小説が書きたいんです

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昨日のこと。
1日暇だったので、断捨離でもしようと思い…
ガサゴソしていたら出て来たバインダー。
中を覗くと…

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小説のネタが(笑)

わたし、小説家になりたいんです。
学生の頃はなれると信じて疑ってなかったのに
いつ頃から書かなくなってしまったのかな。

でも、このネタ読んでみて
やっぱりこの子たちの話は書きたいなって。
すぐではなくても、書き上げたいなって。

この話は憎み合う男女のお話です。
ざっくり言うと。

原案の物語を書いたのは高校生の時。
その時の原案を元に今の感覚でネタを書いたのが上の写真。

今だから書けることも、あるよね。

日々に追われてるけど、
3ヶ月くらい引きこもってなんか書いてみたいなぁ。

なんて夢見る今日この頃です。





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資料

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小説を書く際には、専門知識が要る時には資料を集めます。
昨日まで五回に渡って連載していた小説も、航空自衛隊の話なので、自衛隊のことから戦闘機のことまで調べて…資料集めしました。
さっぱり調べたことは使いませんでしたけど(笑)。
その資料、女子の部屋にでーんと場所をとって鎮座するにはなかなかインパクトが強いものばかり(笑)。
この資料を無駄にしないように、また航空自衛隊ものにはチャレンジしてみたいと思います。
とりあえず、めっちゃミリタリーファンの方とかに突っ込まれるとボロだらけなので、そういう方はライトノベルか…くらいのあたたかい目で見ていただけると嬉しいです。

これらが、戦闘機ものの資料。実はあと二冊Amazonに注文してます(^_^;)
こんだけあったら、また書くしかないですよね(笑)
photo:01



さて、今日は日帰りで名古屋へ行きます!
レッツゴー[みんな:01]




iPhoneからの投稿
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【小説】Blue wings<5>

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これまでの話はコチラ → Blue wings <1> <2><3><4>





「じゃ、これ、俺の連絡先登録しといたからね」
律儀に基地の前まで送ってくれた岩崎はそう言って、手に持っていた友絵のスマートフォンを返却してきた。
それを黙って受け取る。
安藤さん、今度はいつ飛ぶの? 飛ぶ日にちと時間をメールで教えてよ。そしたら、俺、基地の近くで離陸を見送るからさ。
営業って、こういう都合はつけやすいから。
そのメールで、連絡先交換完了としようよ。嫌だったら、メールして来なかったらいいよ。まぁ、メールなかったら俺、相当傷つくけど。
そんな岩崎の一方的な申し出により、友絵のスマートフォンには岩崎の連絡先が登録された。
次のフライトは、明後日だ。
それじゃあと背を向けかけた岩崎に、ためらいがちにありがとうと声をかける。
岩崎はにこにこしながらそれを受け、友絵に背を向ける。
「気をつけて」
その声に彼は振り返らず、軽く手を挙げて答えただけで、そのまま夜へとまぎれて行った。

無骨な装備は、もういい加減身体の一部のようになってしまっている。
今日の訓練は敵の背後を取り合うドッグファイトと呼ばれる空中戦。
友絵が乗るのは単座のF-2Aだ。
友絵が2機編隊の指揮官エレメントリーダーを務め、教官がウィングマンと呼ばれる部下を演じる。
ウィングマンを生かすも殺すもエレメントリーダー次第。訓練とはいえさすがに緊張しないではいられない。しかし、その緊張すらも姿勢を正す材料だ。
一つ一つの確認作業を素早く丁寧にこなし、コクピッドへと入る。
『6/11、〇九〇〇。F-2A。安藤友絵』
そんな女子力の欠片もないメールに、それでもしっかりと返事は来た。
『基地の近くで見送ります。岩崎翔太』
きっと今頃、基地近辺でこの機体を見ているだろう。
4機上がるF-2Aのどれが友絵かは教えなかった。飛び立つF-2Aのどれかが友絵だとわかっていればいい。
ゆっくりと滑走路を離陸地点までタキシングしていく。
これから、空を飛ぶ。
この蒼い翼で。
守るべきものの為に。
エンジンがうなりを上げる。管制塔との通信を終わり、離陸体制完了。
急激な加速で身体がシートへと押し付けられ、F-2Aは一気に上空へと飛び出した。
みるみるうちに遠ざかる地上。
ちらりとそれを見てから、小さく敬礼をした。
それは、友絵が岩崎に対して今出来る、精一杯のことだった。

『格好良かったです。可愛くなりたくなったら、いつでも言って下さい』
『なりたくならなかったら?』
『あ、じゃあ、とりあえず今度ご飯行くってことで一つ!』
『ばっかじゃないの』
『嫌?』
『誰も嫌とは言ってないでしょ、ばか!』




The END



この話には後日談があります。
というか、後日談の方を先に書いていました。
もし良かったら、こちらも合わせてどうぞ。
だいぶと素直になった友絵の姿が見られると思います(笑)
2011年に書いたものです。
   ↓
人間の翼<前編>
人間の翼<後編>
「人間の翼」で友絵は二等空尉と名乗ってますが、この「Blue wings」の時点で作中には出て来ませんが一応三尉という設定で書いてました。無事昇任となったようです(笑)


友絵が乗っているF-2はこちら。
この話はフィクションなのでアリとしましたが、たしか日本はまだ女性ファイターパイロットは認められてなかった…ような?
すいませんうろ覚えで…。
F-2Aが単座、F-2Bが複座です。
松島にF-2Aはなかった気もしますが、まぁ、フィクションなのでア(略)。ほんとにないかどうか、知らないし…。

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【小説】Blue wings<4>

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これまでの話はコチラ → Blue wings <1> <2>
<3>




「貴様、わたしが男に負けると思っているのか」
岩崎の背中にかけた剣呑な声はしかし、思ってないよという岩崎の返事で台無しとなった。
「だって安藤さん、絶対俺よか強いじゃん」
小さく振り返り、友絵が後ろを付いて来ている事を確認すると、岩崎はまた前を向く。
「それなら、なんで…」
「だって、安藤さん、女の子だもん」
不意打ちのようにさらっと言われたその台詞に、ぐっと言葉が詰まる。
「仕事や強さなんて関係ないじゃん。女の子だからじゃん。それとも、女の子を送るって自分より弱い相手が言ったら馬鹿みたい? それとも、女性差別だって思う?」
振り返った岩崎の真っ直ぐな瞳に、さすがに足が止まった。なにも言えなくなる。
男ばかりの中で、血を吐くような努力をした。男なんかに負けるかと意地で頑張った。
そして、それは今も継続中だ。
女として扱われるのが一番の屈辱。女だからと言われたくない。だから気を張って、頑張って。
だけど。それならどうして自分は合コンの誘いに乗ったりした?
「安藤さん、自分の仕事を白状する前まで、すっごい可愛かったんだけど」
その、当たり前のようにさらりと言われた台詞にうつむく。今が夜で良かった。赤くなったかもしれない顔を見られずに済む。
「安藤さんはきっと、男ばっかの中で想像を絶するプレッシャーと戦ってるのかもしれない。けど、今は戦わなくてもいいんだよ」
そう言う岩崎の口調は、世間話でもしているかのように普通だ。
「それとも戦闘機パイロットって、プライベートも甘えちゃ駄目なの?」
その言葉だけ聞きながら、唇を強く噛み締める。
岩崎の言葉が胸に刺さった。
それは、自分が気づいていながら見ないようにしていた事を否応なく目の前に晒す。
女だからと思われたくないのに、合コンの誘いに乗る自分。
普通に談笑していたはずが、パイロットとバレた瞬間に職業口調で他を威圧した自分。
普通の女の子として遊びたいと思って来たのに、自分でそれを辞める。
矛盾している。これでは、子どもだ。
「安藤さんが戦闘機パイロットだって聞いて、本当に驚いたよ。だって、男世界でしょ。しかも、並大抵の男じゃないと来てる。そこで安藤さんがどんな過酷な状況にいるのか、俺にはもう想像すら出来ない」
やめて。そういう事を言わないで。
喉がひりつく。
わたしが男に負けるものかと歯を食いしばっている、それを認めないで。
わたしが女の子だということを、女の子でいたいということを肯定しないで。
そんなことをされたら、今までの緊張が全部、全部切れてしまう。
「だから、せめて、安藤さんを女の子扱いするくらい許してよ」
それが限界点だった。
ひりつく喉に熱いものがこみ上げ、涙が一気に瞼を乗り越える。
「な、なんで初対面のあんたに…」
そんなことを言われなきゃいけないの。その言葉は喉につかえて出てこなかった。それでも、なにを言おうとしたのかはわかったらしい。
すこし、岩崎が笑ったような気配がした。
そして、近づいてくる足音。
「そんなふうに可愛いからじゃん」
すこしぶっきらぼうに感じるくらいの勢いで、岩崎の手が頭をなでる。ぐらぐらと揺れる振動に、また涙が下へと落ちた。
「仕事の話になると強がっちゃって、いじらしすぎるでしょ」
「なんで、そういう…」
今まで、そんなことを言って来た奴はいなかった。皆、凍り付いてそれでおしまい。
それなのに、なぜこの男はそんなことを言うのか。どこをどう見たら可愛く見えたのか。
「いやね、もう、泣いちゃってる時点で相当可愛いからね?」
「う…るさいっ!」
涙は一気に引っ込んだ。勢い良く岩崎の手を払いのけ、大股で歩き出す。
「ちょ、もう、照れちゃって!」
「照れてなんかないっ!」
「も~そんなにムキになったら照れてますって言ってるようなもんじゃん」
「もう付いて来るな、このチャラ男!」
可愛いを連発したってその手には乗るか!
「それはできないよ、女の子一人で夜道を歩かせられないからね」
またしてもさらりと言われたその台詞に、友絵はもう返す言葉を持っていなかった。





つづく



【小説】Blue wings<3>

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これまでの話はコチラ → Blue wings <1> <2>





友絵は中学生の頃までは非常に大人しい女の子だった。
一日中誰とも喋らずに本ばかり読んでいた。友達もいなかった。
運動は得意だったから素質はあったのだろうが、大人しすぎて目立つことはなかった。
それがなぜ、今航空自衛隊で戦闘機パイロットなんかをしているのか。
動機は単純だった。同級生に馬鹿にされた。安藤は人間とは思えない、安藤が人間になるのは自分が空を飛ぶよりも難しい、と。
言い返せなかった。
悔しくて悲しくて、それを思い出して何度泣いただろう。
そして涙も尽きた頃、決心したのだ。わたしは空を飛ぶ、と。
あの馬鹿にした同級生を必ず見返すと。
笑いたければ笑え。本当の話だ。
もちろん、そんな子どもじみた動機だけでやっていけるような世界ではない。だから、今は違う。確固たるやりがいと使命感がある。
岩崎などに負けない誇りを持って仕事をしている。それを奇異なものを見る目で見るのなら、そんな知り合いは、要らない。

それからの飲みはいまいち盛り上がらずに終わった。友絵が終止仏頂面だったからかもしれない。
タクシーを呼んでくれたが、乗らなかった。
岩崎が夜道は危ないからと乗るように進めてくれたが、視線だけで威圧して黙らせた。
わたしがその辺の男に負けるとでも思っているのか。
低くうなるように吐き捨てると、もう誰も友絵を止めなかった。
そんなに不細工な顔ずっとしてなくてもいいのにと笑う友人たちは放っておく。彼女たちは別にこたえていないし、悪気もないし、反省もしないのだから。
彼女たちは悪くない。どうせ、自分の職業は遅かれ早かれ言わねばならないのだ。それならば、あんなつまらない男たちに引っかかって後で傷つかなくて良かったと割り切る。
一人になって歩く夜道。街頭も少ないが別に怖くもない。女子としてそれはどうなんだと思うが、もう可愛い女の子になれるキャラでもない。
それにしても、と友絵の口は少し緩む。
ファイターパイロットだと言った時の男子の顔と来たら。全員がそんな顔をするなんて、ある意味いいものを見たような気にすらなる。
明日、誰に話そうか。そんなことを考えながら歩いていると。
「あ、ん、ど、う、さん!!」
遠くから自分を呼ぶ声がして思わず歩みを止める。振り返ると、こちらに駆けてくる人影が一人。
岩崎だ。
「間に合ってよかったぁー!」
そう言って友絵の前で止まった岩崎は、ぜいぜいと息をしながらも笑顔でそう言った。
「タクシーに乗ったんじゃ…」
友絵も、あまりに虚を突かれすぎて途中で声が立ち消える。
「だって、俺、安藤さんに連絡先訊くの忘れてたからっ」
「は?」
連絡先の交換が必要だと思えるような心当たりは全くない。
「歩きながら教えてよ。基地に帰るんでしょ? 送るよ」
そう言った岩崎は、さっさと歩き出してしまい、なぜかその後を友絵が追う形になった。






つづく

【小説】Blue wings<2>

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これまでの話はコチラ → Blue wings<1>



「いい仕事してるのね」
素で漏れたつぶやきを、岩崎は聞き逃さなかった。
「でもほら、安藤さんエリートなんでしょ?」
自分は答えたんだから答えてくれ。そんな心の声が聞こえそうなくらいだ。
「エリートとか言い過ぎ」
そんなんじゃない。あえて言えば、落ちこぼれなかったというその程度だ。
不機嫌そうな顔になった友絵に、友人たちがさざ波のように笑う。
「友絵、もう観念しなよ。どうせ隠し通せないでしょ」
「あんたたち、ほんと性格悪い…」
彼女らは気のいい奴らだし、好きだ。ただ、彼女たちには容赦がない。友絵が合コンの席で一人不利になろうが、いじれるところは突いてくるという性格の悪さ。
いや、自分もそんな友人らの性格はよくわかっているから、やはりこの場に参加した時点で敗北は決定していたようなものか。
「で? で、安藤さんはなんの仕事してるの?」
岩崎はもう聞くのが楽しみといった満面の笑顔だ。
その笑顔は、すぐに凍り付くことが友絵にはわかっている。何度も経験済みだ。
「…パイロット」
答えた声は明らかにボリュームが落ちた。岩崎の反応を見たくなくて、小さくうつむく。
「え?」
一瞬固まった岩崎が、すげぇ!と感嘆の声を上げた。
「女性パイロットって、一人か二人だったでしょ、確か! それが安藤さんのことなの!? うわ、マジすげぇじゃん!」
無邪気に驚いている岩崎に、友絵はますます仏頂面になる。
「なになに、ANA? JAL?」
「どっちも違う」
もう不機嫌を隠すこともなく、むっつりと低い声で答える。
「じゃあ、あれ? 格安航空?」
パイロットと言ったら民間機しか思いつけないのか、この男は。
「わたしは、公務員だと言ったはずだ」
自然と職業口調になる。仕事中は気が張るし、男性しか周りにいない状況でプライベートのような普通の態度は出せないし出したくもない。
「公務員でパイロット…? そんな仕事あったっけ?」
首を傾げた岩崎の隣で、岩崎の同僚だと言っていた男があっと小さく声を上げる。なんのパイロットかはともかく、友絵の仕事がなにか思い至ったのだろう。
じろりとその男をにらむと、それだけで彼はうつむいた。無理もない。
「友絵~、怖いからにらむのやめたげてよ~」
そんなことを可愛い声で言う友人へも容赦なくにらみをきかす。
誰のせいだこれは。
「公務員でパイロット…ごめん、わかんないや。降参」
岩崎はそう言って手を挙げる。
このまま答えないでおこうか。そう思ったが、同僚は友絵の仕事に気がついたから、どうせバレる。しかも、へんな憶測まで付く事は容易に想像がつく。
それなら、今回は完敗と割り切って言ってしまうか。そのかわり、ここから先は女子度ゼロの対応をさせてもらおう。
そんな投げやりな気持ちで口を開く。
「わたしは自衛官だ。航空自衛官」
一瞬にして岩崎の目が大きく見開かれる。
「細い身体してるようで、ほとんど筋肉よ、この子。喧嘩しても勝てないからね」
援護射撃なのか嫌がらせなのかそう付け加えた友人に、ますます開き直る。
職業柄もそうだが、性格としても出会いを求めたのが間違いだったのだ。
どうせなら自衛官じゃない人と、なんて。
「えーと、なにのパイロット? ヘリとか? 輸送機とか? まだ若いし、まさか政府専用機とかじゃないんでしょ?」
正に、恐る恐るという感じで訊いて来た岩崎にイライラする。
こいつ、嫌いかもしれない。
「どれも違う」
どれだけの努力をして今の自分があるのか。こいつらはちっともわからないだろう。
「じゃ、じゃあ…なんの…」
「F-2」
そう言って、青ざめた男子が半数、首を傾げた男子も半数。
岩崎は後者だ。
「バイパーゼロ…」
小さく漏れた声が誰のものかはわからなかった。しかし、男子で知っている者がいるのはおかしい事でもなんでもない。プラモデルなどが好きであれば知っている者もいるだろう。
「戦闘機だ」
言い切った友絵の声に、今度こそ男子全員の顔が凍り付いた。




つづく

【小説】Blue wings<1>

テーマ:
「で、安藤さんはなんの仕事してるの?」
友達みんなが友絵の公休に合わせて企画してくれた飲み会という名の合コン。その飲み会の席で、当の友絵は今日一番の危機に陥っていた。
「公務員よ、公務員」
わざと素っ気なく答えたが、質問をして来た岩崎と名乗った男はそれで納得はしなかった。
「へぇ。市役所とか?」
「いや、ちょっと違うけど…」
ちょっとどころかかなり違うが、それはこの際棚上げだ。
「役所は役所? もしかしてエリートコースだったりする?」
興味津々の様子で無邪気に身を乗り出して来た岩崎に、心底嫌そうな顔をしてしまう。それを見て、友人たちはにやにや笑っているだけだ。これは、助け舟など期待できそうにもない。
「まぁ、エリートっちゃ、スーパーエリートでしょうけどね~」
ぼそっとつぶやいた友人の声に心臓が縮み上がる。
「やっぱそうなの? たしかに、なんかシュッとしててかっこいい感じするよね、安藤さんって」
そして、岩崎はそういうことは聞き逃さないと来てる。
ああ、もう、嫌だ。
「そっちこそ、なんの仕事してるの?」
なんとか話題をそらせないかと岩崎に聞き返す。ここで話を広げることができればなんとかなる、かもしれない。
「俺? 俺はMR」
岩崎はにこにこ笑いで胸を張った。自分の仕事が好きなのだろう。
「MR?」
聞き慣れない職業だ。
「 Medical representative…つまり、医薬品関係の営業だよ。うちの会社はジェネリック医薬品が専門でね」
「へぇ~」
営業と言われればまさに岩崎はそんな感じだ。くったくがなく人懐こい雰囲気があるし、話す事も好きそうだ。
納得して大きく相づちを打つ。
「笹川薬品、って知ってるかな?」
聞いたことがある。ここ最近、テレビCMでよく見る会社名だ。
小さく頷くと、それうちの会社、と岩崎がすかざず答えた。
「やっぱさ、医療関係者って、先発品の薬が最強みたいな神話が蔓延してるわけ。うちだったら、先発品と同じ成分で同じ効果で、しかも安価なのに」
その口調は、自社製品に確固たる自信があると確信している口調だ。
「だから、その良さをみんなにわかって欲しいんだよね。もう、営業先での説明とかすっごいワクワクする」
岩崎の目はキラキラしている。その熱意に、友絵を含めた女子全員が感嘆のため息をついた。
それが岩崎の天職なのだろう。




つづく。

【物語】待宵草 後編

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 それから、一週間ほど過ぎた頃、それは突然目の前に現れた。
 いつものように夕暮れの帰路を歩く綺の前に立ちふさがったのは、見知らぬ女性だった。長いストレートの髪。高い背。憎悪に近い怒りの表情で綺を見下ろす燃える瞳。
「あんたね。拓哉の妹ってやつは」
 顔は知らない。だが、それがあの時拓哉といた女性じゃないかという結論に達するのにさほど時間はかからなかった。
 なぜ綺を知っているのか。それは問うだけ無駄だ。だから訊かない。おおかた、数日喫茶店の前で張っていたのではないだろうか。そうすれば、毎日そこへ帰る綺の存在に嫌でも気がつくはず。
「血が繋がってないくせに、なにが妹なの? そんな甘えたこと言って拓哉に取り入ってなに狙ってるのかしら?」
 遥かな高みから綺を見下ろすように吐き出される高い声は、怒りのためなのかいっそ艶めいて聞こえるほど冷たい。
 身体が冷える。一切付け入ることを拒絶している声だ。おそらく、彼女に聞く耳はないだろう。
(取り入ってなんか……)
 違う。そう言いたくても口は動かない。
 拓哉は、兄になるかもしれない人で。保護者代わりの博の親友で。
(駄目だ……)
 そう言ったところで通用しない。きっと、逆上させるだけだ。
「ちょっと調べてみたら、あんた、拓哉の父親の不倫相手の娘なんですって? それで妹気取りってどういう神経の持ち主なの?」
 そう言って、彼女は軽く鼻で嗤う。
「汚らしい、親子揃いも揃って、汚い売女なのね? あぁ、可哀想な拓哉! こんな売女に騙されてるとも思わずに優しくするなんて」
 聞くな。まともに聞いちゃ駄目だ。そう思うほどに綺の耳は彼女の鼓動に引き込まれていく。
 売女。その罵り文句は3年前にも聞いた。それは、拓哉の母親からの罵声だった。
 違う。違う、そんなのじゃないのに。わたしも、お母さんも!
 俯き、力を込めて目を閉じる。
「そろそろ、拓哉騙すのやめてくんない? あんたみたいな売女にお似合いの男ならごろごろ居るでしょ? それは拓哉じゃないわ」
 なにを言っているのだろう。なにを勘違いしているのだろう。なぜそんなことまで言われねばならないのだろう。
 いつもそうだ。綺の母にしても、拓哉にしても。自分の預かり知らないところで事は起きて、その矛先はこちらへ来るのだ。
 憎悪に満ちた拓哉の母親の顔が浮かぶ。あの時も。今も。
「ちょっと、なにか言いなさいよ!」
 一段と高くなった鋭い声が飛び、肩を押されよろめく。瞼にオレンジの洪水。
「あんたさえ居なきゃ、わたしたちは上手く行ったはずだわ!」
 ほとんど怒鳴るように叩き付けられたその言葉でやっとわかる。
 彼女は、拓哉が本当に好きなのだ。上手く行かなかった理由を綺になすりつけて攻撃せねばならないほどに好きで。好きで、好きで。
 綺を攻撃したところでもう取り返しがつかないことは彼女自身もわかっているはずだ。だから、これはただの八つ当たりだ。
 綺の存在のせいで上手く行かなかった。そう思えば小さなプライドを守れる。胸をえぐる傷が小さくて済む。綺はその為の、生け贄なのだ。
(本当に好きだったんだ……でも……)
 もう、要らない。誰かの生け贄にされるのなんてもう嫌だ。
 自分の知らないところで起きた事を押し付けないで。勝手にわたしを傷つけるだけ傷つけてすっきりしないで。わたしは掃き溜めじゃない。
 ゆっくりと顔を上げる。まっすぐに彼女を見た。
「それは、わたしに言う事じゃないわ」
 喉の奥から絞り出すように発した声はかすれている。
 言ってしまえば、彼女も、そして自分自身も傷つく言葉だった。しかし、他人に土足で踏み荒らされるくらいなら、自分の言葉で傷つく方がずっといい。
「それは、拓哉に直接言って。あの売女に騙されているって。直接そう言って」
 声が震える。
(今泣いちゃ駄目だ……)
 ぐっと奥歯を噛み締める。あと少し、我慢して。あと少し。
「拓哉が可哀想と思うなら、直接言ってよ! わたし、拓哉を騙してるなんて、そんなこと彼に言わないわ! あなたが拓哉を助けてあげればいいじゃない!」
 目の前の顔は凍り付いていた。それはとどめだった。
 彼女のプライドは壊れただろう。彼女が直接拓哉にそれを言わないのは、綺が原因でないことを知っているからだ。それを拓哉に言えないことを知っているからだ。
 ただ、彼女は拓哉が好きで好きで好きで。ただそれだけだった。その心を綺は壊したのだ。
 彼女は表情のない顔で綺を見下ろし、手を振り上げた。ぶたれる、そうわかっていて避けなかった。乾いた音がして、頬に痛みが走る。
 それと同時に、彼女の瞳から涙があふれた。そのまま綺の横をすり抜けオレンジの中へととけ込むように消えた。
 頬が痛い。それ以上に……。

 夕暮れが過ぎ、空が紫に変わりかけた頃、拓哉はやって来た。
 あの後、不思議と涙はこぼれず、しかしまっすぐ帰ることも出来ず、帰路の途中の公園のベンチで休みそのまま動けなくなってしまった。
 あんな風に人を傷つけたのは初めてだった。その事に自分自身予想以上に傷ついていた。
 迎えに来て。短いメールを拓哉に送った。一人で帰れそうになかった。
「綺。どうしたんだ、気分が悪いのか?」
 綺の様子が違うことはすぐにわかったようだ。すぐに駆けつけてくる。
「どうした? 立てるか?」
 そう言って隣に座り綺の顔を覗き込んだ拓哉の顔が微かに歪む。頬が腫れているのに気がついたのだろう。
「綺、なにがあった?」
 そう訊く声は強ばっている。その声に首を微かに横に振る。
 もう十分、先ほどの彼女を貶めた。これ以上はもう出来ない。彼女はただ拓哉が好きだっただけなのだから。
 拓哉の顔を見上る。綺を心配する顔。
 息が詰まった。先ほどは吐き出せなかったたくさんのものが、一気に喉元を駆け上がり目頭が熱くなる。視界が歪んだ。
 押しつぶされたような音が喉からもれ、涙があふれる。
「我慢するな」
 拓哉の腕が綺を包み込む。そのまま、綺の顔を肩へと導く。
「なにがあったか知らないけど、我慢するな。泣きたいときは泣いたらいい」
 耳元で聞こえるその優しさに、一気になにもかもが壊れた。子どものように、声を上げて拓哉の肩にすがりつく。
 拓哉は何も悪くない。しかし、拓哉が蒔いた種が綺に飛んで来たのは事実だ。だから、ここでこうして甘えるくらい許して欲しい。
 これも、都合のいい、自分のプライドを守るための言い訳かもしれなかったが。それでも。拓哉はそれを許してくれるだろうから。
 綺も、綺を傷つけた女も、同じだ。同じだからお互いに傷ついた。
 拓哉の手が綺の頭をなでる。優しく。
「よく頑張ったな」
 それは、普段の綺を知る拓哉だからこその言葉。
 普段はちょっとのことで泣いたりなどしない綺が泣く時は、我慢に我慢を重ねた後のこと。もうどうしようもなくなって、心が折れそうな時。拓哉はそれを知っている。
 声が出せず、小さく頷くと、ぽんぽんと背中をあやすように叩かれた。
 優しく、ただ優しく。
 それは、夕暮れのような優しさに綺には思われた。

 もう少し、甘えていてもいいだろうか。許されるだろうか。
 せめて、大人になるまでは。
 それまでは、どうか……。

END

【物語】待宵草 前編

テーマ:
 いつもの通学路。そのいつもの道をいつものように綺は歩く。
 夏の終わり、涼しい風と世界を飲み込むオレンジ。
 その中に拓哉が見えた。そして、綺に背を向ける位置で拓哉に向き合う女性も。
 何事か話しているらしい二人に声をかけるのははばかられた。
 違う道で帰ろうか。そう思った時、女性が突然拓哉の首に手をまわして背伸びをした。
 息が詰まる。その瞬間で時が止まってしまったかのように思考が停止する。
 どうしよう。
 オレンジの洪水が二人の上を流れる。
 まだ気づいてないかもしれない。やっとそう思い至り、じりじりと後ずさる。それは時間にして数秒であったはずなのに、何時間もそうしていたかのように綺の身体は固く重たく……。
 女性が拓哉から離れる。綺の身体がやっと動き、踵を返す。
 そのまま、走り出す。
 その背後で、拓哉が綺を呼ぶ声がしたのはきっと、気のせいだ。
 オレンジにまぎれて走る。洪水を起こした夕暮れの空に溶けるように。

 綺には兄が二人いる。しかし、どちらも実の兄ではない。綺が兄と慕う人物が二人いる、という表現が一番正しいだろう。
 一人は遠い親戚にあたる博。彼は、今現在の綺の保護者代わりだ。
 そしてもう一人は、博の経営する喫茶店で働く拓哉だ。
 拓哉との関係はやや複雑だ。拓哉は、綺の母の不倫相手の息子だ。
 初めて話をしたのが14歳の頃。その頃から、いつか自分の兄となるかもしれないと思ってきた。しかし、あれから3年経った今も、拓哉の母親が断固として離婚を認めず、二人は義兄妹にはなれないままだ。
 そのまま、拓哉を兄と慕い、拓哉は綺を妹と可愛がる。
 そんな風に、この数年間を過ごして来た。
 そして、その年月で初めてだった。拓哉がおそらくは友達ではないだろう女性と居るところを見るのは。
 だから、普段の綺からすると考えられないほど驚いてしまったのは事実だ。
 見てはいけないものを見てしまったのではないか。そう思ってとっさに逃げ出してしまった。
 しかし、よく考えれば拓哉ももう二十代も後半に差し掛かる頃だ。なにも不思議なことなどない。むしろ自然なことだ。
(どんな顔して帰ろう……)
 綺に気がついただろうか? 気がついていたとしたら気まずい気がするし、気づいてなくても綺の側からはなんとなくぎこちなくなりそうでやっぱり居心地が悪そうである。
 綺は、博と拓哉が切り盛りする喫茶店の二階の居住スペースを貸してもらっている。帰るには、どうしても一階の喫茶店スペースを通らなくてはならない。
 街は夜でも明るいが、遅くなって心配をかけるのも本意ではない。ただ、居心地が悪いと感じる自分だけの問題で、拓哉はなにも悪くないのだ。
 先ほど、一度だけ携帯電話に入った拓哉からの着信は、なんとなく取りそびれたままだ。
 帰りたいのに、帰りたくないような。
 どうしてこうも矛盾した気持ちがわき起こるのかがわからない。
 ショウウィンドウに映る自分の姿が、妙に沈んでいる気がしてさらに戸惑う。
 14歳。BON JOVIが好きだよと教えられ、それなら仲良くなれると思ったこと。
 自分の人生を歩き出す為に消えた母親に代わって、妹になるかもしれない綺を迎えにきてくれた事。
 たくさんの場所に遊びに連れて行ってくれたこと。
 拓哉は、本当に妹には甘い。おそらく、保護者代わりの博よりも。
 それに甘えていたことも事実。
 そんなことをとりとめもなく考えていたその時。制服のポケットに入れていた携帯電話のバイブが震えた。
 拓哉からの短いメール。何時頃帰るの? プリン作ったんだけど、食べる?
 喫茶店で主にデサート担当の拓哉の作るお菓子は本当に美味しく評判だ。そのお菓子で綺を釣ることも、これは日常茶飯事。
 だから、釣られた振りをして帰ることにする。どうせ、帰らなくてはならないのだから。
 すぐに帰る。綺も短いメールを返し、帰路を急ぐ。
 まるで、こうして声をかけてくれるのを待っていたようで少し自分が可笑しい。プリンに釣られる妹も悪くない。

 拓哉はなにも言わなかったので、綺もなにも言わなかった。
 気にならないといえば嘘だったが、綺が詮索するようなことでもないと思えた。だから訊かなかった。
 絶品のプリンを貰い、他愛ない話をして。
 ただほんの少し、気まずいような気がしたのは、綺の整理がついていないせいと思うことにした。

【物語】人間の翼 後編

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「こないだの新刊、読んでくれたんやな。ありがとう」
 とりあえず、そのままでは安藤もかわいそうなのでそう声をかける。すると、ほっとしたような顔で安藤は鬼窪に向き直った。
「鬼窪くん、あの話ナイス! グッジョブ!」
 酒のせいもあるのか地なのか、安藤の褒め言葉は全くセンスがなかったが、ありがたくいただく。読者がいないと食べていけないし……とこれは大人の事情だ。
「そうかぁ? なんか、ターゲットが男性やったし、結構暑苦しかったんちがう?」
「鬼窪くんの変な関西弁ほど暑苦しくなかったわよ!」
「なッ……」
 安藤のその台詞で、周りがいっせいにクスクス笑い出す。
「ちょ、待て! 仕方ないやんか」
 せっかく大阪からこの同窓会の為に帰ってきたと言うのに、この仕打ち。鬼窪はがっくりとうなだれる。
「まぁまぁ。事実だから」
「くそっ、安藤喧嘩売ってんのか!?」
「売ってない売ってない。鬼窪くんじゃわたしには勝てないよ」
 いけしゃあしゃあとそんなことを言って安藤はまた大声で笑う。
「それより、空自に取材にでも行ったの? 戦闘機、すっごい詳しく書いてたよね」
「あ、あぁ。取材は怠らんようにしてるからな」
 小説なのだからリアリティが必要だ。しかし、鬼窪も何でも知っているわけでもない。だからこそ、自分の目で見て感じる取材は大切だ。
 その小説では、航空自衛隊の航空学校に入ってから一人前の自衛官になるまでの主人公の奮闘を描いている。だから、取材も実際に山口県の航空学校に取材を申し込んだりした。
「取材は航空学校に行ったで。松島基地の航空祭にも」
「へぇ~。それであんだけ書けちゃうんだ? さすが作家ね~」
 安藤は感心したように頷き、酒を飲む。その様子に、鬼窪もまんざらでもないものを感じながら、同じように酒を飲む。
「最後かっこ良かったなぁ。F-2で敵機とすれ違いざまのスプリット・エスとか。失神寸前で決めるなんてかっこいいね」
 F-2は戦闘機だ。非公式の愛称はバイパーゼロ。
「あれって、Gが凄いしあんまりやろうとか思わないんだよね。よくやった! って読みながらガッツポーズしちゃったの、わたし!」
 言いながら嬉しそうに左手でガッツポーズした安藤に、鬼窪も嬉しくなる。本当に楽しんでくれたみたいだ。
 それにしても。
「安藤ってそんなキャラちゃうかったやん。戦闘機からは一番遠そうだったのに、詳しいんやな~。人は見かけによらんなぁ」
 こんなに面白いやつだったのか、安藤は。鬼窪がそう思ったその時。
 すくっと安藤が立ち上がった。足下が少しよろけて、しかしすぐに直立不動の体勢を取る。
 そして。
「松島第4航空団、安藤友絵二等空尉より我が母校を取り上げてくれた鬼窪氏に敬礼!」
 それはそれは鮮やかな敬礼だった。
 そして、鬼窪を見下ろしニヤリと笑った安藤に、全員が開いた口を閉じようともしなかった。
 二等空尉、そして松島第4航空団。
 スプリット・エスはGが凄いからやろうと思わない。さっきそう言わなかったか?
 これは…安藤は、ファイターパイロットだ!
 喧嘩してもわたしには勝てない。その意味がわかる。女性とはいえ現役自衛隊員に喧嘩で勝てるものか!
 安藤の完全なる不戦勝だった。

「やっぱ覚えてないかぁ。あんな暴言吐いたくせに」
 帰り道。実家が近い鬼窪と安藤はなんとなく二人でそろって歩き出す。
 なぜ航空自衛隊になんか。鬼窪の素朴な質問に、彼女は鬼窪くんのせい、と一言だけ言った。当の鬼窪はしかし、覚えがない。
「お前暗いなー。同じ人間とは思えないなー。安藤が人間になるのなんて俺が空飛ぶより難しいな! って言ったわよ」
「げ……それ本当なんか?」
 うん、と頷いた安藤の顔にからかいの表情は浮かんでいない。
「やわな乙女のハートが盛大に傷ついたわ~」
「ご、ごめん」
 思わず小さくなる。覚えていないとはいえ、ちょっと自分でも引くくらいの暴言だ。からかったにしても言い過ぎだ。人間とは思えない、なんて。
「いいんだけど。そのせいで、今があるんだし。あれなかったら、飛行機なんて乗らなかった。わたしの人生、つまんなくなってたと思う。だからいいの」
 空を飛ぶことが今の生き甲斐だから。彼女はそう言って笑う。飛ぶのが好き、だから厳しい訓練だってなんだって平気よ、と。
「わたしは、人間の鬼窪くんを超えたんだって、ウィングマークもらったときはそう思った。もちろん、そんな理由だけで飛び続けられるほどヤワな世界じゃないから、すぐ忘れちゃったけど」
 安藤は女性だ。女性パイロットは世界的にも数は多くない。そんな中、男たちに交じって大変な苦労があっただろう。一般には知られていないが、空域を侵す可能性のある国籍不明機を威嚇するための緊急発進も少なくはないはずだ。
 それを乗り越える為には、憎い誰かを超える以外の純粋な理由が必要だったはずで、彼女はそれを見つけたのだ。
「逆にありがとうって言いたかったのよ、鬼窪くんに」
 そう言った安藤の瞳は輝いている。
「ありがとう! 鬼窪くん。あっ、鬼窪大先生のファンになるから、新作出たらサイン入りで送ってくれる?」
「自分で買えよっ!」
 茶化した笑い声に、鬼窪も笑って返す。
 人は強い。彼女のように。

 後日、鬼窪へのファンレターに混じり一枚の葉書が届いた。
 差出人は岩崎友絵。
 華やかで幸せそうな写真に結婚しましたと添えられていた。

End.