道草---その3---
♪ピンポーン
ココに来るまで随分と足が重かった。
多分それはイチロウも同じだっただろう。
道中の顔色を見れば一目瞭然だ。
その一方ユミコは……。
実にアッケラカンとしている。
帰ったその時、イチロウはまだ学校から帰っていなかった。
ユミコと少しだけ作戦会議をしようとしたのだが……。
「とりあえず行こうよ。」
で終わってしまった。
イチロウの通学路。
車では何回か通った事があったが、歩いてみるとこれまた違った景色が見えてくる。
足が重かったせいなのか……
気を紛らわせたかったからなのか……
こうしてゆっくり歩いてみると、確かに小さな花々にも目が留まる。
「楽しいだろうな……こうして道草しながら学校から帰るのも……。」
心の中に「気が重い自分」と「能天気な自分」が共存する不思議な心地。
♪ピンポーン
「ここ」
とイチロウが示したその家は、実に立派な洋風の家だった。
塀があって門があって……脇に申し訳なさそうに小さなインターホンがついている。
その手前に車2台分のカーポートと、それと同じくらいの広さのレンガで囲まれた花壇。
ここカツヲ市に於いて、庭付き一戸建てで車庫2台は実に立派だ。
門の奥にも庭がある。
外から見るだけでも随分の広さの庭だ。
ユミコ 「ここのパンジーを取ってきたのね。イチロウ。」
イチロウ 「うん。」
インターホンを鳴らしつつ、ユミコがイチロウに問いかける。
ユミコ 「こりゃ随分立派だわ……ねぇ……。」
タロウ 「ああ……。」
パンジーだけではない。
花屋で見るような綺麗な花たちが細かい気遣いの元、寄せ植えされている。
ユミコ 「誰もいないのかな?」
♪ピンポーン
3度目のチャイムだった。
「はーーーい。」
家の裏手で女性の声がした。
ユミコ 「すいませーーーん。」
女の人 「はいはい~~~~。」
以下次号。