係争場所の駐車場

日付は８月１８日、ランチ後の昼過ぎ……。

さて……証拠集めもボチボチではあるが進んでいる。

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箇条書きの証拠集め の中から集まった証拠は……

２．にゃん太がウチのネコであることの証明。

　　　　　これはにゃん太の写真を撮ってOK

４．他ネコの存在の証明。（あわよくば他ネコがクルマに乗っていることの証明）

　　　　　とりあえずユミコが一匹、イチロウの見つけたシチサンが一匹……今のところ計二匹

８．現在の原告駐車場の周辺にも他ネコがいる事の証明。

　　　　　ユミコのネコの写真でOK

９．原告の車の保管状況が粗雑である事の証明。（駐車場の様子やクルマの手入れの具合）

　　　　　ミラーから垂れた水垢の写真でOK

１０．原告の車にネコ以外の傷があるかどうかの証明。

　　　　　「火サス調査隊」の調査でOK

とまあ………こんなところだ。

よく考えると……ワタシ……役になってない。

ネコの写真はある意味運である。

探し方の上手下手はあるかもしれないが８割は運であろう。

杉森のおばさんにも八百屋の鈴木さんの嫁さんにも「ネコを見かけたら写真撮ってね」と頼んである。

ケータイにカメラがついた時は「こんなもんがなんでいるのかね？」なんて思ったものだが……

今は大感謝である。

サクッと出してパシャッと撮れる。

なのでワタシは運とは関係の無い調査をする事にした。

箇条書きを眺める……。

７．原告準備書面…ネコが先か駐車場を借りたのが先かの証明

なんてのはどうであろう？

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再認識の為に川畑の駐車場移動の歴史を書いておこう。

３月初旬からウチの真裏の係争場所駐車場

６月１日から八百屋の鈴木さんの裏の砕石敷き駐車場

訴訟内容には「３月初旬からウチの真裏に駐車」と書いていたが……

第一回口答弁論の最初に「１月２７日から駐車」と訂正してきている……。

この１ヶ月以上の駐車場使用開始時期の訂正は何を意味するものなのか……。

ワタシの想像では「シロクロが現われる前から自分が駐車場を利用していた」という事の

主張の為であると思う。

こいつをぶっ壊してしまおうと言うのだ。

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まずは問題の係争場所……シロクロが車に乗っていた……駐車場に行って土地の持ち主の確認である。

駐車場に「持ち主」の名前は書いていないであろうが……

月極駐車場であるので「連絡先」くらいは書いてあるであろう……

暑い中、町内を半周してウチの真裏の駐車場に到着する。

やっぱりあった。連絡先の看板。

とりあえず不動産屋の名前と電話番号をメモして撤退。

こんなところでボケッと電話していたら熱中症になってしまう。

店に帰って涼しいところで電話する事にした。

母のヨシコが横で明日の準備に取り掛かっている。

店は随分落ち着いた様子である。

タロウ　　　　　「あのさーかあさん……。裏の駐車場を管理してるヨシモト土地って知ってる？」

ヨシコ　　　　　「ああ……知ってるよ。銀行に用事がある時なんかに……たまに寄ってくれるよ。奥さん。」

タロウ　　　　　「あ……そうなんだ。」

ヨシコ　　　　　「電話するより行ってきたら？」

タロウ　　　　　「それもそうだな。」

案外身近な存在であった。

町内からはちょっと外れているが……半世紀も店をやっていると結構世間は狭くなるものである。

タロウ　　　　　「場所……わかる？」

ヨシコ　　　　　「ああ。父さんに聞きな。」

珍しく昼過ぎに店にいる父に場所を聞いてみる。

案外近くである。

自転車で行ってみることにした。

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大通りに面してヨシモト土地はあった。

中は静まり返っている……。

「ひょっとしてまだお盆休みか？」などと思ったが、とりあえず呼び鈴を押す。

「ガーーーーーーーーーーーッ」

呼び鈴を押そうとしたら横で自動ドアが開いた。

正直少々びっくりした。

なにも悪い事をしていないのにびっくりした。

「３２にもなって自動ドアに脅かされるとは……」と恥ずかしながら一人で照れ笑いをしていると奥から……。

女の人　　　　　「なにか御用ですか？」

と出てきた。

年の頃は３０ちょっと……ワタシやユミコと同じ世代くらいである。

タロウ　　　　　「お尋ねしたい事がありましてね……。」

女の人　　　　　「ではコチラにどうぞ。」

と応接間に通された。

「客じゃないのに申し訳ないな……。」と思っていると……麦茶を持って先程の女の人がやって来た。

女の人　　　　　「今、ほかに誰もいないんですよ。」

タロウ　　　　　「あ。そうですか……。」

女の人　　　　　「で……今日はどういった御用で？」

タロウ　　　　　「あのー。…………。」

応接間に通されてお茶まで出されてしまった。

非常に言い難い状況である。

タロウ　　　　　「すいません。商売の話じゃないんです。借りるとか買いたいとか……。」

先に断っておいた。

女の人　　　　　「あ……はい。どうぞどうぞ。」

ちょっと笑いながら聞く態勢をとってくれる。

タロウ　　　　　「ワタシ、メダカ町でお店やってます……山田と申しますが……。」

女の人　　　　　「あ。山田さんですか！いつも社長がお世話になってます。」

タロウ　　　　　「あ。ご存知で？」

女の人　　　　　「ええ。存じております。」

話が早い……

伊達に５０年はやっていない……。ハジメ時代とウメキチ時代に感謝である。

女の人　　　　　「え？今、お店されてるんですか？」

タロウ　　　　　「ええ。３代目です。」

女の人　　　　　「そうなんですかー。ワタシも１～２度行ったことがあるんです。あの時はおじさんだったな。」

タロウ　　　　　「たぶん父かと……。」

さっきまでの気まずさ加減は何処へやら……。

一気に和気藹々になってしまった。

タロウ　　　　　「あのですね……実はカクカクシカジカこういうわけで……。

　　　　　　　　　お宅の管理されてる駐車場の借主さんに裁判を起こされちゃってるわけです。」

女の人　　　　　「え！？いきなりですか？」

タロウ　　　　　「ええ……。」

女の人　　　　　「……………しかもそんな事情で………。」

この話をすると……１０人中１０人が同じ反応である。

「世間の目」というのはこういう判断なのであろう。

少なくともウチの近所では………。

タロウ　　　　　「で……問題の駐車場の……ここって、誰が借りているんですか？」

女の人　　　　　「うーん。………これねぇ……」

歯切れが悪い。

女の人　　　　　「今ね、情報公開ナントカってので五月蝿いでしょ……。なかなか言えないんですよ。」

そう来たか……。

正確に言うと「個人情報保護法」である。

まぁ………想定はしていたが……。

タロウ　　　　　「そうですか……。でも近所の人ですよね？」

女の人　　　　　「いや……お店じゃないかな？契約。」

タロウ　　　　　「あ。そうですか……。……あの辺の？……東側の？」

女の人　　　　　「………ええ………まぁ…………その辺は………。」

否定しないあたり、肯定していると取っても差し支えない様子である。

タロウ　　　　　「いつ頃から借りてらっしゃいます？そのお店……？」

女の人　　　　　「……もう２～３年になりますよ……だいたいですけど……。」

正確な情報は個人情報保護法ってやつが五月蝿いので警戒している様子であるが……。

ここまで聞ければ充分である。

やっぱりそうだ……一人納得する。

前から店として借りている駐車場を自分が個人で使うようになった。

その時期は最初の訴訟内容通り３月初旬……そしてシロクロの報告を保健所にしたのが２月１４日……

契約日が３月初旬ならば……訴訟内容の訂正をしても「いつから契約しているんだ？」と

突っ込まれりゃアウトだ。

だが契約は２～３年前……

だから訴訟内容を一部訂正してでもシロクロが来る前から自分は使っていたと主張しようとしたのだ。

……………。

タロウ　　　　　「すんませんね……言い難い事を言って頂いて……。」

女の人　　　　　「いえワタシ、具体的にどこの誰がいつからどのように借りているかは言ってませんから。」

さすがである。

タロウ　　　　　「本当に『銭』にならん事で……お時間をとらせてすみません。」

女の人　　　　　「いえいえ……。しかし大変ですね……。」

タロウ　　　　　「大変です。」

女の人　　　　　「何かありましたら……また……。」

タロウ　　　　　「あ………。はい。………社長にもよろしくお伝えください。」

女の人　　　　　「はい。社長にもこの旨伝えておきます。」

となぜか苦笑いである。

そして社長に伝えちゃうらしい。

そんなに面白い話であったのであろうか？

タロウ　　　　　「あ……はい。」

女の人　　　　　「では……。」

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帰り道……一人自転車を漕ぎながら思う………。

川畑……ずるい………。

ネコ摩り替えたってアンタ言うけどさ……自分は駐車場差し替えてるじゃん………。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 イラスト：妙
以下次号。