ほっと、break ~ 小説にトライ!編 -10wa
クローバー「センパイったら、なに一人でニヤついているんですか?」


「えっ、あっ、いや別に」

いかん。つい感情が顔に出てしまった。


「さっきもなんだかおかしかったですよ、センパイ」


「さっき?」


「そ。さっき、電車の中で。なんだか落ち着かない様子でそわそわしちゃって」


「ずっとみてたの?」


「ええ、ずっと。だってセンパイおかしいんだもん。目の前の空席ジーッと見つめて座るんだか座らないんだか、もーハッキリしろーって心でツっこんじゃったじゃないですかぁー」


とケラケラ笑う笑顔もまた可愛い。


「なんだよ、見てたのなら声をかけてくれればよかったのに。まったく人が悪い―――」


―――えっ、空席?目の前の、空席?この娘今確か目の前の空席って言ったのか?


「ちょ、ちょっと、えっと、根、岸、さんだっけ」


「ひろみでいいですョ。大野センパイ」


「じゃあ、ひろみちゃん。俺の前の席が空席だったって?」


「えぇ、誰も座っていませんでしたよ」


キョトンとして少しとまどったようなこの表情もまた素敵だ。


「それはないよ。だって居ただろ、男がずっと」

僕は少し苦笑いをしながら聞き返した。


「なにそれー。もー、西宮からずっと空席の前に立ってたじゃないですか。からかってるんですか?センパイ」


「いやいや、そんなつもりはないって。でもほら、俺の目の前の席に30代ぐらいで白いシャツに茶色っぽいジャケットを着た男が座ってたじゃないか」

そのとき僕は ふと、あることに気がついた。


あっ、そうか。この娘のいた場所からは死角になっていて、あの男の姿が見えていなかっただけだ。

なんだ、そうか。きっとそうに違いない。


僕は少しホッとして、小さく息をはいた。


「まぁ、そんな事はどうでもいっか。でもあの男、一瞬どこかで見たような気がしたんだよなぁー。誰だったっけなぁ。んー、やっぱり・・・気のせいかな」

と言いつつ根岸ひろみの方に目を向けた。


「美輪先生。」


「えっ」      クローバー


                                          ――――――つづく

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次回『最終回』をお楽しみに!!ニコニコ






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ほっと、break ~ 小説にトライ!編 -sowa9
クローバー――六甲道、六甲道ぃぃ~、お降りになる方を先にお通し下さい――


駅のアナウンスがホームに響きわたる。


着いた。

なんか、逆にどっと疲れた気がする。


発車する電車の窓から、振り返って窓の外を眺める あの男の顔が見える。


いったいなんだったんだ、あの男は―――


結局、芦屋では降りなかった。

次の甲南山手でも、その次の摂津本山でも、住吉でも、そしてこの六甲道でもあの男は降りなかった。

ただそわそわと、不安げにあたりを見回すばかりだった。


大失敗だったな。まったく今朝はついてない―――


重い身体を引きずって、ホームから駅の改札へ向かおうとしたところで僕は急に呼び止められた。


「せんぱ~ぃ、大野先輩!」


声のした方を振り返ると、うちの制服を着た女生徒が1人、こっちに向かって走ってくるのが見える。


「せんぱ~ぃ、ちょっと待って下さいよォ~!」


息を切らせて駆け寄るこの娘は・・・えーっと、誰だっけ?


「お、おはよう。」

とりあえず笑顔であいさつしたものの、名前がまったく思い浮かばない。


「おはようございます、センパイ! 1年5組、根岸ひろみです。」


ん?自己紹介?なんで?

もしかして初対面?いやいや、そんなはずはない。

だったらこのフレンドリーさの理由がつかない。


「もー、センパイったら急に電車降りちゃうんだから私もうビックリしちゃって、急いで追いかけて来たんですよー。」


「えっ、だってここ、学校のある六甲道だぜ。」


「あっ、なんだ、そっか・・・ てへへ」


変な娘だ。が、ちょっと可愛いな。

まぁ、向こうは1年生みたいだし、僕が知らなくてもクラブの後輩とかの知り合いで僕の事は知っているのかもしれない。

今も通学にはまだ慣れてなくてうっかり電車を乗り越しそうになったところ、学校で見かけた僕の姿を見つけてあわてて自分も電車を降りてきたのだろう。


それにしても朝からこんな可愛い娘に声を掛けられるなんて、今日の僕はなんだかツイてるーっ!―――クローバー


                                          ――――――つづく

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※作者都合により更新が4/18まで1週間伸びてしまいそうです・・・

申し訳ないです。

最終回まであと2回(たぶんにひひ

次回をお楽しみに!!ニコニコ



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ほっと、break ~ 小説にトライ!編 -sowa8
クローバーしかしこの男、先ほどからヒマにまかせてずっとその様子をうかがっているが、どこかおかしい。

いや、どこがって訊かれてもよくわからないが、妙な違和感を感じるのだ。

どこかで見たような気もする。


誰だっけ? いやいや、こんな男は知らない―――


少しうつむき加減に座っている男を上から見下ろしている僕には真正面からその男の顔をとらえる事はできないが、どこにでもある、あまり特徴のない顔。そんなふうに思える。


時おり不安そうに後ろを振り返っては窓の外を眺め、どこか悲しげな表情を浮かべてうつむく。

そわそわと、この動作を幾度となく繰り返すこの男に、まわりの人たちは何も感じないのだろうか。

それほどオーバーなアクションをしているわけではないにしても、誰もこの男のことを気にも留めていない。

どちらかといえば、僕の方がさっきからチラチラと見られているような気がするのは気のせいだろうか。


と、突然、目の前の男と視線がぶつかりギョッとした。

さっきまでうつむき加減だった男が急に顔をあげたのだ。

僕はハッとして我に返った。

どうやら自分の考えに少し気を取られすぎて、その間ずっとこの男を凝視してしまっていたようだ。


き、気まずいぞ。早く目をそらさなければ―――


だが、そんな動揺した僕の態度にはお構いなく、男はじっと僕を見上げたまま動かない。

そして僕の目をじっと見つめている。

僕の目をじっと、じっと・・・ん?

じっと見て――いないのか?


その男のうつろな眼差しは、僕の目を頭ごと通り抜け、そのまだずっと先の空間を見つめているようだった。

その目に生気は感じられない。

そうとう疲れているのか、それとも何か深刻な悩みでも抱え込んでいるのか、じっと空を見つめたまま動かなくなってしまった。


電車はあと数十秒もすれば芦屋駅に到着する。

さすがに各駅停車だからか、乗った時よりも若干乗客が少なくなったような気がする。

おしゃべりする者もなく、ガタゴトと電車の揺れる音だけが車内に小さくこだまする。


嵐の前の静けさか―――


決戦の時は近い。


僕は男から目をそらし、窓の外を流れる景色の遥か遠くを眺めながら小さくひとつ、深呼吸をした。


そして再び男の方に視線を戻し、祈るような思いでそっと目を閉じた。


芦屋だ。


                                          ――――――つづく

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ほっと、break ~ 小説にトライ!編 -9



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