感染拡大が続く宮崎県の口蹄疫(こうていえき)への対策として移動制限区域内での全頭ワクチン接種が進む中、県内で唯一、民間で種牛を飼育している「三共種畜牧場」(同県高鍋町)代表の薦田(こもだ)長久さん(72)が拒んでいる。「種牛は私個人のモノではなく、農家、畜産界の財産だ」。薦田さんの訴えは、種牛候補など49頭の殺処分回避を国に求める県の主張と似た部分もあり、県も説得に苦慮している状況だ。

 三共種畜牧場では、伝説の種牛「安平」の血統を受け継ぐ「勝安平」や「勝気高」など6頭の種牛を飼育。年間2000本の精液を県内のほか、三重や大分など4県の農家にも販売している。

 県内4農場で飼育しているのは種牛、肥育牛など約400頭。種牛を飼っている農場から約3キロ離れた別の農場で口蹄疫に感染した疑いの牛が見つかったため、ワクチン接種の対象となったが、6頭の種牛には症状がみられないという。

 飼育牛すべてがワクチン接種の対象になったが、種牛だけは接種を拒否した。県家畜改良事業団の種牛49頭について、県が国に殺処分の回避を要望しているためだ。「私の種牛も同じく県や畜産農家の財産だ」と薦田さんは語り、県に49頭と同様の措置を求めた。薦田さんのもとには、県内だけでなく他県の取引農家からも、存続を求める電話が相次いでいるという。

 しかし、県は「事業団の種牛は、県費をつぎ込み、研究や改良を重ねてきており、民間とは違う。感染拡大を防ぐため、一律に接種をお願いしている中で特別扱いはできない」との立場。今後、ワクチン接種に応じるよう説得していくという。

 薦田さんは畜産を始めて50年。種牛改良を始めて22年になる。「やっとここまで来た」という思いがあるだけに、殺処分を意味するワクチン接種への無念の思いは強い。薦田さんは「これからという時だった。人生をかけて育ててきた私の魂が、種牛を失えば消えてしまう」と声を落とした。

 ◇ワクチン接種、対象の99・5%に◇

 宮崎県の口蹄疫こうていえき問題で、農林水産省と県は26日夜、移動制限区域内(発生地から半径10キロ以内)のすべての牛と豚を対象にしたワクチン接種が99・5%終了したと発表した。県は、同意が得られなかった2市3町の21農家に対し27日以降、引き続き同意を求める。

 県によると、接種対象は約12万5200頭で、26日までに12万4698頭に接種した。接種は感染拡大の防止が目的で、接種後は殺処分することが前提。

 また、26日までに川南町など3町の9農家で新たに感染疑いのある牛や豚が確認された。210~218例目で、川南町と高鍋町の4農家で発症した10頭は22~24日にワクチンを接種していた。これら9農家と関連農場で飼育されている牛や豚など計4463頭が殺処分される。【蒔田備憲、小原擁】

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