リンは仕事の合間にパソコンでレポートを作成していた。
途中、恵とランに手伝ってもらい、ようやくまとまってきた。
客足も落ち着いたので買い出しに行く、とリンは″セブン″を出ていく。
商店街で買い物をしているリンは実感していた。
ああ、平和だ。
勝ち取った平和。
こんなにも尊いとは。
「よ、リン」
「……将児!」
トレーニング中の将児が声をかけてきた。
「1週間ぶりだな」
「早い再会ですね」
2人の前に、大五と知が現れた。
知は瀬山豆腐店に、大五は気分転換に訪れたようだ。「何だか、解散した感じがしないアル」
「そうだな……」
こう出会ってしまうのも、まるで運命とでも言うような奇遇さである。
「今日に限って、こうも偶然が重なるなんてな」








ーーーーーよく晴れた、小春日和な冬の日。
午後2時36分。
世界が揺らいだ。
言葉通り、空間そのものが揺らいだような感覚。
どんよりと、一瞬だけだが揺れたのだ。
リン達もそれを感じていた。
「今のは、何アルか?」
「わからん。しかし、何か起きている……」
ゴーマの仕業。
少し前なら、そう考えただろう。
しかし、今やゴーマを阿古丸が統治している以上、突如襲いかかるとは考えにくい。
「大変だぁぁッ!」
大声を発しながら、走ってくる人物。
4人は当然のように、向かい入れる。
『亮!』
「怪人だ…………怪人が現れた…………」
まさか。
本当にゴーマが寝返ったなんて。
「どこにゴーマが?」
「違う。ゴーマじゃねえ…………あれ観ろッ!」
家電製品店のテレビを観る5人。
そこには、臨時ニュースとうたった放送がされていた。
「本当だ…………怪人だ…………」







″臨時ニュースです。ただ今、未確認飛行物体と巨大未確認生物が世界中に現れています″











街を破壊する怪人。
左腕が蛇のような長い触手で、右腕が鉄球のようになっている。
「地球人ども、この星は宇宙帝国ザンギャックが支配するッ!」
怪人の上空には、宇宙戦艦と思わしき艦隊がいる。
その数は、把握しきれない。
「ハハハハハッッ!。栄光なる帝国の行動隊長・スペリンガーに殺されるのをありがたく思えッ!」
街を蹂躙するスペリンガー。
逃げ惑う人々。
その横を、黄色いバスが通過していく。
同時に、現場に到着した亮達。
″天宝来来の玉″がないため、気伝獣は呼べない。
それでも、自分達がやらなければならない。
解散を撤回し、再びダイレンジャーとして戦う時がきたのだ。
「よぅし、みんな転…………」
「亮、前を見てみろ」
将児に言われ、亮は前を見る。
すると、そこには自分達と同じくらいの歳の5人の男女が立っていた。









「Oooooh。大きいネ」
日本人とは若干異なる青年が言う。
「妖怪じゃないのね」
「違うけど、ブッ倒しちまえば関係ねえさ」
「ザンギャックだか何だか知らねえが、平和を乱す奴は許さねぇ」
青年達が一同に言うと、中心にいる少女。
リンよりも、更に年下と思わしき少女が前へ出る。
「みんな、行くわよ」
「待ってくれッ!」
5人が何かを出した時、亮達が駆け寄った。
「君達はいったい…………」
亮はバンダナを巻いてる青年へと話しかけた。
「あんた達こそ…………ん?5人…………″スーパー戦隊″なのか?」
ジェットマン・ジュウレンジャーのように、平行世界にはその世界を守る戦隊がいるという。
彼らもそのようだ。
「いったい何が起こってるんだ?」
「俺達にもわからねぇんだ。だが、目の前に平和を脅かす怪人がいるなら、やることは決まってる」
そう言うと、青年達は先歩取り出した印籠のようなものを握りしめる。
少女は、コホンとした後に呼吸を整える。

「気を取り直していくわよ……スーパー変化ッ!」
『ドロンチェンジャァァァッ!!!!!』
印籠型の変身道具・ドロンチェンジャーが光ると、青年達をダイレンジャーによく似たスーツが包む。
赤・白・青・黄・黒の配色で、背中に刀を背負っている。
「ニンジャレッド・サスケッ!」
「ニンジャホワイト・鶴姫ッ!」
「ニンジャブルー・サイゾウッ!」
「ニンジャイエロー・セイカイッ!」
「ニンジャブラァック・ジライヤァッ!」
名乗りをあげ、ニンジャレッドが二本指をスッと顔の前から胸にかけてきっていく。
「人に隠れて悪を斬るッ!忍者戦隊…………」
『カクレンジャー、見参ッ!!!!!』
忍者戦隊カクレンジャー。
それが彼らの名なのだろう。
亮は大五達と目を合わせた。
もしや、ありえるかもしれない可能性を全員が考えていた。
5人は天に手を伸ばし、大五が真っ先に口を開いた。
「現れよ、″天宝来来の玉″ッ!」
それは奇跡か。
いや、必然だろう。
″天宝来来の玉″が飛来し、亮達の下へと戻ってきた。








″お互いが争いながら永遠に生きていく。これすなわち、人間の宿命なのだ″






「そうか…………すべては繰り返す。地球の平和を守るために人は、永久に戦い続けるんだ……」
形を変えながらも、善と悪の戦いは続いていく。
善が善たりえるように。
悪が悪たりえるように。
お互いの存在理由が、確立されるために。
亮はそれを悟り、スペリンガーを見る。
「みんな、行くぞォォッ!…………気ッ!」
「力ッ!」
「転ッ!」
「身ッ!」
「了ッ!」
『オーラッチェンジャァァァッ!!!!!』
5つ星のエンブレム。
赤・緑・青・黄・桃の配色。
「天に輝く、5つ星ッ!五星戦隊…………」
『ダイレンジャァァァッ!!!!!』
再び、ダイレンジャーが結成された。
二大戦隊を前に、スペリンガーは腕を振り上げる。
「おのれダイレンジャーにカクレンジャー。叩き潰してやるッ!」
「そうはいくかッ!。気伝招来ッ!」
「隠流・巨大獣将の術ッ!」







若葉台小学校では、避難場所となるための準備がされていた。
学校ないし街の警備には、サーガレンジャーがあたる。
先程、電波ジャックによる宇宙帝国ザンギャックによる地球への宣戦布告。
この街にも、少数ながら艦隊の一部が来ている。
阿修羅王が構え、戦いまでいよいよといった時が迫っていた。
その頃、屋上でコウと元ダイレンジャーキッズの面々はそれを眺めていた。
「″天宝来来の玉″、還ってきたのは僕だけか」
当然ではあった。
もはや、普通の人間に戻った由貴達は転身どころか気力さえ使えない。
「強い気がたくさんある」
その中には、ジェットマンやジュウレンジャーも含まれている。
ダイレンジャーも復活した。
恐らく、この戦いのために結集したのだろう。
「何が起きてるの?」
「わからない。だけど、これはジェットマンの世界と融合しかけた時と似てる」
世界の融合。
一つや二つではない。
あらゆる世界が融合したと、コウは悟っていた。
「みんな、僕は征くよ」
見送る事しかできない。
本当なら一緒に行きたいが…………。
「こっちは俺達に任せろ」
気力カートリッジをつけた、スターサブマシンガンを持つ健一。
虞翻により、有事の際に護身用としてもたされていたものだ。
やるべき事、望む事。
自分の精一杯で、現在に挑んでいく。
キッズ達は力を失ってなお、その心を失わない。
それが、培ってきた彼らの力…………諦めない心なのだ。
「任せるよ」
「コウ君も頑張って」
由貴に激励を受け、コウは頷いた。
白虎真剣を持ち、キバチェンジャーを用意した。
「行くぜ白虎ッ!」
「合点でいッ!」
「気力転身、キバ…………チェンジャァァァッ!」
キバレンジャーへ転身したコウ。
校庭にはウォンタイガーが来ており、キバレンジャーは飛び移った。
そのままキバレンジャーはウォンタイガーと共に、ダイレンジャーと合流すべく進んでいく。
新たな戦いを前に、若き白虎は吼えるーーーーー











大連王と、カクレンジャーが乗り込む無敵将軍。
連携しながら、スペリンガーを圧倒していた。
大王剣を引き抜き、幕を下ろすべく刀身に気力を集中させていく。
『大王剣・″疾風怒濤″ッ!!!!!』
同じように、無敵将軍も燃え盛る業火の刀を取り出していた。
『″火炎将軍剣″ッ!!!!!』
過剰とまで言える、圧倒的威力の斬撃。
スペリンガーは爆発四散し、二大戦隊は地上へと降り立った。
「やったな、カクレンジャー」
「ああ。だが…………」
上空には、ザンギャック艦隊が集結しつつあった。
そこから雨のように降下してくる雑兵・ゴーミン。
灰色の兵隊達が、ダイレンジャー・カクレンジャーの前に立ちはだかる。
「何て数だ…………」
「だけど、俺達は敗けねえ。行くぜダイレンジャー」
「ああ。みんな、行くぞォォッ!!」
二大戦隊は何万といえる兵に向かっていく。
その後、彼らを含めた34のスーパー戦隊が2億艦と5億の兵隊と衝突した。
圧倒的不利でも、地球の平和を守るためにーーーーー









かくして、ダイレンジャーの物語は終わる。
しかし、地球の平和を守るための戦いは永遠に続いていく。
光あるところに闇があるように。
互いが存在するために。
けれども、諦めてはならない。立ち止まってはならない。

歩き続ければ、道は拓いていく。
未来への道は、きっと。












ーーーーー完ーーーーー