第二回口頭弁論--その14--オフレコ | 【実録】ネコ裁判  「ネコが訴えられました。」

第二回口頭弁論--その14--オフレコ

裁判官     「ねぇ……。被告…どうします?」

タロウ     「『どうします?』……とはどういうことです?」


何が言いたいのかイマイチつかめない……。


裁判官     「あのね…。この前の時も提案したんですが……。示談にしません?」


お……。また「示談」と来た。

こういう「どうします?」だったのである。


裁判官     「まぁ……。ワタシがこんな事を言うのも何なんですが………。話が進展しないでしょう…。

          5千円1万円でも払って……。引っ込めてもらってはどうですか?」


この前 の示談交渉のときは「数万円払って……」と言っていた。

随分のプライスダウンである。


裁判官     「この前説明したように……。ここであなたが『示談する』と言ったとしても……。

          それは該当ネコを飼っている事を認める事ではないんですよ……。」


全く同じ説明である。


タロウ     「どうしてそんなに『示談』を薦めるんですか?」


単刀直入に聞いてみた。


裁判官     「この事件ねぇ……。ご近所でしょ?『裁判所』としましても、民事事件に関しては……。

          お互いにシコリの残らない様にしたいわけなんですよね……。」

タロウ     「裁判官……。ウチはね……いきなり売られたケンカですよ……。

         ……事前に事実確認にも来ていない!

         電話もない!!

         これでどうしてウチが、お金払って折れなきゃいけないんですか?

         逆にこっちが貰いたいくらいですよ!

         暇使って、手間使って……家族や周りにも心配をかけて……

         店の仕事にも支障をきたして!!」


捲し立てたくもなる。


タロウ     「ぶっちゃけ……腹が立って泣きたいところですよ!!

         肩が当たって無いのにケンカ売られてるんですから!!」


泣きたくもなる。


裁判官     「御気持ちはわかります……。でも山田さん……。ここは一つ……大人になって……。」


……いや……「大人」に成るべきは「川畑」であろう……。

ワタシがこれ以上「大人」に成ったら……それこそ「おじいさん」になってしまう……。


タロウ     「むこうが頭下げて『取り下げさせてください』って言ってきても、承諾出来かねますよ!今!」


実際は川畑が取り下げれば「それで終わり」「無かった事」になるのであるが……。

今はそんな心境である。


裁判官     「この後、結審して判決が出て……。それで原告が納得しなかった場合……。

          控訴してくる可能性もありますよ……。」

タロウ     「まぁね……。」

裁判官     「そうなると……地方裁判所でやることになりますので……。

          被告も弁護士を頼まなきゃいけなくなる……。

          お金が5千円…1万円以上にかかってしまいますよ。」


確かにそうだ…。

地裁からは原告も被告も弁護士に依頼することが義務付けられている。


裁判官     「そうなると……。両方共に裁判費用がかかって……。何してるかわかんなくなりますよ。

          実際……。」

タロウ     「だからってこっちが折れる話じゃないでしょう……。」

裁判官     「だから……結局は『意地』の張り合いになっちゃうんです。裁判って……。」


そう諭されても、聞ける話と聞けない話がある。


タロウ     「まぁそうなったらこっちも『逆訴』『反訴』しますよ。弁護士費用も含めて!

         だいたい…こんな証拠で裁判所が『控訴』を認めますかね?」

裁判官     「それはなんとも……。」


まだ判決も出ていないのに……。次の裁判の話まで進んでいる。

「裁判所」としては……どうしても「示談」にしたい様子である。


裁判官     「だから……。そうなると泥沼の訴訟合戦になってしまうじゃないでか……。」


まぁ……中立の「裁判所」であるから「事なかれ主義」が第一なのであろう。


タロウ     「まぁ……。 判決次第ですけど……。ウチは『裁判所』を使わなくても……。

         この後、原告に対して補償を求めちゃいますよ……。」

裁判官    「ふむ………。でも、被告……。あなたも100%非が無いとは言えないですよ……。」

タロウ     「………と言うと?」


ちょっぴり川畑寄りになったか?


裁判官     「確かに現段階の書証では……。

         無断であれ……『ネコが侵入してエサを食べた』事は事実ですから……。」


まぁ…確かに……。

では聞いてみた。


タロウ     「例えば……『家に泥棒が入りました。包丁を盗みました。それで人を殺しました。』………

         泥棒に入られた家の人にも過失があると言うことですかね?」

裁判官     「……………。」


困らせてしまった……。


少し空気が止まる………。


裁判官     「……。まぁ山田さん……その辺りはワタシの提示した示談金額でご判断ください……。」


数万円が5千円になったあたりから「判断」せよとの事である。



タロウ     「……………。」

裁判官     「で……。どうします?あなたの提示した金額で結構です。

          相手も飲まなきゃいけない話ですが……なんとかワタシが原告を説得しますから……。」

タロウ     「1円でも。」


即答である。


裁判官     「わかりました。では『示談』の意思はないという事で……。仕方ないです………。」


そう言うと書記官に……。


裁判官     「中に入ってもらってください。」

書記官     「はい。」

裁判官     「あ。それと………被告。」

タロウ     「はい?」


何か言い忘れた様子である。


裁判官     「この後、原告への質問に移りますが……。手短にお願いします。」

タロウ     「はぁ……。」

裁判官     「何せ今5時20分なので……。エアコン止まっちゃったでしょう……。」


どうやら裁判官……

暑いの苦手の様子である。



皆さん入廷した。

ユミコも杉森のおばさんも……前回司法委員席に座っていたおじさんも……

川畑陣営も………。


裁判官     「では……。原告……今度はあなたがコチラに来てください。」


川畑が書記官に促されて証言台に……。


落ち着かない様子である。


ワタシはいたって余裕である。

なにせ質問事項は作成済みだ……。




タロウの反撃は……

                                       第二回その14 イラスト:

以下次号。