スペインのサラマンカは,1218年に設立されたスペイン最古の大学であるサラマンカ大学があることで知られる,学問と芸術の町です。その大学と旧市街が1988年に世界遺産に登録されています。






弁護士作花知志のブログ







そのサラマンカの中心は,やはり大学です。サラマンカ大学は,「美徳と学問と芸術の母」をモットーとし,大学及び教授陣によって,学問の自立と自由が守られてきた歴史を有することで著名なのです。




例えば,16世紀にはコペルニクスが地動説を発表しました。天動説の教えを伝え続けていたカトリック教会は,自らの教えそのものを否定する地動説に猛烈に反発します。




でも,サラマンカ大学は,現在と比較すると宗教の影響が圧倒的に強かったその16世紀に,教会の圧力を跳ね返して,地動説の正当性を認めたのです。




また,そのサラマンカ大学の正門には,ルイス・ポンセ・デ・レオン教授の銅像が建てられています。






弁護士作花知志のブログ





このレオン教授は,やはり宗教の影響が強かった16世紀当時に,旧約聖書の一部をスペイン語に翻訳した,としてカトリック教会の反発を受けて逮捕されたのです。レオン教授はその罪で5年間投獄されたのでした。




でも,レオン教授はその圧力に屈することはありませんでした。5年の服役をようやく終え,サラマンカ大学に復職したレオン教授は,復職後初めての講義の冒頭で,「昨日言ったように」という言葉で講義を始めた,というエピソードが残されています。




レオン教授は,自分を何年投獄しようとも,自分自身の良心と学問の自由を屈服させることはできない,というその信念に基づき,教会によって奪われた時間を存在しなかったものとして扱ったのだ,と言われています。




レオン教授が講義中に逮捕されたその教室は,サラマンカ大学に今も残されており,その当時の様子と,レオン教授の強い心を,現在に伝える存在となっているのです。










このブログで何度も引用した,アメリカ連邦最高裁判事に黒人で初めて就任されたマーシャル裁判官は,アメリカ憲法制定200周年の記念の年であった1987年に行われたスピーチで,次のように語られています。


「200年前の古ぼけた紙に,活字として書かれた憲法そのものが称賛に値するわけではない。




その活字にすぎない憲法に,より良い意味を与えようと,命をかけて奮闘された方々の,その活動の軌跡こそが,称賛に値するのである。




そのような意味を込めて私は,生きている文書(ドキュメント)としての憲法の200周年をお祝いしたいと思います。」



マーシャル裁判官が私達に伝えようとしているメッセージは,決してアメリカ憲法についてのことだけではないのだ,ということを,サラマンカ大学とレオン教授のエピソードは教えてくれていると思います。



大切なことは紙に書かれた活字としての憲法が存在することではなく,その理念を実際に実現しようという私達の心と実践が存在することなのだ,ということを,改めて感じたのです。