読んで効く、日常のNLP 実践レポートと徹底考察 by 中浦ジュン

NLPマスタークラプティショナーのジュンです。
NLPを日常にどう活かすかについて、
                 語りつくします。


テーマ:
神楽坂の喫茶店で行われた連続公演「人生漫画」「山崎方代」だ。

人生漫画@cafe SKIPA
-----揚野浩 著(光風社書店)『プロレタリア哀愁劇場』   より

小さな喫茶店のテーブルと椅子を片づけた四畳半程度の空間が舞台で、観客は約二十人程度。本作の上演スタイルは「物語る演劇」。原作(小説)を戯曲として再構成することなく、原作の地の文も会話文もほとんどそのまま二人の俳優に割りあててある。ベテランの木野本啓氏は寺中、新人の高橋祐介氏は川路と清子の担当。俳優はこの二人だけなので、警官、矢板氏、老婆、社長という脇役は、二人のどちらかが張り子の仮面を被って演じるという趣向だ。トレーラーの運転席は高いところにあるので、二人はキャタツを二台ならべ、それぞれの天板に腰かけてその高さを表現している。

ところで、俳優の身体にとってセリフと地の文とでは距離感が異なるから、これらの両方を同時に語ることは難度の高い技であるはずなのだ。しかしかれらは絶妙なバランスでこれらの距離感を使いわけ、どん底生活を生き抜く登場人物の必死さと、一歩引いてかれらを眺めている作者の視線を、立体的に浮かび上がらせる。「やっぱり黒テントの俳優は上手いなあ」と舌を巻いた。原作に頻出する擬音語の処理も丁寧で、この芝居のアクセントになっていた。

山崎方代@茶廊トンボロ
-----田澤拓也 著(角川出版社)『無用の達人 山崎方代』などより

cafe SKIPAの姉妹店で、隣接する茶廊トンボロに作り付けのテーブル席があり、そこに宮小町、斎藤晴彦、滝本直子、平田三奈子の四氏がすわり、内沢雅彦氏(宮崎恵治氏とダブルキャストのようだ)はレジの前に立っている。観客の大部分はカウンター前の椅子にすわってテーブル席の方(カウンターとは逆方向)を向いている。残りの観客(俺を含む)は、カウンターの中のハイスツールにすわって観ている。

俺は原本『無用の達人 山崎方代』をちゃんと読んでいなくて人物の名前が頭に入っていないうえに、フリードリンクの白ワインを飲んでしまい、劇の構造を分析するどころではなかったのだが、まあとにかく、方代ゆかりの人物たちがひとりずつ、方代の人物像とエピソードを語って行く構成であったことは確かである。人物たちのうち二人はくま(方代の姉)と吉野秀雄(歌人)。あとは俺の頭の中でしっかりと分節化できていない人物なので、記憶しようがなかったのだ。失礼。

本作もやはり「物語る演劇」であるが、原本はノンフィクションであって会話文が少ないため、上の「人生漫画」のように俳優と登場人物を一対一で対応させることが難しい。それで五人の俳優が一センテンスずつ、ほぼ同じ分量のテキストを交代で語って行くスタイルであった。

そして俺の観た回には、なんと、『無用の達人』の著者=田澤先生が、方代ゆかりの女流歌人三人(注2)と一緒に、観客としていらしていた。

山崎方代の破天荒な生きかたは、自由なるものの意味について再考を迫る。「自由」はみっともなくて、ある意味えげつない。心のままに生きるということは、人目を気にしないし、多少の迷惑はかえりみないということでもある。言いかえれば、底なしの自由が欲しければ、紳士と思われたい欲を手放す必要があるということだ。しかし、俺たちは他者から評価を得ることに汲々とし、自分を信じとおすことを躊躇してしまう。いまさら何が惜しいのか、なぜ自分を信じないのかと自問してみるが、自我という病気は自分で思っていた以上に重症らしく、自由の手前で足踏みするだけなのだ。


この連続公演は、黒テントが神楽坂のイワト劇場を手放し、新宿山吹町(最寄駅は江戸川橋)に移転してから最初の作品であるそうだ。黒テントはその長い歴史の中で、はじめて常設劇場をもたない劇団になったようである(注1)。今回の公演は、規模からいうと番外公演よりも秘演会と言ったほうがふさわしい。たった二十人で濃密な演劇空間を独占する贅沢な時間であった。しかし黒テントには、やはり大きな劇場での公演を実現してほしい。俳優の宝庫というべき、実力派ぞろいのこの劇団には、日本の演劇界を牽引する使命があるはずだ。

(注1)木野本氏は「人生漫画」終演後の口上で、「俳優というものは空き地でも路上でも、そこに空間さえあれば演じることができる」と言っていた。
(注2)そのうちの1人は山形裕子さんであることが、彼女たちの会話からわかった。山形裕子さんは、『無用の達人』各章の冒頭で方代の回想を述べておられるので、俺のいいかげんな読み方でも記憶に残っているのだ。

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