【講演会のご案内】


10月9日(日)10時30分~12時
『「イスラム国」の野望!』
場所:放送大学大阪学習センター
(JR寺田町またはJR天王寺駅より7分)
詳細未定


10月9日(日)午後3時~5時
講演『「イスラム国」の野望!』
大阪市内 詳細未定


2017年1月21日(土)午後2時~4時
三重県 菰野町よもやま歴史サークル
『ユーラシア史の中の世界宗教』
詳細未定

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2016-08-11 14:51:55

クルド人は、イスラエルを熱い思いで見つめる―クルド独立への思い

テーマ:イラク

クルド人とトルコ、イラン、シリア、イラク


シリア内戦では様々な国や勢力が痛手を受けた。その中で、唯一の勝者となったのがクルド人だ。近年のイラクの混乱で「独立国家」を築きつつある。


クルド人は、現在はイラクという国の枠組みの中での自治政府(クルディスターン自治政府)という地位を受け入れている。しかし、クルド人が本当はイラクから分離した独立国家を求めているのは良く知られている話である。


だが、独立にはトルコやイランなどの近隣諸国の反対が予想されるだろう。というのはクルド人というのはイラン、イラク、シリア、トルコなどの国境地帯に生活しているからである。その総人口は、正確な統計はないが、4000万程度だと推測される。これはイラクの総人口3500万を上回る。


しかしながら、クルド人は自らの国を持たない。第一次世界大戦後に中東が英仏によって分割された際には、クルド人の希望は反映されなかった。クルド人は、それぞれの国でマイノリティとして分断された。現在の世界で、国を持たない最大の民族だと考えられている。逆に考えると、各国がマイノリティとしてクルド人を抱え込んでいるともいえるだろう。


もし仮にイラクのクルド人が独立宣言などすれば、イラクの中央政府はもちろんのこと、シリア、トルコ、イランの強い反発が予想される。自国のクルド人に影響が及ぶのを各国が懸念するからである。イラクは、既に分割されている。そして中央政府は混乱しており、イラク北部に支配を及ぼす力はない。


またシリアも内戦状態である。シリアのクルド人は、アメリカやロシアの支援を受けて「IS(イスラム国)」などと戦っている。シリアの反対も何ら実効力を持たない。


問題は、イランとトルコである。両国の予想される反対を、どう抑えるのか。解決策は、見つかっていない。クルド人が、いまだに独立を宣言していない理由である。


中東で唯一、イラクのクルド人の独立を支持している国がイスラエルである。それはイラクの分裂の固定化を意味するからだ。分裂したイラクはイスラエルを脅かさないからである。本稿では、イラクのクルド独立自治区と、イスラエルの関係性について解説したい。


クルド人とイスラエル 

 

5月という月には、ユダヤ人にとって記念すべき日が続く。5日が、中東のイスラエルでは、ホロコーストの追悼の日だった。ホロコーストとは、第二次大戦中のナチス・ドイツによるユダヤ人の大量虐殺のことである。イスラエル各地で追悼行事がおこなわれた。これにあわせて世界各地のユダヤ人も追悼の行事を行った。


そうした中で目を引いたのが、イラク北部のクルド人の自治地域での行事だった。イラク北部を実質上支配するクルディスターン自治政府が、その首都アルビルでホロコーストの追悼行事を初めて行った。


この行事に象徴されているように、イラク北部のクルド人とイスラエルの関係が深まっている。そもそも両者は長年にわたって友好的な関係を維持してきた。1948年にイスラエルが成立すると、イスラエル政府は世界各地のユダヤ人に「帰還」を呼びかけた。


これに応える形で、またアラブ世界各地で発生した反ユダヤ暴動などに追われる形で、多くのユダヤ人がイスラエルへ移住した。イラク北部のクルド人地域からも少なからぬユダヤ人がイスラエルへと移った。現在のイスラエルにおいてクルド系の市民は約10~20万人と推定されている。その中から国防大臣になった人物も出ている。とはいえイスラエルにおけるクルド系市民のランクは高くない。


イスラエルという国は、出身地によって同じユダヤ教徒でも無言の格差がある。クルド系の人々はイエメン系などと共にユダヤ教徒の中で最も下層だと考えられてきた。ヨーロッパ系のユダヤ人が中心となって建国したという経緯を踏まえれば、遅れてきたアラブ諸国出身のユダヤ教徒たちが社会の末席にしか座を与えられなかったのは、避けがたい現象であったかもしれない。


ヨーロッパから既に高い学歴を持ち資本と技術をもたらした人々と、イスラエルへの飛行機の中で火を起こそうとしたといったエピソードが残っているアラブ社会出身者の間の格差は歴然としていた。なお現在では、エチオピア出身のユダヤ教徒が最底辺とみられているようだ。もちろん、その下にはイスラエル市民権を持つパレスチナ人がいるのだが。


クルド人の闘い


さて1960年代にクルド人がイラクの中東政府に対して自治・独立運動を始めると、イスラエルのクルド系の市民は、政府に支援を訴えた。しかし、クルド系市民の訴えがなくとも、イスラエルは密かにクルド人を支援していただろう。アラブ諸国の敵意に囲まれているイスラエルにとっては、中東の非アラブ民族は潜在的な味方であった。


クルド人だけでなく、ペルシア人のイランやトルコとの密接な関係もイスラエルは構築していた。そして、クルド人の反乱によってイラクの力が弱まるのであれば、それはイスラエルの国益であった。


このクルド人のイラクでの民族運動を指導したのはムッラー・ムスタファ・バルザーニーであった。ムスタファ・バルザーニーは、自らのバルザーニー部族などを率いて第一次世界大戦後からイラクの中央政府と戦って来た。第二次大戦後にはイランに入り、イランのクルド人地域で成立したクルド人の国家マハーバード共和国の軍事面を担当した。


しかし、1946年にイラン中央政府軍の攻撃で同共和国が崩壊するとソ連に逃れて1958年まで亡命生活を送った。そのバルザーニーが帰国してイラクのクルド人の民族運動の指導者となったのだ。


イスラエルは、このバルザーニーの反乱を支援した。アラブ諸国との戦争で捕獲したソ連製の兵器がイラン経由でイラク北部のクルド人に与えられた。イランとイスラエルは、イランで革命が起こるまでは、実質上の同盟関係にあった。ペルシア人が多数派の国イランと、ユダヤ人が多数派の国イスラエルはアラブ人の国イラクを共通の敵と見ていたのだ。


バルザーニーは、イラク中央政府と時には戦い、時には交渉し、クルド人の自治を確保しようとした。しかしバルザーニーの戦いは、1975年にイランの裏切りによって失敗する。イランが、領土問題でのイラクの譲歩と引き換えにバルザーニーへの支援を打ち切り国境を閉鎖したのであった。孤立したクルド人はイラク軍の攻勢の前に敗退し、バルザーニーは病気治療中に亡命先のアメリカで死亡する。


クルド人の戦いは次の世代に引き継がれた。現在のイラク北部のクルディスターン自治政府のマスード・バルザーニー大統領はムスタファ・バルザーニーの息子である。


これ以降、イラン・イラク戦争、湾岸危機・戦争、イラク戦争など激動の時代を中東は経験した。だが、イスラエルと、イラクのクルド人との友好関係は基本的に変わらなかった。


イスラエルを熱い思いで見つめる


イラク戦争後、イラク北部にクルディスターン自治政府が成立した。イスラエルは、この政府と密接な関係を構築してきた。クルディスターン自治区の首都のエルビルには、イスラエル人が活動している。たとえばエルビルの空港の警備体制などはイスラエルの助言に基づいて運営されているようだ。


もっと実質的な面ではクルディスターン自治政府の支配地域からトルコ経由で輸出される石油の大半を、イスラエルが輸入している。これはイスラエルが輸入する石油の四分の三をも占める量だ。


バグダッドにあるイラク中央政府はイスラエルを承認していない。しかし、イラクの北部からの石油がイスラエルの経済を動かしているわけだ。またイスラエルが支払う石油代金がクルディスターン自治政府の重要な財源となっている。このようにイスラエルとイラク北部のクルド人が関係を深めている。


さて、独立を宣言しなくとも、イラクとシリアでは国家の枠組みそのものが内戦で解(ほど)けつつある。結果としてクルド人が独立に近づきつつある。これからのイラクとシリアの情勢はクルド人の動向を焦点として展開されそうだ。 


そして去る5月14日がイスラエルの68回目の独立記念日だった。国際政治の強風のなかで、強引にイスラエルという国家を樹立したユダヤ人の経験をクルド人は熱い思いで見つめているだろう。


※2016年8月10日にSYNODOS に掲載されたものです。



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2016-08-07 11:57:41

トルコ・エルドアン人気の秘密(2)

テーマ:トルコ

なぜ、庶民の支持を受けるのだろうか。


それは公正発展党がイスラム色の濃い政党であるからだ。前にも述べたように宗教と政治の分離の原則の存在するトルコでは、宗教心の強い人々が結成した党であってもイスラム政党とは名乗れない。公正発展党の課題は、いかにして軍の介入を阻止するかであった。軍を意識し、政権獲得から最初の10年くらいは、宗教問題に関しては慎重すぎるくらい慎重だった。


たとえば、髪を隠すスカーフのヘジャーブである。政教分離の原則に反するという理由から、公務員はヘジャーブを被っての勤務は許されてこなかった。また大学でも女子学生がヘジャーブで髪を隠すのも禁止であった。となると、髪を隠したいという女性はトルコでは大学教育が受けられなかった。やむなく宗教的で裕福な層は娘をアメリカの大学に留学させたりしていた。アメリカでは服装が自由だからだ。


公正発展党が、このスカーフ着用の禁止を解いたのは、やっと2013年になってからである。政権奪取から10年間は、この問題では自重してきた。間違えないでほしい。スカーフを被らないといけないのではない。被っても許されるようになったわけだ。またアルコール類の夜10時以降の販売禁止なども導入した。


こうした政策が、じつは宗教的である庶民の支持を集めてきた。クーデターが起こるとエルドアンが国民に外に出て抗議活動をするようにとスマートホーンを使って呼びかけた。そしてモスクからも外に出るようにとの訴えがつづけられた。


こうした呼びかけに応えたのは、庶民であった。高級住宅地は静まり返っていたのに対し、貧しい人々が外に出てクーデター側の兵士と向かい合った。エルドアンを貧しいが信仰心の深い自分たちの指導者としてあがめている人々である。この人たちの票でエルドアンは選挙に勝ちつづけ、この人たちの血で今回のクーデターを失敗させた。この層の熱い思いを感じ取らずしてトルコは理解できない。英語のできるエリートと話していては、つかめない感覚だろうか。


-了-


※まなぶ8月号に掲載されたものです。



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2016-08-06 09:01:00

トルコ・エルドアン人気の秘密(1)

テーマ:トルコ

1990年代にトルコのイスタンブールで現地の知識人と話す機会があった。海峡の見える素敵なホテルのカフェで話し込み、いろいろと同国の情勢について教えてもらった。最後に、トルコの将来について、どう思うかと筆者の意見を求められた。


「結局はイスラム色の強い政党がトルコを支配するようになるだろう」と答えたら、ひどく嫌な顔をされた。トルコのインテリ層とイスラム勢力とは感覚的に合わないようだ。前者は後者を、洗練されていない田舎者だと見下している。


イスラム勢力が勝つだろうと私が思ったのは、当時のトルコで庶民の生活の改善のために働いているのはイスラム系政党のレファー(福祉党)だけだったからだ。当時のトルコは、地方から出てきた人々がイスタンブールやアンカラのような大都市の周辺に広大なスラム地区を形成していた。ゲジェコンド(一夜建て)と呼ばれる住居には、電気や水も十分に行き渡ってなかった。こうした層への「どぶ板」活動でレファーは支持を集めていた。


やがてレファーは連立与党となってトルコの政局の中心となった。だが、レファーがイスラム政党であり、政教の分離を定めた憲法に違反しているとして軍部が強い圧力をかけた。レファーは解党に追い込まれた。


しかし、レファーの支持層は、やがて新たな政党を樹立した。これが現在の公正発展党、現在の与党である。2002年以来、この政党が一貫して与党としてトルコの政権を担ってきた。


公正発展党の支配は、トルコ経済を一変させた。国民を悩ませていた天井知らずのインフレを押さえ込んだ。そしてトルコは、平均すると年率数パーセントの経済成長を達成した。国民には広く医療が行き渡るようになった。トルコは別の国のようになった。これが経済面で多くの庶民が現大統領であるエルドアンを支持する背景である。


そして心理的にも庶民は、それまでトルコを支配してきたエリート層に感じなかった親しみをエルドアンに覚えている。


>>次回 につづく


※まなぶ8月号に掲載されたものです。



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