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現在映画館で上映されている『リンカーン』は,スティーブン・スピルバーグ監督の最新作です。



作品の舞台は1865年の1月。アメリカ第16代大統領として再選されたばかりのエイブラハム・リンカーン大統領が,国が二分される南北戦争の危機と,「すべての人間は自由であるべきだ」とする自らの理念に基づき「奴隷解放」の実現という,歴史上の難題にどう向かい合い,それをいかに実現したのかが描かれています。



自分の理念のために失われていく多くの若い命。人間の尊厳と戦争終結の狭間に立たされたリンカーン。彼の苦悩と勇気がスクリーンを通して感じられる作品となっています。






この作品「リンカーン」の中で,奴隷解放など無理だ,まずは南北戦争を終結させるべきだ,と主張するリンカーンの側近と,奴隷解放を宣言する憲法修正第13条を南北戦争終結と同時に可決させようとするリンカーンとの言葉のやりとりが描かれた場面が登場します。



その会話の中でリンカーンは,次のように言ったのです。



「私達の心の中には羅針盤がある。それは正義の方向に針を向ける羅針盤である。



羅針盤の針が指す方向には,池や崖があるかもしれない。でも私達はその方向に進むべきなのだ。」



法律そのものは,紙に書かれた活字にすぎません。その活字である法律にどのような意味を与えるかは,自由であり正解はないのです。



でも,「正解はない」といいながら,それでもその法律に与えられた意味の中には,多くの人々の支持を得る考え方があります。それはまるで,白いキャンパスにどのように絵の具を塗って絵を描くかは自由であるのに,フェルメールやダビンチのような,世界中の人々が思わずその絵の前で足を止めて,数時間動けなくなる作品が存在するのと同じなのです。



法律の世界にも,その「多くの人が思わず足を止める」ような考え方,意味の与え方があるとするならば,きっとそれは,リンカーンが言われたように,私達の心の中にある羅針盤の針が,「正義」という私達が向かうべきだという方向を示しており,その方向に近い意味こそが,その法律に与えられるべき意味だ,社会が最も求める意味である,ということになるのかもしれません。



考えてみますと,この世に白人と黒人,その他多くの人種が存在するのは,生命の生きるための知恵なのです。



この世に人がいて,象がいて,キリンがいるなど,多くの「種」が存在するのも,生命の生きるための知恵なのです。



約40億年前,この世にひとりぼっちで生まれた生命は,生きるために知恵を絞りました。同じDNAの生命だけが存在していたら,有害な病原体の蔓延で,生命はこの世から滅びるかもしれません。



そこで生命は,「オス」と「メス」により新しい生命が生まれる仕組みを編み出したのです。そのことにより,単純分裂と違い,複雑なDNAを生み出すことができるからです。



この世に多くの「種」が存在すること,同じ「人」という種の中にも,白人と黒人など多くの人種が存在すること,さらには同じ白人でも1人1人の顔や背の高さなどが違うことは,全て生命が生き延びるために編み出した知恵なのです。



リンカーンが言及した「心の中の羅針盤」が示している「奴隷制度の廃止」も,そんな生命観からすると当然のことであり,まさに「正義」に合致することになります。






リンカーンは,「奴隷制の廃止」を唱ったアメリカ合衆国憲法修正第13条を議会で可決させるために,懸命な議員への働きかけを行います。そのような日々の過程で彼が口にしたのが,数学のユークリッド幾何学の公理1です。



「公理1: 同じものと等しいもの同士は互いに等しい.」



リンカーンは言います。「同じものと等しいもの同士は互いに等しいのだ。黒人も白人も同じ『人』じゃないか。」



リンカーンの情熱により,奴隷解放を宣言した合衆国憲法修正第13条は議会で可決されたのです。



上述しましたように,憲法を始めとする法そのものは,紙に書かれた活字にすぎません。そしてその活字を創り出すのは,不完全な存在である私達です。



確かに人は不完全なのかもしれません。完全な人間はこの世には存在しないのかもしれません。



でも,その不完全な人間は,それでも社会をより良い姿にしたいと考えて,少しでも良い姿にして次の世代に委ねたいと考えて,法を創るのです。法は,不完全な人間が,それでも社会を良いものとするために編み出した知恵なのです。



だからこそ法は,紙に書かれた活字であるにすぎない法は,社会において唯一強制力を有する規範として生み出されるのです。



その力を有する法には,「私達は命をかけて,この社会を今の姿にまでしてきました。後は次の世代の皆さんが,社会をより良い姿に,理想とされるような姿に創りあげていってください。」という世代を超えた思いと,社会への愛情が込められているのだと思います。



映画「リンカーン」を拝見して,そんな思いを強くしたのです。





アメリカ合衆国憲法修正第13条



1 奴隷及び本人の意に反する労役は,当事者が犯罪に対する刑罰として正当に有罪の宣告を受けた場合以外は,合衆国内又はその管轄に属するいかなる地域内にも存在してはならない。



2 議会は,この修正条項を適切な法律によって実行させる権限を有する。 


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