弁護士作花知志のブログ

弁護士によるブログです


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私のブログをお読みいただいている方には,株式会社にお勤めをされたり,株式会社の株券をお持ちの方も多いかと思います。現代経済社会に,株式会社はなくてはならない存在です。



株式会社の株を買う場合は,その会社の業績を見て,「将来株が高く売れるのではないか」「将来,高い配当を得ることができるのではないか」などと予想して,買いますね。そして所有株式の割合が高ければ,その株主が,会社を経営する取締役の方々を選ぶことができます。つまり,株を所有する割合の高い方が,会社の動かし方を決めることができるのです。



実は会社法には,「株式会社は誰のものか」という論争があるのです。ここまでのお話をお読みいただいた方は,「株式会社は株主のものではないのか。そんなの当たり前ではないか。」と思われるかもしれませんね。



でも,6年前の2005年に,ライブドアがフジテレビ(ニッポン放送)の株を買収して,会社の経営権を得ようとした際,フジテレビ側から大きな反対にあい,最終的にフジテレビへの資金提供者が登場してフジテレビ側を守ったということがありました。



株式会社が株主のものであるならば,株を多く買い,所有する株式の割合において多数派となった者が,その株式会社の所有者となるはずです。ではなぜフジテレビは,(所有者となろうとする)ライブドアの株の買い占めに反対したのでしょうか。フジテレビ側の行動は,株式会社法制度に反しないのでしょうか。また,フジテレビを守った資金提供者は,なぜそのような行動をしたのでしょうか。








この点についてとても興味深い問題を提示した「ブルドックソース事件」というものがあります。



アメリカに本社がある国際的な投資ファンド会社により,株式を買い占められ,経営権を取得されそうになったブルドックソースという日本企業が,買収防衛策を発動して,現在の経営陣を支持する株主が取得することを前提とした新株を発行し,投資ファンド会社の持株比率を低くしようとしたところ,その投資ファンド会社が買収防衛策の発動の差し止めを求めた,という事件です。



同事件についての,最高裁判所の決定を見てみましょう(朝日新聞2007年8月8日掲載の記事より引用)。





「米系投資ファンドのスティール・パートナーズ・ジャパンが日本企業ブルドックソースの買収防衛策の発動差し止めを求めた仮処分申請で,最高裁第二小法廷(今井功裁判長)は2007年8月7日,防衛策を適法と認め,スティールの特別抗告と許可抗告を棄却する決定をした。



第二小法廷は,ブルドックの株主総会で8割以上の株主が防衛策導入に賛成した点などを重視した。



スティールが『乱用的買収者』に当たるかどうかの判断は示さなかった。企業買収をめぐる防衛策の是非について最高裁が判断したのは初めて。



この決定により,日本企業で初となる新株予約権を使った防衛策の発動が進む。ブルドックは2007年8月9日,株主に対して同年7月に発行した新株予約権を取得。スティール以外の株主には新株を,スティールには現金約21億円を渡す手続に入る。



主な争点は①スティールに他の株主とは違う内容の新株予約権を割り当てることが『株主平等の原則』に反するか,②新株予約権の割り当てが著しく不公平な方法だったか,の2点だった。



決定理由の中で第二小法廷は①について,株主の83%が防衛策導入に賛成したことを,『スティール以外のほとんどの株主が,買収で企業価値が毀損すると判断したといえる』と認定。防衛策の内容も『相当性を欠くものとは認められない』とし,『スティールが乱用的買収者に当たるか否かにかかわらず,株主平等の原則の趣旨に反するものではない』と判断した。



②についても,スティールが株式公開買い付け(TOB)を始めた後に防衛策が導入されたものの,スティールにも新株予約権の価値に見合う対価(現金)が渡される予定であることなどから『不公正な方法とは認められない』と結論づけた。



最高裁決定によって,ブルドックは当初の計画通り,スティールの持ち株比率を大幅に低下させることができる。スティールによる株式公開買い付け(TOB)は進行中だが,応じる株主はわずかにとどまる見通し。ブルドック完勝だ。



しかし,買収防衛策の一環としてスティールに渡す現金は約21億円にのぼる。これが重荷となり,2008年3月期の連結決算は9億8千万円の当期赤字に転落する,との業績修正を,ブルドックは同年8月7日に発表した。



買収者に対して現金を渡し,手を引いてもらうというブルドックの防衛策に対しては,『本物の乱用的買収者を喜ばせるだけの手法』という批判も少なくない。



また,市場には,企業側の防衛行動が強まりすぎることを懸念する声もある。大和総研制度調査部の金本研究員は『日本は例外的な市場という印象を外国人投資家に与えると,日本市場が敬遠されかねない』と述べ,他の外国人株主の投資意欲まで減退させる恐れがある,と指摘する。東京証券取引所の株主売買のほぼ半分は,外資ファンドの外国人投資家だ。



さらに,投資ファンドなどの『もの言う株主』は経営の監視という面で大きな役割を果たしてきた。『最高裁の決定を受け,日本企業は株主と向き合う姿勢を捨て再び内向きな姿勢に戻ってしまうのでは』と,司法判断の悪影響を懸念する経営コンサルタントもいる。」








既に述べましたように,株式会社は現代経済社会の中心です。すると当然,利益を出している会社をのっとろう,株式を買い占めよう,という人も出てくるのですね。


この事件に登場するブルドックソース会社では,そのような敵対的な買収者が出てくれば,新しい株式を受け取ることができる株式予約権というものがあるのですが,それを新たに発効した上で,敵対的な買収者ではない通常の株主にそれを与えて,敵対的な買収者には金銭のみ与える,ということを株主総会で決めました。



すると,取締役を代えるなどの会社そのものを支配する行為をするには,株主総会で多数派でなければならないため,敵対的買収者がどんなに株を集めても,比率が低くなれば会社を売ったりできなくなります。



これに対してそのアメリカの投資ファンドは,そのような防衛策について,①株主を平等に扱わなければならないという原則に反する,②新株の割り当てが著しく不公平な方法である,という2点を主張して,最高裁判所まで争ったのです。









ここで注意しなければならないことは,株式会社になると,会社経営のためにお金を出している,いわゆる会社の所有者,オーナーは株主なのですね。



取締役は,株主が決めた一定の報酬は受け取りますが,あくまでも経営を託されている人にすぎません。とすると,株式会社というのは,基本的に株式を持っている人の多数意思に基づいて動かされるべき存在なのですから,自己資金により多数株主となろうとしている人から,新株予約権を偏頗的に使って会社を守ろうとするのは株式会社制度の本質に反する,という主張が,投資ファンド会社側からされたのです。



最高裁判所は,結果としてブルドックの株主が株主総会で83%の賛成をしていた,ということを大きな根拠にして,そのような防衛策を取ることも法律上許される,としました。



その結果,日本企業がアメリカ投資ファンドに乗っ取られる事態は避けられたのですが,では諸手を挙げて喜んでいいのか,というと,やはりそこは法律問題ですので,いろいろと社会に影響があるようです。それが上掲の朝日新聞でも指摘されている,「そのような防衛策を容認することは,日本会社が閉鎖性を増し,結果的に国際経済社会から置いてきぼりを食らうのではないか,それは日本の社会にとっても好ましくないのではないか」という指摘です。









法律には正解はなく,どのような意味を与えれば,その法律がどう動き,どのような影響を社会に与えるのかという視点が大切だ,というお話はこれまでの記事でもいたしました。



1602年にイギリスで初めての株式会社である東インド会社が設立されてから約400年。



株式会社という法が認めた存在に,どのような意味を与えるか,どのような色を与えるのか,そしてそれが日本の株式会社の国際経済における存在,活動にどのような影響を与えるのか。



「株式会社は誰のものか」という問いへの回答は,これまでの400年に及ぶ株式会社と国際経済の歴史の理解,さらには,これからの国際経済の姿の予言という,とても深い洞察が必要なのかもしれませんね。








このように,食うか食われるかの株式会社の世界を象徴するかのように,上掲のブルドックソースの取った企業防衛策の他にも,諸外国では色々な企業防衛策が編み出されています。




その中に,私がとても好きな「パックマン・ディフェンス」という方法がありますので,ご紹介しましょう。



それは,買収をされようとされている株式会社が,買収しようとしている株式会社の株式を逆に買い占めることで,買収会社を逆に飲み込んでしまうという防衛策です。



あのナムコの生んだゲームの名作「パックマン」では,プレイヤーが操るパックマンがエサを食べると巨大化して,それまで逃げていた存在の敵であるモンスターを,逆に飲み込んでしまいますね。パックマン・ディフェンスは,そのゲームのパックマンにちなんで名付けられました。



株式会社といういわば擬制の存在です。その擬制の存在を創り出したのは私達人間です。



食うか食われるかの株式会社の世界で,パックマンにちなんだ技が活用されているだなんて,擬制の存在である株式会社を創り出した人間の,とても人間らしいユーモアが法に反映されているように思えるのです。



活字にすぎない法律が,パックマンのように動き出す。クスリと笑いが出そうになるのは,私だけでしょうか?。

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