですが、意外とお客はあっさり引き下がってしまった....

「チェッ。」 

と自然に舌打ちをしたtakam16。性格は案外悪い。
お客にはもっと食いついてほしかったなぁ、と解釈を入れていたところ、
新たな火種を発見。 姉さん、事件です!!

「頼むわ、ホンマ頼むわ。」

何を頼んでいるのかをもうちょっと近づいて聞き耳を立てるtakam16。

「これ家帰ったら同じのがあってん。な、ええやろ。」

関西名物、泣きの一言である。どうやら買った本と同じ本が家にあった
らしく、返品交渉の真っ最中である。ちなみに、返品をお願いしているのは
オバチャンである。おあつらえむきの光景だ。書店時代を思い出した。

さあ、書店員、どうでるか!こちらもオバチャンである。
お客側のオバチャンの方が背は低いが、小々体が重いようだ。
しかしながら、体の重さと口数の多さは比例しない。

「いつもここで買ってるねん。店長に聞いてくれたらわかるわ。」

すでに財布を手に持っている。お客は万全の準備である。

腕を組みながらじっと考える書店員。「ざますメガネ」がキラリと光る。
どうやら店長は留守のようだ。自ら判断を下さねばならないらしい。
しばらく考え込んだ後、
「申し訳ありませんが、返品はお断りしているんですよ。」

強く出てきたよ、おい。

「ちょっとアンタ、他の店は返品してくれるねんで。なんでここアカンの?」

おっと、オバチャン、勇み足だよ。書店員の次の言葉が容易に想像できる。

「ほー、お客様は以前にもこのような間違いがあったのですか?」


ね、姉さん、大事件です!!これから戦いが始まりそうです。

書店員の「ざますメガネ」がさらにキラリと光る。
他店で返品経験があるという事実を述べることでオバチャンは
他店との対応の違いを持ち出し、返品、そして返金を求める。
一方の書店員は他店のネタを出したところで、返品の常連であることを
認知する。女の戦いはこういう場面でも繰り広げられる。
少しおしっこがちびりそうになったtakam16。しかし
我慢してもう少し成り行きを見守ろう。

「そうや、アンタの店それやからハヤらへんねん。他の店はちゃんと
  対応してくれる。ここは対応してくれへん。この差は大きいで。」

オバチャンはこういうレクチャーが大好きだ。説得は精神論に終始して
いるが、どこか関西らしさが出ている。

「誤認したお客様が悪いのです。」

なかなか的を得た回答だ。お客が自分で勝手に間違えて、勝手にわぁわぁ
やっている。法的にはこの返品を店側は拒否できる。
ここで考えられる個人と事業者の法律は、
民法、消費者契約法、特定商取引法だが、どれも難しい。
店員が勧誘してモノを売ったわけではない。
お客としては、商品に欠陥やキズでもあれば主張は可能だが、
あまりにも苦しいいい訳である。
店側に一本!!と思うや否や、オバチャンに強力な助っ人が控えていた。
オバチャンの友人である。その友人はまたまたオバチャンの類であり、
さらにひとまわり大きい。

「定期購読の雑誌を取りに来てんけど。」

コテコテの常連である。書店員はこの手の常連には案外弱い。

「いつもお世話になっています。」

「ざますメガネ」の店員はこちらの予想通り、表情が一瞬ゆるむ。
よくある光景である。
すかさず次の一言を発する。

「友達がこうしてお願いしてることにウチも見過ごすわけにはいかん
 からな。この顔に免じて返品許してもらえんやろか。」

まさに逆転の1本である。あっさり決着だ。
オバチャンvsオバチャンの戦いは思わぬ助っ人の来店により
数で勝ったお客側のオバチャンの書店に対する影響力が
利いた戦いだった。

返品・返金騒ぎは書店によってまちまちだが、この書店では誤認返品
は受け付けていないようだ。
よって店員の裁量に左右されるのだが、こういう揉め事は、数が
ルールを制する場面がよくある。ましてや予想だにしない常連の
登場は書店員に迷いを生じさせた。
奥にコミック担当らしき若い女性店員もいたのだが、彼女を呼ぶべき
だった。なにせ、返品の対象はコミック文庫だったからだ。
仲でもよろしくなかったのか、疑問である。
たった1冊のコミック文庫へのこだわり。
食べ物の恨みは怖いというが、

読み物の恨みも怖いのだ。

当事者のオバチャンは無事返品に成功。友人のオバチャンも、取り置き
の雑誌「家庭画報」を入手。この雑誌、重いことで有名だが、
オバチャンの体重がその重さをかき消してしまう。
笑いながら店を去った2人。そして1人取り残された「ざますメガネ」に
既に光は失われていた。


takam16も、いいかげんこの店を去った方が良さそうだ。
立ち読み野郎と化して約1時間。
狭い店内ではこういう輩が一番目立つ。
しかも、おしっこが漏れそうとなるとなおさら周りから見た自分の
行動が滑稽に見えるだろう。

おしっこへの恨みも怖いtakam16でした。


コミックセット2  

陳列論争勃発

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takam16が即席で図を書くなどというのは、ブログでは初めて
である。ある地域では、穏やかな季節に雹(ひょう)が降ったなどという
目が点になるような話を聞いた。珍しいことをすると

「明日は雨だな。」

とはお決まりのフレーズであるが、雹が降ったのは実はこのせいでは
ないかと思いたくなる。雹の降る前日に書いた図と記事がこれだから
である。

突然何を書き出したんだ、このブログはと訝しげな表情を浮かべる読者様の
姿を容易に想像することができる。
ビルの見取り図を描きたいわけではないし、デパートの案内図であるなら、
地下が不足している。

これは、書店の棚である。そして、文庫の棚である。
しかしながら、下手な落書きになってしまった。反省である。

書店時代はコミック以外の仕入れ・陳列全般を一業務にしていたのだが、
その仕入れ・陳列で最も力を入れていたのが、文庫である。
なぜならば、
文庫陳列には手の施しようが山ほどあったからだ。



takam16は、原則的に出版社別に陳列することを好まないタイプである。
そして、本の形ごとに陳列するのはまったく合点がいかないとも思っている。



これを人は「強硬派」と揶揄する。
基本的には温厚を売りに生きているのだが、陳列の話になると俄然、語気を
荒げるぞと人は言う。マンガのDr.スランプでは、女性に触られると
トラに変身してしまう中国から来た一家の息子がいたが、
そのように思っていただいて問題ない。

文庫棚改造にはちゃんとした理由があるのだが、
本をジャンル別に分けて、ジャンルごとの
在庫に対し、どれだけ売上があったかを金額ベースで計算すると、
最も売れゆきが悪いジャンルは、文庫、新書、単行本といった類である。
ちなみに、売れゆきの良いジャンルは雑誌、コミックであり、なんでも揃えようと
する書店にはありがちなパターンである。

この文庫の在庫のわりに売れゆきの悪さに合点のいかないtakam16は、
その原因を
真っ先に出版社別の安易な文庫陳列法に求めることにした。

変更案は、陳列の原則を「著者別」に並べることである。

ちなみに文庫も新書もコミックも、出版社を基準にした並べ方が一般的である。
ただし、この中で最も手の加えがいがあるのは、やはり「文庫」である。


書店が陳列方法について教えを請う時に、出版社別にしてくれと頼むのは、
出版社や取次会社(問屋)の都合である。

また、書店は取次会社(問屋)の支店のようなものに見えるときがある。
取次会社の流通センターは著名出版社別かつジャンル別にそれぞれ本が
陳列されている。その陳列法をそのまま押し付けたのが、書店の陳列である。
それは違うと人は言うが、そう見えるのだから仕方がない。
そして書店側としても、その陳列法にNOとは言わない。なぜなら、
出版社別に陳列しておくと、管理がしやすいからである。
管理というのは、追加注文書は出版社別にそれぞれ用意されている。
出版社別にすると、注文書と照らし合わせるのは非常に簡単である。
一応、本が売れる度に書店があるレベルのPOSレジを取り入れているなら、
手持ちの、あるいは固定式のスキャナーを使って追加注文の情報を
取次会社に送信するのが、一般的な注文方法であるが、
時には、出版社・取次会社に在庫がない場合があり、そのままでは
いつまでたっても注文した本が入荷しないことも多々あるため、
あるいは担当者の追加注文忘れというミスも考えられるため
定期的に担当者は欠本チェックをする。それが前述の管理であり、
そのための追加注文書である。

本の形で管理するのも、出版社・取次会社・書店にとっては都合がよい。
POSレジは現在ではさらに進化していると思うが、
当時(2~3年前)はジャンル別での売上管理をしていた。
それらのため、文庫、新書、単行本、コミックを混ぜた陳列方法をするものなら、
それぞれに担当者がいたために、大混乱をきたすのである。
また、各担当者は自分の棚がかわいい。
それをミックスさせるとなると、そうは問屋がおろさない。
つまらないところで、わけのわからないプライドを見せつける。
魅せるのではなく、見せるのだ。
決められた区画に自分の担当の本が固まっていることが作業上理想なのである。

しかしながら、お客側にしてみれば、本の形や出版社で陳列されると、
いろいろと困ることが出てくる。
作家はさまざまな出版社から本を出すため、店内検索システムがないと
探すのに一苦労である。
同じ作家は文庫、新書、単行本と形を変えて出すことも多い。
しかし、書店の陳列は本の形別がお決まりである。

大きな書店ほどこの傾向が強い。その理由は
・担当者の持ち場が細かく分けられている
  例)○○出版社の◇◇文庫担当

・効率的に管理ができる
  例)追加注文書を使っての欠本管理

・大書店だけに出入りする出版社の営業マンが陳列に口を出す
  例)出版社別に固めていただかないと!

>
出版社や取次会社の方に顔が向いており、これでは
お客側に顔が向いていない。


一方の中規模書店はその点で言えば、小回りが利く。
もしも仕入れ・陳列担当者を細かく分けず、もっとシンプルにすれば、
そして書店側が面倒くさがらなければ、
出版社別、本の形別の陳列に妙にこだわる必要はない。

出版社別 → 作家別

への陳列方法の変更はなかなか売上の良い意味での変化をもたらす
手段であるが、

しかしながら本にも「ブランド」というものが存在する。
「レーベル」という言い方がふさわしいだろうか。
築きあげた「ブランド品」を引き裂こうとすると、
担当者の不満はもちろん、
既存客の信頼を失う可能性をおおいに
秘めている。

出版社別 vs 作家別

は、よく店員の間で話し合われることである。
店員が出版社別を好むのは変化による煩わしさと、仕事が増えることへの
不満である。さまざまな外部からの圧力もあり、出版社別が大勢を占める。


一方のお客側は、いわゆる読書家と呼ばれる人々は出版社別をよしとする
傾向が強い。また、子供の頃から出版社別に慣れており、それが習慣づいている。
ところが、店舗アンケートを実施すると、対象者が読書家であるかは定かでは
ないが、7割が作家別を希望した。理由は、

「私は出版社で本を選ぶのではない」
「探しにくい」

であった。
それが文庫棚改造案のきっかけである。


書店は(取次会社)問屋の支店ではなく、あくまでもお客と商売をしている。
出版社別、本の形別にこだわる本屋へ訪れると、そこは

まるで取次会社(問屋)に本を仕入れにでも来た気分になる。





続く....



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第58回日本推理作家協会賞候補作  5月24日受賞作決定予定

長編および連作短編集部門候補作

・「イニシエーション・ラブ」
 乾 くるみ
・「Q&A」
 恩田 陸
・「硝子のハンマー」
 貴志 祐介
・「剣と薔薇の夏」
 戸松 淳矩
・「追憶のかけら」
 貫井 徳郎


短編部門候補作

・「大松鮨の奇妙な客」 蒼井 上鷹   (小説推理12月号)
・「東山殿御庭」 朝松 健      「黒い遊園地」
収録
・「お母さまのロシアのスープ 荻原 浩 (小説新潮12月号)
・「虚空楽園」 朱川 湊人 (小説推理11月号)
・「二つの鍵」 三雲 岳斗 (ジャーロ16号)



<評論その他の部門候補作>

・「ゴシックハート」
 高原 英理
・「子不語の夢」
 浜田雄介編
・「不時着」
 日高恒太朗
・「ミステリアス・ジャム・セッション」
 村上 貴史
・「探偵小説と日本近代」
 吉田司雄編

昨年の受賞作です。

長編及び連作短編集部門    ・「葉桜の季節に君を想うということ」     歌野晶午        
               ・「ワイルド・ソウル」     垣根涼介        
短編部門            「死神の精度」     伊坂幸太郎        
評論その他の部門       ・「水面の星座 水底の宝石」     千街晶之        
               ・「夢野久作読本」     多田茂治 

本の感想をやめて本屋の話

テーマ:
今日は、突如、今年の読書お気に入りのトップランクに浮上した

宮部みゆき著 「ぼんくら」

の感想を発信しようと思ったのですが、少し気分を害することがあった
ため、急遽記事を変更することにしました。
手持ちの記事のネタは他にもいくつかあるのですが、
「ぼんくら」の感想記事に関連して、
本屋での合点のいかない陳列の話をしたくなりました。
それが気分を害することだったのですが、
感情論が先行すると、語気を荒げてしまうので、冷静に書きますれば、


「ぼんくら」の陳列場所がおかしい!!

という不満タラタラの今日の管理人であります。

何をそんなにキレちゃってるのと、読者様が疑問を投げかけるといけないので、
以下にタラタラと。


宮部みゆき著「ぼんくら」は文芸誌「小説現代」の4年間の連載ののちに
2000年に単行本として出版された、江戸時代の人情ミステリーです。
それが文庫化されたのは、2004年春のこと。

一方、2004年の年末に著者による最新刊「日暮らし」が発売されました。
こちらも同じく「小説現代」の連載を書籍化したもので、単行本です。
「ぼんくら」同様、こちらも江戸時代の人情ミステリーです。

つまり、「ぼんくら」「日暮らし」は線でつながった書なのです。
「ぼんくら」を読んでいれば、「日暮らし」をより楽しめるような作品です。
その最たる例は、両方の作品に同じ登場人物が出ていることです。
ということは、並列販売という選択が魅力的です。

ところが、いくつかの書店ではこの2冊がまったく独立した形で陳列されて
いるのです。2冊を並列販売することを本自体が望んでいるにもかかわらず、
それが離れた場所でそれぞれ売られているのです。

だいたい離れて販売する理由の答えはだいたいわかっているのですが、
あえて書店員に突撃インタビュー。

takam16
「これら2冊は一緒に並べないのですか?」

書店員
「だって文庫と単行本ですから。」

要するに、本の形態ごとに書籍というものは通常並んでおり、担当者もそれぞれ
文庫担当、書籍担当とそれぞれ存在するのであるから、
「両雄並び立たず」
という言い分であります。

同じ質問を3~4店舗で行ったのですが、皆回答は同じ。「サクラ」でもいるのか
と少々疑わしく感じたのですが、それも絵空事。


もしかしたら、担当者はこの2作品の関連性についてなにも知らなかったのかも
しれません。しかし、新聞・雑誌の書評ではさんざん同じような紹介がされて
いるはずで、書店員はそういう情報を把握していないのか、あるいは、情報を
伝えるべき問屋や出版社がその努力を怠っているのか、

もしや、タイトルの「ぼんくら」にあわせて、彼らもぼんくらになりすましている
のか? ならば恐れ入った、と手をあげるのですが、その根拠にも乏しい.....

となると、やはり各担当者の横のつながりの欠如が生んだ産物なのかという
結論を導きざるを得なくなります。
同時に、本を形を優先順位に陳列する旧来の固定観念に洗脳されているとも
考えられます。




読者の知識が書店員のそれに勝ることは多々あります。読者にはひいきの作家が
います。一方の書店員はあらゆるジャンルの作品に精通していることが望ましく、
「広く浅い知識」
が画一化した知識よりも運営上・接客上はベターなのかもしれません。

しかしながら、読書というものの可能性や普及を前提に商売をしているのであれば、
宮部みゆきの単行本「日暮らし」が文庫本「ぼんくら」を読むことで、さらに
深い楽しみが味わえるということを、棚作りをもって提供すべきであり、
本の形にこだわるのはあまりにも石頭と言わざるを得ません。

さらに、この2作品が
半村良著 「どぶどろ」の構成を参考にしているという情報を持っていたのであれば、
ぜひとも半村氏の作品もからめていただきたいし、
宮部さんが松本清張を尊敬しているという情報を書店員が持っているのであれば、
そういうフェアをどんどん組んでもらいたいのですが、
なかなかそういった含みのあるフェアにお目にかかれないのはとても残念であります。

最低でも、店舗に多くの雑誌が入荷するのであるなら、そういう記事や書評を
存分に利用することで棚作りに生かすのであれば購入者にはいささかの反対もありません。

「読者がいつまでも読者でいるための棚作り」

を書店員が放棄するのはあまりにも残酷であります。
どんな週刊誌・月刊誌の記事、書評が読み手の支持を得ているのか、また、
そういう情報収集能力をどれだけ磨いているのか、
特に新刊入荷において劣勢の中小書店は、
「人材」
で勝負する気概を持たないと将来の崩壊は約束されてしまいます。

大きな書店は苦労することなく、欲しい本が手に入ります。
そういった環境に限って、本の詳細やつながりの知識は磨かれません。

中小の書店ほど、仕入れの苦労の反面、厳しい環境が知識や教養を深めます。

現状では、この2者を埋める方法はそういったアナログな部分です。
そういった「マニア」っぽい店員にもたまには会ってみたい管理人でありました。


「ぼんくら」の感想はいつ発信することやら.....
タラタラ。  


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第12回松本清張賞城野隆さんの  「一枚摺屋(いちまいずりや)」
に決定しました。おめでとうございます。     


 


出版社 → 取次(問屋) → 書店


上記は全国の書店に本が並ぶまでの一般的なルートです。
その他、キヨスクルートやコンビニルートなどいくつかのルートは存在しますが、
近所のいわゆる「本屋」といわれるところのほとんどは

出版社 → 取次(問屋) → 書店

のルートにより、本を入荷しています。
他業界でも問屋を通じてのルートはあるものの、

メーカー・生産者 → 小売店

というルートが年々活発になり、問屋の存在価値が徐々に薄れつつある中、
出版業界における取次(問屋)の存在はいまだに「大魔神」です。


取次会社には次の4つの役割があります。
・出版社と書店の本に関する情報の受け渡し
・本の物流
・出版社からの本の仕入れと書店への本の販売
・金融業

その中で、取次ぎ会社が最も力を入れているのは、もちろん経営に直接かかわる
お金の部分、「金融業」です。ここでいう金融業とは、
出版社からの本の仕入れと書店への本の出荷により生じるお金のやりとりです。

取次会社はとにかく書店に本を多く出荷することが売上を伸ばすことにつながり、
利益につながります。
では、取次会社が売上をより多く伸ばすためにはどうすればいいかといえば、
得意先を増やすことです。では得意先を増やすためにはどうすればいいかというと、
書店を新たに出店させることです。そしてその店が大きければ大きいほど、
たくさん本を出荷することができ、売上増加につながります。


経済が急成長した時代は、中小規模ながらも書店がよりたくさんあったことと、
それらが次々と新規出店をしてくれたことで、取次会社は得意先書店を増やしていき、
同時に売上を伸ばしてきました。
しかし高度成長期が終わり、バブルがはじけ、またインターネットの普及により
従来型の書店は次々と閉店に追い込まれました。書店に閉店されてしまうと、得意先が
なくなってしまい、当然売上が落ちてしまいます。それでは取次会社は困るということで
状況は急激に変化しているにもかかわらず、財務力があり、経営体力のある大手に新規出店を
お願いし、落ちた売上の穴埋め的な意味合いもあるのか、閉店した店舗の売上分を補う意味も
あるのか、書店の数の減少の一方で、店舗面積の合計が大きくなっていきました。
もちろん小売店保護のための大店法の撤廃といった法による規制の緩和もあるのでしょうが、
それ以上に書店の大型化の理由のひとつは、取次会社の事情も大いにかかわりがあります。
別の理由を書店側から探すなら、インターネット書店への対抗策として、それのリアル版を
目指したのでしょう。


さて、取次会社の勢力図は
トーハン、日販による2つの「大魔神」による寡占状態です。その次に大阪屋が続きます。

これら取次会社、特に上位2社による仁義なき争いが、現在の書店の現在進行形です。
仁義なき争いとはどういうことかといえば、
つまり、あのメガ書店の熾烈な出店争いは、少し落ち着いて考えてみると、
取次会社同士の熾烈な争いと言い換えることができます。

メガ書店の急増
  ↓
誰が出店を望んでいるのか?
書店はどこから本を仕入れているか?
  ↓
取次会社
  ↓
取次会社の売上につながる → 利益


隣同士、向かい同士にライバル書店が並ぶ風景はめずらしくありませんが、
彼らの取次会社はだいたいがそれぞれ違う会社です。
これが
メガ書店の熾烈な出店争い = 取次会社の仁義なき争い です。


新たな得意先書店を手に入れた取次会社は、当然本を大量に出荷できるのですが、
新規書店は在庫をかかえるための本の代金を当然すぐに支払うことはできません。
そこで
「初期の在庫分の支払いは、数年先まで待ってあげるから出店しましょうよ。」
などと言うのでしょうか。このような支払い契約と、新規書店のラッシュが重なると
売上増の一方で膨大な売掛金(ツケ)を抱えることになります。
各取次会社の財務状態を見ると、腑に落ちない数字がいくつか見られます。
その最たるものが売掛金、いわゆる「ツケ」の山です。機会がありましたらチェックして
見てください。



こうした「金融業」としての手段が
「出版社からの本の仕入れと書店への本の販売」です。
本屋への雑誌や新刊書籍・コミックの出荷は以前にも述べましたが、過去にいっぱい
売ってくれた書店の実績に基づいて、取次会社がその冊数を決めるのが一般的です。



では、出版社と取次会社の関係について言うならば、こちらも当然のごとく、
大手出版社が中小出版社よりも有利な条件です。
取次会社の巨大な物流センターは、出版社ごと、書籍の形態ごとに棚が分けられているの
ですが、これらはほとんどが著名な出版社ばかりです。
ある出版社においては、取次会社の物流センターに自分の会社の本の流通を委託しているとの
解釈により、書店から出版社に直接出荷依頼をしても取り合ってくれない場合があります。

例えば、書店からお客様の注文をある出版社に電話で依頼したとします。すると、

「そういうことは全部取次さんにまかせてありますから。」

と出版社側から言われることがあります。


一方、新規出版社や中小出版社は、取次会社を通じて書店に自分の新刊を流通してもらおうと
しても、不都合な条件をつきつけられて相手にしてくれません。また、いろんな手数料を
請求されたりとただでさえ金銭的に苦しい中小・新規には非常に冷たいのがこの業界です。

そういう巨大化した勢力は弾力的ではなく、小回りも利かないため、中小・新規出版社は
別の方法を使って書店に本を流通させる方法を考えます。そして、新規出版社である
アメーバブックス社が発売している書籍が既存の取次会社を使っていないことは
注目に値します。

例えば、
「渋谷ではたらく社長の告白」  ISBN 4902843056
「実録鬼嫁日記」        ISBN 4902843048

の場合ですと、上記のISBN(国際標準図書番号)をコピーし、
以下の取次会社のサイトの詳細検索ページでペーストしてみて下さい。



大手取次ぎ会社のホームページ

e-hon(トーハン)
本やタウン(日販)
本の問屋さん(大阪屋)


取引契約がないか、在庫状況のはっきりしない結果が出ます。
または、糸井重里事務所が発行する

「Say Hello ! あのこによろしく」   ISBN 4902516020
「言いまつがい」                ISBN 4902516012 

も同じく試してください。
この2社は、既存の取次会社の流通チャネルを使わず、より新しい方法により市場に書籍を
流通させています。

例えばアメーバブックス社の書籍に関しては、リプライオリティ社という新興勢力が、
彼らの本を全国に流通させています。
リプライオリティ社は流通と同時に書店の棚の仕掛人です。
アメーバブックス社の本が店頭に妙に目立ち、そしてしっかりと売上げた理由は、
この仕掛け人による部分が大きいことは間違いありません。

本来であれば、こういう棚作りの仕掛人は既存の取次会社が行うべきです。しかしながら、
彼らはそういう顧客からの目線よりも「金融業」の仕事とそれに伴う勢力争いに力を
入れすぎました。
そして弱者や新興勢力にチャンスを与えませんでした。
おそらく、既存の取次会社よりも有利で条件がよく、小回りも利くからこそ、
別の流通業者と手を組んだと思われます。

既存の取次会社は確かに流通においても金融においても書店
に多大な影響を与えてきました。
しかしながら、その影響力があまりにも大きいがために、
その弊害が書店や出版社を苦しめていることはご自身が
一番わかっているかと思います。

書店と出版社との直取引も少しずつではありますが、いくつかでは行われています。
問題はそれを結ぶ物流経路の構築や支払い方法の簡素化です。
この物流経路をしっかりと構築することに、ビジネスのチャンスはあります。

衰退産業から新たなビジネスが生まれることはよくあります。
書店、出版社もそうですが、それをつなぐ会社を彼らは探しており、または
自身で物流もやってしまおうという考えもあります。
というよりは、そういった書店プロデュース業や物流業がもっとたくさん
登場してもいいはずです。

なぜなら、いまの書籍の流通に多くの書店が納得していないからです。



次回以降は不定期曜日に発信します

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第36回大宅壮一ノンフィクション賞稲泉 連 著 「ぼくもいくさに征くのだけれど」
高木 徹著 「大仏破壊」
に決定いたしました。おめでとうございます。


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4月20日に松本清張賞の受賞作品が発表されます。
前回は、山本兼一さんの 「火天の城」でした。この作品は、先ごろの直木賞の
最終候補作にも選ばれました。