七つの海をバタフライ -吉川晃司ブログ-

異彩を放ちまくりながらも逞しく泳ぎ続ける吉川晃司。
全てのロックレジスタンスどもへ バーボンを傾けながら・・・。


テーマ:
メディアミックスとは追体験である。
かの大塚英志が直木賞作家となった村山由佳の処女作である「もう一度デジャブ」にて巻末にしたためた一文である。

今は亡きジャンプJブックス刊行のこの小説は、2012年現在ならラノベと言われてしまう内容でもあった。
時は90年代序盤のジャンプ。『るろうに剣心』が始まる1年程前の事だ。

ジャンプ、および集英社の方策に「メディアミックス化奨励」がある。
多くの漫画やアニメ化実写化する背景には、漫画→アニメ・実写への拡大と、アニメ・実写→漫画への取り込みがあるのは確実だ。
そしてそのどちらもが「お気に入りの内容を何度も繰り返したい」というものに根差すと大塚は指摘する。

小さな差異や整合性と原作との相違を見つけて楽しむ事が出来る。
ゆえに、原作ありきの(特に漫画は本来デフォルメされたものなので)映画作品は当たりなしと言われてしまうのも無理はない。
ありもののキャラ・展開がある以上意外性など望まれていないのだから。
あるのは「意外と忠実で良かった。」「俳優の演技が良い。」「演出・脚本が良い。」という部分的な称賛だけだろう。

しかし、何故今「るろうに剣心」なのか?という疑問が無いわけではない。
ジャンプで絶頂期を誇ったのは15年も前だ。
日本のコンテンツ不足のしわ寄せがここにきているのだろうか。


ここで個人的な「るろうに剣心」との交わりをもう一度紹介したい。
ジャンプ黄金期と言われた92年、93年、94年を「ドラゴンボール」「SLAM DUNK」「幽遊白書」の三本柱が支え、どの漫画も面白く読めた600万部時代だった。
早売りを土曜に買いに1時間かけて定期購読を約束した雑貨店に行く時のワクワクは少年に刻まれた幸福な記憶である。

そして、この三作品が終焉を迎えるうちに入れ替わるように腐女子の票を獲得したのが「るろうに剣心」だった。
ジャンプに当時時代劇物はあまりなく(というよりも少年誌では圧倒的に少なく、昨今の歴女の素地としての武将・歴史ゲームとしてのるろ剣は偉大でもある)、アニメ化への熱望度は高く、まずはカセットブック・CDブックが発売された。
声優はアイドル的人気と実力を兼ね備えた緒方恵美・桜井智・関智一・高山みなみという布陣。
全3巻まで発売したこのカセットブックも好評だったようでアニメ化の話題が入った。
主役を演じた緒方恵美を始めキャストも続投と思いきやの総とっかえは原作派の反感を大きく買った。
加えてソニーグループが100%自社資本で製作した試作品とも言える粗末な出来だった事も起因していただろう。
アニメはそれまでのジャンプ的方程式にのっとった「アニメ漫画ゲームの相乗効果」というほどではなく、「アニメ漫画ゲームの一本化」という印象を残し、丁度盛り上がりどころだった京都編以降を終え緩やかに失速していった。


今回の映画化における見所は前回のるろうに剣心の記事で記したように「剣心と刃衛の比較」にあった。
剣と刃の対比は原作者和月曰く、「ラスボスのつもりで描いていた。」とあるように、この作品の主題となる「人斬りの罪と罰」そのものであり、新時代をどう生きるかという古い価値観と新しい価値観のせめぎ合いであった。

監督大友は、るろうに剣心という映画を、幕末を描いた龍馬伝の続きのように描いていた。
特に「武田観流」こと香川照之には岩崎弥太郎の思想なき拝金主義を色濃く残し、同じく「緋村剣心」こと佐藤健には人斬り以蔵(ちなみに和月の言葉だと刃衛のモデル)が明治を生きているならば、というキャラクターのスライド化を試みていたように感じられた。

明治という時代はそれまで260年続いた価値観が崩壊した世界だ。
今まで生きていた時代が四民平等、自由民主にひっくり変わる革命に若者は生き、死んだ。
しかし当然それを受け入れられなかった者も多く、作中で語られるように士族崩れや士族の反乱は何年も続いた。


吉川晃司が演じる鵜堂刃衛は新時代の中で贖罪を続ける剣心とは真逆。
ただ、人を斬り続ける狂った侍である。
原作の敵、「志士雄真実」や「雪代縁」が思想や復讐の元に敵対したのとは違い、刃衛は人を斬る事を目的にしている。

人斬りとして生きる内に心を魔物にしてしまった刃衛は漫画の中でも異質だ。
そして、ロックと歌謡の世界を股にかける吉川晃司の存在もまた異質な存在だ。
スクリーンに映る彼の迫力は「佐藤健君観たさ」「原作ファン」といったほとんどの観客を圧倒するに足りるものだった。

人は環境に左右される。
人斬りにならざるを得なかった剣心は生き続ける事が贖罪だとした。
刃衛は違う。
自らの意志で人を斬り、また自らの意志で死んだ。

どう生きるか、どう死ぬか。
その潔さは狂ったとしても侍のそのものとも言える。

今の時代もまた旧来の価値観では乗り越えられない局面に来ているかもしれない。
その上で我々はどう生きるのか?という疑問も投げかけているのは「陽だまりの樹」に通じる。

武田観流という小物をこれでもかとコミカルに憎ったらしく演じた香川照之。
神谷薫のもつ「ひたむきさ」「健気さ」のみに一点突破して見事ヒロインと同化した武井咲。
そして鵜堂刃衛というマッドな狂人を重厚に演じた吉川晃司。

この3人はおそらく誰の目にも鮮やかに映ったに違いない。

『るろうに剣心』
ただの漫画原作邦画で終わるには惜しい。
未見の方は是非ともレイトショーに足を運んでほしい。
AD
いいね!した人  |  コメント(0)  |  リブログ(0)
最近の画像つき記事  もっと見る >>

AD

ブログをはじめる

たくさんの芸能人・有名人が
書いているAmebaブログを
無料で簡単にはじめることができます。

公式トップブロガーへ応募

多くの方にご紹介したいブログを
執筆する方を「公式トップブロガー」
として認定しております。

芸能人・有名人ブログを開設

Amebaブログでは、芸能人・有名人ブログを
ご希望される著名人の方/事務所様を
随時募集しております。