入梅

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 我が家の東隣に、民家一軒分の空き地がある。
 所有者はここから数キロ離れて市内に住む老夫婦で、子供のために購入したといい、何年か前まで年に数回草刈に来ていた。やがて、彼らが来なくなり一二度管理業者らしい人が来て草刈をした後誰も来なくなった。 一年越しで向こうが見えないほど草が伸びたので、昨年の秋に、人づてに老夫婦の家を探して訪問した。静まり返った玄関先で何度か呼ぶと、その奥さんが出てきて、ご主人が二年ほど前に無くなったこと、息子さんに土地管理をまかせたが、本人は別の場所に家を建て、土地は売りに出していることを話した。
 それでもすぐに息子さんに連絡してくれて、数日後には管理業者の社員が来て草を刈った。
 奥さんと話したとき、我が家との境にある梅の木の話をして、「毎年たくさん実がなっています。うちの敷地に出た枝を落としたりその枝だけ、実を取っていいですか」と言うと、彼女は梅の木のことは記憶に無く、「木を倒してもいいし、実は全部好きにしてください」といわれた。
 
 先日、管理業者が来て「これからは年に二三回草刈に来ますよ」と、草を刈っていった。見通しがよくなって改めて梅の木を見ると、たっぷりと実がついていた。根元にもどんどん実が落ちている。
 昨日、この地域について気象庁の入梅宣言を聞いたが、午後から霧のような雨になった。
 妻が、「隣の梅が色づき始めたよ」と言うので、急いでフェンスを乗り越え隣の敷地に入り、傘も差さずに梅の実を取った。落ちている実には目もくれず、枝から実を取った。数十分で数キロの実が取れた。
 娘が第二子出産のため里帰りをし、孫にも手がかかって、今年は庭の小梅の処理が進まなかった。
 生った実をまとめて採る暇が無く、草むしりや菜園の作業のついでに妻が拾ってきた実を、梅漬けと梅ジュースに、継ぎ足し継ぎ足し仕込んでいた。
 たっぷりの青梅が手に入って喜んでいたら、昨日の午後から参院に入院していた娘が、夜の八時過ぎに出産した。
 余り言うと娘は、人の苦労もわからない癖にと怒るのだが、最初の子同様、紛れも無い「安産」だった。
 母親がいなくてさびしい気持ちを、幼いなりにぐっと押し殺している孫娘を寝かしつけている最中、9時頃の電話だった。
 妻の「おめでとう」というねぎらいの言葉をふすま越しに聴きながら、うまく眠りに入り込めず目をあけたり閉じたりしながら寝返りを打つ孫娘に、子守唄を歌っていたら、不意にちょっと泣き声をあげてから眠りに入っていった。 途切れ途切れに聞こえる話の中身はわからなかったろうが、電話の向こうの母親の存在をなんとなく感じていたのではないかという気がした。
 孫の寝入りを確認してそっと起きだし、ダイニングに行くと、疲労の色が目立っていた妻は、ほっとした表情で食卓に置いた自分のパソコンに向かっていた。
 台所に行き、処理作業の途中だった小梅を始末し、午後に採ったばかりの青梅を水にさらした。
 
 




 
 
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久しぶりの夜更かし

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地域団体の仕事で、どうしても明日にはある場所に届けなければならない書類がそろっていなくて、珍しく夜更かしをした。
いろいろやっていたら結果的には、3月に作っておいた書類が使えることがわかって、今頃一息ついている。

孫娘はものすごい勢いで成長している。
今夜は、母親である娘の「片付けなさい」の一言にそむき、小さなアンパンマンのキャラ人形たちを次々と口に銜えては吐き出すというヒール振りを発揮したという。
私は書斎で仕事に四苦八苦していたのだが、廊下越しに娘と孫の叫び声が聞こえていた。
仕事が一区切りしたときに居間に行ってみたら、母娘はすでに和解をして、一緒に風呂に入っていた。
妻が笑って報告した。
その妻も、なにやら疲労困憊の有様だ。

それでも、娘の出産が近づき、物事は少し好転し始めている気がする。

2月末から病気で医者通いをしていたシロ猫は、ようやく病気が全快したころに後ろ右足をけがした。
痛がって三本足で跳ぶように歩き、食欲が無くなり、万事におびえて私や妻からも逃げるようになった。
一番いけないのは、孫が来ているせいで家の中に安住の地がなくなったことだ。
それでも医者でもらった抗菌剤と消毒薬で化膿を止めていたら、昨日あたりからだいぶ元気になり、食欲も出て、生活の感じが普段に近くなった。

五月の連休に来るといってきた息子の家族に対しては、ちょうど妻の疲れがピークだったことと、孫も私も風邪気味だったことを理由に、別の機会にしようといって止めた。
そのことにずっと小さな罪悪感がある。
息子たちは元気なのだろうかと、ふと思う。しばらく音信不通だ。

気がついたら、小梅が色づきスモモのみが大きくなってきていた。
沖縄ではもう梅雨入りだそうだ。

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