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2011年11月28日(月)

『1969』(由紀さおり) が欧米でヒットチャート上位に

テーマ:音楽

1969年-。


日本人がまだまだ貧しく、高度経済成長のレールに乗りながら「明日はもっと良くなる」と思っていた頃である。当時5歳の私にとっては、まだ人生の「夜明け前」の時代であったが、由紀さおりの『夜明けのスキャット』が発売されたのが1969年である。


『夜明けのスキャット』といっても、おそらく若い人は知らないと思う。深夜のラジオ番組のテーマソングであり、歌詞のない“スキャット”だけで歌う1番が番組で流れ、その斬新さや物悲しくも神秘感漂うメロディーラインの美しさが人々の心を捉えた。結局のところ、1969年のオリコンの年間ヒットチャートでトップとなった大ヒット曲である。


その1969年という大阪万博を翌年に控えた年に発売された曲目をカバーしたのが『1969』という新しいCDアルバムであり、10月に発売されるやいなや瞬く間に欧米のヒットチャートで上位に食い込んでいるのだ。


1969/由紀さおり
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プロデュースしたのは、アルバムの演奏を担当しているピンク・マルティーニという米国のジャズ・オーケストラである。ピンク・マルティーニは1940年代から1960年代にかけて世界中で流行したジャズ、映画音楽、ミュージカルのナンバーなどを主なレパートリーにしている12人の小規模編成のグループである。グループのリーダーであるトーマス・ローダデール(1971年生まれ)がレコードショップで、たまたま40年前の由紀さおりのLPを手に取り、そのジャケットの美しさで衝動買いし、透明感ある歌声に魅了された。今回の由紀さおりとのコラボレーションに至ったきっかけはすべてこの「たまたま手に取った」ことから始まるのである。


収録されている12曲はジャズ風アレンジがほどこされ、オリジナルとは少し異なる雰囲気を持っている(1曲を除いてすべて日本語で歌っている)。が、こうしたアレンジがあってこそ欧米で日本の歌謡曲がより受け入れられやすくなる下地をつくっているのだろう。収められている曲は「夜明けのスキャット」「ブルー・ライト・ヨコハマ」「夕月」「いいじゃないの幸せならば」などは私にとっても懐かしい曲であるが、知らない曲もあり興味深かった(「季節の足音」のみ2011年の由紀さおりのオリジナル曲を収録)。


1970年前後の日本の歌謡曲はもはや日本人にとっても「遠すぎる時代」で忘れ去られた存在であり、世界的には全く知られていない領域である。だが、レベルの高い楽曲が数多く、こうしたことがきっかけで日本だけではなく「Kayou-Kyoku」として認知度が高まることは喜ばしいと思う。「何でもお手軽にできる便利な時代」がこうした「何をするにも不便だった時代」の良さにうすうす気付き始めていると私は考えている。便利すぎる時代に生きること、実はそれは自己喪失の時代に生きることを意味していると私は思う。


太田忠の縦横無尽 2011.11.28

『「1969」(由紀さおり)が欧米でヒットチャート上位に』

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2011年11月19日(土)

暗闇の時代に咲いた曲:ひまわり娘 【伊藤咲子】-太田忠(ピアノ)

テーマ:ピアノ演奏動画

もはや秋も深まりゆく頃なので、「ひまわり」などとっくに忘れ去られたような存在なのだが、1974年4月に発売された伊藤咲子のデビュー・シングル『ひまわり娘』の誕生秘話は感動的であり、今の時代にも大いに通じる。作詞は阿久悠、作曲はシュキ・レヴィ、編曲はケン・ギブソン。




当時の歌謡曲づくりに外国人を起用するのは非常に珍しいケースだと言える。これはレコード会社が東芝EMIに決まり、名ディレクターであった渋谷森久氏が伊藤咲子を本格的歌唱力の歌手にしたいとの意気込みが強く、レコーディングはロンドンで、そしてせっかくロンドンで録音するならば作曲家も編曲家も外国人を起用しようという発案だった。シュキ・レヴィはイスラエル人作曲家であり、ケン・ギブソンはビートルズの初期の頃の曲の編曲をやっていた人だ。依頼するのはかなり大変だったことだと想像する。


彼らが作った曲に作詞をしたのが、阿久悠である。当時『スター誕生』というアイドル歌手を創出する番組があり(懐かしいねえ)、プロ目線の審査によるスター登竜門番組だった。その審査員の一人が阿久悠だった。「曲名を“ひまわり娘”にしたのは、1973年から1974年にかけて世の中があまりにも暗かったからである。この暗さはたまらないと思い、暗さを呪う歌よりは明るいものにしようと思った」


1973年10月に勃発した第四次中東戦争のあおりを受けて、日本ではオイルショックが起こっていた。11月にはトイレットペーパーや洗剤などの買いだめ騒動、11月中旬には政府からの節約令が出て、テレビ放送も午後11時以降は打ち切りとなった。街灯も消されて街中は真っ暗である。


ところが、1974年1月に乗り込んだロンドンはそれ以上に悲惨だった。炭労ストにより停電がひどく、買い物をするにもローソクの灯の下でという状況だった。ホテルの暖房は入っていなかった。「日本も暗い、ロンドンはなお暗い。この寒さを“ひまわり娘”などという歌ひとつで明るくしようなんて思うのがそもそも楽天的にすぎるというもので、こりゃ駄目だな、このレコードは売れないし、伊藤咲子も気の毒ながらスターにはなれない」と阿久悠は絶望的になっていた。


レコーディングも停電時間を縫いながらやらねばならず、実働時間がひどく短い。そして、時間が少ないにもかかわらず、スタジオ関係者や楽団員はランチタイムやティータイムを長々ときっちり取る。本当にレコーディングが終わるのかとイライラが極まった。だが、最後は渋谷森久の熱々たる説得で、指揮を担当していたケン・ギブソンは食事時間を惜しんでパンを口にくわえたまま指揮棒を振り、その横でまだ15歳の伊藤咲子は実に堂々とそして朗々と歌ったのである。


「OK」と渋谷森久がコールした数秒後に停電になり、真っ暗になった。その時、暗闇の中で拍手が沸き起こり、実に感動的な光景となった。「ぼくらは、寒さと暗さを忘れた」


それにしても、本名の伊藤「咲子」が「ひまわり娘」を歌い、ピッタリのイメージを見事に出しているのには感心する。この曲をソロピアノで演奏する場合、「おおらかさ」の中にも「可憐さ」を出す必要があると感じた。小細工のない、素直な良い曲である。40年近く経ち、また暗闇のような今の時代だからこそ必要な要素が満ち溢れていると思う。




オリジナルはこちら:ひまわり娘【伊藤咲子】-太田忠(ピアノ)


太田忠の縦横無尽 2011.11.19

『暗闇の時代に咲いた曲:ひまわり娘【伊藤咲子】-太田忠(ピアノ)』

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2011年11月14日(月)

クラウディ・ベイの最高峰:TE KOKO(テココ)

テーマ:食のこと

今年の2月のブログ「クラウディ・ベイ-NZを代表するワイン」 にて、ニュージーランドの素晴らしいワインについて書いた。


クラウディ・ベイとは文字通り「CLOUDY BAY」であり、直訳すると「曇った湾」を意味する。


初めて飲んだのが今から約10年前にニュージーランドへ行った時である。毎日、羊とロブスターとサーモン中心という偏った食事が続き(これがニュージーランドの定番メニューである。ロブスターは本来はごちそうなはずだが、毎日食べていると拒絶反応が出てくる)、うんざりしていた最中、「せっかくだからご当地のおいしいクラウディ・ベイを飲みましょうよ」という妻がレストランで頼んだのだった。


「出てきたのが、何とも寂しげな、力のない、貧弱なエチケット(ワインに貼られているラベルのこと)のワインだった。なるほど「どんより曇った湾」である。通常、生産者の立場で販売量を伸ばしたい、と考えるならば万人の目を引く凝ったデザイン、鮮やかな色使い、華やかさやシャープさやキュートな印象などを目指すはずだが、そういう意気込みは微塵も感じられない」と前回のブログに書いたが、今改めて実物を見ても、同じ印象しか起こらない。


太田忠の縦横無尽-CLOUDY BAY



写真は左が白の「ソーヴィニヨンブラン」でこれがフルーティーなタイプ。右が白の「シャルドネ」でドライな辛口タイプ。そして真ん中が生産量は少ないが赤の「ピノノワール」であり、しっかりした果実味あふれるタイプである。


ところで、これらの3種類に加えて、さらに上位クラスのワインがあることをブログを書いた後に知った。


「テココだって、変な名前だね」と私は言った。

このワインにだけ「TE KOKO」という固有名詞を冠したエチケットとなっているのだ。


太田忠の縦横無尽-TE KOKO


テココは現地語で「Cloudy Bay」を意味するのだそうだ。ということは、他の3本のエチケットは「Cloudy Bay」と大きく記されているので、それを現地語で表記したのにすぎない。特別なネーミングではないということだ(TE KOKOの下にちゃんとCloudy Bayと小さく表記されている)。


さて、このテココだが、上位クラスということだけあって、いやもう素晴らしいの一言に尽きる。初めて飲んだ時は思わず「おお!」という感動が起こった。


「上質な素材感にゴージャスな樽香をまとわせたソーヴィニヨン・ブラン。重厚なボディに複雑なアロマ、熟成感のあるリッチな飲み心地は、スタイリッシュで成熟した大人の女性のような風格です」というのが一般的な説明であるが、反論するところは一つもない。全体としては「ドライ」なのだが、シャブリのようなストレートなドライさではなく、とても上品かつ気品の高いワインである。自宅で飲むワインとしては、最上級だと思う。ワイン好きの方は、ぜひ一度ご賞味を。


太田忠の縦横無尽 2011.11.14

『クラウディ・ベイの最高峰:TE KOKO(テココ)』

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