平松禎史 アニメーション画集
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昨日、閉会中審査の加計学園問題質疑を聞きました。
いまのところ青山繁晴氏の質疑のみです。
仕事優先なので、申し訳ないけど他の質疑は後回しで、もっとも党利党略で質問しなさそうな青山議員の質疑を選びました。
結果はおおむね予想通りの展開でしたが、前愛媛県知事の加戸氏の話は敬服すべきものだった。
予想通りと書いたのは以下の理由から
需給の根拠が示されなかったこと。
なぜ、国家戦略特区という手法が必要なのか、問われなかったこと。
「国家戦略特区で規制緩和することは善である」という前提の元、質疑が行われていたこと。
これまでの報道や、青山氏の意見を聞いた上で、こうなるだろうと思いました。
産業動物の飼育頭数は年々減少傾向です。
対して、後継者が少ないため畜産業者が減り、一戸あたりの飼育頭数は増えています。
― 乳用牛、肉用牛及び豚の飼養頭数は減少
採卵鶏の飼養羽数及びブロイラーの出荷羽数は増加 ―(農林水産省)
http://www.maff.go.jp/j/tokei/sokuhou/tikusan_16/
前にも書きましたが、このような状況を改善するには、マクロ的に畜産業の需要を増やさねばなりません。
獣医師を増やしても、畜産業の需要喚起にはなりません。話の順番が逆です。
一方で、加戸氏が熱く語られていたように、鳥インフルエンザや口蹄疫などの侵入を防ぐため、専門知識と経験を持った獣医師の必要性は高まっています。
さらに一方で、獣医学部を出ても獣医師にならない卒業生が10%以上いる。
安全保障として考えるなら公務員の増強が必要。
ここらが重要検討課題でしょう。
この状況を改善する方法は何でしょうか?
岩盤規制を打ち破る国家戦略特区が唯一の手法でしょうか?
たしかに、このやり方はてっとり早い。
何しろ『「総理・内閣主導」の枠組み』(首相官邸サイトより)ですから、総理・内閣が「この地域で、この企業に」と認定すれば国会の議論(民主的手続き)を経ずに決まります。
「総理の意向」「官邸の動き」云々があるかないかではなく、そもそもそういうシステムなのです。
ですから、前愛媛県知事の視点で考えれば、「行政の歪みを正したのが国家戦略特区だ」と見えて当然なのだ。
藁にもすがる思いがひしひしと伝わってきました。
しかし
国家戦略特区という手法が適切かは別問題です。
前川氏は、元官僚として手続き論に集中して答弁していた。
だから、国家戦略特区という手法でやらねばならないことなのか、4条件がクリアできれば既存の大学で対応できるのではないか、と再三疑問を呈していた。
青山氏は、獣医学部の水増し入学を問題視し大学不足の根拠としていた。
獣医学部のある東京農工大を調べてみると、入学定員より多く入学させているのは獣医学部に限りません。
入試情報パンフレット(平成二十年から二十八年まで)
http://www.tuat.ac.jp/outline/disclosure/kouhousi/nyuusi/
平成二十八年入試情報 入学試験結果の概要は7ページめ
http://www.tuat.ac.jp/documents/tuat/outline/disclosure/kouhousi/nyuusi/20160621164937841273624.pdf
総計で入学定員821人に対して平成28年は857人入学させています。
さらに、入学者数総計は年々減っており、獣医学部の実質倍率は8.6から7.4に下がっている。
ちなみに実質倍率というのは複数校を受ける学生がいるため高く見える倍率を調整した実質の倍率です。
どこの大学でも同じような傾向があり、また、実際に入学しない生徒がいるため、定員より入学者を多くしている事情があるそうだ。
青山氏が証言していた、教室に立ち見が生じて実習も後ろから見てるだけの生徒が出てしまっている状況、というのはいつの話なのだろう。
ペットブームで増えた時期だとすると、現在はそれも減少傾向なので、実態を表してない可能性があります。
いずれにしても
地方の畜産業の需要喚起は「地方創生」の課題であり、国家的な問題です。
防疫体制の整備も国家的な問題です。
ビジネス優先であってはならない安全保障問題だ。
国家戦略特区は、地域を選択し、私企業を選択して行う社会実験だ。
その選択は『「総理・内閣主導」の枠組み』で行われる。
デフレで需要が縮小し、どんな分野であれ、少ない需要を勝ち取るために必死になっている。
愛媛県が地域振興のために獣医学部を欲しているように、他の地方にも別な分野で同じような枯渇状態が生じている。
「デフレ状況のビジネス利用」を可能にするのが国家戦略特区のプロセスだと言えよう。
生活安全保障をビジネスのネタに堕するのが国家戦略特区の悪しき側面だ。
安全保障分野の専門家たる青山繁晴氏がここに気付かないのは不可解だ。
民営化・民間活用の規制緩和は小さな政府政策なので、政治権力を維持するには国家戦略特区のように『「総理・内閣主導」の枠組み』が必要になるわけだ。
「地方創生」も、国家戦略特区と似たような「民間の競争原理」によって行おうとしている。
デフレ脱却を掲げて発足した安倍政権は、デフレ対策と称したデフレ順応策を次々行い、さらに、デフレ不況に頼ってなお権力の集中・強化を実現している。
こんなうまいプロセス、そう簡単に手放さないでしょう。
こういった行政の歪みが、森友・加計学園問題として噴出したのだと思う。
ミクロ的な誤りがマクロ的に積み上がっているのが現在の日本の問題だろう。
国家的、マクロな視点から、議論されていないのがとても残念だった。
アニメ業界の労働環境改善問題と根っこは同じです。
ミクロな視点に陥り、マクロな視点で見れなくなるのもデフレの弊害だ。
ほぼすべての問題はデフレ不況の弊害につながり、プライマリーバランス黒字化目標という太くて重い鎖につながれて、歪みが強まっている。
全国民的な所得増、需要増、将来不安の払拭で、四国経済も活路を見いだせるのではないでしょうか。
一本しかない鉄道橋を最低でも3本追加し、近畿から九州へ縦貫する道路・鉄路を作れば、四国は「島」じゃなくなります。
四国が脆弱な島のままなのは、政府の公共投資が90年台のピーク時から半分近くにまで減らされたからと言って差し支えないでしょう。
日本の公共事業は現実には少なすぎるのです。
「そんなやり方じゃ時間かかるじゃないか…」
時間かかるんですよ!!
てっとり早く解決しようとするから、歪みが生じて、クダラナイ問題が起こる。
加計学園問題にかぎらず、様々な問題をマクロ的に改善するにはこれです。
プライマリーバランス黒字目標の撤廃
財政拡大で需要創出
デフレを脱却
経済成長へ