さて前回の続き。

十数年前の11月1日、
ワタシはちょっと思うところあって
近場だがひと気のあまりないところへ出かけ
自分なりの結論を出して
人里へ戻ってきた。

街道沿いに
明々と小さな電気が
いくつもテラスにぶら下がった
小さなバルがあった。
以前から入ってみたいなと
思っていたところだった。

昼間ならば
絡まりあう蔦が
木陰を作るだろうテラス席に
ワインを持って腰をおろした。
明日は平日という日の
夕食時もとうに過ぎた時間、
こんな道路沿いの場所に
来ようという人はなく、
店の子供二人が
遊んでいるだけだった。

道路沿いではあるが
道路からは少し引込んだバルのテラス。
店じまいも近いのか
音楽もなく、
仲良く遊ぶ幼い姉弟の
声だけが聞こえる。

上の女の子は6、7歳くらいだろうか。
弟の方はまだ
歩き始めて間もない風情。

当時まだ外国人が珍しい時代
こんな田舎で東洋人など
見たこともなかったはず。
ある程度 分別のつくお姉ちゃんの方は
くるくるした目で珍しそうに
ワタシをながめる。

名前を尋ね、あれやこれや話したり
坊やのほどけた靴紐を結んでやったり。

しばらくしてお姉ちゃんに
「きょうは? みんなで
お墓参り行ったの?」 と聞くと
ウンと頷く。
「お父さんもお母さんもみんなで?」
ウン。
「お母さんの名前、●●?」
と、その女の子と同じ名前を
言ってみると、果たして当たりで
またもやウン、と頷く。

そして 不思議そうな顔で

「…どうして知ってるの?
お母さんの名前も、
今日お墓に行ったことも…」

ワタシが
魔法使いになった
瞬間だった。



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