区切りの白星。。第25期銀河戦Eブロック/10回戦「三浦九段-戸辺七段を振り返ろう」
昨年の10月
渡辺明竜王の告発に端を発し、突如勃発した
三浦弘行九段対する「将棋ソフト不正疑惑」。
渡辺竜王の独占告白記事が週刊文春に掲載される前に
谷川浩司将棋連盟会長(当時)率いる時の理事会はいきなり
三浦九段の竜王戦挑戦権剥奪と年内の出場停止処分を発表。
これにより、噂の域を出ないスキャンダルどころか
史上最大の事件として、将棋界隈に激震が走りました。。
しかし、年末に将棋連盟が委嘱した第三者委員会が
「不正の証拠無し」との調査結果を発表し冤罪が確定。
渡辺竜王は沈黙を、理事会は保身を決め込み当然ながら
将棋ファンの大きな反発と怒りを買う結果に。。
その後、紆余曲折を経て
渡辺竜王の謝罪を受け入れた三浦九段と将棋連盟との
和解が成立し、未曾有の大不祥事は静かに幕を下しましたが
双方ともに大きな痛手を負っての再出発は、波高く。。
今回はA級、そしてタイトル戦線での活躍を再び狙う
三浦九段の公式戦復帰後初白星となった、第25期銀河戦の
10回戦・戸辺誠七段戦の模様を振り返らせていただきます。
2手目△3四歩。
上図での持ち駒
▲戸辺七段: なし
△三浦九段: なし
公式戦復帰後
言われなき冤罪を吹っかけられた心の傷と
実戦不足による対局感のズレに苦しむ三浦九段は
ここまで4連敗で本局を迎えました。
対局収録日は4月14日。
先手・戸辺七段の初手は角道を開ける▲7六歩。
対します、三浦九段も2手目に同じく角道を開く
△3四歩と返し、対局はスタート。。
3手目▲7五歩。
上図での持ち駒
▲戸辺七段: なし
△三浦九段: なし
すると、続く3手目に
戸辺七段はそのまま7筋の歩を伸ばし
振り飛車の金字塔「石田流」投入を表明しました。。
25手目▲7六銀。
上図での持ち駒
▲戸辺七段: なし
△三浦九段: なし
生粋の居飛車党
三浦九段はもちろん居飛車で迎え撃ち
戦型は大方の予想通りに「対抗形」に。。
7手目に飛車を7筋へと振った
戸辺七段は「本美濃囲い」を完成させてから
上図の局面で「石田流」の象徴である浮き飛車に
フワリと構えると。。
29手目▲9七角。
上図での持ち駒
▲戸辺七段: なし
△三浦九段: なし
その浮き飛車を中心として
角、銀、桂の攻撃陣がそれぞれを補い合い
格調高く敵陣を見据える「石田流本組み」を完成。
心情的には三浦九段を応援するも、つい
「石田流」の美しさには、いつものようにため息が。。
30手目△3ニ金。
上図での持ち駒
▲戸辺七段: なし
△三浦九段: なし
一方、対「石田流」は慣れた道
三浦九段は玉の横腹に金を連結させて
手堅く「銀冠」を完成させました。。
42手目△8五桂。
上図での持ち駒
▲戸辺七段: なし
△三浦九段: なし
さらに慎重に駒を組み上げてから
上図の局面で三浦九段が先に仕掛けを開始。。
桂馬を跳ねて桂交換を求めました。。
戸辺七段はケレン味なく▲同桂と応じて、以下
△同歩~▲9七角~△9五歩~▲同歩~△4四歩~
▲3六銀~△9五香に▲7九角をみて、下図52手目
△9一飛と進行。。
52手目△9一飛。
上図での持ち駒
▲戸辺七段: 桂、歩
△三浦九段: 桂、歩
三浦九段は桂馬交換からの流れに乗って
伸び伸びと手が伸び、最初の仕掛けでいきなり
攻防の主導権を握りました。。
70手目△4五歩。
上図での持ち駒
▲戸辺七段: 歩2
△三浦九段: 歩
9筋を制圧した
三浦九段はそのまま一方的にたたみ掛け
「石田流」攻撃陣を丸ごと敵陣に閉じ込めました。
さらに7筋に飛・香の二段ロケットを設置し
桂馬のサポートに加えて、上図で角道も開き
総攻撃への手はずを着々と進めます。。
80手目△7八成香。
上図での持ち駒
▲戸辺七段: 歩4
△三浦九段: 飛、桂、歩
力を溜めるだけ溜めた
三浦九段は一気に駒を捌き開戦を告げると
上図の局面で飛車交換を決断。。
次に、先手の▲7五角(81手目)をみて。。
82手目△6九飛。
上図での持ち駒
▲三浦九段: 飛、歩4
△戸辺七段: 桂、歩
握った手番で三浦九段は敵陣へ
手にしたばかりの飛車を迷いなく打ち込み
形を決め、勝負に出ました。。
110手目△4八歩。
上図での持ち駒
▲戸辺七段: 歩4
△三浦九段: 桂
三浦九段リードで迎えた終盤戦。
戸辺七段も懸命に反撃に転じますが、しかし
三浦九段は攻守に手厚い指し回しでじっくりと
焦ることなく確実に勝利を目指します。。
【 投了図・154手目△2八銀 】
投了図での持ち駒
▲戸辺七段: 飛、銀、桂、歩5
△三浦九段: 金、歩
最後まで粘り強く指し勝利への執念をみせた
戸辺七段ですが、上図の局面でついに力尽き
無念の投了を告げました。。
この瞬間、三浦九段がひとつの区切りとなる
待望の公式戦復帰後初白星を飾りました。
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【 冤罪事件時系列 】
年明けからの動き
署名活動報告
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藤井四段、新記録達成直後の感想。。