ジャンボ宝くじ1等当選確率=交通事故で450回死ぬ確率 | 太田忠の縦横無尽

ジャンボ宝くじ1等当選確率=交通事故で450回死ぬ確率

宝くじの季節がやってきた。

またあのいかがわしい浮かれたCMとともにやってきた。

 

「今年のドリームジャンボ宝くじは、1等が2億円、前後賞が各5000万円で、1等・前後賞あわせて3億円が当る超大型賞金が魅力の宝くじです。当せん本数は、1等が27本、続く2等も1億円が81本用意されており、1等の27本と合わせて108人もの億万長者が誕生します。また、3等1000万円も270本用意されるなど、まさに『ドリームジャンボ宝くじ』の名にふさわしい夢のような賞金体系となっています」


毎度のことながら、こうした謳い文句は悪夢としか思えないのだが、昨日たまたま財団法人日本宝くじ協会のHPを見ていてとんでもない発見をしてしまった。「宝くじ資料・データ」に次のような記述があったからだ。「最近1年間に1回以上の購入経験のある人(宝くじ人口と呼ぶそうだ)が51.5%にも上り、しかも最も購入するのが働き盛りの管理職です」とのことである。そんなに宝くじ人口はすごかったのか、と驚くとともに、「一家の主が何やってんだか」となじりたくなった。「しっかりしろよ、オヤジ」と檄を飛ばす元気も出てこない。


ジャンボ宝くじは1ユニット1000万枚を発行する。1枚300円なので30億円だ。1等はそのうちのわずか1本。27本の1等ということなので、今回は27ユニットの販売で売上高は〆て810億円ナリ。世界不況のさなか、ものすごい金額だ。


さて、1000万本のうち1本が当せんとなるのでその確率は0.0000001。宝くじを買うときに「ひょっとして私が当るかも」という淡い期待が果たしてどれくらいの難しさかを実感してもらうために、こういう計算をしてみた。それは1年間に交通事故で死ぬ確率である。年間5700名の人々が不幸にして交通事故で死亡している。日本の人口は1億2593万人。これを割り算すると、0.000045。0.000045÷0.0000001=450という答えが出てくるため、1枚買って1等に当る確率は、その人がこれから1年間で交通事故で450回も死ぬ恐怖を味わう確率と同じ価値を持っている。もし10枚買えば45回にまで恐怖は軽減されるがそれでも大変な数字だ。仮に、たった1回死ぬ確率まで下げたい、というのならば450枚買おう。だが、果たして13万5000円もの大金をつぎ込めるかどうか。


1等賞金は昔に比べると大幅に上昇している。ちなみに10年前は6000万円(1ユニット3本の当せん)だったが、今や2億円である。「夢はどんどん大きくなっているな」と感心していたら大間違いである。いわゆる胴元が懐に入れる割合は10年前の52.7%から62.3%にまで大幅アップしているのだ(そんなことは全く宣伝されていない)。裏を返せば、宝くじ購入者に還元される割合(期待値)は47.3%から37.7%にまで激減した(2等、3等、4等の当せん本数が大幅に削減されたため)。これは、絶対に1等を当てたいからといって、1ユニット30億円全部の宝くじを買っても11.3億円しか戻ってこないことを意味する。実に62.3%ものお金を失う。

 

リーマンショックが起こり、昨年の10月には世界のあらゆるリスクアセットが一瞬にして半分になってしまったが、宝くじを買うということは、買った瞬間に62%のお金を失うゲームというのが本質であり、宝くじマニアは毎回、自ら進んでリーマンショックと同質のゲームを体験していることになる。

 

一人で買ってもなかなか当らないから宝くじを共同購入するということもおこなわれているようであるが、期待値が上がるわけではない。たしか昔、過疎の村でお金を出し合って、大きな賞金を当てたというニュースを見た覚えがあるが、それは単に運が良かっただけの話である。

 

「夢を買う」などとユメユメ言わないでもらいたい。「妄想に毒される」というのが正しい。それくらいとんでもない賭けのレベルである。「夢を見ながら、地方自治体に協力する」と言えば美しいが、正直言って賛同できない考え方である。3000円、10000円のお金を出して宝くじを買うのならば、子供や奥さんに何かプレゼントしたほうがよっぽど幸福な体験ができると思うのだが。

 

太田忠の縦横無尽 2009.5.20

「ジャンボ宝くじ1等当選確率=交通事故で450回死ぬ確率」

 

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