2011-06-25 13:25:05

「玉川学園の家」現場レポート20110623

テーマ:建築のしごと

私の事務所で設計した、

「玉川学園の家」 の工事がいよいよ始まりました。


 今週は「根切り」といって、基礎の底盤を作るために、土を掘って固めています。


建築家 田口知子の日常をつづったブログ 根切の風景。傾斜地なので、手前は少し深いです。

 土の状態を確認するのは、これから建築を建てる上でとても大切です。構造設計のアラン・バーデンさんと担当の伊賀さんも現場で確認してくれました。


建築家 田口知子の日常をつづったブログ 構造家のアランさんと担当の伊賀さん。

 土は、粘土質でとてもしっかりした地盤です。実際に踏んだりたたいたりして強さを確認します。古い地盤のようです。地盤調査ももちろん行いますが、本当の意味で地耐力を確認するのは、現場で根切を行ったときの、踏み心地です。


建築家 田口知子の日常をつづったブログ 根切底を確認するアランさん。

雨の季節は、土がぬかるんでなかなか地耐力がわからないものですが、この土地は梅雨時期でもまったく問題ない硬さで、安心しました。


建築家 田口知子の日常をつづったブログ 垂直に切っても崩れない、しっかりした粘性土です。

 しかし、土地の中から思わぬ掘り出し物が。昔の家の瓦です。過去の解体業者が、産業廃棄物処理を怠って土の中に埋めたようです。

 
建築家 田口知子の日常をつづったブログ 過去の家を解体した際の屋根瓦やモルタルが出てきました。

 まったく、信じられない悪質な業者もいるものです。このようなものが出ると、その廃棄物は全部掘り出し、良い土で埋め戻さなければならず費用がかかります。

 

 とにかく問題の個所は掘り出して、きちんと転圧して埋めるので、安全性には問題がなく家は建てられます。廃棄物が汚染物質などでなくてよかったです・・・。

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2011-06-13 14:56:34

映画「幸せの経済学」~ローカリゼーションの意味を考える

テーマ:日々のこと

先日、渋谷のアップリンクで「幸せの経済学」 という映画を見てきました。監督は、私が3年ほど前に読んでとても感動した本「ラダック 懐かしい未来」の著者、ヘレナ・ノーバク・ホッジ氏です。

ラダックは、インドの北部にある、近代化が遅れた辺鄙な山岳都市の村です。そこで10数年前に著者が見た風景は、電気も水道も通っていないが、人々が自信に満ち、自給自足に近い生活を行い、助け合って満足に暮らしている風景でした。子供たちは明るく生き生きとし、仏教文化も伴って人々は謙虚に働き、「とても幸せだ。」と語っていたそうです。その本を読んだとき、現代社会が失ったもの、人間の幸せについて、目から鱗が落ちるような思いがしました。

 さて、その後のラダックは、欧米の資本が入って急速に都市化が進んだ結果、人々は「貧乏」になってしまいました。10数年前にはここには「貧しい人」はいなかったそうですが、今では、浮浪者が増え、「お金が無く貧乏だ」として西側に援助を求めるようになり、スラム街が大量に発生しています。

 何が、そのような劇的な変化を引き起こしてしまったのだろう?と思います。

私たちの暮らしが、発展途上国の文化よりも「優れていて、進んでいる」という、身勝手な妄想から、グローバル経済を唱えて世界に進出した結果、世界中の半分以上の人々を飢餓と貧困に追い込んでいる、こちら側の人間の罪はどこまで深いのだろうか、と。

 映画「幸せの経済学」は、現代のラダックの様子を通して、現代社会が陥っている人間疎外の価値観、経済至上主義の暴力を、リアルの映し出していると思いました。その中で、現代の人が自信を失う理由というものが明確にされていてはっとしました。グローバリゼーションが人間に与えるものは、地球規模での競争です。

世界競争で勝ち進んだ大企業の中でも、選ばれた優秀な人が送り出す大量の製品、人種も肌色も違う白人の美しい女性が宣伝するめくるめく広告を見ながら、「自分はその人と比べて醜く、劣っている」というふうに自分を評価します。自分たちの暮らしはみすぼらしく、貧しい、と欧米メディアを見ながら絶望する。無意識にしみこんだ強い劣等意識は、人々の心を蝕み、過激な競争心や無気力、依存心、あるいはテロリズムを培養します。

一方で、ヘレナ氏がここで提唱しているのが「ローカリゼーション」です。身近な社会、地域のつながり、食糧やエネルギーの地域での生産、その基盤をつくることと同時に世界との交流を活発に行う、地域の固有性を大切にしながらお互いに交流するような未来では、人はもっと幸せになるだろうと言っています。それは、先進諸国でも同じです。

 原発のようなエネルギーでなく、自然エネルギー拠点を分散配置し、地域の生産性があり、コミュニティーを大切にした単位をつくることが、可能性のある未来を考えるときにとても大切だと、この映画で深く考えさせられました。

 

 

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2011-06-06 20:48:44

「キッズタウン東十条」が新建築6月号に掲載されました。

テーマ:建築コラム

3月に竣工した「キッズタウン東十条」 が新建築の6月号に掲載されました。


建築家 田口知子の日常をつづったブログ

今月は「保育のための空間」というテーマの特集号です。保育園、幼稚園、こども園など、さまざまな新しい保育園の試みが紹介されています。自分以外の建築家の文章を読むと、なるほどそういう考えもあったか、と新たな発見があります。建築を作ることはいつでも発見に満ちていておもしろいです。

 

 私が新建築に掲載した設計主旨を転載します。


 「すべての場所が遊び場であるように」

この建物は、JRの土地に民間が建設と運営を行う「JR東日本グループ子育て支援事業」の一環で計画された、定員90名の認可保育園である。駅前狭小地で保育室面積を確保するため、RC造の5階建となった。園庭もない厳しい環境で建築として何が可能かを考え、建物全体を遊び場にすることを考えた。

繊細でダイナミックな成長期にある子供たちの遊び場に大切なものは、風や自然光、温度や湿度、においなど、刻々変化する自然を全身で感じられる環境だと思う。2階から4階に配置した保育室は、子供たちがいつでも外に出られるように、建蔽率に入らないバルコニーを南西側全体に張り出させた。デッキ貼りの眺めの良いバルコニーは、子供たちに人気の遊び場になっている。また、園庭の代わりに設置した5階の屋上広場から3階までを、連続する段丘状の屋外遊技場としてデザインした。砂場、すべり台、クライミングウオールなどを階段にからめて造作し、立体的な外遊び空間が実現した。

保育室は階ごとに乳児・幼児・遊戯室+児童デイサービスに分かれており、各階は間仕切り壁の無いひと繋がりの空間で、段差や水回り、EVコアなどによってゆるやかに分節される。高さ85cmの可動収納家具を使って「食事」や「昼寝」「おもちゃ遊び」など、細かなゾーンを作りだすことができる。

ある幼児教育家によると、少し高いところから見下ろすという行為は子供の脳を発達させるらしい。子供にとって階段や段差は、大人の危険意識とは別の、新鮮で刺激的な体験になりうる。同様に吹き抜けを見下ろす窓や、町の風景を眺める窓も、子供の目線にあわせて数多く配置した。その結果道路側のファサードは、床レベルに近いFIX窓と通風用の高窓が、リズミカルに並ぶ特徴的な外観になった。

この保育園が、多様な遊び場や好奇心を刺激する環境を提供し、子供の発達や成長に寄与するだけでなく、大人も新鮮な喜びを体験できる場所として、豊かに育っていってほしいと思う。

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