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2011年12月17日 08時21分59秒

JAZZ Stan Getz Quartets スタン・ゲッツ

テーマ:JAZZ
スタン・ゲッツ・クァルテッツ/スタン・ゲッツ

¥1,100
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昨夜、仕事が終わり、横浜駅前にあるRECOfanに行くと、中古レコードのセールをしていた。中古盤を2枚以上購入すると、1枚あたり200円引きだというから、思わず、スタン・ゲッツの「Stan Getz Quartets」と、シェリー・マンの「My Fair Lady」の紙ジャケCDを購入した。2枚で2200円ほどであったから、まあ、手頃な値段であった。

スタン・ゲッツは、人間的にはとても困った人ではあったらしいけれども、いったんテナーサックスを演奏し始めると、彼の音楽を耳にしたほとんどみんなが音に浸り、思わず口ずさみたくなる世界を簡単に作り出すことができた。

録音の時期によって、彼の演奏を、「クールだ」とか、「ホットだ」とか、さまざまに分類する人がいるけれど、彼がしたことといえば、ポケットから時計を取り出すかのように、頭の中に鳴りだしたメロディーを、ひょいと取り出して、それをすらすらと音にしただけであった。希代のメロディーメーカーであったことは生涯を通じて変わらなかった。

僕はスタン・ゲッツの演奏ならどれも好きだけれど、「Stan Getz Plays」と並んで、「Stan Getz Quartets」の音色にとても惹かれる。本作は、1949年6月と翌50年の1月、4月に録音されており、SP録音時代であるから、1曲3分程度の演奏時間の中にテナーサックスやピアノ、ときにベースのソロまで入っているものだから、彼のソロはどれもが短く簡潔だ。けれど、その短いソロには、いいたいことをすべて言い切っていると思わせる思いっきりのよさがある。おまけといってはなんだが、曲によってはアル・ヘイグの趣味のよいピアノが聴けることもよい。
ほとんどがスタンダードで固められているので、彼の歌心を堪能するには手頃な一枚であるが、聴き続けるごとに味わいが増す一枚でもある。

2011年12月01日 23時14分25秒

ポートレイト・イン・ジャズ 最終回 (村上春樹・和田誠)

テーマ:JAZZ
ポートレイト・イン・ジャズ (新潮文庫)/和田 誠

¥830
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和田誠さんの絵に村上春樹さんが文章を付けた「ポートレイト・イン・ジャズ」を久しぶりに手に取って、そのページをめくりながら、何気に、チェット・ベイカーについて書き始めた10月9日以来、ほとんど毎日、この本に紹介されているジャズマンの順番にそって、自分なりの感想と、YouTubeに公開されている音源とを紹介し続けてきた。今回のギル・エヴァンスで、総勢65人(モダン・ジャズ・カルテットやジャッキー&ロイは、一人としてカウントする)について書き終わったわけである。2か月ほど、ずっとジャズについて書き続けたわけだ。

ときに村上さんと同意見であったり、ときにまったく意見が異なったりするジャズマンも少なからずいたが、この本を読んでいると、和田さんと村上さんは、根っからのジャズ好きだなあと強く感じ入った。

1990年からずっとジャズを聴き続けてきたが、これといった理由もなく、ある時から突然、ジャズをほとんど耳にしなくなり(ジャズだけでなく音楽自体に興味が失せてしまった頃がある)、また、数年前までほとんどCDを購入することさえやめていたこともあった自分であるが、ここ数か月ほど前から、再びジャズへの思いが高まり、CDを買い始めたり、ジャズについて書かれた活字を追いかけたりしはじめている。なぜかは分からないが、かつてのように、音楽を聴きたいという意欲がわき始めた。

音楽業界ではCDの売れ行きが捗々しくなく、ひどい不景気が続いているようである。また、景気回復の出口もみえない。また、デフレスパイラルの影響か、邦盤のジャズCDが驚くほど安くなり、いまや、ボックスセットは、1枚あたり数百円程度にまで値段が暴落している。
不況に喘ぐ音楽業界であるが、ソニー・レガシーから、マイルズ・デイビスのレアなアイテムや、未発表音源が発掘されたりするから、まだまだ目が離せない。

ここでとりあえず、「ポートレイト・イン・ジャズ」について、一段落終わったので、今度は、マイルズ・デイビスについて書いてみたいと思っている。もっとも、毎日書くことはちょっと骨なので、気が向いたら書くことになるだろう。数カ月ぶりに音楽とは一切関係のないことなども書いてみたいと思っているので。

それはそうと、まだ「ポートレイト・イン・ジャズ」を読んだことのない人がいるなら、ぜひ、図書館などで閲覧してもらいたいと思う。村上さんの文章の断片は、僕のブログでも紹介したが、さすがに絵を転載することはできないから、和田さんの絵をご紹介することができなかった。中でも、レスター・ヤングとチャーリー・パーカーの絵が、僕のお気に入りである。ポストカードとして欲しいぐらいだ。
2011年12月01日 20時20分19秒

JAZZ ギル・エヴァンス ポートレイト・イン・ジャズ (村上春樹 和田誠)

テーマ:JAZZ
「いずれにせよ、ギル・エヴァンスは終生、スタイリスティックな個人主義者としてジャズ・シーンの一角を占め、妥協を知らなかった。彼の残した音楽はどれだけ聞き込んでも、聞き飽きることはない。そこには常に新鮮な発見と、知的な喜びが満ちている(ポートレイト・イン・ジャズ)」

コンパクト・ディスク、CDが発売された当時、邦盤のLPレコードが1枚2200円から2800円ぐらいであったのに対して、CDは、3000円近くした記憶がある。レコード店の店頭にまばらに並び始めた、小さなプラスチックのケースを手に取りながら、「高いなあ」と思ったものだった。1986年とか87年頃ではないかと思う。

初めて購入したCDは、スティングの「ナッシング・ライク・ザ・サン」である。高校生の頃からポリスが好きであったので、当時新譜として発売されたそのアルバムを衝動買いした。「ザ・ラザラス・ハート」、「イングリッシュマン・イン・ニューヨーク」、「ゼイ・ダンス・アローン」など、いかにもスティングらしい名曲が収められており、かなり繰り返し聴いた。CDは、盤面が劣化しないところがLPレコードと比較して扱いやすいと思ったが、ジャケットのしょぼさにはいささか閉口した。紙ジャケになって、ミニチュアをいじる楽しさを感じることはあるが、やはりLPレコードのジャケットを手にした時ほどの感動にはほど遠い。

ライナーノートを読んでいると、僕の知らないミュージシャンがたくさん名前を連ねている中に、「リトル・ウイング」では、ギル・エヴァンス・オーケストラが演奏しているとあった。この曲では、僕の耳にしたことがないサウンドが鳴っていた。今になって思うと、僕が初めて、ギル・エヴァンスのサウンドを耳にした瞬間だった。
しかし、それから長い間、ギル・エヴァンスという名を耳にすることはなかった。

次に彼の名前を見つけたのは、マイルズ・デイビスが書いた自叙伝の中であった。当時、ジャズを聴くようになっていた僕は、彼らがともに制作した作品を次々と購入した。「マイルズ・アヘッド」「ポギー&ベス」「スケッチ・オブ・スペイン」。この三作だけでなく、「ラウンド・ミッドナイト」のタイトル曲の有名なあのバンプは、ギルのアイディアだという。長い期間に渡り、ギルはマイルズ・デイビスのアルバムに相当関与していたようだ。
マイルズの自叙伝によると、ギルはかなり筆が遅かったとある。1小節や2小節を書き上げるのに、数週間かけることもあったという。ギルの容姿を見ると、そんな逸話がぴったりという感じがある。残された彼の写真を見ると、まるで、世界の最果ての地で音の研究を続けている、人類最後の学者のような風貌である。

長いキャリアのあるギルであるが、彼の残したアルバムは少ない。代表作はマイルズとのアルバム群になるのだろうが、僕のお気に入りは、「プレイズ・ジミ・ヘンドリックス」である。
ジミ・ヘンドリックスは、ギルのオーケストラをバックにマイルズ・デイビスと共演する予定であったが、ジミの夭折により実現しなかった。ジミの死から4年後、ギルは一枚のアルバムをリリースした。それがこのアルバムである。
冒頭に置かれた「エンジェル」では、ギル・エヴァンスのカラフルなサウンドやアレンジの妙だけでなく、若きデビッド・サンボーンの熱気のこもったソロを聴くことができる。ジミ・ヘンドリックスのファンにも耳を傾けてほしいアルバムである。

2011年11月30日 20時24分40秒

JAZZ フランク・シナトラ ポートレイト・イン・ジャズ (村上春樹 和田誠)

テーマ:JAZZ
「しかしフランク・シナトラだけは、ビッグ・バンドの時代が幕を下ろしたあとも、一人我が道を進み、ヒップがなんじゃい、インテリがなんじゃいと、『踊れる音楽』を世界の善男善女のために一貫して歌い続けた(ポートレイト・イン・ジャズ)」

あまりジャズボーカルに耳を傾けない自分ではあるが、フランク・シナトラは例外に属する。
ルイ・アームストロングのだみ声には、独特の味わいがあるが、曲を選ぶ声でもある。が、ヴェルヴェットヴォイスと評されるフランク・シナトラの声は、なんだって歌える。スロー・バラードはいうまでもなく、ミッドテンポのくつろいだ曲だろうが、アップテンポでスィングする曲だって、なんだっていい。そして、彼が歌いだした瞬間、場が華やぐ。こんな芸当ができる歌手はシナトラだけだ。

スタンダードを歌うことの多い彼であるが、60年代には、アントニオ・カルロス・ジョビンと共演し、ボサノバを歌うかと思えば、ジョージ・ハリスンの「サムシング(シナトラは、この曲を、レノン=マッカートニーがつくった物であると思っていたのだが)」を取り上げている。いわゆるスタンダードではない歌に積極的に取り組むあたりは、彼のシンガーとしての器の大きさを物語っていて興味深い。

だが、シナトラが、ボサノバやビートルズナンバーを歌ったとしても、それは、いわゆるボサノバとなっておらず、またビートルズナンバーとなっているわけでもない。それらの楽曲は、まぎれもなくシナトラの世界の音楽となっている。彼はさまざまな音楽を自分の懐に取り入れるが、完全に自分の音楽として消化し、表現しているのである。だから、「イパネマの娘」を聴こうと思って、シナトラを聴くと妙な肩すかしを食らう。

デューク・エリントンや、ルイ・アームストロング、マイルズ・デイビス、そして、彼をはじめ、いわゆる巨匠と呼ばれる人たちのすごいところは、作品にむらがほとんどないということである。良質の作品を長い間に渡ってリリースし続ける力がある。
残念ながら、現在店頭に並んでいる彼のCDは、コンピレーション盤や企画盤が中心となっており、レーベルごとに体系的に発売されていないことが、僕の不満とするところである。

1930年代から1990年代までの半世紀以上に渡る歌手としての人生の、一時的にスランプに陥ることがあったとはいえ、彼の歌手生活はおおむね順風満帆であった。彼を聴くとするならば、自分が聴きたい楽曲を歌うシナトラを聴くに限る。それだけだ。
僕は「ニューヨーク、ニューヨーク」が好きだ。彼の歌を聴いてると、ニューヨークには行ったことがない僕であっても、一度でいいから、ニューヨークの雑踏を歩きながら、ビルの谷間から青い空を見上げてみたいなと無邪気に思うぐらいだ。

New York, New York
2011年11月29日 21時10分12秒

JAZZ アート・ペッパー ポートレイト・イン・ジャズ (村上春樹 和田誠)

テーマ:JAZZ
「アート・ペッパーの実際の演奏を聴いたことはないが、彼の残した数多くのレコードを聴いていると、そこには一貫して、ほとんど自傷的と言っていいほどの苛立ちがある(ポートレイト・イン・ジャズ)」


先日、半年ぶりに新宿にあるディスクユニオンに行ってみた。何年経ってもこの店だけはあまり変わらないなあと思うと、ちょっと安心する。それでなくても、新宿の変貌はあまりに速すぎるから。

土曜日の午後の店内には、客がまばらにいた。中古盤を漁ることが僕の目当てであり、棚に並べられたディスクや、所狭しと床に並べられている、箱に入れられたディスクにいたるまで、一枚一枚を夢中になって眺めているだけで、ふと、気がつくと二時間があっという間に過ぎていた。

中古の紙ジャケットのアルバムで、格安の物を買おうと決めていた僕が購入した物は、リー・モーガン、レイ・ブライアント、ジャック・ティーガーデン、スタン・ゲッツ、そして、アート・ペッパーである。計5枚購入につき10%オフだったので、5千円ほどの買い物になった。

購入したアート・ペッパーのCDは、サボイの「サーフ・ライド」である。アート・ペッパーの数あるアルバムの中で僕のもっとも好きな一枚である。久しぶりに僕がこのディスクを購入したのは、演奏内容の素晴らしさは言うに及ばず、思わずのけぞってしまいたくなるほどの、ジャケットのダササゆえ、忘れがたい一枚となっていたからだ。

アート・ペッパーには、このディスクだけでなく、村上さんのお薦めの「ミーツ・ザ・リズム・セクション」や、「モダン・アート」「アート・ペッパー・カルテット」などの名盤がある。そうだ、50年代に録音された作品は、どれも瞬間の即興演奏にかける彼の意気込みを感じさせるものばかりだ。が、その中にあって、この「サーフ・ライド」に聴かれる演奏から、「俺は、今、このフレーズを吹ききってしまわなければならないのだ」という、表現者としての彼の切迫感と強い意志とを感じてしまう。同時に、それは痛々しさを感じさせるものであるのだけれども。

彼を「天才」としてもてはやすことは容易い。だが、彼には、チャーリー・パーカーの「天才」のように自らの意識と演奏とを一致させることが、できなかったのではなかったか。楽器を演奏することに充実を覚えることもなく、満たされない気持ちを抱え、焦燥感にせかされながら、手に掴むことのできない、決して捉えることのできない完全なるメロディを追いかけ続けることが、すなわち、彼の演奏だったのではなかったか。

そんなことを思いながら、「サーフ・ライド」のジャケットの、気持ち良さそうに波乗りをする、黄色いビキニを身に付けた女性を眺める。以前ほど、この絵をダサイと思わなくなってきたのも、自分が年を取って丸くなったからか。

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