gooニュースより
 『原発日本のこれからの経済の話 原発コストに含まれていないもの②』
【マッカリー記者は、原発作業員の宿舎となっている福島県いわき湯本のホテルから「Jヴィレッジ」経由で福島第一へ向かうバスに同乗するなどして、密着取材しています。

 たとえば、九州からやってきた47歳のトラック運転手アリヨシ・ルネ氏の日当は1万2000円。作業員募集の雑誌広告を見て、6月初めから福島入り。事故後に原子炉周辺に残された消防士たちの防護服2万3000着を回収する作業にあたっていると。

 「(金額は)仕事の内容に見合ってると思う。トラックを運転するより金になる」とアリヨシ氏。子供たちは父親が放射線を浴びすぎないか心配する一方で、「父親のやってることは結構かっこいい(kind of cool)と思ってる」ようだとも(以下、日本人の発言はすべて英語から日本語に訳しています)。

アリヨシ氏の被曝量は1カ月余りで5ミリシーベルト。自然放射線量の世界平均は年間2.4ミリシーベルト。東電との関係は「6次請けくらい」だという雇い先の会社は、臨時採用の作業員の被曝上限を15ミリシーベルトに設定しているけれども、アリヨシ氏は「もっと続けたいので上限を引き上げてくれればいいと思っている」と話しています。

 「ここに来たのは、責任感というのもあるけど、主には金のため。失業中だったから来た人もいるし、ずっと定職につけなかったという人もいる」とも。

原発作業員については、英紙『インディペンデント』のデビッド・マクニール記者も26日付で、「フクシマ停止のため未来を犠牲にする青年」という記事を発表。

 取材した20代の「ワタナベ・アツシ(仮名)」氏は、東京の雑踏にいると休日中の郵便配達員や建設作業員にも見えるが、実は福島第一原発の停止という「この地球上でもっとも特別な仕事のひとつ」に携わっているのだと、記事は書きます。

東電の地元下請け企業に就職して以来、10年以上前から「当たり前のように」福島第一で働いてきた「ワタナベ氏」は(仮名なのは、会社が実名取材を禁止しているからと)、「日本や東京に安全な電力を供給するのが自分たちの仕事で、それに誇りを持っていた」と話したと。

 「この仕事ができる人は少ししかいない。僕は若くて独身だし、この問題の処理を手伝うのは自分の義務だと思う」とも。

 ワタナベ氏は事故後の原発での作業を断ることもできたが、妻子のいる同僚はなるべく原発に行かせないという言わずもがなの配慮が仲間内にあったと記者に話しています。月給は18万円。「昼食手当て」と呼ぶ1日1000円が追加された以外は、震災前と給料は同じ。

 記事によるとワタナベ氏は自分の今後の健康について、あるいはもし子供ができたら……と考えて、すでに結婚は諦めている。そして記事によると彼は自分を特攻隊の飛行士になぞらえて、国の最後の守りのつもりでいるらしい、とも。

「若い事務員と同じくらいの給料で、彼とその仲間たちは、普通の生活を諦めたのだ。彼は総理大臣に会ったことはない。地元の県知事にも、東電社長にさえ、会ったことがない。子供をもつことは決してないし、若死にするかもしれない。
 
 これが別の世界だったら、ウォール街のトレーダー並みの給料をもらってもおかしくないのだが、そう言うと彼は笑う。『引退するときになったら、ペンやタオルをもらって、それでおしまいだと思う。それが僕の仕事の値打ちなんですよ』」

 ウォール街のトレーダー並みの報酬を得てもなんらおかしくない、人類にとって貴重な仕事をしている人に、月収18万を与えてそれで済ませて、「原発は安い」と言っている。

 これはいったい何の茶番なのかと、そういう記者の怒りが行間から響きわたるような文章です。ワタナベさんが結婚を諦めたそのコスト、それはいったい、原発の発電コストにどう計上されているのでしょうか。】

 ここで取り上げている作業員の方のお話は、原発の存在が、周りの人々に強いている犠牲のほんの一例です。