昇格の一局。。第75期B級1組順位戦/最終戦「糸谷八段-豊島七段を振り返ろう」
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第75期B級1組順位戦対戦表
昨日行なわれました「鬼の棲みか」
第75期B級1組順位戦の最終戦/13回戦の中から
今回は「糸谷哲郎八段-豊島将之七段」の模様を
振り返らせていただきます。。
2手目△8四歩。
上図での持ち駒
▲豊島七段: なし
△糸谷八段: なし
先手は豊島七段。
悲願のA級へ逆転昇級を目指す本局の初手は
普段通りに角道を開ける▲7六歩から。。
対します、西の怪童
糸谷八段は2手目△8四歩と飛車先を突き
注目の対局はスタートとなりました。。
3手目▲6八銀。
上図での持ち駒
▲豊島七段: なし
△糸谷八段: なし
早々と居飛車を明示した後手に対して
豊島七段は3手目▲6八銀とし「矢倉」を指向。。
8手目△3ニ金。
上図での持ち駒
▲豊島七段: なし
△糸谷八段: なし
糸谷八段は生粋の居飛車党ですが
しかし、普段は「一手損角換わり」や「横歩取り」を
主戦に据える力戦派。。
本局でも
代えて4二銀なら通常の「矢倉」の出だしとなる
上図の局面で△3ニ金とする変化を見せます。。
次に、豊島七段が飛車先を決めると。。
(9手目▲2五歩)
10手目△7四歩。
上図での持ち駒
▲豊島七段: なし
△糸谷八段: なし
ひょいと7筋の歩を突いて
定跡形ではなく力戦調に駒組みを進めます。。
13手目▲7九角。
上図での持ち駒
▲豊島七段: なし
△糸谷八段: なし
後手の急戦策は想定の範囲内だったか
△7四歩に対し5筋の歩を突いた豊島七段は
角のラインを変えると、上図から次に糸谷八段が
居玉を解除したのをみて(14手目△4一玉)。。
15手目▲2四歩。
上図での持ち駒
▲豊島七段: なし
△糸谷八段: なし
角と飛車のラインが重なる2筋で歩を突き合わせ
豊島七段はケレン味なく、仕掛けを開始しました。。
糸谷八段は△同歩(16手目)と応じて
以下、▲同角~△2三歩~▲4六角~△5四歩に
下図21手目▲3八銀と進行。。
21手目▲3八銀。
上図での持ち駒
▲豊島七段: 歩
△糸谷八段: なし
飛車先の歩を切って、一歩を手にした
豊島七段が悠々と、飛車を自陣に引き戻し
右の銀を立てた局面で、糸谷八段の手が止まり
早くも長考に耽ります。。
早見え、早指しが売り物の
糸谷八段の長考が1時間と6分に達したところで
そのまま午前の対局は終了となり、お昼休憩に突入。。
【 お昼のオーダー 】
豊島七段: カレーうどん定食
糸谷八段: 手仕込みカツカレー、ツナサラダ
23手目▲6六銀。
上図での持ち駒
▲豊島七段: 歩
△糸谷八段: なし
午後の対局開始と同時に大長考に終止符を打ち
糸谷八段は右の銀を6筋に戦場に繰り出します。。
(22手目△6四銀)
この手に対し、豊島七段もノータイムで
銀を6筋に繰り出し「銀対抗」となりました。
すると、糸谷八段は。。
24手目△5ニ飛。
上図での持ち駒
▲豊島七段: 歩
△糸谷八段: なし
飛車を中央5筋に構え
天王山5筋の位を争点に戦力を集中。。
いまだ居玉の豊島玉の頭上から圧力を掛けます。。
一方の豊島七段は
右の銀を飛車先に乗せて「棒銀」に構えると。。
(25手目▲2七銀)
29手目▲4五銀。
上図での持ち駒
▲豊島七段: 歩
△糸谷八段: なし
その銀が△3六銀~△4五銀と駆け上がり
糸谷八段が5筋の歩を突き合わせたタイミングで
5筋の争点に戦力として参加しました。。
仕掛けたからには行くしかない
糸谷八段は次に△同歩(30手目)と歩を取り込んで
以下、▲5四歩~△6六角~▲同歩~△5七歩成に
下図35手目▲同角と進行。。
35手目▲5七同角。
上図での持ち駒
▲豊島七段: 角、歩
△糸谷八段: 銀、歩
豊島七段は後手の仕掛けを上手く抑えて
いきなりの開戦を回避しました。。
が、しかし
38手目△5四飛。
上図での持ち駒
▲豊島七段: 角、歩2
△糸谷八段: 銀、歩2
力勝負に持ち込みたい糸谷八段は
矛先をおさめることなく、盤上は一触即発。。
40手目△5七飛成。
上図での持ち駒
▲豊島七段: 角、桂、歩2
△糸谷八段: 角、銀、歩2
豊島七段が銀で桂馬を取ると(39手目▲3三銀成)
糸谷八段は飛車を迷わず突進させて、居玉に王手。。
あっという間に終盤戦突入となりました。。
49手目▲3ニ金。
上図での持ち駒
▲豊島七段: 桂、歩
△糸谷八段: 角、金、銀2、歩3
勢い良く飛車が敵陣に成り込んだものの
有力な攻めが続かない糸谷八段は金との交換で
龍を差し出しますが、豊島七段はすぐには取らずに
ここが勝負と一気呵成に糸谷玉を寄せに出ます。。
54手目△5六角。
上図での持ち駒
▲豊島七段: 飛、銀、桂、歩
△糸谷八段: 金、銀2、歩3
先手の猛攻をかいくぐり
3筋に居た玉を6筋まで逃がした糸谷八段は
豊島七段がようやく龍を取ったのをみて(53手目▲3八飛)
手持ちの角を5筋に投入。。最後の勝負に出ます。
この局面で
夜戦に備えて夕食休憩に突入。。
【 夕食のオーダー 】
豊島七段: 親子丼セット(そば)
糸谷八段: みそ煮込みうどん
61手目▲8三銀。
上図での持ち駒
▲豊島七段: 桂、歩2
△糸谷八段: 金、銀、桂、歩2
夕食休憩明け直後に
糸谷八段は馬を作りますが、しかし
攻め手は明らかに豊島七段の方が早く
瞬く間に糸谷玉が包囲されました。。
62手目△4八銀。
上図での持ち駒
▲豊島七段: 桂、歩2
△糸谷八段: 金、桂、歩2
苦しくなった終盤戦で
最後に手番が回ってきた糸谷八段は
先手玉に食らいつき、意地の寄せに入ります。。
が、しかし。。
【 投了図・77手目▲1六玉 】
投了図での持ち駒
▲豊島七段: 金、桂、歩3
△糸谷八段: 歩
豊島玉に詰みはなし。
最後まで勝利への執念をみせた糸谷八段は
上図の局面をみて、無念の投了を告げました。。
終局時刻は午後7時34分。
この結果、豊島七段は8勝4敗で全日程を終了。
「山崎隆之八段-阿久津主税八段」の結果を待ちます。。
一方、ライバル対決に敗れ
尊敬する兄弟子・山崎八段の援護射撃は成らなかった
糸谷八段は6勝6敗の指し分けで今期順位戦を終了。。
終局からおよそ4時間半後。。
阿久津八段が山崎八段に勝利との一報が。。
この結果、両者は8勝4敗で並ぶも番付の差で
豊島七段の来期A級昇格と八段昇段が決定しました!
豊島新八段、A級昇級おめでとうございます!
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「鬼の棲みか」は過酷な最終戦
告発の果てに。。
事件はここに始まり。。