技術者はビジネス文章が下手な人が多い。少なくても僕が見る限りでは。
僕は元々生粋の技術者だった。目指すべきものは職人レベルの技術者(アーキテクト寄り)を目指していた。なので、僕も一時期までビジネス文章を書くことが出来ずに、非常に稚拙な文章しか書くことが出来なかったのだ。そんな僕でも今ではある程度のビジネス文章を書けるようになった。
今回は「何故ビジネス文章が必要であるか?また、その効果は?」という事を書こうと思う。



僕が一番初めにビジネス文章が必要だと思ったのは給与査定の時である。僕が勤めていた会社は派遣会社のように放任されていたため、社内の人に会えなかったのだ。社内の人に会えないということは僕の実力を見て貰うことが出来ないと言うことだ。すなわち、僕のどこを見て給与が決まっているのかが僕にはさっぱり分からないのだ。
僕の会社の酷い所はそれだけではない。査定の時期になっても社内の人と会えないため、給与が適当に決められていたのだ。そんな会社だと気づいてから僕が使った武器がビジネス文章だ。僕はこのビジネス文章に随分助けられた。


僕が使った一例は、給与査定の材料となる情報を会社にメールすると言うものだ。


・僕の会社への貢献度
・僕の習得しているスキルのアピール
・現場で学んでいること
・自宅で学んでいること

etc...


とにかく、自分の有利になる材料を書いて会社にメールをしたのだ。その時に使ったのがアメリカンスタイル(?)のビジネス文章である。実際のアメリカンスタイルは分からないが、僕の切り口は「私は年収○○○万円を貰いたい」と言う旨の文章を文頭につけてから上記の事柄をビジネス文章にしてメールで送りつけたのだ。これが功を奏したのか、僕の年収は大幅にUPした。
その時に僕はビジネス文章の重要性を理解した。人を説得するためには私情にまみれた文章ではなく、有無を言わさず納得させる淡々としたビジネス文章が有効だと言うことを。


技術者がビジネス文章を使う機会は少ないかもしれない。僕の周りの技術者(リーダーやマネージャーと呼ばれている人も含めて)でも稚拙なメールを送る人は非常に多い。
しかし、そういう所でこそしっかりした体系だったビジネス文章を使えば人を説得させる時間を削減したり、自分のスキルや存在等をアピールできると言うものだ。私情にまみれた文章や要点を得ない文章は人に物事を伝えると言う点では優れていない。そういうところでこそ生かされるのがビジネス文章なのだ。(注意:熱意を伝えるときはビジネス文章は逆効果になりやすい。自分の言葉で伝えるからこそ、熱意は伝わるのだ。この辺を混同させずに使い分けるのが一番ベストである。)



僕はその後会社を辞めてTownSoftと言う屋号を掲げてフリーランスとなった。その時にもビジネス文章は有効な武器であった。僕の場合は組織に属していない小さな個人事業主であるため仕事をとる時の武器が非常に少ない。その中で僕が持っていた武器は技術とビジネス文章である。
企業側からしてみれば、稚拙な文章を書くような人に自分の会社のシステムを作ってほしいなどとは言わないはずだ。それが、一個人ともなればなおさらである。だからこそ、僕個人がしっかりしていると言う事を伝えるためにビジネス文章は必須だったのだ。(そのビジネス文章が幸いしたのか、技術力が認められたのか、そのおかげで少しずつではあるが取引をしてくれる企業さんが増えている。)
ビジネス文章とは自分を生かすための武器なのだと僕は再度認識した。


また、僕がTownSoftで仕事を請ける際にもビジネス文章を使える人であるか?(もしくは体系だった文章を書くことが出来る人であるか?)という事を見る。相手がビジネス文章を使えない場合は仕様の伝達や交渉ごとが難しくなる場合が殆どだからだ。
また、どこかの企業にエージェントを介して入る場合もビジネス文章を使いこなせるエージェントであるかを僕は見る。これは、そのエージェントの信頼度につながるからだ。へたくそな文章を書くエージェントが客先と素晴らしい交渉術を展開しているとは考え難い。


余談:
あと、自分の利益だけを考えていないか?と言う事も見る。僕が他で仕事が決まった旨のメールを送った時に、しっかりメールを返してくれるエージェントと返してくれないエージェントを僕はリストアップしている。エンジニアのことを考えずに自分の利益だけを考えているエージェントはまずメールを返してくれない。
素晴らしいエージェントは「仕事が決まったことへの祝辞」や「力が足りなかった事への謝辞」を送ってくれる。



最後にビジネス文章は自分自身にも良い効果をもたらす事を伝えておこう。
ビジネス文章を書く際には私情を混ぜず、体系だって書く必要があるため「自分の頭がまとまっていないと書けない」ものである。何を相手に伝えたいのか?何を相手から知り得たいのか?という事を纏めなければならないのだ。
それはすなわち、自分の頭の中を纏めると言うことになる。これは自分にとっても非常に役に立つ。自分の与えたい情報と知りたい情報を整理しておけば人と話す際に無駄なコミュニケーションをとる必要が無いのだ。


かっこいい言葉や体系だった言葉から入っても良い。自分の伝える内容をどうやって纏めれば良いかの練習から入っても良い。どの切り口から入っても良いからビジネス文章を勉強してみては如何だろうか?