第12話  住まいの健康はトータルな手法でしか実現できない

 

当たり前のことだが、人間の健康においても、これさえすれば健康になるというようなことはない。これを食べれば、この運動をすれば、この瞑想をすれば、といったことだが、どんなことであれ、そんな魔法のようなことはない。それはどなたもがご承知のことだと思う。

 

それでありながら、住宅には短絡的な考え方を持つ方もそれなりにはいるようだ。例えば、自然素材にすれば、昔ながらの木の家なら、通気工法にすれば、最新のプレハブ技術であれば、など思い込む要素は数々ありそうだ。

 

 人間の健康は、住む環境、食事、運動、家族関係、性格、職場環境、精神状態、心の在り方、ストレス、遺伝、など実に様々な要因が絡み合っている。

 

 住宅の健康も同様に「これさえ」はない。建つ環境、使われる様々な材料、工法、断熱方法、間取りの在り方、関わる全ての作り手、住まい方、メンテナンスなど、やはり相当な要素がある。

 

 また、人間であれ住宅であれ、健康は、瞬間的なものではなく継続的に長く、最期まで求められるものだ。ここにも続けていくという難しさが存在している。

 

 より具体的に住宅の健康とは何なのか、それを実現していく手立てなどを見ていこう。    

住宅は家族の住まう環境だ。その住宅という環境は、住まう家族が健康に快適に過ごせるものでなくてはならない。

 

家族の健康とは、身体の健康ばかりではなく家族関係が及ぼす心の健康もある。住宅には、この身体と心の健康増進に役立つことが求められている。

 

住いの温度や湿度、素材感、音、間取りや設備の在り方は、生活に大きく影響する。生活の在り方は、家族の身体の健康ばかりではなく心の状態への関りも甚大だ。

 

温度一つとらえても、暑すぎず寒すぎず、温度差も少なく、さりとてエアコンなどの風の影響もなく自然の感じで、など言われてみれば当たり前のことのようだが、実際には、実現は簡単ではなさそうだ。

 

湿度だって同様に難しい。適切な湿度を保つ、結露もない、エアコンの利用も最小で、などと考えると、やはり大変そうである。

 

建物内の音の問題もある。床を伝わる音や空間の反響音そしてエアコンなど設備の音、あるいは、床の足ざわり、壁の手触り、天井なども含め、その素材感の影響。

 

こうした物理的な影響に加え、家族関係という人間心理の要素はより大きいと思える。現在当たり前になってしまった個室を軸としたプラン、それは家族がある程度独立して暮らせる、言葉を換えれば家族がバラバラになりがちなプランでもある。その影響を別の眼で検証してみなければならないと思う。