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その日は東屋周辺の薔薇の手入れをしていた

作業に集中していた所為か時間が経つのに気付かず ふと手を休め顔を上げた時には太陽は西へと傾いていた

心地のよい疲労感

本日の作業を終える前に少し休憩するつもりで土の上に腰を下ろす

その時だ 人の気配を感じたのは

一瞬 緊張に身を強張らせる

滅多にはないが庭園内で人と顔を合わせる事もある

その相手は庭園を楽しみに来られた領主様やそのご家族 又は客人方 そういった止ん事無き方々であり大概薄汚れた庭師風情を見掛けると眉を顰め嫌そうな表情をするのだ

仕事は終わったとはいえ胡座をかいている今 もし鉢合わせたのなら 職務怠慢と睨まれ怒鳴りつけられるかもしれなかった

そのまま首を切られ職を失いかねない

最悪の結果を想像する

見付からないよう祈りながらその場で息を潜め そっと気配のする方を覗いて見た

見えたのは黒いスカートに白いエプロン

どうも使用人のひとりらしい

自分の首はまだ胴と繋がっていられる と安心する

しかし安心してみると何故ここに使用人が来たのかという疑問が浮かんで来た

ここは限られた者しか知らされていない特別な区域であり 使用人がそんな場所にやってくる理由が思い付かなかった

例えば東屋の掃除があるにしても一日が終わろうとしているこの時刻に来るのはおかしい

もう一度薔薇の蔦の隙間から伺い見る

すると布の掛けられた両手で抱える大きさのカゴ持った使用人の女がポケットから一本の鍵を取り出し 東屋のドアを開けている所だった

先程とは違った緊張に脈拍が上がる

何度もこの隠された区域には足を運び仕事をして来たが 東屋のドアが開く所を見たのは初めてだった

この庭園迷宮に一体何が隠されているのだろうと何度も考えを巡らせたりしたものだが それらしい答えは一度も浮かんで来なかった

固唾を飲んで窺っていると使用人の女はドアを開けると素早く東屋の中へと入っていった

自分には何があるのかすらも予想も出来ない その東屋の中へと



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何とか今日続きを書く事が出来ました

ひと安心

このペースで行きたいな!(希望的概念