欧州野球狂の詩

日本生まれイギリス育ちの野球マニアが、第2の故郷ヨーロッパの野球や自分の好きな音楽などについて、ざっくばらんな口調で熱く語ります♪


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【管理人注】

 この記事は、管理人自身の頭の中にあるものをそのまま文章にした、完全な創作です。急になんだか書きたくなったので、文章を書く練習も兼ねて、SLUGGERあたりで執筆している、スポーツライターになったつもりでやってみました。実在の人物や団体などとは、一切関係ありません。あらかじめご了承ください。以下のような設定や世界観を前提に、読んでいただければ幸いです。


・舞台は2041年のイランとフィリピン

・フィリピン・マニラで行われたWBCアジア最終予選で、史上初めてイランがWBC本大会出場を決めた

・大会形式や出場国などについては、こちらの記事を参照(http://ameblo.jp/systemr1851/entry-10837757482.html )


(ここから本文)

 試合終了を告げる27個目のアウトが記録されたその瞬間、アザッド・ナッダフィは歓喜の雄たけびをあげながら両拳を天に突き上げていた。その姿はさながら、何日も何日も波間を彷徨い続けた後にようやく陸地を発見した時の、遭難した船舶に乗り込む船乗りのようだ。いや実際のところ、ずっと長きにわたって追い求め続けてきた夢をようやく叶えたという意味では、彼のそこに至るまでの道のりは船乗りのそれと同じようなものだったのかもしれない。


 野球イラン代表がマニラの地でWBC本大会への切符を掴んだというニュースは、この2041年におけるアジア球界はもとより、国際球界全体で見てもエポックメイキングな出来事と言えるだろう。アジア選手権の3位決定戦における逆転勝ちによる、最後の滑り込みでの出場権獲得という結果とはいえ、タイ、パキスタン、スリランカといったアジアBグループの実力派たちを率いる筆頭格のフィリピンに、それも彼らのホームで勝利したことは、イランにとっての初のWBC本大会進出を彩るうえではあまりにドラマティックだ。


 「正直今でも信じられないよ。この感情を何と表現すればいいのか全く分からない」 イラン代表のキャプテンとして、フィリピン戦に5番・三塁でフル出場した32歳のアザッドは、試合後のインタビューで目を真っ赤に腫らしながらそう語った。「俺たちは今まで何度も大きな夢を叶えようとしながら、高い壁に数えきれないほど跳ね返され続けてきた。あともう少しのところで、嫌というほど煮え湯を飲まされてきたんだ。その壁を今日乗り越えられたことに興奮が抑えられないよ!!俺たちイランがついにWBCに出られるんだ!!」


 イランの野球人たちにとってのWBCは、大会が生まれてからの35年もの間ずっと、果てしなく遠い道のりの彼方にある存在でしかなかった。その最初の11年間に至っては、イラン人たちにはその舞台に挑戦する権利すら与えられなかったのだ(2017年大会までは、WBCはMLB機構による招待制の大会だった)。現在でこそ西アジアトップレベルのプロリーグを有し、日本・アメリカ・ヨーロッパにも選手を輸出するまでになっているイランだが、当時の国内における野球をプレーする環境は信じられないほど脆弱だった。正式な野球場は1面のみ、国内全体で左投げ用グラブがたった1つしかないという時期すらあったのだから。


 2021年大会からはWBCもそれまでの招待制を取りやめ、文字通りの世界一決定戦として全ての大陸別選手権とリンクするようになったが、それでもなおイラン人たちのWBC本大会への道のりは茨の道だった。東南アジア、南アジア、西アジアに分かれての1次予選では、ネパールやアフガニスタンといった無名ながらも成長著しい新興国に胸を貸す立場。しかしそこを突破してアジア選手権に進出すると、今度は前述のBグループの実力国たちに加え、アジア4強の一角を占める台湾や中国と対戦しなければならないのだ。イランからしてみれば、アジア選手権で相まみえるのは2010年代からずっと格上だった国々ばかりで、白星が計算できる相手など皆無だった。


 アザッド自身も、そんな苦しい時代を選手としてずっと体感しながら育ってきた1人だ。2029年、当時20歳という若さでシニア代表に名を連ねた彼は強肩強打攻守の三塁手で、イランなどの中東5か国16球団で構成されるMEPBL(Middle Eastern Proffesional Baseball League)を代表するスラッガーの1人。ドイツで指導者としての経験を積んだ監督のホセイン・ハシェミアンの元で、8歳年下のアフシン・ダガカ(倉敷スパークス)とともに、代表でも強打の主砲コンビとしてビッグボール志向のチームを支え続けてきた。もっとも、そのあふれんばかりのパワーは1次予選では十全に発揮できても、アジア選手権に進んだとたんに息をひそめてしまうことが多かったのだが。


 「冷静に見つめ直してみれば、俺たちの一番の問題はメンタル面にあったんだと思う」とアザッドは言う。「1次予選は基本的に格下の国が多くて、よくて同じくらいのレベルの国としか当たらない。だから言葉は悪いけれど常に上から目線でプレーできるし、気持ちよく打つこともできる。でもアジア選手権で当たるのは力が上のチームばかりだ。そして不幸なことに、俺たちは今まで格上の国々を破ってきた経験があまりなかった。だから打席でも守備でも慎重にプレーしようとしすぎて、変に気負うあまりに本来のプレーができなくなってしまうんだ。技術的には、そんなに他国の選手たちと違いはないはずなのに」


 身長192cm、体重102kgの立派な体躯とは裏腹に、誰よりも生真面目で繊細な彼にその弱点を気づかせたのは、今回の1次予選突破とアジア選手権進出を機に、本大会進出の切り札としてチームが呼び寄せたイラン系アメリカ人右腕、アクセル・ノスラティーだった。現在ダイヤモンドバックスでバリバリの先発ローテの一角、代表チーム唯一の現役大リーガーであるアクセルが、大会の開幕前にチームメイトたちに向けて語った言葉は、文字通り同級生のアザッドにとって転機となるものだったという。


 「大会で一番格下の俺たちに、どうせ失う物なんか何もない。変に相手を怖がって萎縮したりせず、とにかくイラン本来のベースボールに徹しよう。たとえ誰が相手でもやることは一緒だろ?」(アクセル)

 「その言葉で、自分の中で何かが吹っ切れたよ」(アザッド)


 1次予選でも見せてきた豪快に打ち勝つ野球を貫いたイランは、格上揃いのはずの舞台で快進撃を開始する。1次リーグ初戦のスリランカ戦に8-3で勝利すると、第2戦の香港、第3戦のタイには2戦続けての2ケタ得点で圧勝。全勝同士の対戦となった第4戦の中国には3-7で敗れたものの、番狂わせに次ぐ番狂わせで決勝トーナメント進出を果たし、世界中のスポーツメディアの度肝を抜いてみせた。しかし決勝トーナメントの準決勝では、後に大会優勝を果たすこととなる台湾相手に初の2ケタ失点で大敗。開催国フィリピンとの運命の一戦に回ることになる。


 リサールボールパークに集った3万人の大観衆のうち、大半がフィリピンの応援団で埋まるという異様な雰囲気の中で行われた一戦は、今大会ではイランが一度も経験していなかった1点を争う投手戦に。イラン先発のアクセル、フィリピン先発のフェリックス・ムニョスによる緊迫した投げ合いが続く中、1-1で迎えた7回表にアンジェロ・クルーズへの四球を足がかりにフィリピンが攻勢に。二死満塁からローランド・バティスタが浅いフライを打ち上げるも、これが内外野の間のスペースに落ちて2点適時打となり、フィリピンがついに3-1とリードを奪う。


 フィリピンの大応援団が色めき立つ中、後がないイラン代表を救ったのはキャプテンのバットだった。8回裏、二死から内野安打と遊ゴロ送球エラーで一、三塁とチャンスを作ると、打席にはこの日左前打1本を放っていたアザッド。フィリピンの2番手マイケル・ロブレスが、2ボール2ストライクから投じた真ん中やや低めの速球を思い切り振りぬくと、「完璧なスイングと感触だった」と自画自賛した打球は右翼席へ。満員の観客を一瞬にして静寂へといざなった逆転3ランが、イランの初のWBCへの切符を手繰り寄せたのだった。


 「実は、アジア選手権で本塁打を打ったのはあれが初めてなんだ」 激戦が終了してから3日後に母国に戻り、地元テヘランでシーズンに向けてのトレーニングを再開したアザッドは笑った。「どんな舞台であろうとも自分のスイングをしっかりする、その意識がしっかりあったからこそあの3ランが打てた。大会で一番格下と言われたチームが、6試合で4回も白星を挙げられたということも含めて、本当に今回の大会は俺にとって大きな自信になったよ」


 その目は早くも、次なる高みを見据えている。「WBCで当たることになるのは、アジアレベルではなく世界レベルの強豪チームばかりだ。もしかしたら日本とも対戦するかもしれない。もちろん、客観的に見れば楽な戦いでは全くないよ。チームの地力を考えれば楽観視なんかしていられないのは分かっている。でも、俺たちだってこの舞台に立つために必死で戦い抜いてきたんだ。もし運よく次の大会にイランが出られたとしても、俺はその時は36だし年齢的に代表に呼ばれるかどうかは微妙だろ?だからこそ、俺はこの大会で同じ国を背負うチームメイトと一緒に、1つでも上に行きたいんだよ」


 今一番行きたい場所はどこかと問うと、「決まってるだろ。(WBCの決勝が行われる)ローマだよ」とにやりと笑った。中東の雄から世界の雄へ。アスリートとして更なる進化を目指し、走り続ける男の物語はまだ、終わらない。


(ここまで本文)


 ずいぶんお久しぶり、気づいたら去年5月以来になっていたWahoo!スポーツでございます。今回は、今まさに俺がベースボールブリッジの代表として支援をしている対象である、イランを主人公にしてみました。やはり支援団体さんサイドの人間からすると、最低でも未来にはこのくらいのチームにはしたいところではありますね。もちろん、実際にはこの記事で描かれている以上に強い国になってもらいたいし、そのための手伝いが少しでもできるなら光栄なことです。俺らの目下の目標は、西アジアから世界レベルの野球強豪国を生み出すことであり、それは現場で選手としてプレーするアザッドが抱いている思いとも共通していると思ってます(というより、選手の立場から代弁してもらってると言った方が正確か)。


 ちなみに、登場してもらった選手たちのプレースタイルや成績を実在の選手を使って簡単に説明すると、アザッドは2007年のアレックス・ロドリゲス(もちろん性格はあんな畜生ではありませんが)、アフシンは2011年のホセ・ボーティスタ、アクセルは2010年のマイク・ペルフリーって感じでしょうか。

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【管理人注】

 この記事は、管理人自身の頭の中にあるものをそのまま文章にした、完全な創作です。急になんだか書きたくなったので、文章を書く練習も兼ねて、SLUGGERあたりで執筆している、スポーツライターになったつもりでやってみました。実在の人物や団体などとは、一切関係ありません。あらかじめご了承ください。以下のような設定や世界観を前提に、読んでいただければ幸いです。


・舞台は2041年のヨーロッパとトルコ

・オランダ・イタリア・サンマリノ・ドイツ・スペイン・イギリス・フランス・チェコ・スウェーデンの9か国32球団からなる、ヨーロッパトップリーグとしてのEUBL(European United Baseball League)が成立している

・トルコ代表は長らく活動そのものが下火になっていたが、この年のヨーロッパ選手権予選に久々に参加することが発表された


(ここから本文)


 野球トルコ代表が久々に国際大会に、それもヨーロッパ選手権の予選ラウンドに顔を出すことが決まったというニュースは、ここ最近の国際球界の中でも特に驚きと注目を以て迎えられたものの1つと言えるかもしれない。ヨーロッパと中東のちょうど境目に位置するこの国は、確かにイスラエルと同様中東の国家でありながら欧州野球連盟(CEB)に加盟してはいたが、国際球界において存在感を発揮することはこれまで皆無と言ってよかった。無理もない、代表の活動自体がほぼないに等しかったのだから。この国におけるスポーツ関連の話題と言えば、これまではサッカーとバレーボールとヤールギュレシ(全身に油を塗って闘うオイルレスリングで、同国においては国技に指定されている)が占めるのが通例だった。


 しかし、ベースボールというスポーツがそれらと同じように、巨大な富を成功者に対してもたらすことがここ10年ほどのうちに知られるようになると、この国においても野球に力を入れようという動きが出てくるようになった。中東野球リーグにおける一大勢力としてシリアが台頭し、またギリシャもヨーロッパ球界の中で上位をうかがう地位を占めるようになるなど、周辺国が野球界において影響力を持ち始めたことも、トルコの熱狂的なスポーツファンの心に火をつけた重要な要素だ。


 当初はごく一部の狂信者たちのスポーツに過ぎなかった野球は、やがて一般にも少しずつ広まるようになり、子供たちの間でもじわじわと選択肢の1つとして広まりを見せ始めた。これまでは表立った活動がなかったトルコ代表の復活は、そうした変化の象徴の1つと言っても決して過言ではないだろう。もっとも、今回産声を上げることとなったトルコ代表のロースターには、トルコの野球少年たちが目標とする選手はいても、彼らと同じ国で生まれ育ったプレーヤーはほとんどいないのだが。


 トルコ代表の中で最も人気や期待度が高く、チームにおいても先発投手陣の柱としての役割を期待されているジェマル・アルカンは、自身がトルコ代表に招集されたと聞いた時に抱いた感情を、「喜びとともに少々複雑な思い」であったと率直に打ち明ける。「正直、トルコ代表がユーロに参加すると聞いた時は驚いた。自分がチームに招集されることが決まった時もね。もちろん、代表のユニフォームを着られることはとても名誉なことだと感じている。ただ、自分がトルコ代表のそれに袖を通すにふさわしいプレーヤーなのか、自問自答を繰り返した時期があったことも事実だ」


 現在27歳で、昨年はパダーボーン・アンタッチャブルズのエースとして30試合に登板。15勝7敗、防御率3.22という成績を残し、EUBLでの1年目を充実したものとした彼は、実はトルコの生まれではない。首都イスタンブールから西に遠く離れたドイツ・マインツにおいて、ジェマルは2015年3月28日にトルコ移民の両親のもとで生を受けた。トルコを訪れた経験は「過去に2度、両親と一緒に旅行したことがあるだけ」。今回発表されたトルコ代表のロースター28名のうち、実に23人が彼と同じトルコ系ドイツ人のプレーヤーだ。彼らはいずれもトルコ人風の風貌と苗字を持ち、トルコの国籍やパスポートを保有し、また流ちょうにトルコ語を操るが、一方でドイツの地で生まれ、ドイツ語を生活言語とし、ドイツ社会の中でドイツ文化の影響を受けて育った。もちろん、彼らはトルコのそれと同時にドイツの国籍やパスポートも持っている。ただ、彼らの民族的アイデンティティを複雑なものにしているものは、単にそれだけではない。


 ドイツ社会において、トルコ系移民とその子孫は「最も規模の大きなマイノリティ」としての地位を確固たるものとしている。彼らの祖先は第2次世界大戦以後、敗戦国となったドイツの復興を支えるための外国人労働者(ガストアルバイター)としてドイツに迎え入れられたが、安い賃金で働かされることが半ば暗黙の前提となっていた彼らにとって、言語も文化も異なる異国での生活は決して楽なものではなかった。ドイツの音楽シーンに、トルコ系を筆頭に移民の血を引くヒップホップミュージシャンが多数存在していることは、そうした事情と決して無縁ではない。


 一方で、もともとドイツに定住していたアーリア系ドイツ人たちにとっては、外からやってきて自分たちの食い扶持や住処を奪っていくよそ者は、招かれざる客人以外の何物でもない事もまた事実。自らの文化であるトルコ式の生活様式を頑なに守り、ドイツという国に積極的になじもうとしない者たちが少なくないことも、旧来からの住民たちからは少なからず反感を買っている。ドイツにおいて、アーリア系とトルコ系の両者の間にいまだ深い葛藤が残っていることには、そうした根深い背景があるのだ。


 そのような特有の事情は、トルコ代表の選手たちの意識にも微妙な影響を及ぼしているとジェマルは言う。「僕自身は、ドイツという国を嫌いになったことは一度もないよ。たとえどんな事情があれ、自分が生まれ育った国を嫌いになれるわけがない。むしろ、自分がドイツ人であることに誇りを持っているんだ。ただ一方で、自分が祖先から受け継いだトルコ人としての血も、かけがえのないものだと感じている」 彼は自分にとっての2つの祖国について熱く語る一方で、こうも漏らしている。


 「正直に言えば、ドイツ代表のユニフォームを着ることへの憧れはあるよ。自分が生まれた国の代表として、国際大会でプレーしたいと思うのはアスリートとして自然な感情だと思う。それだけの価値がある選手になりたいとも思っている。ただ、一方では恐怖感もあるんだ。果たして、自分がドイツ代表の一員として国際大会でプレーすることが、母国ですんなりと受け入れられるだろうかというね。当事者の1人として、トルコ系ドイツ人が抱えている葛藤は理解しているつもりだから。だからといって、トルコ代表にある意味逃げたと思われるのは心外だ。自分が生まれた国であるドイツも、自分のルーツがあるトルコも、僕にとっては同じくらい大きな存在なんだからね」


 奇しくも、ヨーロッパ選手権予選に久しぶりに挑むトルコが、その最初の強化試合の相手として指名したのはドイツだった。5月16日、首都イスタンブールに欧州四天王の一角を迎えたトルコは、世界レベルの強豪相手に序盤は予想外とも言える善戦ぶりを披露したものの、中盤以降地力の差を露呈して3-11の大差で敗れた。この試合に先発登板したジェマルは試合後、決勝点となる勝ち越し3ランを自身から放ったドイツの主砲、ミヒャエル・マリク・シュミットが仲間とグラウンドで喜びを分かち合う姿を、一塁側ベンチからじっと見つめていた。同じドイツ南部のレーゲンスブルグで、サウジアラビア系ドイツ人として生まれたミヒャエルは、ジェマルにとって最大の友人かつライバルの1人だ。


 「僕もミヒャエルも同じドイツ人でありながら、国際大会では同じドイツ代表でプレーしていないということには、なんだか複雑な思いもあるよ。ただドイツ代表でプレーすることを選んだ彼も、移民の子供としての苦悩をずっと抱えながら生きてきた。結局、ドイツとトルコどちらの代表チームでプレーするのかということに関しては、正解なんてないのかもしれない。自分が求められた場所で全力を尽くすこと、それが自分の果たすべき責任なんだと思う」


 ドイツとの一戦からおよそ2か月後に控えるヨーロッパ選手権予選の場で、ジェマルが目指すのはチームの勝利だけではない。自分たち代表選手たちの戦いを目にすることになるであろう、トルコ人やトルコ系移民たちにとってのロールモデルとなることだ。「トルコの人々の中に、自分たちのプレーに注目し声援を送ろうとしてくれている人たちが少なからずいることは知っている。その中に、多くの子供たちがいることもね。アスリートとして、彼らの期待に応えたいと心から思っているし、彼らがこの先の人生の中で手本にするような人物になりたいと思うよ」


 「一方で、自分たちと同じくドイツをはじめとするヨーロッパ諸国で暮らす、トルコ系移民に対しても何らかのメッセージを発信できるような存在になりたい。自分の友人たちの中にも、社会の下層での生活への不満から堅気での生活を捨てて、不良グループやギャングの一員になった奴らが少なからずいるんだ。悲しいことだけど、実際に犯罪に手を染めてしまった者たちもいる。そういう人々に対して、『僕たちが生きる道はそれだけじゃないんだ』ということを伝えたい。自分たちにも輝ける道がきっとあるんだとね。もちろん茨の道であることは間違いないけど、何かを感じ取ってもらえるような投球を見せたいと思っているよ」


(本文ここまで)


 はい、ずいぶん久々の掲載となったWahoo!スポーツでございます。今回は野球の話というより、むしろ移民についての話がメインと言えるかもしれません。ちなみに、このカテゴリーでドイツ野球を取り扱うのは、今回のストーリーにも登場するミヒャエルが主人公となっているこちらの記事(http://ameblo.jp/systemr1851/entry-11152395142.html )以来2度目。その時も主題となっていたのは移民についての話でした。ドイツという国は、実はアメリカに負けず劣らずの移民大国なので、結構この手のテーマは絡めやすいのは確かなんですよね。


 ミヒャエルと同じ移民の息子でありながら、野球の代表選手としてのキャリアは好対照な道を選んだジェマル。前回の記事とは似たようなテーマながらも、また違った角度で切り込んだストーリーとしてお楽しみいただければ幸いです。

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【管理人注】

 この記事は、管理人自身の頭の中にあるものをそのまま文章にした、完全な創作です。急になんだか書きたくなったので、文章を書く練習も兼ねて、SLUGGERあたりで執筆している、スポーツライターになったつもりでやってみました。実在の人物や団体などとは、一切関係ありません。あらかじめご了承ください。以下のような設定や世界観を前提に、読んでいただければ幸いです。


・舞台は2041年のヨーロッパ

・オランダ・イタリア・サンマリノ・ドイツ・スペイン・イギリス・フランス・チェコ・スウェーデンの9か国32球団からなる、ヨーロッパトップリーグとしてのEUBL(European United Baseball League)が成立している

・EUBLの事実上の下部組織として、各国にそれぞれの国内リーグ(1部、2部、3部…)が併存している

・現在のNPBに代わるリーグとして、日本にJMLB(Japan Major League Baseball)が成立している


(ここから本文)


 ヨーロッパトップリーグとしてのEUBLが誕生して以降、野球界の勢力図は大きく変わった。リーグ創設以前、それまでヨーロッパ各国で展開されていた野球の国内リーグは、既存の人気種目として覇権を獲得していた、フットボールやラグビー、あるいは自転車といった競技と比較すれば、巷における人気度は陰に隠れたものにすぎない存在であった。しかし、それらが1つの巨大な組織として統合され、経済的にも強化されるようになると、世界中の数多くの有力選手が、ヨーロッパ球界に身を置くようになった。現在のEUBLは、アメリカのMLB、日本のJMLBと並ぶ、国際野球界における世界第3王朝としての立場を、確固たるものにしたのだ。


 特に、スポーツビジネスとしての成功と富という面において、EUBLがヨーロッパ球界にもたらした物は決して小さくはない。ヨーロッパが、かつては「一強独裁」とも言えるほどの栄華を誇った、MLBの事実上の植民地ではなくなったというだけでも、その意義と影響力がどれだけ大きいかが分かろうというものだ。しかしながら、必ずしもヨーロッパの全ての国が、その恩恵を享受できたわけではないことも、また事実である。そうした「波に乗り遅れた」者たちは今、MLB絶対主義的な今世紀初頭には存在しなかった、新しい問題に頭を悩ませ始めている。ある意味、その苦しみを今一番肌で実感しているのは、ベルギー人たちかもしれない。


 ベルギー1部リーグ・フラームスベースボールリーガのコミッショナー、アンソニー・ヴァンデンブランデンは、ここ最近のリーグ全体の観客動員数について、大きな懸念を抱えている。「1部リーグ全体での観客動員数は、この10年間全体的に減少傾向にある。5年前と比べると、昨年の減少率は10%にもなる。1年ごとに2%ずつ減っているというわけだ。これは異常と言うほかないだろう?ベルギー代表の人気度自体は、それほど変化しているわけではないのに」


 彼が言う「異常事態」の理由は、実は思っている以上にシンプルで単純だ。それは、「国内リーグに有力な選手が乏しいから」。昨年のヨーロッパ選手権予選において、ベルギー代表に招集された28人のうち、ベルギー国外でプレーしている選手の数は、実に19人を数えた。そのほとんどは、25~32歳の年代に属する主力級。ベルギー国内組でプレーしている面々の中で、主力と呼ぶに足る存在だったのは、現在はイギリスのロンドン・メッツでプレーする、当時23歳のリリーバー、レオン・クライシュテルス1人だけだ。


 ベルギーリーグでプレーする選手のカテゴリーは、ベルギー人と外国人を問わず、大まかに言えば「ネームバリューはそれなりだが力の落ちたベテラン」「まだ才能が開花しきっていない若手」のどちらかに大別される。今年7月28日に行われるオールスターの投票結果を見ても、その傾向は明らか。ポジション別のファン投票得票数トップを年代で見ると、ベテラン組はダーク・ヴァンダム(元ベルギー代表エース)の37歳を筆頭に、マリオ・アンブロシーノ(アルゼンチンリーグ二冠王経験者)36歳、ショーン・ハンター(元アメリカ代表主砲)36歳など。若手組はアンドレ・ファンロンパイ18歳、スヴェン・ジルベール19歳(ともにベルギーU-21代表)などがいる。一番各チームの中心になって働かなければいけない年代において、有力選手がほとんどいないのだ。


 そうした年代の有力選手たちは、大半がベルギーで実力の片りんを1~2年間見せつけた後、より裕福な他国の球団に売り飛ばされてしまう。クライシュテルスにしても、ヨーロッパ選手権に招集された当時は、既にイギリス移籍が秒読み段階に入っていた(実際、大会が終了してから3日も経たないうちに、移籍発表のための記者会見に出席している)。ベルギー球界における「トップリーグの年齢層の二極化」は、こうした背景によって生じているのだ。


 実はベルギー球界は、一度EUBLへの参入を打診されている。2025年、EUBL誕生の前年に行われたCEB(欧州野球連盟)の総会の場において、全ての加盟国に対してリーグ参入の意思を確認するヒアリングが行われた際、もちろんベルギーもその場に呼ばれたのだ。当時のベルギー球界関係者が、CEBのアスラン・シュレディンガー(当時)との会談に臨んだ時点で、既に隣国のオランダやフランスは、参入する意思を表明したことが明らかになっていた。そのため、ベルギーも当然そこに加わるだろうと、誰もが予想していたのだ。


 しかし結論から言うと、ベルギー側は「ベルギー人選手が、トップレベルでプレーする機会が減る恐れがある」という理由で、それを望まなかった。歴史的に険悪な関係にある、オランダ語圏とフランス語圏で競技連盟が分かれており、国内での調整が難しいという特別な事情もあった。結果的には、彼らの目論み通り「トップレベルでプレーする場」は確かに確保されたのだが、それはヨーロッパトップの舞台と比べると、大きく水をあけられた環境と言わざるを得ないものだった。


 現在、ベルギーリーグで5連覇中である、ホボーケン・パイオニアーズのセルゲイ・ディミトロフ球団代表は、「今ベルギーでは、主力級の選手でも100万ドル(約8000万円)に満たない年俸でプレーしている。これに対して、EUBLの選手1人当たりの平均年俸は220万ドル(約1億8000万円)だ。これでは勝負にならない」と嘆く。ユーロ圏においては、1人当たりの年間GDPで上位に入るベルギーは、かなり裕福な部類には入るのだが、それでも世界中から資金が集まる世界3大リーグに対して、1か国で立ち向かうにはあまりにも基盤が弱すぎる。「上位への登竜門としての育成リーグ」という巷の評価は、そう言ってしまえば聞こえはいいが、その実態は関係者たちにとって、あまりにも過酷だ。


 「フラームスベースボールリーガが、我が国の野球ファンにとって重要な存在でなくなるのは、我々にとっては耐え難い屈辱だ」と、ヴァンデンブランデンは言う。「他競技のファンにそう思われるならまだいい。だが、野球ファンにとってもそういう存在でしかないというなら、この状況を放置しておくわけにはいかない。これは、ベルギー球界の未来にも直結する問題なんだ。解決の糸口を見いだせないのが、辛いところではあるけれどね」


 ヨーロッパ球界全体の繁栄とは裏腹に、どこか先が見えない迷路に迷い込んでしまっている感のあるベルギー球界。彼らが出口にたどり着くことができる日は、来るのだろうか。


(本文ここまで)


 いかがでしたでしょうか。今回は、ベルギーネタでやってみました。今回の記事に登場するフラームスベースボールリーガは、「ヨーロッパリーグ結果速報」の記事でも速報の対象としていますが、他国と比べると今一つ影が薄い、というのが率直な感想。この国は、かつてはヨーロッパにおける強豪だったという史実もあるんですが、この落差はいったいなんなんでしょうね。スコア速報の際に参考にしている「Score's way」(http://www.scoresway.com/?sport=baseball&page=home )というサイトでも、なぜかベルギーは対象外になってますし。


 あまりにも大きな存在が近くにあるために、自国リーグが苦しい状況に陥っているという国は、実は現実世界の野球界にも存在します。現在では、若干状況が変わっているらしいのですが、プエルトリコリーグなんかはまさにその典型例でしょう。台湾の中華職棒も、ある意味それに近い部分があるかもしれませんね(厳密にいうと、プエルトリコも台湾も、政治的には国家ではないんですが)。こういう話は根が深いだけに、なかなか解決策が見つけられないのが正直なところ。今回も結局記事中では提示できてないですし、難しいですね…。

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