2017-06-03 10:50:26

メタボからの脱出、低インスリンか糖質制限か?

テーマ:今知りたい医療情報

人はなぜ太るの?

クマは餌をたらふく食べてメタボ状態で冬ごもりし、春先にガリガリの体で穴から出ます。人間にもエネルギーを脂肪として体に貯える能力が備わっていますが、冬眠しないのにご馳走を食べ続け、作業するときも移動するときも文明の利器に頼ります。ですから、現代人は食べ過ぎで、運動不足になっています。こうして人間は簡単に太りますが、肥満は万病のもとなので多くの人がダイエットに励みます。その歴史は長く試行錯誤の末に糖質カットにたどり着きました。少し前まで多くの医師が糖質制限に異を唱えていましたが、最近の調査では糖質制限賛成派が優勢になりつつあります。糖質制限が糖尿病やメタボの治療のみならず一般の健康法として認められるかどうかはわかりませんが、大事な考え方であることは間違いなく、その理解には若干の基礎知識が必要です。

 

メタボの鍵を握る糖代謝にはインスリングルカゴンというホルモンが深く関わっています。まず、食物を摂取して血糖値が上がるとすい臓のβ細胞からインスリンが分泌されます。すると、糖分は筋肉や肝臓に運ばれてグリコーゲンになり必要な時にエネルギーとして消費されますが、余った糖分は中性脂肪として脂肪組織や肝臓に蓄積されます。一方、インスリンによって血糖値が下がって空腹を感じる頃になるとすい臓からグルカゴンが分泌され、肝臓のグリコーゲンを分解して血糖値を上げるとともに脂肪を分解して糖の新生を促進します。つまり、インスリンが血糖値を下げて体脂肪を溜めるのに対し、グルカゴンは血糖値を上げて体脂肪を分解すると覚えてください。

 

もう一つ、インクレチンと総称される消化管ホルモンがあります。食事をして血糖値が上がるとインスリンが働いて血糖値を下げますが、これとは別に食物が小腸に送り込まれると腸壁からインクレチンが分泌され、β細胞のインスリン分泌を促し、グルカゴン分泌を抑えて血糖値を下げるように働きます。しかし、興味深いことに血糖値が低いときにはインクレチンは働きません。したがって、インクレチンは高血糖を安全にコントロールするホルモンであり、その特徴を応用したインクレチン関連薬が糖尿病の治療に広く用いられています。

 

さて、40歳を過ぎて運動量が減っても、食べる量は若い頃のままで酒量は増えるばかり、するとどうなるでしょう?

まず、どんどん増えた脂肪細胞から悪い因子が分泌されてインスリンの効き目が悪くなります。これをインスリン抵抗性と呼んでいます。インスリン抵抗性が存在すると運搬されない血糖が血中に溢れ、それを下げようとして膵臓から過剰のインスリンが分泌されるようになります。この過剰のインスリンが高血圧や脂質代謝異常を引き起こし、体脂肪の蓄積を推進して肥満を助長します。これがメタボリックシンドロームと呼ばれる状態で、放置すれば糖尿病へ移行する可能性があります。この場合、遺伝的にインスリン分泌能が高い欧米人は過食によって肥満になっても糖尿病にはなりにくいのに対し、インスリン分泌能が低い日本人は高度の肥満にならないまま高血糖が続いて糖尿病に移行しやすいという特徴があります。インスリンが肥満ホルモンと呼ばれる所以です。

 

メタボからの脱出

カロリー計算は難しい!

メタボやその予備群と判定された人は摂取カロリーを消費カロリーより低く抑えて脂肪を燃焼させる必要があります。たとえば、「日本人の食事摂取基準(2015)」によれば60歳、男性、事務職の推定エネルギー必要量は12100kcalです。脂肪1kgの熱量は7200kcalなので、7200kcal÷30日=240kcal、つまり2100kcalから毎日240kcal減らせばその男性の体脂肪は1か月で1㎏減るはずです。しかし、実際には計算通りになりません。一般の人にとってカロリー計算は簡単ではないし、エネルギー摂取量は食物の栄養成分や食物繊維の含有量に影響され、エネルギー消費量はその人の基礎代謝量によって変わるからです。さらに、ダイエットしても均等に減量できるとは限らず、停滞期に入ってしまうことを多くの人が経験済みです。

 

問題は食後血糖とインスリン分泌にあり!

炭水化物をガッツリ食べて血糖値がドンと上がるとインスリンが大量に分泌されて血糖値をドンと下げ、このときに余分な糖分が体脂肪として蓄積されます。こうして肥満からメタボへ、遂にはインスリンが枯渇して糖尿病へ移行します。人はときに過激なダイエットに挑戦します。エネルギーが不足して血糖値が下がるとグルカゴンの働きで脂肪が分解され、グリセロールやアミノ酸を原料として糖を新生するモードにシフトします。体はアミノ酸を供給するために筋肉を異化させて糖新生を維持し、さらに飢餓状態が続けば脳を守るために脂肪酸からケトン体という物質を作って栄養源とします。これで体脂肪は確実に減りますが、いいことばかりではありません。筋肉量が減少して基礎代謝が下がればむしろ逆効果で、カロリー不足から貧血や骨粗しょう症などが生じることもあり、ケトン体が溜まり過ぎると危険なケトアシドーシスを起こす場合もあります。過激なダイエットを敢行しても問題は解決しないのです。

 

長い間、メタボや糖尿病の対策として適正体重から割り出した適正カロリーの食事療法と運動療法が行われてきましたが、期待したほど効果が上がらないことが医師や栄養士の悩みの種でした。一般の人にとってカロリーコントロールはむずかしいうえにウォーキング以外の運動療法が長続きしないからです。メタボと糖尿病対策の核心部分は食後高血糖の是正とインスリン分泌の抑制にあります。炭水化物中の糖質は確実に血糖を上昇させますが、炭水化物中の食物繊維は消化吸収を遅らせて血糖の上昇を抑えます。一方、脂質とタンパク質はインクレチンの分泌を促して血糖上昇を抑えつつ満腹感が得られます。ここがミソです。このような背景の中で、低インスリンダイエットや糖質制限ダイエットが考案されるようになりました。

 

低インスリンダイエットの考え方

GIって何?

低インスリンダイエットの理解に必要なのがGI(グリセミック・インデックス)で、1981年にトロント大学のジェンキンス博士によって提唱された概念です。GIは食品によって血糖値が上昇するスピードを表し、数値が高いほど血糖値が上昇しやすく、インスリンを多く消費して脂肪が蓄積されると判断します。低インスリンダイエットではGI 5560を目安にして、それよりGIの高い食材(太りやすい食材)をGIの低い食材(太りにくい食材)に置き換えていきます。たとえば、主食では白米や餅より玄米や五穀米、食パンやフランスパンよりライ麦パンや全粒パン、うどんよりそばを選ぶ、デザートではチョコレートケーキよりチーズケーキを選ぶといった要領です。GIは食物繊維、タンパク質、脂質などの含有量に影響されるからです。しかし、太りにくい食材でも食べ過ぎれば総カロリーが上がってしまうので同じことです。注意すべきは果物に含まれる果糖で、GIは低く血糖値は上がりにくいのですが体内で中性脂肪に変わるため食べ過ぎは禁物です。血糖の急激な上昇は調理法とも関係があります。一般に、食品を加工すればするほど消化が速く血糖値が上がりやすいため、ラーメンやパスタはやや硬く茹でるほうが血糖上昇を抑えられます。ただし、硬めに炊いた玄米や麦ごはんと同様に消化吸収が遅くなって消化器への負担が増すので、胃腸の具合が悪いときは迷わず白粥に変えて負担を軽減してください。

 

セカンドミール効果の重要性について

ジェンキンス博士はGIの概念を提唱した翌年の1982年にセカンドミール効果を発表しました。要約すれば、1回目の食事(ファーストミール)で低GI食品を食べると直後の血糖のみならず次の食事(セカンドミール)の食後血糖にも影響を与えるということです。この考え方は肥満やメタボの予防に対して非常に多くのヒントを与えています。まずは朝食の習慣を付けることが大切で、食物繊維が豊富で低糖・高タンパクの食品を選んでください。自宅で朝食をとる余裕がなければファーストフードでもよく、食物繊維を意識してハンバーガーにはミネストローネやサイドサラダを添え、立ち食いそばにはワカメ、とろろ、大根おろしなどをトッピングしてください。そばに卵や天ぷらを加えると総カロリーは上がりますが、タンパクや脂質が増えるので食後血糖は上がりにくくなり、セカンドミール効果も期待できます。もちろん、タンパクと脂質を無限に増やしてもいいことにはならず限度があります。そのさじ加減については、まずは自分なりにトライし、1か月毎に腹囲や体重の変化で判断するといった個々の検証が必要でしょう。

 

糖質制限ダイエットの考え方

低インスリンダイエットが「糖質の質」に着目するのに対し、糖質制限ダイエットは「糖質の量」を問題にします。両者には血糖値の急激な上昇とインスリン分泌を抑えるという共通点があるものの、炭水化物の摂取量が違います。

 

日本人は糖質過多?

厚労省は炭水化物の必要量について総エネルギー摂取量の5065%を目安としています。これはタンパク質と脂質の必要量から逆算して得られた数字で、日本人の平均的な炭水化物摂取比率に合致していることから用いられるようになりました。たとえば、60歳、男性、事務職の1日のエネルギー必要量2100kcalの場合、糖質の目安は約1200kcal1g4kcalとして糖質300gの熱量になります。ご飯に換算すると156膳、1食当たり約2膳ですが、これが多過ぎるかどうかは個人の活動量や筋肉量に大きく影響されるため一概には言えません。活動量の多い若い世代や肉体労働の多い職種なら問題ありませんが、中年期以降でデスクワークがメインの人にとって日本人の平均摂取量である1300gの糖質は要注意で、食習慣によっては食後高血糖を繰り返し、体脂肪が蓄積して肥満やメタボに移行する可能性が大きいと思います。

 

マイルドな糖質制限が糖尿病を救う

アメリカの糖尿病学会は1130g以下の糖質制限を採用していますが、日本の糖尿病学会は糖質制限に対して慎重な姿勢を崩していません。糖質のみを制限することの長期安全性が担保されてないからです。したがって日本における糖尿病治療の基本は依然、カロリー制限と運動療法です。これに対し、北里研究所病院糖尿病センターの山田悟氏は、1日の糖質量を130g以下、1食40g以下に制限すれば総カロリーの制限をしなくても血糖や中性脂肪の改善が得られることを明らかにしました。つまり、1食の糖質を40g160kcal)以下に抑えれば、タンパクや脂質を好きなだけ食べても糖尿病がよくなると言うのです。もし、この方法で食後の血糖上昇がなだらかになるのであれば、糖尿病のみならず肥満やメタボの脂肪燃焼にも有効で、何よりダイエットのストレスが少ないことが利点です。ただし、脂質摂取が増えるためその種類(動物脂肪を取り過ぎずオメガ3系と9系を意識)には注意を払い、タンパク摂取が増えるため腎機能障害がある人に配慮する必要があります。1日の糖質量を50g以下にしてケトン体産生を促すケトジェニックダイエットを推奨する研究者もいますが、長期安全性の問題もあり、そもそも炭水化物が極端に少なくタンパクと脂質の量が極端に多い食事は日常生活においてやや非現実的です。

 

イメージとしては、夕食の主食を抜くのが初歩的な糖質制限、3食の主食を半分に減らすのがマイルドな糖質制限、3食の主食をすべてカットするのがケトジェニックです。しかし、自分なりに低GI食や糖質制限を試しても減量できない場合は、やはり総カロリーを見直すことが必要でしょう。もちろん運動療法を並行して行う方が効果的です。

 

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コメント

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1 ■無題

お久し振りです(*^^*)

今日の記事には私が疑問に思っていた事、知りたかった事が全部入っていました。

私は身体的に歩いたり運動する事が出来ないので、もっと食事を見直してみたいと思います。

ありがとうございました★

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