2013-08-30 21:17:31

「平等社会」を読む~経済成長にかわる次の目標

テーマ:日々のこと

この本はリチャード・ウィルキンソン氏が2010年に出版した本で、経済学と疫学を学んだ著者が、現代社会の諸問題は「格差の拡大」によって生じている、ということをさまざまなデータから実証しようとした本です。人々は物質的には満たされても、不安や精神疾患、コミュニティーの崩壊と過剰な大量消費至上主義によって、地球環境問題を引き起こしているということです。

私たちは、「幸福」というと個人的な問題で、それは個人の性格や資質、努力によって得られる、という考え方になじんでいますが、実はそのような個人志向に落とし穴がありそうに思います。幸福の一部は間違いなく個人的なものですが、環境や社会の状況が個人の幸福感に深く関与しており、それは多くの場合政策によって左右されるものである、ということに多くの人は気づいていません。人は、自分がその集団の中でどのあたりに位置するのか、無意識のうちに感じ取り、自分が上位性を認められる環境にいれば大変なハイパフォーマンスを出し幸福感を得るが、そうでない環境に入ると同じ人が低いパフォーマンスしか出すことができない、という実験があります。

社会の中の格差が広がることは、物質的、経済的な再分配の問題だけでなく、階級格差というような目に見えない格差の拡大も深刻な影響を及ぼすといことです。従業員給与の100倍受け取るCEOやマネーゲームでスーパーリッチを生み出す社会で、労働者の賃金はまったく押し上げない不健全な状況は、コミュニティーを壊し、不安を増大させ大量消費社会と孤独を作り出しています。今の社会の成り行きを自然のままにまかせると、このような状況に突き進むということは、「やむを得ない」ことでしょうか。そうではなくて、これは人間の作り出した経済学、金融資本主義の構造的欠陥であり、そして政治的ヴィジョンの欠落なのだということが、この本を読むと感じられます。

人が本来求めているものが、「生活の質の向上」だとしたら、生活の質とは、所得だけでなく、「時間」(のゆとり)の問題なのだと思います。人が身近な人とふれあう時間が十分にあり、お互いを知ることで相互を信頼し、多くの人が安心して暮らせる社会。デンマークなど、北欧では、そのような社会状況が実現しつつあるようです。日本も、米国に比べると格差が少ないため、社会関係資本が有効に働いているともいわれます。これからの社会の、政治の目標として、GDPの成長とは違う指標を標榜する必要があると強く感じました。

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2013-08-27 21:22:21

府中ソーラータウン~公園の中に住むような分譲住宅

テーマ:建築コラム

昨日府中ソーラータウン の見学会に行ってきました。設計は野沢正光氏で、東京都都市整備局が計画した事業です。「長寿命環境配慮住宅モデル事業」として、都の土地を民間に売却し、相羽建設が計画から販売まで行った16戸の分譲住宅です。


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町全体をパッシブデザインとすることをコンセプトに、中心に公共性を持ったみんなの街路を計画し、風の道兼住民の共有散策路になっていることがポイント。もちろん住宅は高断熱の創エネ住宅で、太陽光パネルとOMソーラーをすべての屋根に載せています。


 日本で4軒目?のLCCM住宅(低いライフサイクルCO2発生)を取得したとか。電気代は、一般の住宅の12%程度。太陽パネルの発電と、OMソーラーによる100%に近い豊富な給湯量によって、ごくごく低いエネルギーで快適に生活できる住宅になっています。


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 今回おもしろいと感じたのは、「地役権」という民法上の権利についてです。分譲住宅は個人の敷地を分割して販売することで所有地が明確であり、道路か個人私有地かに分かれてしまいます。

 しかし、この住宅では「地役権」を使って、分譲時のルールの中で取得土地の1/15は住民の共用部に供する、というルールを唄って販売することで、私有地の中に共有の街路を持つことができているのです。


建築家 田口知子の日常をつづったブログ 私有地を共有してできた「園路」と呼ばれる通り抜け路地


 日照、通風、コミュニティーの活動などを行う公的なスペースを生み出すことができるということです。


また、隣地との境界も塀など立てずオープンであることにより、自分の土地だけでなく借景的な中間庭が発生しています。


建築家 田口知子の日常をつづったブログ 隣地の間に境界線はありません。見えない境界線は小さなブロックを配置するだけです。

 私有地か公共地か、という2者択一ではなく、「シェアする土地」という感覚は分譲地ではなかなか存在しませんが、戸建て住宅の開発としてこういうことを仕掛けることに本当にデベロップメント(土地の再開発)の面白さがあると思いました。

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2013-08-15 13:58:57

「浴槽が沈んできた」事件

テーマ:建築のしごと

1年半前に竣工した「玉川学園の家」、 4月に1年点検を行ったのですが、そのとき発覚した浴槽の沈み。今月、その手直し工事に入ることになりました。



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足元で何かが起きたのか、はたまた構造躯体が沈んできているのか?木造なのに、浴室を2階に設置して空中に浮かんでいる、なんとも美しい構造。


建築家 田口知子の日常をつづったブログ ダイニング上部の浴室。


無理がたたって、躯体にゆがみがでてきたのか?と一瞬かなり深刻な気持ちになりました。そして、8月初旬、工務店さんが、浴槽エプロン解体して、中を観察しました。



建築家 田口知子の日常をつづったブログ 浴槽はCERAのMONDANE。

 中をあけてみると、躯体も防水も特に問題はなく、設置したCERAの浴槽の足がずいぶん華奢であることを発見。8mmくらいのボルトで4点をサポートしているだけで、そのひとつの金物がわずかに傾いていました。



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アクリル浴槽は、いものホーローに比べるとずいぶん軽くなったものの、人が入って100Lの湯をためれば、150KGを超える重量がかかります。デザイナーは、目に見えないこういうところを、ちゃんと考慮して設計すべきもの。あまりにたよりない金物でびっくりです。


仕方がないので、ブロックをサポートにしなおし、再設置することに・・。在来浴槽の場合、一度設置すると中を見るのはとても大変。


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このようなやり直し工事は、工務店もお客様も大変な負担です。でも、竣工後のこのような工事もきちんとやってくれる本間建設さんを、あらためて感謝です。

 

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