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2012-01-03 13:02:07

金融円滑化法延長へ

テーマ:条件変更
 年明け、鉢うえも元気!

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 本年もよろしくお願いいたします。

 さて、年末に書ききれなかった、「金融円滑化法延長」についてです。金融庁HPに自見金融相談話の全編が掲載されました。談話の内容についてじっくり読み込みました。(以下、「大臣談話」と略)

 このブログでも再三、「再延長はない」前提で記事を書いていました。円滑化法と言えば、最初に亀井金融大臣(当時)がぶち上げたモラトリアム法案を覚えておいででしょうか。元金のみならず金利も含めて3年棚上げ、という強烈な内容の原案でした。その流れを汲んだ金融円滑化法ですので、そもそもが「なりふり構わず緊急避難的に中小企業を守る」ための制度であったはずです。 

 そしてそれがために当初「平成23年3月」という時限を設けたのではなかったか?この最初の延長の時には、「延長したい民主党」対「円滑化法に限らず簡単に法案を通さない方針の自民党」という構図で緊張が高まる中、なかなか審議に入れない状態でした。そこに起こったのが東日本大震災で、

 「無用な対立は避けひとまず矛を収める」意味で、金融円滑化法延長は他の数十本の法案とともに3月31日に可決されたのです。

 その円滑化法が施行されて丸2年が経過しました。 

 昨年4月には条件変更先について再生可能な先と再生可能性が低く廃業をアドバイスする先に分類せよという金融庁指針も出されました。加えて金融検査マニュアルに「金融円滑化編」が設けられました。これは、「円滑化法がなくなってもその精神は残すよ」というメッセージ、あるいは準備と受け取りました。

 今回の大臣談話では金融円滑化法について、「基本的には、その取組みは定着してきていると考えられる」とした上で、「一方で、貸付条件の再変更等が増加している、貸付条件の変更等を受けながら経営改善計画が策定されない中小企業者も存在しているなどの問題を指摘する声もあります」と運用上の問題点を率直に認めています。

 円滑化法が施行される前、条件変更を行った債務者については債務者区分が引き下げになり、それにつれて貸倒引当金の負担が金融機関にのしかかりました。円滑化法では、条件変更をほぼ自動的に許容せよとし、一方で引当金積み増し負担を軽減するために「実効性が高く抜本的な再生計画案を作成すればその債務者については正常先にとどめてもよい」という取扱いが許容されました。「そのような再生計画があるということは、今は苦しくても将来的には正常先に戻るということだから」という趣旨です。

 しかし大臣談話では、何度も条件変更を依頼し、正常化のメドがたたない先や再生計画そのものが策定されていない先については円滑化法下であっても、債権者区分を引き下げ、適正に引当を積め、という現実路線になっています。

 この背景には、メガバンクなど体力のある銀行は、償却余力もあり、条件変更先のうち返済のメドが立たない先については早々に「処理」をしたいという事情があります。これは銀行の資産から不良なものを取り除き、資産の質を保ちたい、ということですから金融機関としては健全な判断といえます。

 大臣談話を何度か読み返しましたが、述べられている趣旨は非常にまっとうでうなずけるものです。しかし、その内容と円滑化法延長とをつなげる論拠が薄いのです。同じ内容から、「ゆえに円滑化法は期限通り廃止とします」という結論にすげ替えても違和感がないようにすら思います。

 「円滑化法延長」と言いながら条件変更を勝ち取るためのハードルは上がることはあっても下がることはないでしょう。新たに条件変更を依頼する会社は、必ず申込時に精密な再生計画の提出を求められると思いますし、条件変更の継続を希望する先も、

 「実現可能性の高い抜本的な経営再建計画の策定・進捗状況の適切なフォローアップ」という大臣談話の表現の通り、計画通り改善していかない場合や何度も計画の下方修正を重ねるようなケースでは条件変更を勝ち取ることが難しくなってくると思われます。

 なにせ、大臣談話では経営に行き詰った金融機関に公的資金を注入する法律である、「金融機能強化法の活用」にも言及されており、

 「引当負担で身動きとれなくなったら国から資金注入してでも支えるから切るものは切れ」と読み取れなくもないのです。

 具体的には、「対象企業の実態に応じた適切な債務者区分・引当ての実施」という表現のとおり、債務者区分の引き下げから期限の利益喪失、さらには保証協会付保分の代位弁済や担保不動産の売却へ進むことになります。ただし、道内企業と金融機関の密着度を考えると地域金融機関が簡単に顧客切り捨てに動くとは思えず、そのような動きになるのは早くても来年度後半以降でしょう。複数の信金から「ただでさえ金融機関の間で顧客の奪い合いになっている状態なのに金融機関の側から顧客を減らす(=条件変更先の切り捨て)はできない。全く想定していない」という声もお聞きしています。

 談話では、「中小企業者等の真の意味での経営改善につながる支援を強力に押し進めていく(「出口戦略」)必要があります」としていますが、実際には出口に行けずに力尽きる中小企業の数の方が圧倒的に多くなるでしょう。円滑化法延長=中小企業保護施策の延長、という趣旨ではなく実質的に不良債権処理を始める、という宣言と考えた方が間違いなさそうです。

 一方で再生途上にある企業、例えば赤字だったものが黒字転換したり、営業CFが順調に増えているような企業は、引き続き銀行の条件変更を受けながら業績改善に取り組んでいくことになると思います。条件変更先についてはくっきりした二極分化が進んでいくと思われます。

 大臣談話の中で「このように中小企業再生を進めていく」というものがいくつか上げられていますが、特に斬新なものはありません。

○企業診断、最適な解決策の提示・支援を図るためのコンサルティング機能の発揮等、地域密着型金融の深化を徹底 ⇒ 従来から言われていることで、前述の昨年4月の監督指針発表の際にも「コンサルティング強化について金融機関内部の体制を整えよ、という内容が含まれており、目新しいものではありません。

○中小企業再生支援協議会との連携強化 ⇒ これも従来から行われています。支援協は円滑化法後、ほとんど金融機関の間のリスケ調整が主業務となっており、再生の主役となれるかどうかは個々の金融機関次第です。

○産業復興機構、東日本大震災事業者再生支援機構等との連携強化 ⇒ これも中小企業が「使いたい」といってもすぐ使えるものではなく、再生の決め手になるかというと…?

○事業再生等の支援を図るための、様々な制度・仕組みの活用 ⇒ 具体策には触れられていません。


 大臣談話では、「このような点を勘案すると、金融規律の確保(健全性の確保・モラルハザード防止)のための施策を講じる一方、金融機関によるコンサルティング機能の一層の発揮を促すとともに、中小企業者等のこのためには、外部機関や関係者の協力も得つつ、検査・監督上の対応も含め、総合的な出口戦略を講じることにより、中小企業者等の事業再生等に向けた支援に軸足を移していかなければなりません。一方で、そうした移行は円滑に進めていく(「ソフトランディング」)必要があるため、現行の円滑化法を今回に限り25年3月末まで再延長することが適切と判断いたしました。」としています。

 「今回に限り25年3月末まで再延長」と期限をはっきり区切ったことはまずまず評価できると思います。

 返済ができない会社をとにかく倒さない、という緊急避難的な性格の法律ですので、「期間限定で」というのは当然です。もし円滑化法が長期化すれば、正常債権の中に相当額の不良債権が混じりこんでいくことになります。バブル後の10-15年、日本の金融機関が不良債権処理にどれだけ苦労をなめたか。その苦労があって各金融機関の資産はやっと正常化したのではないか。道内では北海道銀行の株価が一時100円を割り、優先株による増資をおこなったことを忘れてはなりません。その金融機関の資産の中に不良債権をまた混ぜ込むようなことはできません。

 振り返れば、円滑化法施行とそれに先立つ保証協会のセーフティネット保証ですでにかなりの倒産予備軍の破たんが先送りされています。今回の期限延長による倒産先送り効果は非常に薄いと思います。

 今回の延長の恩恵を受ける数少ない企業としては、先に触れた、計画通りに経営改善をしている企業のほか、ごく最近業績が悪化し、24年4月以降に初めて返済猶予を受けるような企業が想定されます。

 中小企業にとって最重要課題はまず「つぶれない」ことです。返済がきつくなってきたために会社の資金繰りがゆらぐようなら迷わず円滑化法を利用するべきです。返済を止めておカネが浮いてくるというのはその分新規融資を受けるのと同じ効果があるのです。ただし、返済を止めて浮いてくるおカネは返済元金のみですから月々にするとわずかで段々と資金繰りが緩和してくることになります。このチャンスを最大限に生かすには資金繰りの見通しが重要です。

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