2010年01月27日(水)

たった1人の採用枠に応募者4600人

テーマ:経済・社会

今年になって一番驚いた新聞記事がこれだ。


1月6日の日経新聞夕刊の第9面「さらりーまん 生態学(いきざまがく)」と題する作家幸田真音さんのコラムである。


幸田さんは元金融業界出身で、華々しく作家としてデビューし、最近テレビでもよく見かける人だ。リーマン・ショック以降、職場を追われた金融業界の知人が何人もいていまだに就職先が見つからない状況が続いているという記述に続けて、就職先を探してもないのなら、自分で会社を作るしかないとベンチャー企業を立ち上げた友人の話が出てくる。


「起業に際して一緒に手伝ってくれるスタッフを募集したところ、たった1人の採用枠に、なんと4600人あまりの応募があったとのこと。しかも、応募者はほぼ全員が大卒以上、さらに半分近くがMBA取得者だったというから、驚きである」


これを読んでこちらが驚いた。一緒に手伝ってくれるスタッフをどのような形で募集したのかが書かれていないため何とも言えないが、まず思ったのが「本当だろうか?」という疑問だった。大々的に新聞広告でも打たない限り、こんなに多くの人たちがその応募枠を嗅ぎ付けて応募するとは思えなかったからである。手伝ってくれるスタッフ1名をそんなに大々的に広告するだろうか、と。


しかしながら、少々の誇張があるにせよ(数字が明確に書かれているため、実話だと思うが)、これは昨今の雇用情勢を端的に示すショッキングな話である。


ところで、人材募集など全くおこなっていない弊社でも見知らぬ人が勝手に応募してくるケースがある。よくあるのがメールで簡単な挨拶と履歴書が添付されたものが突然送られてくるケースだ。現在、別の職場で働いている転職目的の人からのもの、失業している人からのものの両方である。残念ながら丁重にお断りしている。金融業界はリーマン・ショック後にドカンと大きなリストラを実行して以来、ほとんど求人をおこなっておらず、出された側が求職活動をしてもほとんどポジションがない状況であり、弊社のようなところにも問い合わせがくるわけである。


一方で、面白いことに少数ではあるが「求人」と称してなぜか弊社にコンタクトを取ってくる人たちもいる。今日もさる人材紹介の会社から突然の電話を受けた。「米国の○○ファンドという独立系の会社が運用担当者を探しているのですが、どうですか?」という話だ。私自身、自分の会社を立ち上げて運営し、かつ、もはや雇われの身で働くことは全く考えていないので早々にお断りする。そしてあれこれと雑談をしていた時にこれまたショッキングな話を聞いたのである。


「人材紹介の業界も非常に厳しいです。去年1年間で40%もの会社がなくなりました」「人材の流動化が全く起こっておらず、マーケットの収縮が著しいです」「家賃が払えない会社、秘書の給料すら払えない会社が多くて、どんどんクローズしています」とのことである。なるほど、失業者の就職がままならなければ、それを斡旋する側も仕事がないわけである。雇用情勢が完全に従来のトレンドから異質化しているのを感じさせられる出来事である。


これまでは実に多くの外国人が仕事の需要のある日本に労働にやってきたが、これからは日本人といえども自国をあきらめて需要が急拡大中の新興国に出稼ぎに行かねばならない時代にきているのかもしれない。


太田忠の縦横無尽 2010.1.27

「たった1人の採用枠に応募者4600人」

        **太田忠投資評価研究所のHPはこちら**


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