砂場

本の感想と日記。些細なことを忘れないように記す。


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本屋大賞ノミネート作の本読みに時間を取られていたので、ものすごい時差が発生しております。。

草祭
恒川光太郎
新潮社
発売日:2008-11

異界と隣接している美奥という土地を舞台にした連作短編集。獣へと変化していく友人。町の守り神となる女学生。空想の町のなかへと誘われる女性。など。美奥という固有名詞を持たせることによって、異界という漠然としたものの輪郭が際立ち、存在感と親近感が持てる存在になっている。本を読んでいる間は、本当に異界に迷い込んでいるかのように、自分の周りの空気が変わっているような気がした。

ミュージック・ブレス・ユー!!
津村記久子
角川グループパブリッシング
発売日:2008-07-01


野間文芸新人賞受賞ということで読んだ。元気が取り得で洋楽オタクの女子高生が、恋に進路に悩みながら我が道をいく日常を描いている。学園物が苦手な僕でも珍しく楽しく読めた。歯の矯正でやたら盛り上がる高校生たちの姿がほほえましかった(好々爺視点)。芥川賞受賞おめでとうございます。

小さな男 * 静かな声
吉田篤弘
マガジンハウス
発売日:2008-11-20

主人公の二人は日常に様々なこだわりを持つ。日常の動作も道具も思考も全て「言葉」でできているので、日常にこだわるということは「言葉」にこだわるということになる。言葉の意味を考えることが日常と自分自身について考えることに繋がっていく。「ついに」と「遂に」の違いのように。言葉の持つ様々なイメージが、二人の日常に鮮やかな彩りを与え、言葉を選ぶことで日常の景色が変わっていく。


残される者たちへ
小路幸也
小学館
発売日:2008-12-18

団地ミステリー。大きく間違ってはいないのだが、何かが足りない・・・。


プルーストとイカ―読書は脳をどのように変えるのか?
メアリアン・ウルフ
インターシフト
発売日:2008-10-02


読書によって脳がどう変化するかの解説。もともと脳に読字の機能はないため、さまざまな部分が繋がることによって、読字の能力を得ることができる。読字の習得度によっても脳の活動レベルも高くなることを証明するなど、読書の価値を高める一冊。


著者が講師として行っていた批評講座を文字にしたもの。僕はいまいち批評というものが何か分かっていなかったので興味深く読んだ。批評の書き方のコツなども少しあって役に立ちそう。
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明けましておめでとうございます。といいつつ、去年読んだ本を紹介。トップの画像を年賀状用に撮影した我が子と牛乳のものに変えてみました。今年も更新は少なくなると思いますが、よろしくお願いします。


ライト
M・ジョン・ハリスン
国書刊行会
発売日:2008-09


3つの物語が平行して描かれたSF小説。少し病的な未来世界の全貌はなかなか見えてこず、登場人物たちの行動も理解しづらい。序盤の困惑があるからこそ、中盤以降の全てが繋がりだす展開が気持ちよく、ラストへと収束する加速感が眩しい。全てを語りつくさないことによって、ただの箱庭ではない、新たな世界を創り上げている。

庵堂三兄弟の聖職
真藤順丈
角川グループパブリッシング
発売日:2008-10-24


日本ホラー小説大賞受賞作は全部読んできたけれど、これは過去最高にホラー小説ではない。ホラー的要素を散りばめた青春・家族小説だ。エンタメ小説としての完成度はあるので楽しめるけれど、ホラー小説ファンとしてこの受賞は複雑な心境。

ミスター・ミー (海外文学セレクション)
アンドルー・クルミー
東京創元社
発売日:2008-10


こちらも3つの物語が描かれる。謎の百科事典を巡って繰り広げられるドタバタ劇と量子論などの難解な文章が入り乱れ、その落差がたまらない。まっとうな小説に飽きた人に超お薦め。

幻影の書
ポール・オースター
新潮社
発売日:2008-10-31


幻影となって生きた喜劇映画の監督の生涯と、彼の作品について本を書く妻子を失った男の物語。忘れられた過去に照らされる影。消えてしまった未来という幻。幻影は今という瞬間ですら飲み込んでいく。それは悲劇には違いない。けれど、幻影は完全な無ではない。幻影という存在があるから、人は生きていくことができる。人生とは幻影である。幻影のなかで人は生きている。

星のしるし
柴崎友香
文藝春秋
発売日:2008-10


占いやスピリチュアルが生活に浸透している。そういう神秘的なものが実在するかはおいといて、カウンセリング的に効果があるのは事実だ。それを持ち上げるでもなく、貶めるでもなく、リアルに等身大の女性の日常として描く。そのバランスが絶妙だ。そして、こういうラストシーン僕は好きです。

小銭をかぞえる
西村賢太
文藝春秋
発売日:2008-09


ダメ人間を描いた私小説。恋人には暴力を振るう。自分の体面のためだけに友人・知人に金の無心をする。短絡的で直情的で小心者で、救いようのない人間のクズとして描かれている。読んでいて本気で虫唾が走る。読んでいて楽しくはない小説だけど、だからといってつまらないわけでもなく、人間関係の空気感を微妙に変化させながら、会話の流れや感情の起伏など、全ての要素がダメ人間をよりダメ人間にするためにだけ費やされいく。その筆力には感心する。

ギンイロノウタ
村田沙耶香
新潮社
発売日:2008-10


2つの物語が収録されているが、どちらも現実世界に馴染めず、独特の内面世界に生きる少女を描いている。少女が母親を理想もしくは反面教師として大人の女性へと成長するのだとすれば、この少女は母親との関係が破綻していることによって、少女としての自分のあるべき姿が見つからず、その欠落を埋めるために異物を次々と取り入れて、不安定な精神状態のまま独自の価値観を築き上げながら年齢を重ねていく。現代的な無機質さと、少女趣味的な耽美さが入り混じった世界は見事で、これは次の三島賞を狙えるレベルがあると思う。でも、読んでいると、ゆがんだ鏡を見ているような、とても落ち着かない気分になるので、心の調子が悪いときは避けたほうがいいかも知れない。

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年内の書評は年内に書き上げたいと、思うけれど。

クレストブックから堀江敏幸が選んだベスト短編集。繊細な描写によって描かれる物語たち。世界中を舞台に、様々な人の人生が切り取られる。何かを掴み取ることと引き換えに、何かを失うこと。静かな夜に読みたい、心に沁みる物語たち。なぜこの本がベストセラーにならないのだろう。


ctの深い川の町
岡崎祥久
講談社
発売日:2008-08

バカっぽく適当に思える言葉を投げ散らかしても、それが誰かの言葉に届けば、そこに幸福が生まれる。何もせず、何も答えなくとも、誰かの救いになることがある。ぼんやりと悩みながらタクシーを運転するこの主人公は、物語の中では何もしていないようで、何人もの人の救いとなっていく。何か夢を追うこともなく、一生懸命になるでもなく、けれどだらけているわけでもなく、人並みに不満などはあるけれど、真面目に淡々と働いて生活をする。そうした地味な生活のなかで、地元ならではの出会いがあり、そこから人と人が繋がり何かが生まれる。それらが「小さな幸せ」なんかに回収されず、主人公にとってはいつもどおりの「ぼんやりと悩んでいる日常」として過ぎていくあたりが味わい深い。


地図男 (ダ・ヴィンチブックス)
真藤順丈
メディアファクトリー
発売日:2008-09-03

東京の地図を持って歩き続ける男。その地名のところには、誰かに語りかけるかのような文体で物語が描かれている。3歳の天才音楽家。山賊となった男、東京の区を代表して夜な夜なバトルを繰り広げるアングラ世界、世界を折り合いのつかないムサシとアキルの恋物語。この物語たちは、誰に向かって語られているのか。古川日出男のような設定と世界感と文体で進みつつも、エンタメ小説として見事に着地。


モダンタイムス (Morning NOVELS)
伊坂幸太郎
講談社
発売日:2008-10-15

浮気を疑った嫁に送り込まれた拷問男。暗号が隠された謎のプログラム。過去にあった小学校襲撃事件。様々な要素が入り乱れ、戦うべき相手もわからないまま、奮闘する主人公とその仲間。やっぱり伊坂幸太郎は面白い。『ゴールデンスランバー』と平行して書かれたということで、それぞれ補完しあっているところも読みどころ(前作が「逃げる」のに対して今回は「戦う」とか)。


ことば汁
小池昌代
中央公論新社
発売日:2008-09


幻想的な6つの短編。共通しているのは動物化。人間の心の奥底に眠る欲望が解放され、人がその姿を変えていく。悪夢のような世界なのに、動物化したした人間たちは自分の本来の居場所を見つけたかのように、生き生きと心地よさそうに思える。人間が人間の皮を破る恐ろしさと、その変わり身の鮮やかさが秀逸。



閉塞感の漂う生きにくい現代の若者を取り巻く状況について、もっとも若者に寄り添って考えている社会学者は鈴木謙介だと思う。安易な既得権批判を否定して「ほんとうの幸せ」という虚構の権利を主張するのではなく、「ほんとうに幸せになる」ための道を探る。名詞から動詞へ。


一度、マンガの評論というものを読んでみようかなと思って購入。文学や音楽・映画評論と同じようにマンガも評論されるだけの作品であるという当たり前のことを、今更ながら確認。エロ漫画にヤオイから、変身ヒーローなど幅広い内容。


偶然と必然をどう捉えるかによって、人生の意味は大きく変わる。真理は必然にだけ宿ると考える西洋と、偶然のなかに無常という価値を見出す日本。日欧文化論として明快であり、また偶然が思想史のなかでどう扱われてきたのかということも分かりやすく書かれてあって興味深い。偶然か必然かという問いが実はとても主観的なものであることを解き明かし、偶然と思ったことが必然に思えてくる心の変化こそ大切だと著者は説く。
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今頃になって昔の書評をまとめる作業。

ノック人とツルの森 (Modern&Classic)
アクセル・ブラウンズ
河出書房新社
発売日:2008-08-07

ネグレクトの母親と共に、ガラクタに埋もれた屋敷で暮らす少女。家族以外の人間は「ノック人」だから信用するなという母親の言葉に従って孤独に生きている。少女ならではの内に閉じた世界観によって、まるでおとぎ話のような独特な雰囲気がある。重いテーマだが、社会問題を扱った小説ではなく、現代を生きるひとりの少女の成長物語。

かもめの日
黒川創
新潮社
発売日:2008-03

長編なのに短編小説のような切れ味がある群像劇。それぞれの1日の出来事が鮮やかに切り取られる。人と人とがゆるやかに繋がって、視点が移っていく。物語は終焉を迎えることなく、終焉と思ったものは始まりとなる。その人の全てを理解することなどできないという前提で、けれどその人のことを思うことのかけがえのなさが胸に沁みる。

曲芸師のハンドブック
クレイグ・クレヴェンジャー
ヴィレッジブックス
発売日:2008-04

不定期に訪れる強烈な偏頭痛。その痛みをやわらげるため、過剰に薬物を摂取して病院に担ぎ込まれる。そこで受ける精神鑑定で、常習犯であることを隠し、正常と診断されるために主人公は「曲芸」を使う。医者のカウンセリング技術を完全に把握していて、あらゆる会話を計算し尽くして答える。この精神鑑定の息詰まる駆け引きと、文書偽造という「曲芸」を使って生き延びてきた主人公の波乱の人生が平行して描かれる。文書を偽造し、自分を偽造する主人公の「曲芸」は鮮やかであるがゆえに、その人生は痛ましく悲しい。

優雅なハリネズミ
ミュリエル・バリエリ
早川書房
発売日:2008-10-09

日本大好きのフランス人が書いてベストセラーになったという哲学小説。いかにフランスで日本文化が好まれているか、どのように日本文化が解釈されているかなど、興味深い。日本人が知らない日本に驚きの内容。コージー系が好きな人向け。

告白
湊かなえ
双葉社
発売日:2008-08-05

話題の本。『そして粛清の扉を』みたいに、担任教師が生徒に復讐するだけの物語かと思いきや、章ごとに主人公が生徒やその母などに毎回変わり、前章までに描かれていた物語が視点を変えればまったく違う意味を持つ物語へと書き換えられていく。それは読者の持つ、善悪に明確に分けられないボーダーライン上の道徳観を揺さぶってくる。「どこまでが許されるのか」。それは自分自身がその相手にどこまで共感できるかという、きわめて主観的な判断に依存していることを身を持って思い知らされる。次回の本屋大賞ベスト3入りは手堅い傑作。

細野晴臣分福茶釜
細野晴臣
平凡社
発売日:2008-06-03

細野晴臣が鈴木惣一朗を聞き手に、人生や音楽について語るという内容。重鎮とは思えない軽妙な語り口。様々な苦労を重ねた上での飄々として人生観。とにかく会話が楽しそうなのが読んでいて気持ちいい。飲尿療法と快便の話の衝撃は後から効いてくる。

神の独白ではじまる。その声が聞こえる少女の視点になり、その姉、母、父と視点が入れ替わりながら物語が進んでゆく。日常はくだらなさに溢れている。真剣な問題とは馬鹿馬鹿しい問題と表裏一体であり、そのくだらなさの中でグダグダになりながらも、生きることに懸命な人の姿が描かれていく。ここでは、真理や真実の権化である神すらも、そのくだらなさに飲み込まれて、グダグダになる。真剣な問題がくだらなさに飲み込まれるというのは前田司郎の小説に一貫して描かれるテーマだ。そのくだらなさとグダグダの中にこそ生きている手触りと実感を見出して行く。


ブログからの書籍化。ほとんど読んでいるものだったが、それでもやっぱり面白い。
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バタバタしていたので、今頃になって夏真っ盛りの本たち。



ハローサマー、グッドバイ (河出文庫 コ 4-1)
M・コーニィ
河出書房新社
発売日:2008-07-04


サンリオ文庫からの新訳復刊。ノスタルジックなアメリカの雰囲気を持つボーイミーツガールSF小説。読んでいて気恥ずかしいぐらいの青春恋愛だが、戦争の陰が忍び寄る後半からの盛り上がる。父親に対する息子の反発や、役人と市民の対立、恋愛における悲喜こもごもなど、普遍的なテーマを丁寧に描き込みながら、それらをSF小説として見事にまとめあげるラストは脱帽。



こちらもSF復刊作品。タイムマシンで過去に投げ出された男の奇妙な人生を描いている。名作と呼ばれるだけあって、現代と過去の対比によって、過去の世界の魅力を引き出す面白さや、現代の知識を武器に過去の世界で奮闘するさまなど、タイムマシン小説の王道の魅力が満載。もちろんタイムマシン小説の最大の読みどころは、過去を変えることによって受ける現代の影響だが、時間軸をずらした章立てによって、その魅力が最大限に生かされている。



ひゃくはち
早見和真
集英社
発売日:2008-06-26

補欠だがチームのムードメーカー的な高校球児が、大人になってから当時を回想するという構成になっている。ひたすら野球に明け暮れ、でも、休日は合コン三昧という野球部員たち。適度な馬鹿っぽさがリアルな高校球児を描いて共感の嵐で映画化ということだが、超文科系引き込もり学生時代を送った僕としては馴染めない。それどころか、クラスの体育会系男子と仲良く慣れなかった当時を思い出して、悲しくなるぐらいだ。そしてやっぱり、この世界観・人生観にはついていけないなと、あらためて思い知る。

ギフト
日明恩
双葉社
発売日:2008-06-17



幽霊が見える少年はいつも怯えている。暗い過去を背負った男はいつも自分を蔑んでいる。社会から目を逸らして生きる二人は偶然出会い、そこで成仏できない幽霊を救ったことにより、少しづつ前を向いて生きる道を歩みだす。読みやすい文体で、ドラマ化などに向いていそうなハートフル・ヒューマンドラマ小説。




今月は復刊を読む月間にしていたので、こちらも復刊。戦争・戦後を描いた短編集だが、戦車とか戦艦はまったくでてこなくて、後方部隊の兵士などが主人公。絶望に押し潰され死への覚悟をしながらも、微かに湧き上がってくる生きることへの執着に自ら戸惑う。そんな、思考と感情に引き裂かれて言葉を失い剥き出しになった人間の姿が、端正で美しい文章で描かれていて惹きこまれる。


カラスの親指 by rule of CROW’s thumb


擬似家族的な共同生活と、ヤクザ組織相手に大規模な詐欺を企てるコン・ゲームという、ほのぼの+ミステリー小説。前作『ラットマン』は本格推理で評判がよかったが、こういう作品のほうが好きかも。今年度のこのミスにこの2作はランクインすべきかと思う。今後の作品も要チェックな実力派作家だ。



古本屋めぐりが楽しくなる―新・文學入門
岡崎武志・山本善行
工作舎
発売日:2008-06-24



売れっ子古本ライターとして大活躍の二人による、古本談義が面白くないわけがない。ほとんど知らない作家の話ばかりだが、紹介されるどの本も読みたくなる。古本好き、古本屋好きは当然のごとく必読書。この本を学校で無料配布したら、全国の古本屋の売り上げは倍増するのではないだろうか。



ゼロ年代の想像力
宇野常寛
早川書房
発売日:2008-07-24


大塚英治には違和感ありまくりで、東浩樹もなんだか賛同しづらいなと思っていた僕にとって、やっと共感できるオタク評論家が現れたという感じだ。もちろん全てにおいて完璧だとは思わないが、僕がオタク文化に嵌まりきれない違和感を説明してくれているような気がする。

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