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『もののけ姫』は,1997年に公開されたスタジオジブリの映画作品です。原作と脚本も自ら手がけた宮崎駿さんが,「自然と人間の関係」について,技術の総決算をかけて臨んだ作品である,と言われています。



作品では,森を侵そうとする人間と,あらぶる神々との対立を背景として,狼に育てられた「もののけ姫」と呼ばれる少女サンと少年アシタカの交流が描かれています。作品は,興行収入196億円を記録して,当時の日本映画の興行記録を塗り替える大ヒットとなりました。





この作品は,宮崎駿さんにとっては1980年の作品『カリオストロの城』に続く監督作品でした。また,それは上述しましたように,自らが原作と脚本を手がけるという初のオリジナル企画でもありました。宮崎駿さんの熱意と創意は相当なものであった,と言われています。



その宮崎駿さんは,『もののけ姫』の源泉について尋ねられた際,次のように語られています(叶精二『宮崎駿全集』(フィルムアート社,2006年)196頁)。



「山の中を漂白しながら鉄を作っている人たちを,古代の山の麓に住む人々や農民たちは怪物だと思っていたのです。



そうしたいろいろな伝承はあちこちに残っていて,そこには火傷で爛れたお姫様の話とか,労働災害で足をなくしたり,手がなかったりする大男が出てくるんです。



日本の場合,その伝説が残っているのは,ほとんど山の中を旅しながら鉄を作っていた人々がいた地域に固まっているんです。それには大きな影響を受けました。」





上で引用しました,叶精二さんの『宮崎駿全集』196頁には,宮崎駿さんのこのお話に関連して,柴田弘武さんの著書『風と火の古代史―よみがえる産鉄民』(彩流社,1993年)に登場する,次の話が紹介されています。



著者の柴田さんは,日本全国の古代産鉄地らしき地名(金・鍛冶・梶・釜・多々良など)を巡り歩き,そこに「ダイダラボッチ」,「一つ目小僧」,「片葉の葦」,「金銀長者」などの伝説が発生していることとに気づきます。



そして柴田さんは,その研究の結果から,タタラの吹子を片足で踏む作業が一本足のカラカサおばけに,炎を片目で見つめ続けて視力を失ったタタラ師が一つ目小僧に,山を削って漂白するタタラ製鉄の行程が山をまたぎ足跡が窪地になったというダイダラボッチの伝説になった,と言われるのです。



さらに柴田さんは,「花咲爺」の伝承も,花咲爺を幸福に導く犬は,宝=タタラ(鉄)の所在を教えたものであり,そこにも産鉄民の存在が投影されている,と指摘されています。



柴田さんは,「物語」とは,本来「物騙り」(「騙」は「騙す」の「騙」です)を語源としている,と言われます。そして,正史から消された歴史の裏舞台,闇に葬られた真実が,一種の抽象化によって封じ込められて,その抽象化された物語が代々語り継がれたのだ,とも言われるのです。



上掲の『宮崎駿全集』において著者の叶さんは,『もののけ姫』にもダイダラボッチが登場すること,そして「シン神は花咲爺だった」というセリフが登場することから,宮崎駿さんが『もののけ姫』に込められたメッセージも,「物騙り」にあったのではないか,と指摘されています(197頁)。






もう一つ,鉄との意外なつながりを指摘されているのが,羽衣伝説です。羽衣伝説は,日本各地に伝えられている物語ですね。大きく申しますと次のような内容です。




湖水に白鳥が降りて水浴びをしていました。白鳥は人間の女性へとその姿を変えて,水浴びをしていました。




その水浴びをしている女性の美しさに心奪われた男性が,女性を天に帰すまいとして,衣類を隠してしまい,女性は飛べなくなりました。



天に帰ることができなくなった女性は,男性と結婚して子供を残します。その後,女性は男性の隠していた衣類を見つけて,天へと帰って行くのです。






この羽衣伝説は,実は日本だけでなく,世界中に,類似した話が伝わっているそうです。はるか昔の時代に,なぜ類似した話が,世界中に伝わったのかは一つの謎なのですが,それに対するある見解があります。



私がとても好きなコミックに星野之宣『宗像教授伝記考』(潮出版,現在は続編の『宗像教授異考録』が小学館から発行されています)があるのですが,その第1巻で,それは鉄と関係があるのではないか,という推理がなされているのです。



古代社会では,主要な武器は銅で作られていました。ところが,鉄による武器が誕生し,鉄器が圧倒的に銅器よりも強力だったために,鉄を得たものが力を得て,そして権力を得る社会が誕生したのです。



権力を得ようとした人は,鉄を得ようとしました。権力を得たものは,さらなる権力を得ようとして,さらに多くの鉄を得ようとしました。鉄を探し,発掘し,鉄器へと製造する人達を「たたら」と言います。



実は,日本で,そして世界で,鉄の分布地と,白鳥の飛来地は重なっているのです。つまり,羽衣伝説は,かつて「たたら」だった方々が,鉄を求めて移住した先で伝えた伝説の可能性がある,そして鉄を求める人々の動きが,世界中であったということではないか,という推理です。



そして,ではなぜ鉄の分布地と白鳥の飛来地が重なっているのかについては,白鳥は飛行時に方向を鉄分から感じているのではないか,とする説があるのだ,という紹介がされているのです。






鉄を手に入れた者が社会的力=権力を手にした時代。その力を手に入れようとした人々は,日本全国に,そして世界中に「タタラ」と呼ばれる人々を送り込みました。鉄を探し,それを手に入れるためです。



そしてその危険な業に携わった鉄産民の人々が,その業の結果体に障害を負い,その障害のために「怪物」とされていった,「物騙り」とされていった過程が伺えるのです。



その「怪物」を見ていた人々は,自分たちと異なる存在に畏怖を感じたのかもしれません。でも,その「物騙り」の歴史は,現代を生きる私たちに,社会的な偏見が無理解と畏怖の念から生じることを教えてくれているように思うのです。



あまりにも美しい白鳥飛来伝説は,障害のため「怪物」であるとされ,偏見の目で見られる生涯を送ったタタラの人々のふるえるような悲しい心が,本当は美しい生涯を生きたかったとの思いが生み出した物語のように思えてなりません。



その物語の美しさと,タタラの人々の悲しさのコントラストは,今を生きる私たちに多くのことを教えてくれているように思います。

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