調布シネマガジン

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$調布シネマガジン-その夜の侍

元々は赤堀雅秋監督が舞台でやっていた作品を映画化したのだそうだ。簡単に言えば理不尽に妻を殺された男の復讐譚なのだけれど、ハリウッド映画のごとく躊躇いなく人を殺してしまうのとは違って、心理的にとてもリアルなお話だったと思う。主演の堺雅人が演じるのは鉄工所を経営する中村健一という男。これがもう実にキモイ。でもね、だからこそ酒井真紀演じる妻への愛の深さを感じられるんだ。

$調布シネマガジン-その夜の侍01分厚いメガネに、べたべたの髪の毛、常に汗だくで、糖尿病。およそモテない要素を詰め込んだような男の暗く陰湿な復讐心はある意味とても恐ろしい。一方妻の敵・木島宏(山田孝之)は健一とは違った意味でヤバい奴だった。ただ俺は観ていて、内に籠る健一と外に吐き出す宏というのはベクトルが正反対ではあるものの本質的な部分は似ているのじゃないかと思ったんだよね。

例えば途中ホテトル嬢(安藤サクラ)というプロを呼ぶのに出来ない健一。そして素人女の由美子(谷村美月)を手籠めにしてしまう宏。まさにやることは同じでも手段も結果も正反対ってのが象徴的なんだ。面白いのはそんな2人が嫌われ者じゃないところ。従業員の浩平(高橋努)、義理の兄の順一(新井浩文)順一に頼まれてお見合いする幸子(山田キヌヲ)…。

$調布シネマガジン-その夜の侍02何でそんなに彼のことを構ってあげるのかと思うほど彼に正対している。宏だってそう。彼にぼっこぼこに殴られる信夫(田口トモロヲ)、一度は彼を裏切った英明(綾野剛)、手籠めにされる由美子の誰もが彼を恐れながらも彼の周りにいる。堺雅人と山田孝之の演技力の高さは当然だけれど、彼らの芯に対して周囲の人間たちの存在が肉付をしているかのようにすら思えたよ。

結局2人があいまみえたシーンは、観ていて健一は宏に、宏は健一に近づいていたかのようにも見えた。そう、要は健一のセリフ通りで「ただ何となく生きてる」だけなんだよね、2人とも。でも健一は彼に自分の姿を見たんじゃないだろうか。彼に失望することは、すなわち今の自分に失望すること。だから自己否定するかのようなラストシーンに僅かながらも希望が垣間見えるのだと思う。

『その夜の侍』公式サイト

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ストーリー:小さな鉄工所を経営する中年男の中村(堺雅人)は、5年前に木島(山田孝之)が起こしたひき逃げ事件で最愛の妻を失ってしまい、抜け殻のようになりながらも復讐(ふくしゅう)することだけを考えて日々を生きていた。やがて、刑期を終えて出所した木島のもとに、復讐(ふくしゅう)を遂げる日までのカウントダウンを告げる差出人不明の脅迫状が届くようになる。そして妻の命日の夜が訪れ、ついに中村と木島は対面を果たすが……。
(シネマトゥデイ)
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