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NEW!『財政ファイナンスという神話(前編)』三橋貴明 AJER2013.8.20(3)

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 日本文芸社「ニュースに騙されない! 日本経済の真実 」、実業之日本社「ミャンマー 驚きの素顔 現地取材 アジア最後のフロンティア 」の二冊、販売開始いたしました。



 さて、わたくしは新古典派経済学に基づく新自由主義や構造改革を批判することが多いですが、最大の理由は、彼らが「誰か(投資家、企業)」のために公共サービスを食い物にし、自分たちの所得(利益、配当金)を膨らませつつ、国民の社会を大きく(悪い方向に)変えてしまうためです。ここでいう公共サービスには、政府の事業そのもののみならず、国民の安全保障に関連する企業の供給能力を含みます。


 先日もご紹介した、ノーベル経済学者ジョセフ・スティグリッツ教授の言葉を再掲します。


「アメリカの政治制度は上層の人々に過剰な力を与えてしまっており、彼らはその力で所得再配分の範囲を限定しただけでなく、ゲームのルールを自分たちに都合よく作りあげ、公共セクターから大きな”贈り物”をしぼり取ったからだ。経済学者はこのような活動を”レントシーキング”を呼ぶ。富を創出する見返りとして収入を得るのではなく、自分たちの努力とは関係なく産み出される富に対して、より大きな分け前にあずかろうとする活動のことだ」


 ちなみに、同じくノーベル経済学者のポール・クルーグマンも、以下の発言をしています。

「所得の極端な集中は、真の民主主義とは相いれない。われわれの政治制度が大金によってゆがめられていることを、そして、少数の大金持ちの富がさらにふくらむにつれ、ゆがみがさらにひどくなっていくことを、本気で否定できる者が果たしているだろうか?」


 スティグリッツやクルーグマンが嘆いているように、アメリカでは日本に「先行」し、様々な「改革」が進められ、特に公共サービスの分野が「少数の大金持ち」の富を膨らませるために狙い撃ちにあっているわけです。


 中でも、愕然とせざるを得ない事例が、先日のチャンネル桜のコラムで取り上げ、異様に反響が大きかった「刑務所の民営化」や「少年院の民営化」です。


【明るい経済教室】マジかよアメリカ、レントシーキングでカイジ的世界が![桜H25/8/2]
Youtube:http://youtu.be/LZLFix8wxqQ
ニコニコ動画:http://www.nicovideo.jp/watch/1375424567


 クーリエ・ジャポン(http://courrier.jp/ )10月号に、「米国 USA 移民制度改革が進めば「刑務所」が儲かる?」という記事が掲載されていました。


『米国|USA 移民制度改革が進めば「刑務所」が儲かる?
 米国の連邦下院で現在、審議中の「移民制度改革法案」。この法案の行方にとりわけ強い関心を寄せ、ロビー活動を展開している勢力が存在する-刑務所業界である。
 米国では80年代に刑務所の運営が民間に委託されるようになって以来、刑務所は"美味しいビジネス"になっている。民間刑務所が受け取る予算は、収監者の人数と期間によって決まり、その金額は収監者1人当たり年間6万ドル(約600万円)に及ぶこともある。
 米国の収監者数は世界最多の約250万人で、収監者の大半は不法移民。今回の法案で注目されているのは、不法移民のうち一定条件を満たす者には米国民になる道を拓くという内容だ。一見、不法移民に配慮した政策に聞こえるが、一方でこの法案は、国境監視や不法就労の取り締まりを強化する内容も含んでいる。だから業界はこの法案の成立を推しているのだ。
 低賃金労働者を支援する団体「エンセラ」の代表、ピーター・セルバンテス・ゴーチによると、近年、些細なトラブルが原因で不法滞在者が数年に及ぶ懲役刑に処されるケースが増えているという。また、よくあるのが不法移民の米国への再入国だ。「以前は起訴の対象にならなかったが、いまでは最高3年の実刑を言い渡される。強制送還では、刑務所が儲かりませんから」とゴーチは指摘する。(BBCムンド(UK)より)』


 信じがたいことに、アメリカの刑務所の民営化において、「民間刑務所株式会社」の売上は「稼働率」で決まってきます。要するに、刑務所の場合は収監者が多ければ多いほど、「民間刑務所株式会社」の売上が増える仕組みになっているのです。


 ちょっと待っていっ! 

 と、心の底から言いたいわけです。何しろ、刑務所の稼働率が低い、すなわち収監者が少ないということは、社会的に見れば「素晴らしいこと」です。何しろ、犯罪者が減っているという話なのです。 


 ところが、社会の治安が改善し、刑務所に送られる犯罪者が少ないと、民間刑務所株式会社の売上は減ってしまいます。不法移民で言えば、強制送還するよりも、実刑を食らわせて刑務所に放り込む方が、民間刑務所株式会社は「儲かる」という話になります。


 コラムでも語りましたが、これって普通に「人権侵害」と言いませんか?


 ちなみに、日本の犯罪統計の最新版を掲載しましょう。


【日本の犯罪認知件数、検挙件数、検挙率(右軸)の推移】
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http://members3.jcom.home.ne.jp/takaaki.mitsuhashi/data_43.html#Hanzai


 平成24年(昨年)までのデータですが、相変わらず我が国の犯罪認知件数は減り続けています。すなわち、日本の治安は改善していっているのです。


 これは、社会的に見て「大変すばらしいこと」ですが、犯罪が減り、犯罪者も減ると、刑務所の刑務官(公務員)は暇になります。刑務所への収監者が少なくなると、当たり前ですが、刑務官の仕事は減ります。その事実を知ったとき、
「ああ、刑務官という公務員が暇になっているんだ。素晴らしいことだ
 と、考えるか、
「公務員の刑務官が暇を持て余し、給料泥棒と化している。許せない!
 と、考えるかの違いで、「公共サービス」を理解しているか否かが決定的に明らかになるという話です。


 そして、公共サービスを理解しない側は、アメリカというか新自由主義の尻馬に乗り、刑務所のPFI(すでに日本でも始まっています)や株式会社化(言っている人がいます)を言い出すわけです。恐らく、刑務所のPFIや株式会社化を叫ぶ人たち自身は、「善意」に基づいており、自分が正しいと信じているのでしょう。とはいえ、彼らの「背後」には、刑務所の民営化で「利益」を得る「誰か」が必ず存在しているという話です。


 刑務所を株式会社化すると、何しろ株式会社は「利益」を得なければなりません。利益を増やすには、以下の流れがまことに理想的です。


刑務所の稼働率を高めることで、売上を拡大する(予算の源である税金を払う国民と、無理やり刑務所に放り込まれた収監者が損をする)」


「刑務所の収監者を、超低賃金で派遣労働に出す(非人道的な労働を強いられる収監者と、「刑務所株式会社」と競合することになる民間の派遣会社が損をする)」


 実際に上記が発生しているのが、現在のアメリカなのです。


 繰り返しますが、犯罪が減り、刑務官が暇になるということは、社会的に素晴らしいことです。それに対し、民間刑務所株式会社の利益を膨らませるために、刑務所の稼働率を引き上げるインセンティブが働く社会は「異常」です。


 日本人であれば、現在のアメリカの状況について、「異常に思わない方が、異常」だと思うわけですが、そう考えるわたくしが「異常」なのでしょうか?

 皆さんは、どう思いました?


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