毅然とした態度で空爆に参加せず


そして、今もオマーンの活躍が求められる場面がある。それはイエメンをめぐる戦争である。15年3月にサウジアラビアなどのGCC諸国が大規模な空爆によって軍事介入を開始した。その後も空爆を続けている。GCCとは湾岸協力会議と訳される。サウジアラビア、クウェート、バーレーン、カタール、アラブ首長国連邦、そしてオマーンの六カ国から構成されている地域組織である。その中心国は最大の石油資源を誇るサウジアラビアである。


なぜGCC諸国はイエメンでの軍事介入に踏み切ったのだろうか。それはイエメンの内戦の一方の当事者であるホーシー派と呼ばれるシーア派の勢力がイランの支援を受けて勢力を拡大した、とサウジアラビアなどが考えたからだ。GCC諸国はイエメン内戦のもう一方の当事者のハディ大統領の勢力を支援して介入した。


この軍事介入から既に1年がたった。だが首都のサナアは依然としてホーシー派に制圧されたままである。問題の軍事的な解決は視野から遠ざかってゆき、そろそろと停戦を求める機運が高まってきた。介入した諸国では厭戦気分も見え始めている。


誰が停戦の調停をするのか。そこで注目されるのがオマーンである。というのは、他のGCC諸国がこぞって軍事介入する中、ただ一人毅然としてサウジアラビアの意向を無視して空爆に参加しなかったからである。イエメンとオマーンは隣国である。ホーシー派の後ろ盾とされているイランとオマーンの関係の深さは既に言及したとおりである。


またGCCのメンバーとして軍事介入している国々とも密接な関係を維持している。つまり、すべての関係者と口がきけるのはオマーンだけである。カブース国王の外交手腕に期待が集まっている。


-了-


※『経済界』(2016年5月号)、73~4ページに掲載されたものです。


国際理解のために (放送大学教材)
高橋 和夫
放送大学教育振興会
売り上げランキング: 115,488