究極の物理勉強法~たとえ話と微積分で高校物理が楽しくなる

物理の予備校講師で『微積で楽しく高校物理が分かる本』の著者の田原真人が、物理の学び方のコツを紹介。物理が分からない人は、公式を丸暗記するのを止めて、解法体系を学びましょう。必ず道が開けてきますよ。


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今、アメリカの教育界では大きな変化が起こっています。

その変化は、「革命」と言ってもよいほどのものです。

いずれ変革の波は日本にも訪れるでしょう。

その変化をポジティブに受け止め、よりよいあり方を模索していきたいと思っています。


反転授業(Flipped Classroom)とは何か?

伝統的な授業スタイルは、次の順序で行われます。

1)教室で講義を行い、知識を伝達する
2)家で復習し、知識を定着させる

それに対して、反転授業(Flipped Classroom)では、教室と家の順序を反転させます。

つまり、

1)家で動画講義を受け、知識を習得する。
2)教室では、学んだことをもとに議論したり、発展的な内容を行ったりする。

という順序になるのです。


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出展 Flipped Classroom infographic

このようなことができるようになった背景には、

・IT技術が進歩し、簡単に動画講義や、E-Learnng教材を作ることができるようになった
・Youtubeなどの動画共有サイトが生まれ、簡単に生徒に配布することができるようになった

ということがあります。

このような状況が整ったのは、つい最近のことですから、今、まさに、新しい教育の可能性が生まれつつあるという状況なのです。


反転授業(Flipped Classroom)のメリットとは?

ところで、講義と家での学習の順序を反転させると、どんなメリットがあるのでしょうか。

僕は、2つのメリットがあると思います。

1つ目のメリットは、知識習得の効率が上がるということです。

E-Learningが始まったばかりのときは、「リアルの講義のほうが、E-Learningよりも優れている」というように信じられていました。

ThinkBoardを使った講義を作る前は、僕もそのように考えていました。

しかし、実際に物理ネット予備校でThinkBoard講義を配信し始めると、いろいろなことが分かってきました。

そこには、リアルの講義では不可能な受講方法があったのです。

受講生は、

・2倍速で講義を聴く。
・何回もくり返し講義を聴く。
・分からないところがあれば、その部分の講義を聴きなおす。
・最初に全体を4倍速で見て全体像をつかんでから、最初から2倍速で聴きなおす。

というようなやり方を見出し、リアルの講義で勉強するよりも、はるかに効率的なやり方で勉強しています。

この様子を見て、「知識の習得」という点については、E-Learningのほうがはるかに優れているのではないかと思うようになりました。

今年から、全講義をスマートフォンで見れるようにしました。

そうすると、受講生は、電車やバスの中でも講義を受けることができるようになり、今まで使えなかった授業を「知識習得」の時間に使えるようになりました。

E-Learningで知識習得するというのは、リアルの代替として、仕方なくすることではなく、明らかにリアルの講義よりもメリットが大きいのです。

※カーンアカデミーのSalman Kahn氏も、直接教えるよりも、YoutubuにUPした動画講義のほうがありがたがられたという体験をTEDのビデオの中で話しています。


授業をアウトプットの場として使うことができる

知識というのは、頭に入れただけでは使えるようになりません。

それを、実際に使ってみて、失敗したり、成功したりしながら使えるようになるのです。

伝統的な授業だと、知識のインプットに時間がとられてしまい、アウトプットする場というものを作るのが困難でした。

ところが、反転授業では、教室を徹底的にアウトプットの場として使うことができるのです。

問題の解き方をみんなで考えたり、
なぜそのように解くべきなのかを議論したり、
より発展的な内容について考えたり、

知識をどのように使うのかを、教師が見守っている空間の中で育むことができます。

この場合、教師に必要なのは、

・アウトプットすることを奨励すること
・議論を正しい方向へ誘導すること
・生徒の習得度を確認すること

などになるでしょう。

教師に求められるスキルも、自ずと違ってきます。

教える者 → 見守る者、励ます者

という役割の変化が求められると思います。



反転授業(Flipped Classroom)の効果は?

では、反転授業は、実際に効果が上がっているのでしょうか。

アメリカの教育省の調査では、

E-Learningだけ、または、教室の授業だけ、よりも、その2つを組み合わせたほうが学習効果が大きい

という結果が発表されています。

これは、全く意外なことではありません。

効率よく知識をインプットできるようになり、さらには、今までは持つことができなかったアウトプットの場を持つことができるようになるのですから、当然、学習効果は上がると思います。

伝統的なやり方よりも、大きな効果が現れていることが実証されているのですから、今後、反転授業(Flipped Classroom)は、拡がっていき、教育の方法論、教師のあり方を大きく変えていく可能性が大きいと思います。


反転授業(Flipped Classroom)の問題点

今までは、反転授業の良い点を述べてきましたが、今後、解決していかなければならない問題もあります。

それは、次のようなことだと思います。

(問題点1)予習用の教材を作成するのに労力がかかる。
(問題点2)反転授業を行うために、教師が新たなスキルを身につける必要がある。
(問題点3)E-Learning教材のコンテンツメーカーが、どうやって「教室」を確保するか。

以下、順に考えていきたいと思います。

(問題点1)については、2つの解決方法があると思います。

1つ目の解決法は、自分で簡単に作る方法を追求するという方法です。

動画作成の場合、撮影場所が限定されるというデメリットはありますが、黒板やホワイトボードに書いて説明するので、普段やっている感覚で作ることができるというメリットはあると思います。

一方、僕が使っているThinkBoardのようなペンタブレット形式のものは、自分が画面に出ないため、コタツに座ってパジャマを着たまま、家で講義を作ることができます。出来上がった講義は、画面全体がホワイトボードになるので、動画よりも内容に集中しやすいというメリットがあります。

スマートペンを使えば、クオリティは下がりますが、さらに簡単に作ることができるようです。

2つ目の解決方法は、安価で手に入れることができる動画講義ライブラリを作り、それを、共有するという方法です。

アメリカでは、ビルゲイツ財団の支援の下、Kahn Academyが立ち上がり、すでに2200もの動画講義がストックされています。

これらは、すべて無料で視聴することができます。

Kahn Academyの主催者であるSalman Kahn氏は、すでに反転授業の重要性に気づき、Kahn Academyを利用した反転授業の普及を、次のステージとして取り組んでいます。

日本に反転授業が導入される場合、Kahn Academyのように動画講義ライブラリーが作られていく流れになるのかどうかは分かりません。

自分自身も、ここにどのように関わっていくべきなのか、まだ、決めかねている状況です。


(問題点2)については、反転授業に興味がある教師が勉強会を開くなどして、情報交換をしたり、セミナーなどを行ったりということになるのでしょうか。

本格的に導入されていくステージになれば、大学の教育課程の段階で、反転授業の進め方についての学習が必要になってくると思います。

(問題点3)は、僕のように「ネット予備校」を運営している者が、どうやって反転授業を導入するかということです。

E-Learning教材は、すでに作成済みですが、受講生は、世界中に分散しているので、リアルの場で集まって、グループでアウトプットするということは不可能です。

そこで考えているのは、VoiceLinkのようなオンラインミーティングルームに集まり、そこに、アウトプットの場を作るというアイディアです。

VoiceLink

オンラインミーティングルームで、実際に、「反転授業」としての効果をあげることができるのか、2013年には実験段階に入りたいと思っています。


変化を恐れず、今までよりも良いものを作り上げたい

反転授業のことを知ったときに、これをきっかけに、教育にな変化が生まれるということを実感しました。

伝統的なやり方にも、もちろん良い部分もあるでしょう。

僕も、教室で生徒の顔を見ながら講義するのが好きです。

まだ、実現していない「反転授業」と、すでにある程度の価値を感じている「旧来の授業」とを比較するのは難しいです。

でも、新しいものへの挑戦から、良いものが生まれてくる可能性があるのなら、挑戦したいです。

インプットとアウトプットをバランスよく行うことができること、アメリカでの成功事例、Kahn Academyの存在、僕の物理ネット予備校での経験、それらは、反転授業が、今後、日本でも広がっていく可能性があることを示しています。

その中で、自分の経験をどのような形で生かしていくのか、どのような形で貢献できるのか、2013年には、具体的な行動へ落とし込んでいけるように、今は、脳に汗をかきかき、進んでいこうと思います。

僕の反転授業についての思索は、ブログ「反転授業の研究」にまとめています。

最後に、カーンアカデミーのSalman Kahn氏が、TEDでしゃべっている動画を紹介します。
教育に関心がある方は、ぜひ、このビデオを見てみてください。

Salman Khan: Let's use video to reinvent education


参考ページ
山内祐平教授 講義が宿題になる~カーンアカデミーが変えた講義と宿題の関係
ThinkBoard
スマートペン
物理ネット予備校
Kahn Academy
VoiceLink
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