2009年06月06日(土)

ピアノにとって最も重要な「湿度管理」

テーマ:音楽

5月の下旬から一気に湿度が上昇し始めた。音楽スタジオを主宰している私にとっては大敵である。湿度の急激な変化はピアノに非常に大きなストレスがかかり、コンディションが狂ってしまうからだ。


5月20日過ぎからスタジオの湿度計は60%を越え始めた。そして日によっては68%くらいにまで上がることもある。一般的な話をすると、ピアノの最適環境は湿度45-55%の間であり、60%を越えるとピッチが猛烈に上がり始める(逆に30%台に下がると、ピッチは急激に下がる)。A=442Hzというコンサートピッチを基準にすると、ピッチの変動幅は±4cent程度に収まるのが理想的だが、ひどくなると±20centという耐えられないような状況になることもある。


湿度が変化すると、ピアノの響板に膨張・収縮が起こり、弦の張力に影響を与える。湿度が上がると、響板が湿気を吸って膨張し、弦が引っ張られる形となるため、とくに中音域を中心にピッチが上がってしまう。逆に乾燥すると、響板から水分が抜け、収縮することによって弦が緩められることでピッチが下がるのだ。ひどい状況になると響板が割れたり、ピン板に亀裂が走ったり、ハンマーのフエルトやクロス類が痛んでピアノの寿命を縮めることになる。


全館空調システムを導入しているため、室内温度は年間を通じて20~24度と一定だが、湿度の変化が大きいのが難点だ。だが、温度が一定なため湿度の変化によっていかにピアノも変化するのかがよくわかる。2年前にスタインウェイを入れてからは湿度管理を徹底するようになり、乾燥時には加湿器、湿気の高い時期には除湿機を使って湿度管理をおこなっている。


先週からは除湿機の出番となった。5リットルの水を貯めることができるタイプのものであるが、1日に2回満タンになり、水を捨てないといけない。すなわち、室内から10リットルもの水を排除して、ようやく湿度が50%近くにまで下がるのだ。一方、冬場は1月10日前後に湿度は30%を切る水準にまで下がるため、12月頃から加湿器を使う。加湿器といってもいろいろなタイプがあるが、単に蒸気が出るスチームタイプのものでは全くダメで(一般家庭が使うタイプとしてもお勧めできない。水蒸気は空気に溶けずに床が濡れていることもあり、加湿といっても単なる「気休め」にしかならない)、水蒸気が余すところなく空気に溶け込んでいく気化式のものを使う(水蒸気は見えない)。10リットルの水を一度にセットすることができる大型タイプだが、これも1日もたたないうちになくなってしまうのだ。そして、3月の中旬頃になると湿度は45%程度にまで急回復し、加湿器は役目を終える。


一方で、温度による変化というのは湿度に比べると実はあまりピアノのコンディションに影響を与えない。以前住んでいたところは全館空調がなく、夏場と冬場の温度差が20度以上あるところだったが、逆に過乾燥になったりしなかったので、ピッチの変化は思ったほど大きくなかった。


それにしても、一つ驚いたことがある。以前使用していたヤマハのピアノ(C3E)は一度ピッチが狂うと調律しない限り音程のずれは修正できなかったのだが、スタインウェイのピアノ(C-227)は湿度が適性レベルに戻るとピッチも戻るのである。いや、まさに生きている!という感じだ。


太田忠の縦横無尽 2009.6.6

 ピアノにとって最も重要な「湿度管理」

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