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$調布シネマガジン-ふがいない僕は空を見た
『百万円と苦虫女』のタナダユキ監督作品。原作は窪美澄の同名連作短編集で山本周五郎賞を受賞しているのだとか。観る前には主演の永山絢斗と田畑智子のセックスシーンばかりが話題になっていたけれど演出や演技という面で見るとそれもむべなるかな。外国の映画なら別にこの程度はどうということもない表現だけれど、邦画で、しかも若い俳優がここまでやりきったのは大したものだと思う。

$調布シネマガジン-ふがいない僕は空を見た01むろんそこにあるのは単なる性的な衝動だけではないのは言うまでもない。構成的には時系列を遡り視点を変えながら一つの事象を描いたりもしているのだが、何が起こったのかと言うことは明確に示しているので迷うことはないだろう。永山絢斗は卓巳という高校生、田畑智子はコスプレ好きの主婦・里美という役柄だけれども、この2人を中心にして描かれる人の想いは複雑にして深遠だった。

本来命を生み出す行為であるセックス、しかしそれで生命を生み出せない里美と助産師の息子で身近に多くの生命誕生を感じながら生きてきた卓巳という2人の対比は単なる不倫を通り越えて皮肉でもある。ここに卓巳の母・寿美と親友・福田、福田のバイト仲間の純子らが絡んでくるのだが、特に福田と純子が卓巳に抱く歪んだ感情は程度の差こそあれ誰でも経験があるんじゃないだろうか。

$調布シネマガジン-ふがいない僕は空を見た02助産師として多くの生命をこの世に導いてきた寿美の大きな包容力は、時として殺伐としネガティヴな気持ちに陥りそうな観客の心を癒してくれる。原田美枝子のあの優しい表情と人間味がこの作品の一服の清涼剤なのは間違いない。ただ、その寿美ですら心に深い葛藤を抱えているのがラストで解るのだけれど…。結局観ていて思ったのは、人間なんて誰でも“ふがいない”んだってこと。

それでも生きている以上は歩を進めないわけには行かないんだっていう当たり前といえば当たり前の事だった。明石家さんまの座右の銘は「生きているだけで丸もうけ」だと言うけれど、正にその言葉が頭に浮かんできたな。群像劇でありながら、個々の登場人物の掘り下げ方は見事の一語。だからそれぞれのシーンで物語に没頭してしまう。142分の長尺が全く気にならない秀作だった。

『ふがいない僕は空を見た』公式サイト

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ストーリー:高校生の卓巳(永山絢斗)は友人と出掛けたアニメの同人誌販売イベントで、アニメ好きのあんずこと主婦の里美(田畑智子)と出会う。やがて二人は深い仲になり、里美は卓巳に自分の好きなアニメのキャラクターのコスプレをさせ、情事にふけっていた。そんなある日、卓巳は前から気になっていた同級生の七菜(田中美晴)に告白され……。
(シネマトゥデイ)
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