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アメリカで,ゾンビが迷子になったネコを助けた,とのニュースが話題になっています(2013年4月7日付四国新聞掲載の記事より)。



「ニューヨークの繁華街タイムズスクエアで,幽霊屋敷の仕事でゾンビの格好をした男性が,2年前に行方不明になったネコを助けて話題になっている。



男性はネコを動物病院に連れて行き,体内に埋め込まれていたマイクロチップから飼い主が判明した。・・





ネコを連れたゾンビが突然現れて,さぞや動物病院の方々は驚かれたことだと思います。とても心温まるお話ですね。



さて,アメリカとネコ,と申しますと,最近とても興味深い論考に接しました。法学部1年生を念頭にして,さまざまな法律科目の専門家の方々が,自らの専門についてその面白さを解説した,『法学の世界』という本です(別冊法学セミナー,日本評論社,2013年)。



その本の中で書かれた,アメリカ法についての解説に,とても興味深い話を見つけたのです。アメリカ法の一大テーマとして近々浮上するだろうと言われているのは,「動物の権利」なのだ,というお話です(『前掲書』177頁)。



日本法など,現在の各国の法律では,動物はあくまでも「物」として扱われます(まさに「動産」です)。ですので,勝手に他人のペットを盗むことは窃盗罪となりますし,ペットに怪我を負わせることは,器物損壊罪になります(刑法261条の器物損壊罪の規定に「傷害」という文言が書かれているのは,動物を傷害した場合を念頭においたものです)。



動物が「物」であるのですから,当然ペットの飼い主はその「所有者」であることになります。飼い主とペットは,「所有者」と「所有物」の関係に立つのです。



ところが,近時アメリカではペットを単なる物(動産)ととらえる考え方への違和感が広がりはじめている,というのです。



例えば,ロードアイランド州法やサンフランシスコ市条例では,飼い主の法的位置づけを改め,動物の「所有者」に代えて,「後見人」という言葉を用い始めているそうです。



また,これまで24州の立法府で採択されている統一信託法典では,「物は受益者になれないので,動物が受益者に指定されている信託は不成立」という伝統的な立場を修正して,動物に被後見人類似の地位を与えているそうなのです。



ペットを,そして動物を愛する人々の心が,法を動かした,ということになりますね。






このとても興味深いお話をされているのは,現在成蹊大学で英米法を教えられている安部圭介教授です。安部先生は,ペットのお話だけでなく,法と社会との関係についても,次のようなとても興味深いお話をされています(『前掲書』173頁以下)。



「情があって,景がある。だから『情景』である。・・



人が作るものである以上,法の世界や法学の世界にも,湧き上がる情(例えば,一般市民や法律家の願い)があり,現れる景(新たな判例・法令など)がある。・・



憲法訴訟の成功は,関係者や法律家の間で先行していた情の高まりが結実したものだったことがわかる。蓄積された情が法の世界にしみ出しはじめると,新たな景が少しずつ形作られ,それはやがて劇的に広がる時を迎える。・・



不満,怒り,納得できないという気持ち。訴訟に関わるひとびとの情は,ネガティブなものであることも多い。



しかし,たとえわずかでも望みがあると思うからこそ,その当事者も裁判に訴えたのである。



個々の事件においてそれを汲み取り,可能な限りポジティブな景につなげるのは,法律家の役割である。」






以前の記事「吸血鬼 」でもお話ししました。15世紀から18世紀にかけて,全ヨーロッパや北アメリカで行われた魔女狩り裁判では,約4万人が処刑された,と考えられています。不安定な社会状況を背景とする集団ヒステリーだった,との説が有力です。



そして,その当時原因不明な病気で亡くなられた方々は,「吸血鬼だ」として,遺体の口に大きな石を入れられたのです。「吸血鬼がよみがえらないように」との迷信が生んだ悲劇的な慣行です。



「魔女」,「吸血鬼」,そして「ゾンビ」。全ては人々の無理解と不信感,さらには偏見と恐れが生み出した悲劇です。少し見方を変えるだけで,本当は心の優しい人だということにすぐ気付くのに,完全ではない私達は,心に偏見の壁を作って,物事を見てしまうのでしょう。



上述の動物についての法律の変化もそうですね。その変化は「人」と「動物」という片面関係が,えてして動物も私達と同じ温かい心を持っていることを見過ごしがちであることを教えてくれています。



情があって,景がある。だから「情景」である。



この社会に生きる全ての存在が,共に美しい情景を見て,描くことができるような社会であってほしい,と思います。



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