桜の花びら咲く頃に その1

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きっと・・・もう一度だけ


嵐山でその言葉を聞いたのは去年で・・・


舞い落ちる桜の花の中、彼女はいった


多分、それはもう一度やり直せることだと・・・


その時は思ったんだ・・・


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日々は流れ、日常の多忙に忙殺されていた僕は


もう冬も終わりの季節に


ふっとその言葉を思い出した




甘い香り

桜色の思い出の中で

輝いていた思い出の一ページ




家への帰り道

電車に揺られながら、京都に再び行くことを決めた


あの街に・・・行かなければならない気がしたから



それは多分、予感だったのだろうと思う



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チャーハンが食べたい

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チャーハンが食べたい

とりあえず財布の中にはチャーハン無料券(300円分)がある


ただ、チャーハンが食べたいからといって

チャーハンだけ食べるのはさもしい気がする

しかも無料券を使う予定


でも、チャーハンを食べたい

そうだ餃子(250円)をつければ形になるだろうか?

いや、そしたら餃子分(250円)だけ払って

店員さんに『あの人、チャーハンだけだと恥ずかしいから餃子も頼んでる』

とか思われるのは恥ずかしい


じゃあ、ラーメンを頼んだら

店員さんに『ああ、あの人、普通にご飯食べに来たんだな』

と思われるだろうか?思われるだろう


いや、でもな・・・。そこまでおなか減ってないんだよな

チャーハン食べたいだけなのに

食べたくないラーメン(680円)を食べなきゃならないのは嫌だな


ああ、チャーハンが食べたい

ぱらぱら熱々のチャーハンが食べたい


どうやったらチャーハンを食べられるんだろ?


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乾杯

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「お疲れ様です」


帰える間際、軽く頭を下げ、先輩社員、同僚に笑顔を向けて

私は帰宅の戸についた


暇で、特にやることも無く、面白くない職場

そのくせ、人間関係はなかなかドロドロしている


私に与えられていることは

ただ黙って笑顔を振りまいて座っていること


かわいいから。綺麗だから

それ以外の理由は無いのかもしれない

あの会社に私がいる意味は


ほとんどの人は思っているのだろう

若くて綺麗なうちに、誰かと結婚して円満な寿退社をするのだろうと


そんな、普通過ぎるような普通の想像


バカみたい


だけど、最近はそれでも良いかと思ってきた

悪いわけじゃないもの

ただ、それはどうしよもなく退屈なだけだ


私はそんなことに目を瞑りながら生きている


みんなそうだと思う

みんなそうだから、この世界は上手くいっているのだろう


いつの間にか、繁華街に足を向けていた

綺麗で、そして汚い街


怪しく、それでも、何かを見せてくれる、夢見せてくれる


例え幻でも


「おっ、里緒ちゃん。いらっしゃい」

「うん。こんばんわ。いつものやつ、頂戴」



いつまで続くのだろう、この物語は


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雪道を走ると

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峠を一人、車を走らせていた


久しぶりにクソ寒い日で雪までちらほらと舞っている


「こんな日に限って・・・」


と一言くらい文句を言いたくなる

今日は4日間の出張が終わり、出張先から帰る日

運悪く今年は大人しかった冬将軍が押し寄せていていた


雪が降ると、幹線道路の山道は大抵溶雪機が動き出して

路上に雪を積もらせまいと水が噴出している


この水には凍結防止と融雪作用促進のための粉が混ぜられているので

車に水がかかってしまうと後でひどく汚れるのだ


「明日は洗車かな・・・」


正直な話、出張帰りの明けの一日くらいのんびりしたい

だけど、愛車が汚れまみれでは

融雪機の存在すら知らない南国の人(主に同僚や上司)に

車の管理もしないルーズな人と思われてしまうかもしれない


それは嫌だ。几帳面な人、清潔な人で会社では通っているのに

そんなことで変に思われたくない

出来れば、人並みに評価を受けて、出来れば昇給を順調に遂げたいのだ


「しょうがないな・・・」


そう思って車を飛ばすこと3時間

どうせなら高速でも使えばよかったなどと思ったが

後の祭りでなんとか我が家に着いた


見ると部屋の明かりが点いている

一人暮らし、ワンルームマンションに部屋の明かりが点いている理由はただ一つだ


予感と確信を持ちながら部屋に行くと

予想通り、彼女が帰りを待ち構えていた


「おかえり~」

「ただいま。どうした?」

「へへ、今日出張から帰るって聞いていたから。ごくろうさま。つかれた?

 でも、ちょっと遅すぎない?なにしてたの?」

「下道で帰ってたから遅くなった。正直高速使って帰ればよかったよ」


部屋の中に入ると食事が簡単ながら作られていた

これは悪いことをしたと思いながら

一言言ってくれれば高速使ったのにと心の中で八つ当たりをしてしまう


「ご飯できてるよ?食べる」


ここで食べないわけにはいかないだろう

たとえつい先ほど食事を食べてきたとしても

それがまだ知り合って半年の彼女に対する誠意と言うものだ


と、言うわけで食事を何とか終えた後(失礼)

彼女は家に帰ると言うので車で送っていくことにした


「うわっ。泥だらけ・・・どうしたの?これ」

「ちょっとな。ひどい道を帰ってきたから」


融雪機に含まれる粉が云々はこちらの人には話さないでおいた

意味がないし、説明するこちらも疲れる


「明日、洗車しようか?」

「そうだな。でも明日仕事は?」

「明日は休みだよ。何言ってるの?ほら?」


そう言ってスケジュール帳には祝日のマーク

それを見てまず思ったのが出張明けの休みを損したなだった


「じゃあ、また明日」


彼女を家まで送り届けて、帰路につきながら

なんとなく我が愛車の状態を再認識する


彼女も少し引いていたようだし

やはり、体裁を考えれば・・・・


「明日は洗車だな」


多分、二人で・・・

1月があっという間に過ぎた

1年でなおすと12分の1が過ぎたことになる


これが12回過ぎるとして1年

これが10回繰り返されれば10年

そして、10年が10回くれば100年だ


子供はたけのこ

すくすく育つ

子供のうちは分からない


10年が過ぎる意味が

なぜなら10年生きていない

生きていても10年前の記憶がないからだ


大人は不便だ

10年前のことを、ついこの間のことをして記憶している


記憶の連鎖が続けば

ある事象に対して関係あることを思い出す


そして、それが何年前かを思い出す

それが1年、10年たってもだ


人は産まれ、人は育ち、人は何かに向かって歩く

その先にあるものはほとんどの人にとって意味のない結果でしかなくて

生きること以上の意味しかないとしても

それでも一歩一歩進んでいく。進まされていく


時の流れは速い

速い時の流れに身をゆだね

今日も生きていくのだろう


*****


ここまで書いたとき私は筆を置いた

定められたノートには黒いインクが一面にびっしりと文字を連ならせている


不意に後ろの扉が開くのを感じた

振り返ると家内の姿が見える


「こんな遅くまでお仕事ですか?」

「いや。・・・ただね。」


そう言って私は本を閉じた

人に見せるには少し恥ずかしいと感じたからだが

私に家内は何も言わず微笑んでくれていた


「あまり、無理をなさらないでくださいね」

「ああ」


それだけを言って寝室に戻っていく家内の姿を見ながら

ふっと一つのひらめきが頭をよぎった


私は忘れないうちに急いで先ほどの文章

その最後にこの言葉を連ねた


『ただ、私は幸せなんだと言える』

未来予想図

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ある日、十数年ぶりに私は未来予想をしてみた。

なんてことは無い。

ただ、白紙の紙に向かってこれからの自分のことを考えてみたんだ。


10歳のころ。まだ小学生だった僕は『宇宙飛行士になりたい』と

そう、作文に未来予想をかいたんだ。

まだまだ、あどけない夢にあふれていたんだ。


14歳のころ。中学生だった俺は『科学者になりたい』と

そう、文集に未来予想をつづったんだ。

夢をもって未来へと走っていたんだ。


18歳のころ。高校生だった俺は『技術者になる』と

そう、教師に未来予想をかたったんだ。

ただ、漠然と未来へ向かって歩んでいたんだ。


25歳のころ。社会人だった俺は『出世をしたい』と

そう、後輩に未来予想をかたっていたんだ。

ただ、漠然と日々の日常に忙殺されていただけの日々だったんだ。


そして、今、40歳を越えて、私が思うこと


―――未来予想―――


絶え間なく流れていく中で、すでに未来への夢、希望

それは流れ落ちる水のように時の流れの中に落ちてしまっていた。

私はただいつか訪れるであろう死に向かって

『ただ、健やかに・・・』と日々を過ごすことができたら


―――未来予想―――


だけれども、私『達』の夢、希望

それはいまだ死んでいないのだと気付いている。


それは、今私の傍らに眠るこの子達がいるからなのだ。


小さな子供達の命の中に私の未来予想は詰まっている。


私の子供が書いた未来予想

『僕は大きくなったら宇宙飛行士になりたい』


そう、私の未来予想図はまだまだ続くのだ。

どんな小さな価値観

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『走ることを止めないでください』


そんな文章が目に留まったのは、高校卒業間近のとある日だった。


朝学校へ行くと下駄箱の中に葉書が一枚入っていて

宛名も無く、ただ無地の殺風景な紙に

マジックペンでそう大きく書かれていた。


さらさらとした字面から女子が書いたものと推測できたが

心当たりのある顔を思い浮かべてみても

こんなことをする人物は思い浮かばなかった。


走ることを止めたのは、今から5ヶ月ほど前の秋初旬ことだった


走るのは好きだった

だから、部活も陸上部に迷わず入部した


記録上はあまり速くはなかったけれど

走っている時が一番生きていることを感じることが出来ると思えて

輝いていると思えて、楽しいと思えて

いつの間にか走ることが人生の一部のように思えていた


だけど、体を壊して

「もう、以前のようには走れないよ」と

レントゲンを見ながら淡々と語る医者の姿を見たとき

「ああ、こんなものか」と思ってしまった


今までの人生で感じてきたことは勘違いだったんだなと思ってしまった。


人生は走ることだけではないし。他にも無限大の選択肢がある。

それも分からずに一つの狭い世界で満足していた浅い価値観の自分に

簡単に醒めた自分の走ることへの想いに

少なからず落胆してしまった。


だから、走らなくなった。


―――――――走らなくなったはずなのだけど――――――


それから数ヶ月が過ぎて

季節が春から初夏へと変わる頃

風景の青々とした緑の中を

いつの間にかランニングをする自分がいた


確かに自分は落胆していた

簡単に走ることに醒めてしまった自分に


人生は走ることだけでない、無限の選択肢がある

それは正しい。確かに正しい


だけど、この足は走りたいと言っていた

この胸は呼吸をしたいと言っていた

腕を振りたい。駆け抜けたい

そう思いたい。想いたいんだと気がついた


溢れ出したものはいつの間にか日常へと帰ってきていた

この足は走るためにあったのだと思う


どんなことでも、どんなものであったとしても

子供のころから、誰に強制されたわけでもなく

または、例え誰かに強制されたのだとしても


自分が考え、思い、それがそれでいいと決めたこと、好きなだと決めたことは

それがどんな小さな価値観であっても

意味のあるものだと、自分ひとりで決めた大切なことなんだと


つい最近そう思った

だから、今自分は走っているのだと思う


もし、あの時葉書をくれた見知らぬ誰かに返事を書くなら

きっとこう書くだろう


『僕は、これからも走り続けます』


学校が始まる時

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ランドセルと靴袋をもって学校へ出かけた


「わすれものはない?」

「うん」


久しぶりの通学路には少し雪が残っている

今の気温は5度

冬にしては暖かい


歩きなれた道は朝早くにも関わらずちらほらと人の影が見えた

皆、早足でバスや電車に向かうのだろう


歩いている最中、路肩の藪の中でウサギを見つけた

多分、近くにある幼稚園の飼育小屋からまた逃げ出したんだろうなと思った


「うさうさ。こいこい。ちっちっちっ」


なんとなくウサギを呼んでみるけど何の反応も無い

興味がなさそうにウサギは再び藪の中へ


その時、雪解けで木に積もっていた雪が落ちてきた


ドサ


見事にウサギはその雪の下敷きになってしまった


たすけようか?


それを見てふとそう思ったのは気まぐれ

学校が始まるまでまだ時間があるし、助けるくらい訳がない


長靴の半分くらいを雪に埋没させながら藪に入っていくと

少しだけ盛り上がった雪の塊がもそもそ動いた


中から必死なウサギが飛び出してきた

毛の先まで濡れてとても寒そうだった


「寒いの?」


手を出して抱え挙げようとしたら

ウサギは驚いたように飛びのいて

文字通り脱皮のごとく逃げ出していく


その鮮やかな逃げっぷりが少し面白かった


「なにやってるの?」


声がして振り返ると友達のユキちゃんがいた


「うん。ウサギがいたんだ」

「え~、また逃げ出したんだ。もう、柵くらいちゃんと作ればいいのに

 しょうがないな~。後で園長先生に言ってこよう」

「うん。それがいいね」

「それより、ああ~、びしょぬれじゃない。今から学校だよ」


見ると、雪解けの水で程よく制服が濡れている


「う~・・・寒い」

「もう、しょうがないな~。マフラー貸したげる」


首に巻いたユキちゃんのマフラーは暖かい


「行こうか」

「うん」


今日から学校が始まる


暇つぶしの歌

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暇つぶしの歌が聞こえた

駅のプラットホーム

落ちる雨音を聞きながら


ふと目を向けると会社帰りの若い女性が

白い息を吐きながら歌っていた


いや歌っていたにしては小さな音

そう、音としか聞こえないメロディー


若く、明るく、光をたたえながらも、やわらかな暖かさ


電車が来る

その音に歌はかき消されていく


だけど、なぜか忘れられなかった

心染みわたる歌を


幾年、幾千年、幾億年


とどくのだろう

この愛の歌を


暁が広がる高高度の空の中で私は考えていた

何のために生きているのかを


もうこの世界には幸福と呼べるもののほとんどが何も無いというのに・・・


赤い戦闘用のロボット『ナイチンゲール』はスラスターを吹かせ

一筋のきらめきを天空に残し疾走する


その速度はすでに音速の3倍を超え、衝撃波での機体の軋みが耳を打つようになっていた

機器は負荷の許容限界値を超えていることを示す赤いランプを点灯させている


「だから、なんだっていうんだろう?」


例え、このまま機体がバラバラになって私が空の藻屑と消えたとしても

誰が一体それを悲しんでくれるのだろうか?


ただ、有能な駒が一つ無駄死にしたと思われるだけなのだろうか?


私はそんなくだらない存在なのだろうか?

多分そうなのだろう。その程度の価値しかすでに私には無い


では、何故だろう?どうして、こうなってしまったのだろう?


生きていて、産まれてきて、母と、父の愛を知った

それが何になるかは知らない

知らないけれど、よかったと思えるようになった


意味なんて無くていい。ただあるだけでいい


だけど、何もかもをなくしてしまった私はなんで?

なんで、私だけがまだ生きていて、そして、こんなことをしているの?


生きていたいから。望んでいるから。そうしたいと思っているから。


<何を?>


「分かるか。馬鹿」


ただ、今は死にたくないと思った。

無意味だろうと、有意味だろうと、今は死にたくないと思った


この先、何年、何十年生きることになったとしても

それだけは変わらないんだろう


『目標到達まで後3分』


私は、戦士だ。だから、今日も生きる。


だけど・・・

それに意味なんて無いんだろうなと思うと少しだけ涙が出てくるようだった。