番外編 『れきハコ』は若返る〝玉手箱〟
テーマ:番外編残念ながら、僕は観戦したことはないのだけれど、「俳句甲子園」というネーミングがよい。
松山には、俳句だけでなく、高校野球の古豪松山商業もあり、「俳句」と「甲子園」との言葉が、ぴたりと重なりあう。
第15回松山俳句甲子園 公式ホームページ
http://www.haikukoushien.com/
5人一組となった高校生が、俳句の鑑賞力を競う大会だという。
近代俳諧を確立した正岡子規の生地が松山であることから、この街では、俳句を創作することが盛んである。街中には、俳句を刻んだ石碑が、心持ちたくさんある気がする。
昨日、ご紹介した武田信之さんのお書きになった「『れきハコ』は若返る〝玉手箱〟」を本日もご紹介したい。
これは、松山にある俳句誌『泉』に昨年の5月に寄稿されたものである。
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『れきハコ』は若返る〝玉手箱〟
日本のお手玉の会理事 武 田 信 之
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*歴史を詰めた「れきハコ」
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テレビから、「レキハコ」という、聞きなれない言葉が流れた。「なんだろう?」、画面を見た。それは、富山の薬売りの荷物を連想させる、紺の袋に包まれた箱のことで、愛媛県歴史文化博物館の学芸員が、県内の介護施設に持ち込んだものだった。
学芸員は、「これは『れきハコ』(歴箱)といって『歴史の玉手箱』です」と説明していた。箱の中には、懐かしい「小學國語讀本」「尋常小學唱歌」などの教科書や、鳴子、お手玉など、昔の生活用具がたくさん入っていた。
施設のお年寄りは、ニコニコしながら、箱の中から思い思いの物を取り出す。教科書を開いて、「サイタ サイタ…」と声を出して読む人。「ポッポッポ ハト ポッポ…」と歌う人や、鳴子を振ったり、お手玉をゆったり、みなさん明るい表情で楽しんでいた。
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*認知症の人を笑顔にした
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そんな中に、みんなの輪から外れ、無表情で座わる女性がいた。80歳半ばの認知症の女性だった。その人に施設の職員が、2個のお手玉を渡した。すると、女性は、しばらく手に持ったお手玉を眺めていたが、やおら2個のお手玉をゆり始めた。笑みを浮かべるやさしい表情に変わった。
そして、教科書を読んでいる人たちの仲間に入り、一緒に唱歌を歌い、国語の読本を読んだ。仲間のみなさんから、「上手だね」と声をかけられた。それに対して、「若い時は、小学校の教師をしていたの…」と、認知症の女性が笑顔で答えた。
「これから唱歌を教えて…」と、みんなから乞われていた。女性の表情はさらに明るくなった。昔の生活を再体験することで、記憶がよみがえり、元気になる過程を見ることができた。これが「れきハコ」による「回想法」で、最近、介護施設で人気を呼び、貸し出しが増えているそうである。
番組の最後に、学芸員は「浦島太郎の『玉手箱』は、蓋を開けると老人になりました。『歴史の玉手箱・れきハコ』は、開くと若返るのです」と話していたのが印象的だった。
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*70年ぶりのお手玉に涙
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私にも、それに似た体験がある。23年前のこと。ボランティアグループの新居浜アメニティ倶楽部(初代会長は「泉」同人の宇和宣さん)で、お手玉の普及活動に取り組むことを検討していたときのことだ。市内の老人ホームを訪ねた。
80歳過ぎの女性3人に、お手玉を渡して、遊び方などを聞いた。が、「もう、忘れました」との返事。仕方なく話題をホームで人気のカラオケの話に変えた。ところが、しばらくすると女性の手が動き、お手玉が弾みだした。
3人は立ち上がり、3個のお手玉をゆりながら、「一かけ、二かけ、三かけて…」と歌った。ひとしきりして、「お手玉は、70年振りぶりです。すっかり忘れていたのですが、体が覚えていてくれたのですね。ありがとうございました」と、涙を流された。
この感動の涙が、私たちに、お手玉遊びの普及活動を決断させてくれた。それが起爆剤となり、「新居浜発、全国・世界行き」の日本のお手玉の会の活動が、スタートしたのだった。
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*孫世代との交流に昔遊び
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いまお手玉遊びは、幼稚園、小学校など教育の現場や介護施設、公民館活動で、広く採用されている。お手玉にかぎらず、竹馬、コマ回しなど、祖父母世代の私たちが、子どものころに体験した遊びを再体験するとともに、孫世代との交流の素材として使い、伝承していくことが、求められている。
そうした行動をとおして、明るい、「心豊かなまちづくり」につないでいきたい。『れきハコ』のテレビ番組を見ていて、そんなことを感じた。
(俳句誌『泉』平成23年5月号「喫泉」に掲載)
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