砂場

本の感想と日記。些細なことを忘れないように記す。


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明けましておめでとうございます。今年も気ままにのんびり更新していきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いします。

2010年は3歳になる娘と遊んでばかりいたので毎年目標にしている100冊には届かず76冊。読みたい本の半分も読めなかった。しかも読んだ本もブログで紹介できたのはほんの一部。好きな本はしっかり紹介しようと温存していたら、思い入れが強過ぎて書いたものが納得のいく完成度にたどり着けず、結局はお蔵入りという本末転倒っぷり。

ということで書店員失格の2010年お気に入りベスト7(順不同)は二の舞にならないよう長文紹介はぜず簡潔な一行コメントでお送りします。

船に乗れ!〈1〉合奏と協奏
藤谷 治
ジャイブ
売り上げランキング: 6494
音楽が生み出す感動と人間が生きる残酷な現実が奏でる青春協奏曲


猫を抱いて象と泳ぐ
猫を抱いて象と泳ぐ
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小川 洋子
文藝春秋
売り上げランキング: 7858
過剰であり欠落をして、不完全に生きている人間たち。だからこそ彼らはこんなにも美しく愛おしい。


クォンタム・ファミリーズ
東 浩紀
新潮社
売り上げランキング: 9536
過去、現在、未来。錯綜する平行世界の中で、本当の自分の人生を捜し求める家族の苦悩。


あなたの人生の物語 (ハヤカワ文庫SF)
テッド・チャン
早川書房
売り上げランキング: 34625
表題作は僕にとって忘れられない物語になった。娘に絵本を読み聞かせるたびに思いだす。


わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)
カズオ・イシグロ
早川書房
売り上げランキング: 2166
特別な人間は特別であるがゆえに特別でななく、僕たちと同じ人間であるということ。


レンブラントの帽子
レンブラントの帽子
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夏葉社
売り上げランキング: 116653
誰もが冒頭で立っていた場所とは、まったく違う思いもよらない場所で物語の結末を迎える。


背中の記憶
背中の記憶
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長島 有里枝
講談社
売り上げランキング: 248044
写真家の記憶は風景と共に心の内側をも緻密に捉えていた。それは色褪せるほど鮮やかに蘇る。



【2010年に読んだ本】
■小説

『猫を抱いて象と泳ぐ』小川洋子
『身の上話』佐藤正午
『粘膜人間』飴村行
『あなたの人生の物語』テッド・チャン
『横道世之介』吉田修一
『新参者』東野圭吾
『神様のカルテ』夏川草介
『船に乗れ』藤谷治
『1Q84 BOOK1・2』村上春樹
『植物図鑑』有川浩
『天地明察』沖方汀
『数えずの井戸』京極夏彦
『叫びと祈り』梓崎優
『猫の客』平出隆
『芽むしり仔撃ち』大江健三郎
『叫び声』大江健三郎
『クォンタム・ファミリーズ』東浩紀
『予告された殺人の記録』G・ガルシア=マルケス
『わたしを離さないで』カズオ・イシグロ
『授乳』村田沙耶香
『素粒子』ミシェル・ウエルベック
『ニューヨーク・スケッチブック』ピート・ハミル
『スコーレNO.4』宮下奈都
『なまくら』古橋通夫
『獣の樹』舞城王太郎
『グラン・ヴァカンス 廃屋の天使』飛浩隆
『ラギット・ガール 廃屋の天使Ⅱ』飛浩隆
『プリンセス・トヨトミ』万城目学
『俺俺』星野智幸
『夜と灯り』クレメンス・マイヤー
『そんな日の雨傘に』ヴィルヘルム・ゲナツィーノ
『レンブラントの帽子』バーナード・マラマッド
『原稿零枚日記』小川洋子
『切れた鎖』田中慎弥
『パロール・ジュレと紙屑の都』吉田篤弘
『喋る馬』バーナード・マラマッド
『イキルキス』舞城王太郎
『わたしたちはまだ、その場所を知らない』小池昌代
『悪と仮面のルール』中村文則

■小説以外

『ことばの饗宴』岩波文庫
『ことばの花束』岩波文庫
『詩めくり』谷川俊太郎
『詩の力』吉本隆明
『セカイ系とは何か』前島賢
『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら』岩崎夏海
『35歳を救え』NHK「あすの日本」プロジェクト&三菱総合研究所
『水木さんの迷言366日』水木しげる
『絶妙な「クレーム対応」の技術』雨宮利春
『クレーム対応の基本が面白いほど身につく本』舟橋孝之
『どんなクレームもぜったい解決できる本』津田卓也
『新編 普通をだれも教えてくれない』鷲田清一
『人間の建設』小林秀雄・岡潔
『電子書籍の衝撃』佐々木俊尚
『株式会社家族』山田かおり
『ひとり暮らし』谷川俊太郎
『背中の記憶』長島有里枝
『詭弁論理学』野崎昭弘
『お厚いのがお好き?』
『インドで考えたこと』堀田善衛
『家族の痕跡』斉藤環
『神話の力』ジョーゼフ・キャンベル/ビル・モイヤーズ
『心にトゲ刺す200の花束』エリック・マーカス
『絶叫委員会』穂村弘
『斎藤孝の速読塾』斎藤孝
『複眼の映像』橋本忍
『絵はがきにされた少年』藤原章生
『希望難民ご一行様』古市憲寿
『グローバル恐慌』浜矩子
『デフレの正体』藻谷浩介
『だまされ上手が生き残る』石川幹人
『「今泉棚」とリブロの時代』今泉正光
『伊丹万作エッセイ集』伊丹万作
『穂村弘ワンダーランド』高柳蕗子
『切りとれ、あの祈る手を』佐々木中
『ダメ情報の見分けかた』鈴木謙介・飯田泰之・荻上チキ
『これからの「正義」の話をしよう』マイケル・サンデル
『文学拡張マニュアル』佐々木敦
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それぞれ長大な感想が書ける傑作揃いだけど、諸般の事情(主に娘と遊ぶ時間の確保)により短くまとめることする。

あなたの人生の物語 (ハヤカワ文庫SF)
テッド・チャン
早川書房
売り上げランキング: 70522

8つの短編が収録されてる。数学が専門外のため理解出来ない短編もあったが、強烈なインパクトを残す大傑作ばかり。「バビロンの塔」「理解」「地獄とは神の不在なり」もかなり好きだけど、娘を持つ身としては表題作の「あなたの人生の物語」がたまらない。絵本を読み聞かせするとき、ときどき思い出して泣きそうになって困る。


素粒子 (ちくま文庫)
素粒子 (ちくま文庫)
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ミシェル ウエルベック
筑摩書房
売り上げランキング: 47188

異父兄弟の人生を描く。気が弱く内向的で歪んだ性癖を持つ文学青年崩れの弟と、冷静で論理的で科学者として成功をおさめる兄。性格も社会的地位もまったく違う二人だが、ともに孤独であり人をうまく愛することができない人間として描かれる。フリーセックス団体に入れ込む弟の屈折した性描写はどうしたものかと思わされるが、ストイックというより不感症に近い兄との落差がそれぞれの苦しみを際ださせる。二人の過酷で残酷な生い立ちから、ラスト近くの胸が痛む衝撃の展開まで、どのページも密度が濃すぎて、1ページあたりの文章が通常の本の2倍あるかのような重量感。


ニューヨーク・スケッチブック (河出文庫)
ピート ハミル
河出書房新社
売り上げランキング: 380681

都会を生きる人間の孤独と哀愁が漂う、短い物語が34収録されている。人生からこぼれ落ちてしまった大切なものたち。人が生きるということは、その記憶と共に歩んでゆくということが、痛烈に思い知らされる。街を歩いている時、あの時の誰かと再会してしまう時がある。バーの片隅で永遠に出会うとのない人の記憶を抱きしめている男がいる。飾らないシンプルな言葉が、とても多くのことを語ってくれる。


そんな日の雨傘に (エクス・リブリス)
ヴィルヘルム ゲナツィーノ
白水社
売り上げランキング: 213137

自分の人生を肯定できない。そんな46歳にして彼女に捨てられ、職を失ってしまう男の物語。と説明すると暗く沈み込んでしまう憂鬱な内容を想像してしまうけど、この主人公はネガティブな割にはなんだか楽しそうにも見える。街を歩くと昔の恋人にやたら遭遇するし、その饒舌な言動から教養の高さもうかがえる。落ち込んだあまり、街路樹の落ち葉を足でガサガサと蹴って集める快感にひたり、その落ち葉を自分の部屋に敷き詰めて喜んでいる男だ。その人生の面妖さを心配するというよりは、ちょっとした奇人の人生を読んでいるような、モノクロ映画の悲喜劇を見ているような気分で読んだ。深いようで浅く、浅いようで深い面妖な人生(何かあるたびに「面妖な人生」について思い悩むのが主人公のくせ)。表紙の写真にある、浅い水たまりで濡れないためにパイプ椅子を並べてその上を不安定な体勢で傘を差して歩く男性のイメージは、まさにこの主人公にぴったりだ。


レンブラントの帽子
レンブラントの帽子
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夏葉社
売り上げランキング: 6607

喋る馬(柴田元幸翻訳叢書—バーナード・マラマッド)
バーナード・マラマッド 訳:柴田元幸
スイッチパブリッシング
売り上げランキング: 69049

今年の僕の読書の一番の成果はバーナード・マラマッドという作家に出会えたことだ。『レンブラントの帽子』があまりにも面白かったので引き続き柴田元幸訳の『喋る馬』も読んだ。完成度の高い短編の数々。登場人物たちは、被害者と加害者、強者と弱者という単純な二項対立からはじき出され、彼らは冒頭で立っていた場所とは、まったく違う所で物語の結末を迎えることになる。人間はふいに芽生えた感情に突き動かされ、深く考えた理性によって行動を選ぶ。だがここでは、感情は理性を狂わせ、理性が感情を駆り立てる。さらに、現実の起きている状況が解釈の仕方によってまったく別の姿になっていき、感情と理性もまた大きく揺さぶられてゆく。人と人との関係をこんなにも鮮烈に描いた短編を僕は今まで読んだことがない。
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わたしたちはまだ、その場所を知らない
小池 昌代
河出書房新社
売り上げランキング: 364817


詩を愛する女子中学生・ミナコと、彼女に喧嘩別れした親友の面影を重ねる女性教師・坂口の微妙な関係を軸に、中学生活の情景を詩的に描いた小説。客観的に見れば小さな出来事かも知れないが、その本人たちにとっては、とても大切で忘れられない事がいくつも起きて、そんな日常が丁寧に描かれていく。詩人である著者の鮮やかな幕引きが、物語を脳裏に焼きつける。

僕は熱心な詩の読み手ではないので、ここで語られる詩の魅力、詩と共に生きる人達の感覚を実感として受け止めることは難しい。世間的にも詩を読む人&書く人は極々少ないだろう。奇跡的にこの物語の中では詩を愛する人が何人も登場するけれど、やはり集団の中ではミナコも坂口もどこか周りから浮いた存在として描かれている。それに加えて、もう子供ではないのに、まだ大人に成り切れていないという中学生の宙ぶらりの居心地の悪さが絡みあう。そして、そんな自分の居場所が見つけきれない中学生たちよりも、さらに不安定で不器用な人間として描かれる坂口の葛藤が物語を引っ張っていく。

坂口が昔は詩を書いていたという話を聞いてミナコは思う。

驚いた声を出したものの、ミナコはそれほど驚いていなかった。「むかしは詩を書いていた」という大人をたくさん知っているような気がしたからだ。だがそれならば、具体的に誰が、そうだったか。考えてみてもわからない。ただ、大人とは、むかし、詩を書いていた、そういう人を言うのだと思う。P63


僕はこんな風に詩を基準にしたことはないけれど、「~していた」という過去形で語られるのが大人であり、「~している」という現在形で語られるのが子供や若者だという感覚は僕も持っている。そして、詩を読むけど書かないミナコは「まだ~していない」という隙間に存在している。この小説の中では「~していた」「~している」「まだ~していない」という登場人物たちの視線が重なりあいすれ違っていく。

自分と相手の中に同じ存在を感じること。自分は持っていないものを相手の中にみつけること。自分が昔持っていたものを相手のなかにみつけること。求めるものは得られず、与えたいものは渡せない。それなのに寂しさと同時に、この小説からはぬくもりが伝わってくる。それは彼女たちが詩に対する愛情と敬意を共有していること。そして、学校の裏庭に葡萄棚の存在が大きく関わっているのだろう。いいタイトルだなと思う。「わたしたちはまだ、その場所を知らない」。
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パロール・ジュレと紙屑の都
吉田 篤弘
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今まで吉田篤弘の小説を読んできた人は戸惑うかもしれない。どことなく頼りなげな主人公の日常を中心に、味わい深い脇役たちと、魅力的な小道具をちりばめて、独特の世界を創り上げてきた著者だが、今回は毛色の違うスパイ小説だ。国家間が対立し、テロの傷痕が残る世界。とても不安に満ちた物語。けれど、吉田篤弘らしい、美しい物語でもある。

主人公は諜報員・フィッシュ。彼は書物の世界に潜入する特殊能力を持っている。今回の任務はキノフという街だけで発生する「人の言葉が凍って結晶化する」現象の謎を探ることだ。もう一人の重要人物は、彼を執拗に追い詰める刑事・ロイド。さらには凍った言葉を読み解いていく四人の解凍士。

それにしても、この物語は「読書」という行為のについてとても考えさせられる。主人公のフィッシュは本のページを泳ぎ渡ることができる。つまり、紙魚だ。さらに書物と100%シンクロすれば、その物語の登場人物になりすますこともできる。しかしながら、それほどの能力を持ちながらも、現実の謎にはなかなか辿り着けない。そしてパロール・ジュレ(凍った言葉)は、まさに書物を思い起こさせる。解凍士が、とあるパロール・ジュレを解凍すると、こんな言葉が女性の声で発せられた。「これが最後のコーンビーフ」。四人の解凍士はすぐさま解読をはじめる。

「妙に落ち着いた声だ」「最後だというのに」「これが、というのがおそらく鍵だ」「これが、とあえて言っているんだから」「これまでがあったということになる」「いくつかのコーンビーフがあって」「いくつも、ではなく?」「そう。このニュアンスは、いくつか、だ」
P91より引用

という風に解読は延々と続いていく。身体的に書物に入り込むフィッシュと、言葉を使って言葉の意味を探る解凍士たち。僕はどちらにも憧れる。物語を読んでいるときは、その登場人物たちと一体化したいし、読み終えたあとは、その感覚を明確に言葉にしたいなと思う。残念ながら、どちらもなかなか上手くいかないけれど。

キノフの街に住む人達のまわりをぐるぐる回っていた物語は、主人公が新たな書物に潜入する頃から、一気に加速していく。油断していた僕は物語から振り落とされそうになり、必死にしがみつくこととなる。世界の深い部分に一気に連れていかれて、僕がこれまで見ていたのは、この世界の表面だけだったのだなと錯綜する糸にからまれ混乱した頭で思う。このあたりから刑事・ロイドにスポットライトが当たりだす。フィッシュや解凍士たちが解読する側の立場だとすれば、ロイドはまさに解読される側として物語の中を真っ直ぐ歩んでいる登場人物だ。

人と言葉が重なりあい、言葉と言葉が人を繋ぎ、その繋がりが世界を描く。「読む」「読まれる」ことで、全てが繋がっていく。凍った言葉は、言葉が持つ可能性と限界をあらわしてくれる。それは、悲しくもあり、美しくもある。

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本当は一冊づつ気合の入った紹介文を書きたいけど、ブログを更新する時間がなかなか作れないので、とりあえず読書メモとして誤魔化しておくことにする。なんだか暗い小説がばかりが並んでしまったが、そういうのが好きなのでしかたない。

叫び声 (講談社文芸文庫)
大江 健三郎
講談社
売り上げランキング: 181723


屈折した3人の青年が過剰な自意識に絡め取られ苦悩・挫折する物語。主人公は日本人で、あとの二人は在日朝鮮人と日本人と黒人のハーフ。彼ら3人は同性愛者という噂のあるアメリカ兵の家に下宿する。空虚な理想と、残酷な現実に内なる悲鳴が全編を満たしていている。ラストは僕も心のなかで悲鳴を上げた。とにかく密度が濃い。

グラン・ヴァカンス―廃園の天使〈1〉 (ハヤカワ文庫JA)
飛 浩隆
早川書房
売り上げランキング: 45327


娯楽のためにつくられた仮想世界に暮らすAIたち。夏の行楽地として設定された小さな港町。かつてはゲスト(人間)が数多く訪れたが、ある日突然誰もこなくなり1000年の歳月が流れる。誰も年を取ることなく、延々に続くヴァカンスでの日々が、ある日突然舞い降りてきた「蜘蛛」たちによって一日にして破壊され壊滅するというSF小説。スピード感のある展開、迫真の攻防、人間よりも人間的なAIたちの苦悩。シリーズ一作目ということでいくつかの謎を残しながらも、人工の世界であるという設定を小説として最大級に利用した重厚な読後感が味わえる。

俺俺
俺俺
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星野 智幸
新潮社
売り上げランキング: 20200


拾った携帯にかかってきた電話に、なりゆきでオレオレ詐欺をしたことが発端になり、自分が「俺」になってしまう。というか自分と「俺」が同じことに気づく。やがて何人もの「俺」と出会い、世界は混沌としてくる。自分とは何かというアイデンティティの問題を、自分と他者との差異を無効化していくことで問い詰めていくという荒業。ここではお互いが同じ自分でありながらも、それぞれの関係性という立場に釘付けにされ、共感と排除で埋め尽くされていく。どこまでも不快な空気が蔓延するなか、その原因が「俺」であるという残酷さに、打ちのめされクラクラする。

原稿零枚日記
原稿零枚日記
posted with amazlet at 10.10.24
小川 洋子
集英社
売り上げランキング: 11452


病的な妄想日記のような不思議な世界。全体としてのストーリーは無く、近所の運動会の光景、地方の芸術祭に観光といった日常がグロテスクに歪んだ模様で塗り潰されていく。だが、このネガティブな方向へ全力疾走するような潔さは逆に清々しくもあって、僕は小川洋子の熱心な読者ではないけれど、この小説は僕の心を鷲掴みにした。ぜひ続編も!

切れた鎖 (新潮文庫)
切れた鎖 (新潮文庫)
posted with amazlet at 10.10.24
田中 慎弥
新潮社
売り上げランキング: 176173


三島賞&川端賞のW受賞作。両親の死に対する罪悪感に悩まされ、現実が崩れ落ち世界が異様に変貌していく「不意の償い」、カブトムシの意識を人間的に描写して、ひとり取り残され蛹のまま成長できない嘆きを綴った「蛹」、過去の因縁により家の裏の教会を激しく憎悪しながら孫娘と暮らす老女を描いた「切れた鎖」の三篇を収録。屈折した親子関係に苦しみ、社会から疎外され孤独に陥る主人公たち。その激しい内面の葛藤が克明に描かれる。鎖という言葉が象徴的だ。主人公たちは、誰もが家族という存在によって深く傷を負い、その傷によって心を縛られ現実世界で身動きできなくなっていく。その悲痛な叫び声があらゆるページから聞こえてくるかのようだ。
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