2009年03月14日(土)

ハンク・ジョーンズ:90歳ピアニストの「やるもんだ!」

テーマ:音楽

2月28日にホテルオークラへ出かけた。今年もハンク・ジョーンズが来日したからだ。昨年は、ブルーノート東京での演奏を聴いたが、今年はディナー・ショー形式のピアノトリオの演奏会があるという新聞広告を12月の初めに目にしたため申し込んだ。


ハンク・ジョーンズは1918年生まれのジャズ・ピアニストであり、今年の7月に91歳を迎える。私がジャズを聴き始めた頃は、ベニー・グッドマン、ライオネル・ハンプトン、ディジー・ガレスピー、テディ・ウイルソンなどのスイング時代の巨匠たちがまだまだ現役で元気にプレーしていたが、90年代に入り次々といなくなる中で、いまだに忙しく演奏している最後の一人といっていいだろう(2007年にはオスカー・ピーターソンも亡くなっている)。


ステージに向かって歩く姿は、もちろんカクシャクというわけにはいかないが、いざピアノの前に座ると年齢を全く感じさせない。公演中の1時間半にわたり集中力が途切れることなく、自由自在にメロディー、フレーズを繰り出していく。ピアノのタッチがソフトで繊細な音色は昔とちっとも変わらない。


演奏会が始まる直前に「今日のお客さんはアラカンね」と妻が言った言葉が最初理解できず、「なぜ唐突に、嵐寛寿郎の話が出てくるのか」と不思議に思ったが(ちょっと古すぎるか)、「アラフォー」の還暦バージョンであること知り納得した。顧客の平均年齢は60歳を超えていたのだ。やはり彼のキャリアの長さがこの現象をつくっているのだろう。私が大学生の頃、ハンク・ジョーンズが「The Great Jazz Trio」を結成して来日していた時にはすでに67歳くらいで、もはや彼自身が還暦をとっくに超えていたのだった。私の頭の中では「昔から年寄り」であるはずのその人がまだ目の前で熱演しているのだ。なんともいえない不思議さを覚えずにはいられなかった。


早い時期に申し込んだためか、今回はステージ中央の最前列の席で彼の姿を2メートルくらいの間近な距離で見られるという大変な幸運に恵まれた。


演奏中の達磨大師を思わせる風貌が印象的である。


歓声に応えてアンコールを4曲(!)もこなし、公演が終わった後も「ファンのためにサイン会をしたい」という本人の希望で約1時間にわたってサービスをしてくれた。これはすごいことだ。


ステージ挨拶でマイクを握って「やるもんだ!」という彼のお得意の日本語のセリフを聞きながら、いや、まさに、あんたこそ「やるもんだ!」のチャンピオンだと思ったね。聴衆250名の中の最年長である長老の口からこんなセリフを言われては、皆大いに励まされたに違いない。


100歳でも現役でプレーして、世の中をあっと言わせてほしい(本人は150歳まで生きてもっとうまくなってやる、と本気で言っている)。


比較的地味でスロースターターだった存在が、いまやジャズ界にとどまらず人間として燦然と輝ける星である。大いに感動をもらった。ありがとう。


太田忠の縦横無尽 2009.3.14

ハンク・ジョーンズ:90歳ピアニストの「やるもんだ!」


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