H22年度税制改正において、

不動産相続税対策への影響が特に大きいと思われるものは、

減額の割合が大きい小規模宅地の特例に関する次のものです。


※税制改革案が原案のまま成立した場合になります。


1.相続人等が相続税の申告期限まで事業又は居住を継続しない宅地等(現行200 ㎡まで50%減額)

を適用対象から除外。
 

2.一の宅地等について共同相続があった場合には、取得した者ごとに適用要件を判定。


3.一棟の建物敷地のうちに特定居住用宅地等の要件に該当する部分とそれ以外の部分がある場合には、

部分ごとに按分して軽減割合を計算。



1.については、これまでは売却した場合でも50%減額できたものが、減額なしとなるものです。

影響は大であるといえます。


2.については、例えば配偶者と居住しない子が共同相続した場合、

現行は配偶者(80%減額の対象)も居住しない子も、共に80%減(一人でも80%減の特例を受けれる

人がいれば他の共同相続人も80%減を受けられる)から、

配偶者は80%減、居住しない子は減額なしとなるものです。

これについては、この規定を利用した分割案が一般的であったことからも特に影響が大きいと

思われます。


3.については、現行は居住部分も貸付部分も80%減額できた

(一部でも特定居住用で80%減額あれば全体を80%減額)ものが、

居住部分は80%減であるが、賃貸部分は50%減と個別の使用方法に応じた

適用となるものです。これも節税目的に賃貸マンションの建設を行う場合には

比較的よく利用される手法であったため影響は比較的大であるといえます。


全体的に相続税強化の方向性がはっきりと示されたのと、

現実の利用形態、制度の趣旨に合致していないものは

適用できないような厳格な考え方が改正点から判断できます。


H22年度改正は、上記の不動産に関するもの以外にも、

個人年金保険を使った節税対策が今後できなくなることが大きな話題になっています。


今回の改正は、相続税対策は、制度改正によるリスクが常にあることを

今一度認識する必要があることを実感させてくれます。


結局は余りにもテクニカルな節税方法をとるべきではなく、

経済合理性や、借入金返済の安全性などを重視したバランス良い節税手法を

とることが中長期的にいい結果につながるのではないかと私は考えます。