SANOジャケという少し不謹慎なタイトルのエントリにまーしーさんが反応してご自身のブログでもそっくりなジャケットについて言及されています。
そこで取り上げられているのは、まーしーさんのフェイバリットなエルヴィス・プレスリーの『エルヴィスのゴールデンレコード第2集 (Elvis' Gold Records Volume 2: 50,000,000 Elvis Fans Can't Be Wrong)』です。
まーしーさんに怒られることを覚悟で言わせていただけば、とびぬけて素晴らしいデザインとは思いませんが、とにかくエルヴィスがいっぱい=エルヴィスまみれのジャケットは数多いアルバムの中でも最も印象に残る一枚であるとは思います。ゴールドのスーツももちろんゴールド・レコードにかけているのでしょうが、これはもう当時ゴールド・レコードを連発していたエルヴィスでなければ着ることが許されないといえますね。
この大小さまざまのエルヴィスがいっぱいというデザインは真似しやすいのか、数多いアルバムの中でも前回エントリで紹介したデビュー・アルバムについでそっくりなジャケが多いアルバムでもあります。そしてまーしーさんがSANOジャケとして挙げているのは次の2枚。
エルヴィスに遠慮してかゴールドのスーツは着ていませんが、あきらかにエルヴィスを意識しているロッド・スチュワートの『ボディ・ウィッシーズ』です。しかし、なぜこのアルバムでエルヴィスのデザインを引用したのか、必然性が感じられないのが正直なところ、とつぜんひらめいたのでしょうか?ただ真っ黒なバックに赤いスーツという配色はデザイン的には元ネタを超えているとは思います。
そしてもう一つはボンジョヴィの2004年のBOXセット『ザ・プレミア・コレクション ~100,000,000 ボン・ジョヴィ・ファンズ・キャント・ビー・ロング100,000,000 Bon Jovi Fans Can't Be Wrong』です。元ネタではエルヴィスの立姿の写真のサイズをさまざまに変えたものをいっぱい並べていましたが、ボンジョヴィのものはメンバーの立姿の写真とそれを切り刻んだ写真を並べているという違いはありますが、金色のスーツといいパッと見た瞬間に受ける印象はそっくりやんと思います。
BOXセットという集大成盤でこのデザインというのはロッドと違って必然性も感じられます。
注目いただきたいとのはタイトルです。エルヴィスの『ゴールデン・レコード第2集』の原題は「Elvis' Gold Records Volume 2: 50,000,000 Elvis Fans Can't Be Wrong」というものです。原題はGoldなのに邦題がゴールデンとなっているのは第1集が「Elvis' Golden Records」で邦題が『エルヴィスのゴールデンレコード第1集』だったからと思われます。ちなみに邦題に第1集というのがつけられているのは日本でアルバムが出たのがアメリカで第2集が発売された後、ひょっとしたら『第2集』と同時発売だったのかも知れないですね。話がそれてしまいましたが邦題は『ゴールデン・レコード第2集』とそっけないのですが、原題では『50,000,000 Elvis Fans Can't Be Wrong』というサブ・タイトルがついています。というかジャケットを見るとこちらがメイン・タイトル扱いですね。
このタイトル日本語にすると”5000万人のエルヴィス・ファンは間違いっこないよ”とでもなるのでしょうか。イカす音楽を聴きたくてエルヴィスのレコードを買ってくれた5000万人のファン(延べ人数でしょうね)は大正解だよ、だってエルヴィスくらいイカす音楽はないもんみたいなタイトルなのかなぁ。ということでボンジョヴィのBOXの原題を見ると『100,000,000 Bon Jovi Fans Can't Be Wrong』となっています。キングの5000万に対して、ファンの数が1億となんとも畏れ多い数になっていますが、実はこのBOXはボンジョヴィのアルバムの累計販売数が1億枚を超えたことを記念して編集されたのでこのタイトルがつけられたようなので、これもエルヴィスに倣っています。ジャケだけじゃなくタイトルも真似ていて内容もベストとくればこれこそオマージュといえるでしょう。
おっと、まーしーさんの記事に補足するみたいなこと書いちゃって気分を害されてるかもしれませんが、今回の僕が書きたかったのはエルヴィスの金のスーツ、アルバムを見るたびにどこかで見たことあるよなぁと思っていたのですが思い出しました。関西在住の方なら、よくご存知のこの方、自称”おぼっちゃま”です。
そう横山たかしひろしの横山たかしです。絶対真似てますよね(笑)。ついでにいうと『』ボディ・ウィッシーズ』のジャケットはおそらくは来日中のホテルで横山たかしひろしの漫才を偶然見たロッドがたかしの真っ赤なスーツを真似たのではないかと思うのですが・・・、すみません今日はネタありきのエントリになってしまいました。
お口直しに他にもこんなのありましたっていうやつを。
これはオフィシャルではなく、なんでもありのブートレグのアルバムなので反則かもしれませんが、自分の名前をキングからとったエルヴィス・コステロなので、なんでオフィシャルでこういうジャケを作らなかったのだろうという気もします。
お次は2004年発売のフォールのベスト・アルバム。アーガイルの服と言いタイトルのファンの数が5万人といいなんとも控え目というか地味になっちゃってます。
そして、こちらは金色のスーツがエルヴィスを意識しているフィル・オクスの『グレイテスト・ヒッツ』。ライヴ・アルバムのようなジャケット写真でベスト・アルバムのようなタイトルですが、実際はヴァン・ダイク・パークスのプロデュースによる全曲スタジオで録音された新曲ばかりのオリジナル・アルバムというひねくれたアルバム。
裏ジャケをみると50 PHIL OCHS Fans Can't Be Wrongというエルヴィスのタイトルからの引用と収録曲分のゴールド・ディスクが並んでおりエルヴィスのパロディであることが種明かしされています。それにしても50人のファンとは・・・。シカゴが歌った「クエスチョンズ67/68」やグラハム・ナッシュの「シカゴ」で歌われた「シカゴ事件」で挫折し歌うことの無力さを感じ、前作の『退役のリハーサル』では墓碑銘を刻んだ自分の墓をジャケットにしていましたが、この50人という数からはフィル・オクスの人間不信感が感じられる気がします。
PHIL OCHS/NO MORE SONGS
空には星が浮かび さよならの時だ
浜辺に打ち上げられたクジラは 死んでいく
僕は白旗を持ち 砂には白い骨
もう これ以上 歌えないだろう
ハローハローハロー 誰か帰ってるかい?
僕が言えるのは ごめんのひとこと
夜明けにドラムが響き すべての声は失われる
もう これ以上 歌えないだろう
念のために横山たかしひろしの漫才です。
「マチャチューチェッチュちゅう」